私…生まれ変わったらモブキャラになりたいな(なれるとは言ってない)   作:とんこつラーメン

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偶にはメイドも悪くない?

「「つ…疲れた…」」

「あはは…ホントにゴメン…。つい夢中になっちゃって…」

 

 あの後も私とボーデヴィッヒさんの二人は、デュノアさんの着せ替え人形と化し、何度も何度も色んな服を着させられた。

 当の本人も少しは買っていたけど、私たち用の服の方が圧倒的に量が多い。

 一応の目的は達成出来たけど、そんなのがどうでもよくなる程にめっちゃ疲れ果てた…。

 

 結局、お昼ギリギリまで洋服選びは続き、今はもう12時過ぎ。

 私たちはオープンテラスのお洒落なカフェで少し遅めの昼食を食べていた。

 

 因みに、メニューはボーデヴィッヒさんは日替わりパスタ、デュノアさんはラザニア。

 私はふわトロ卵のオムハヤシを食べている。

 ん~…カフェとか滅多に行かないから気が付かなかったけど、意外とメニューが豊富なんだなぁ~…。

 

「ラウラも佳織も、モデルとしては最高だったからね。次々といいのが思い浮かんじゃって」

「まぁ…いいけどね。別に嫌じゃなかったし」

「そうだな。いい買い物は出来たと思う。流石に多すぎたから、宅配で学園に送って貰ったが」

「私も、織斑君の家に送って貰ったよ。速達にして貰ったから、帰ったらもう届いてるんじゃないかな?」

 

 問題は留守番をしている織斑君がどんなリアクションをするかだけど…ま、大丈夫でしょ。

 流石に箱を開けて中身を見るような真似はしないと思うし。

 

「ところで、当初の目的である洋服は買うことが出来たし、午後からはどうするの?」

「そうだね…ボクは生活雑貨を見に行きたいな」

「「生活雑貨?」」

「うん。特に日本の時計って昔から憧れてたし」

「それって腕時計? それとも掛け時計や目覚まし時計?」

「どれもかなぁ~。とにかく、良さげなのがあったら買いたいな~って」

 

 確かに、日本には日本だけの時計ってのがあるかもね。

 普通じゃ絶対に思いつかないようなデザインの時計とか一杯あるからね。

 

「二人は何か無い? そーゆーの」

「私は…日本刀が欲しいな。無論、本物ではなくて飾る用のレプリカだが」

 

 飾る用の日本刀…なんだろう…不意にヤーさんの事務所が思い浮かんでしまった…。

 

「…女の子的なのは?」

「思い浮かばんな」

「そ…そう…」

 

 まだまだボーデヴィッヒさんには難しいか。

 こればっかりは徐々にやっていくしかないね。

 

「じゃあ、佳織は?」

「私? そうだなぁ~…」

 

 ぶっちゃけ、私も特には思いつかない。

 だって、欲しいと思ったものは、この間の簪さんと一緒に買い物をした時に粗方買ってからなぁ~。

 

「う~ん…特には思いつかないけど…私は二人に付き合うよ。一緒に回っているうちに何か欲しくなるかもしれないし」

「そういうのもあるか…じゃあ、取り敢えず午後は……ん?」

「どうしたの?」

「あれ…」

「「あれ?」」

 

 何かに気が付いたのか、デュノアさんが指さす方を見てみる。

 そこには、隣に席にて頭を抱えている女性が一人。

 相当な悩み事があるのか、さっきからずっと溜息ばかり履いていた。

 

「はぁ~…これからどうすればいいのよ…本当に…はぁ~…」

 

 なんとまぁ大きな溜息…。

 テーブルの上に置いてあるペペロンチーノもすっかり冷めきっちゃってるし…。

 

「あの人…どうしたんだろうね…?」

「さぁな。周囲の客もチラチラと見ながら困惑している様子だが…」

「なんだろう…猛烈に嫌な予感が…」

 

 今まで数多くのトラブルを経験した私には分かる。

 これはまた新たなイベントの発生フラグだ!

