私…生まれ変わったらモブキャラになりたいな(なれるとは言ってない) 作:とんこつラーメン
いきなりお気からやって来た謎の着物美魔女さん。
篠ノ之さんが驚きながら後ろを向いてるってことは、もしかしなくてもお知り合い?
「ゆ…雪子叔母さん!?」
「こっちなら大丈夫だから、遠慮なく行ってきなさいな」
「い…いいのですか?」
「勿論よ。こんなこともあろうかと、ちゃーんと箒ちゃんの為の浴衣を用意しておいたの」
「いつの間に!?」
叔母さん…?
ってことは、この人は篠ノ之さんのご親戚の方か。
なら、ちゃんと挨拶をしないとね。
「初めまして。篠ノ之箒さんと同じクラスの仲森佳織と申します」
「あらまぁ…これはご丁寧に…。箒ちゃんの叔母の雪子です」
こんな時、つくづく中学時代に礼儀とか挨拶とかを徹底的に勉強しておいて良かったって思うよね。
やっぱ、知識や経験は大切な財産だ。
「ほら。織斑君も」
「え? あ…織斑一夏…です」
「うふふ…初めまして」
私に言われて初めて気が付くとは、まだまだですなぁ。
これから先、嫌でもお偉いさんと似たようなやり取りをすることも増えるだろうに。
これ系のことは軽い知識だけでも持っておいて損は無い。
「もしかしてだけど、佳織ちゃんは芸事の経験があったりするのかしら?」
「経験と言うか…中学の時に通ってたのが、そういうことを勉強する専門学校だったと言いますか…」
「そうだったのね。道理で挨拶の仕方一つとっても、とても丁寧で綺麗だった筈だわ」
「きょ…恐縮です…」
一発で見抜かれるとは…この人も『そっち側』の人だったりするのかな?
「それじゃあ、箒ちゃんはもう一回お風呂に入って軽く汗を流して、その間に私が浴衣の用意をしておくから」
「わ…分かりました。お願いします…」
「よろしい。というわけだから、二人はここで待っててあげてね?」
「「分かりました」」
夜とはいえ、夏は普通に暑いからね。
立ってるだけで汗は掻いちゃうもんか。
それが女の子なら猶更だ。
スッキリした状態で浴衣は着たいもんね。
雪子さんが篠ノ之さんの背中を押しながら母屋に入っていくのを見届けてから、私たちは祭囃子の方に振り向く。
「こんだけ賑やかなら、全く暇はし無さそうだね」
「だな。すぐ近くの屋台ぐらいなら行っても問題ないかもな」
「うん。小腹が空いたり、喉が渇いた時はそうしようか」
さてはて…篠ノ之さんは、どんな浴衣で来るのかにゃ?
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「ま…待たせた…」
「「おぉ~…」」
戻って来た篠ノ之さんの浴衣は、白地に薄い青の水面模様が付いていて、アクセントとして朱色の金魚が泳いでいる。
所々に置かれている銀色の球と金色の曲線が、決して派手な自己主張をしようとはしないで見事に脇役に徹していた。
うん…めっちゃ良く似合う。
恐らく、これをコーディネートしたのは、今も隣でニコニコしながら立ってる雪子さんだろう。
なんか、それっぽいことを言ってたし。
「それじゃ、これを持って行ってね。お財布にスマホとか、貴重品とか必要な物とかを入れておいたから」
「あ…ありがとうございます」
お、私と同じような巾着。
やっぱ、浴衣には巾着だよね。
分かってますなぁ~。
「ところで佳織ちゃん。一つ聞いてもいいかしら?」
「なんですか?」
「アナタが着ている、その浴衣…一人で着付けしたのかしら?」
「はい。中学時代に、こう言うことも徹底的に練習したんで。今じゃ部屋着として着てたりすることもあるので」
「まぁ…そうなのね! 道理で浴衣姿が凄く様になっていると思ったわ」
「そ…そうですか…」
浴衣姿が様になっている…ね。
これは喜んでいい…のかな?
「箒ちゃん。今度は佳織ちゃんに着付けて貰ったら?」
「は…はぁ!? い…いきなり何を言い出すんですか!?」
「あら。私の目は節穴じゃないわよ?」
「な…何を…?」
私が篠ノ之さんの浴衣の着付けを?