 ここは気が付かなかった振りをして、下手に関わらない方が無難…。

 

「あ」

「「「あ」」」

 

 し…視線が合った…。

 なんだろう…まだ一度も展開したことが無いにも関わらず、ウィングゼロのゼロシステムが猛烈に私に警告音を発しているような気がする…。

 

(それは多分、気のせいじゃないと思うぞ佳織よ…)

 

 ですよね~!

 

「「「「…………」」」」

 

 き…気まずい…なんだ、この謎の沈黙は…。

 誰か何か喋ってよ…。

 

「あ…貴女達!!」

「「「は…はい!?」」」

「今からちょっとバイトしてみないっ!?」

「「「…は?」」」

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

「ってわけでね…昨日、急に二人も辞めちゃって…。正確には辞めたってよりは駆け落ちしたって言った方が正しいんだけど…ハハ…」

「「「はぁ…」」」

 

 食事を終えた私たちは、何故か先程の女性に強制連行されるような形で、彼女のお店に連れてこられた。

 んでもって、このお店ってのがこれまたマニアックと言うか…オタク向けのお店なわけでして。

 め~っちゃ簡単に言えば、メイド&執事喫茶です。

 女の子はメイドの格好で、男の子は執事の格好で接客をすると言う…まんまなお店。

 存在自体は知ってたけど、入ったことは一度もない。

 そもそも、入る勇気自体が無かったんだけど。

 だから、これが人生初めてのメイド喫茶だったりする。

 

「あの…欠員は三人出たって言ってましたけど…もう一人は?」

「季節外れのインフルエンザにかかって自宅療養中…」

「うわぁ…マジですか…」

 

 インフルエンザってマジで大変じゃん。

 仮に完治しても、念の為に最低でも一週間は外出が禁止されてるらしいし。

 ある意味、駆け落ち云々よりも遥かに質が悪い。

 

「今日はめっちゃ重要な日なのよ!! 本社から視察の人間が来るし、夏休みってことで普段以上に客は来るし! こんな日の欠員は致命傷にもなりかねないの!だから…お願い! あなた達三人に今日だけでいいからバイトをしてほしいの!」

 

 困った時はお互い様。

 別に手伝ってあげること自体はやぶさかではない。

 私の将来の夢である落語家も、ある意味では立派な客商売だ。

 寄席に上がった時は、ここなんかとは比較にならない程のお客を相手にしなくちゃいけない。

 この程度の事で怯むなんて絶対に許されない…だけど…。

 

「あのー…ちょっといいですか?」

「どうしたの?」

「どうして…ボクは執事の格好なんでしょうか…?」

 

 そうなんです。

 私達が来たことで調子に乗ったのか、いきなり趣味全開になったのです。

 ま、さっきまでは私たちが着せられる立場だったので、少しは…ね?

 

「いや…だって…ほら! 凄く似合うんですもの! そこいらの男共なんかよりもずっと! 綺麗でカッコいいから!」

「そう…ですか…はぁ…」

 

 こんな形で再び男装をする羽目になったせいか、とんでもない落ち込みよう。

 私たちに色々としてたけど、デュノアさん自身も可愛い服は着てみたかったんだろうな。

 

「大丈夫! めっちゃ似合ってるから!」

「ど…どうも…ハハ…」

 

 乾いた笑い…哀れな…。

 店長さんの誉め言葉も気休めにしかなってないし。

 

「ラウラはいいなぁ…可愛いメイド服が着られて…」

「そうか? 動きづらくて大変なんだが…」

 

 いや…ボーデヴィッヒさんはメイド服が似合いすぎてる。

 冗談抜きで滅茶苦茶可愛い。

 これは間違いなく、今回の目玉になりますな。

 

「うんうん…私の目に狂いは無かったわね…! クールビューティー銀髪眼帯ロリメイド…最高だわ!」

「こいつが何を言っているのか全く分からない…」

「別に分かる必要はないよ…ボーデヴィッヒさん…」

 

 属性多可過ぎて完全に渋滞してるんですが。

 お願いだから、ボーデヴィッヒさんだけはソッチ側に行かないでほしい。

 いつまでも純粋無垢な女の子でいてください。

 

「んで…私のこの格好は…?」

「あなたにはぜ~ったいに和装が似合うと思ったの! だから…」

「着物エプロンってわけですか…トホホ…」

 

 いやね…この服も可愛いとは思うよ? 思うけど…。

 

「私だけ…浮いてない? というか、なんでこんなのが…」

「前に一度だけ京都の老舗の和菓子屋さんとコラボしたことがあってね。その時限定で皆の格好を和服にしたことがあったの。それは、その時の衣装なの」

「さいですか…」

 

 確かに和服は着慣れているけどさ…こんな所でも着るとは思わないじゃん?

 しかも、和風メイドさんって…ある意味、他の二人以上にコスプレ感が強くない?

 

「やっぱり…佳織には和服がよく似合うなぁ…♡」

「うむ。凄く自然な感じだな」

「そう…かな…?」

 

 和服が似合う…か。

 これは素直に喜ぶべき…なのかな?

 

「それにしても…」

「「「ん?」」」

「こうして並ぶと、本当に絵になるわね…貴女達」

 

 絵になるのは二人だけでは?

 この子たちに比べたら、私なんて地味地味星人ですよ?

 

「正統派のロリメイドに、男装執事…そして、明治初期の喫茶店にいそうな和風メイド…いい!」

 

 自分で言うのもなんだけど、三人揃って属性が多すぎやしませんか?

 ここまで来たらもういっそのこと、この場に凰さんも呼んで中華風メイドも爆誕させません?

 和洋中でバランス良いし。

 

「もし今が緊急事態じゃなかったら、絶対に記念写真を撮ってたところね…」

 

 この人、思ったよりも実は余裕あるだろ。

 

「というか、私たち全員、これ系のお店での接客経験とは全く無いんですけど…大丈夫なんですか?」

「それなら問題ないわ。そんなに難しいことはさせないつもりだし、レジ打ちとかは私がするから。あなた達三人はとにかく、注文が入ったら聞きに言って、それを厨房に伝える。それだけに専念してくれたら十分だから」

 

 それだけでいいのか…。

 だったら、素人の私達でも辛うじて何とかなる…か?

 

「もし何か困ったことがあったり、分からないことがあったら、何でも遠慮なく私や他の店員に尋ねて頂戴」

「「分かりました」」

「了解した」

 

 しっかし…IS学園に入ってから私の人生が一気にデンジャラスになったり、賑やかになったと思ったら…今度はまさかのメイド喫茶体験をする羽目になるとは。

 事実は小説よりも奇なり…なんてよく言うけど、私の二度目の人生がまさにそれだな。

 こんなにも波乱万丈な人生になると一体誰が想像した?

 あぁ…最初は原作キャラと一切関わらない、静かで穏やかなモブキャラ人生を堪能しようとしていたのに…気が付けば、皆とは普通に仲良くなって友達になってるし、担任の先生には公私共にお世話になりっぱなし。

 とどめは、夏休み限定とはいえ、クラスメイトの男の子と一つ屋根の下で一緒に暮らしてるんだもんなぁ~。

 いや~…青春してますなぁ~…私…ハハハ…。

 

「そう言えば、今までずっと聞きそびれてたけど、ここのお店の名前って何ですか?」

「あら。まだ教えてなかったわね」

 

 そう言うと、店長さんは来ているメイド服のスカートの端を持ち上げて、優雅なお辞儀をして見せた。

 

「@クルーズへようこそ。お客様」

 

 そこは『おかえりなさいませ、ご主人様』じゃないんだ…。

 

 

 

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