それ自体は全然大丈夫だけど…それとは別に、なんか顔がニヤニヤしてませんかね?
「箒ちゃん…あの佳織ちゃんの事が気になってるんでしょう?」
「ぶっ!?」
あ、吹いた。
気になってるって…どゆこと?
織斑君も小首を傾げながら目を丸くしてるし。
「分かる…よーく分かるわよ。通ってる学校が学校だものね。実質的な女子高とも言える場所にいれば、自然とそうなるのは当然よね」
「い…いや…雪子叔母さん…ち…違…わないですけど…それは…その…」
あらら…篠ノ之さんの顔がリンゴ飴みたいに真っ赤になってるでごじゃる。
ここまで恥ずかしがってる彼女はかなり貴重なのでは?
「佳織ちゃん」
「はい?」
「箒ちゃんの事をよろしくお願いね?」
「はぁ…分かりました…?」
なんか知らないけど、よろしくお願いされてしまった。
まぁ…今の私にとって大切な友達だから、そこは普通に喜んでなんだけど。
「ほら。行ってらっしゃい。二人が待ってるわよ」
「は…はい…行ってきます…」
結局、何が何だか分からないまま篠ノ之さんは背中を押されていた。
ま、こーゆーのは気にしたら負けなのですよ。
「そうそう。八時から花火が上がるから。よかったら見て行ってね」
「「はーい」」
打ち上げ花火…か。
最後の見たのはいつだったかな…。
「じゃ、行こうか。篠ノ之さん」
「う…うむ…そうだな…佳織」
こうしてると、なんだか初めて彼女と本格的に会話をした時を思い出す。
あの時も、こんな風に気まずそうにしてた篠ノ之さんに話しかけてたっけ。
もう随分と昔のように感じるけど、まだ半年ぐらいしか経ってないんだよなぁ…。
ホント…懐かしいなぁ…。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
三人でトコトコと歩いていると、時折だが織斑君の方に鋭い視線が向くことが。
「着物美少女を二人も侍らせやがって…!」
「リア充死ね。もしくは爆発しろ」
「俺は色恋などには屈しない! 男同士の友情に生きるのだ!!」
「ちくわ大明神」
なんか血涙を流したり、すっごい嫉妬の感情が向いたり、悔しそうに高らかに宣言したり、男の子ってのはこの暑さでも元気なんだなぁ…。
最後のちくわ大明神だけは普通に謎だけど。
「にしても、本当にすっごい人の賑わいだね。ちょっと気を抜いたら、すぐにはぐれちゃいそう」
「確かにな。もしはぐれた場合を考えて、合流場所とかを決めといた方が良いかもな」
「一番なのは、はぐれないことだがな」
それを言っちゃおしまいだって、篠ノ之さんや。
「じゃあ、はぐれないように手でも繋ぐ?」
「えっ!? つ…繋ぐって…佳織と…?」
「うん。最初に話をした時も手を繋いだし、大丈夫だよね?」
「そ…それはそうだが…あの時はまだ…」
なんて言ってる間に~…えい。
「これで大丈夫」
「か…佳織!?」
私とは違って、剣道をやってるだけあってしっかりと鍛えられてる手だなぁ…。
二学期からは、私も少しずつ武道を習い始めようかしら…。
「さて…織斑君。どの屋台から攻めようか?」
「そうだなぁ…今の俺達は金と言う名の弾薬だけは豊富に持ってるからな。最近になって謎に高くなってる屋台の値段にも余裕で対抗できるけど…」
「種類が豊富すぎて、逆に迷っちゃうよねぇ…」
篠ノ之さんと合流する前にも見た粉物三巨頭の『焼きそば』と『たこ焼き』と『お好み焼き』に加え、『焼きトウモロコシ』や『綿菓子』、各種ドリンクを売ってる店もあれば、最近のはやりに従ってなのか『唐揚げ』や『焼き団子』『餃子』の屋台なんてのまであった。
「これだけあれば、ここだけで夕食になっちゃうね」
「念の為と思って、夕飯を食わずに来たけど…その判断は間違ってなかったな」
「だね。メインだけじゃなくて、飲み物やデザートまで揃ってるし」
ちゃんと夏の風物詩として、アイスクリームやカキ氷の屋台まで揃ってる。
因みに、私はイチゴ味よりもメロンやブルーハワイが好きだったりする。
でも、一番好きなのはやっぱり宇治金時。
「カキ氷とかは、出来れば別のを食べた後に行きたいよね」
「どうしてだ佳織?」
「口の中の油を洗い流して、次のを食べやすくするため」
「成る程…流石は佳織。食べる順番もちゃんと考えているのだな」
なんか篠ノ之さんに感心されてしまった。
ちょっとだけ気恥ずかしいや。
「お? 食べ物系だけじゃなくて、ちゃんと他の屋台もあるんだな」
「ホントだ。射的に金魚すくい、くじ引き系に…型抜きまである?」
「ある程度は私も把握していたが…こんなにも種類が豊富だったのか…」
これはもうあれだね。
思いつく屋台は殆ど揃ってると見た方が良いね。
「おぉ~! なんだ、このじいさんたち!?」
「型抜きの技術がもう完全にプロの領域だぜ!?」
「幾ら何でも次元が違いすぎるだろ!?」
「さ…最高難易度まで楽々とクリアしやがっただとぉッ!?」
お…おやおやぁ~?
な~んか無駄に賑やかな場所があるんだけど…何て言ってた?
型抜きがプロの領域なおじいちゃんたちとな?
なんだろう…一瞬、あのお爺ちゃんたちの顔が思い浮かんだんだけど…まさかね?
あの人たちがこんな場所に顔を出すなんて、流石に有り得ない…。
「お? なんじゃ。お前たちも来ておったんか。奇遇じゃのう」
「「「やっぱりいた――――!?」」」
まさかとは思っていたけど、本当にまさかだった―――!?
ドクターJのお爺ちゃんだけじゃなくて、プロフェッサーGにドクトルS、H教授に老師Oのお爺ちゃんたちまでちゃんと揃ってるし!?
皆揃ってちゃんと浴衣まで着て完全状態だし!?
って…あれ?
「なんか一人…いや、二人多いような気が…?」
「ホントだ…知らない人がなんか増えてる…」
「あの方達は一体…?」
い…いつの間にか、お爺ちゃん五人組が、七人組にパワーアップしてるんですけど…。
アンタらは、一体いつの時代のスーパー戦隊だっつーの。
「おぉ…あの少女が、お前たちが話していた例の子か?」
「そうじゃ。どうじゃ? 見た感想は」
「パッと見は本当に、どこにでもいるごく普通の少女だが…それでも、あのトールギスを完璧に乗りこなしたばかりか、実力で性能を追い越し始めているのだろう?」
「そして、更には前代未聞のトールギスの第二形態移行まで果たした。まさしく、天然自然の生み出した稀代の天才児…と言った所か」
なんかまた変な方向に誤解されてべた褒めされてるし~!
この展開も凄く久し振りだな…。
「あの~…この人たちは?」
「おっと。そうじゃったな。ほれ、ちゃんと挨拶せんかい」
「わーっとるわ。そう急かすな」
サングラスを掛けて、アロハシャツを着てる、短パンなお爺ちゃんと、なんかいかにもな怪しげな雰囲気を顔つきな眼鏡を掛けたお爺ちゃん。
うーん…この人たち…どこかで見たことがあるような気が…?
「ワシの名は『マイク・ハワード』。お前さんの専用機であるトールギスの推進機や姿勢制御装置を開発した者じゃ」
「そして、ワシは『ペルゲ』。人からは『ドクター・ペルゲ』と呼ばれておる。こやつらとは古い馴染みでな。少し前に合流したんじゃ。よろしく頼むよ、お嬢さん」
名前聞いて思い出した…こ…こ…こ…この人たちの事知ってる―――――!!!!!
なんか後半ぐらいからゼクスに協力してたお爺ちゃんと、G-UNITの開発者なお爺ちゃんだ―――――!!!!!
なんで、こんな場所にお爺ちゃん五人組と一緒にいるの――――――!!??