私…生まれ変わったらモブキャラになりたいな(なれるとは言ってない)   作:とんこつラーメン

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寒すぎてガクブルな毎日ですが、少し前に古着屋で購入をした大きなジャンバーが猛威を振るってくれているので、辛うじて耐えられている今日この頃です。

冬にはやっぱりモコモコ最強節。






生徒会室って一種の聖域だと思う

 放課後になり、布仏さんとの約束通りに私は彼女に連れられる形で生徒会室までやって来ていた。

 幾ら原作既読済みとはいえ、今となっては細かい部分は余り覚えていないので、普通に『どんな場所かなー』なんて呑気な事を考えていた。

 そこかしこにハイテクが満載のIS学園の生徒会室なんだから、きっと他に負けず劣らずの近未来的な部屋に違いない。

 

 …なんて考えていたら、割と普通の洋式なドアがそこにはあった。

 ザ・生徒会室って感じのいかにもな場所。別の意味で予想が裏切られた。

 

 それで今、私が何をしているのかというと……。

 

「ふーん…貴女が話に聞いてた仲森佳織ちゃんね。初めまして。私がこのIS学園の生徒会長にして二年の更識楯無よ。よろしくね」

「…初めまして。仲森佳織…です」

 

 6人目の原作ヒロインの楯無さんと対面をしていましたとさ。

 …生徒会って聞いた瞬間に、どうしてこの人の事を思い出さなかったのかな私は…。

 トールギス騒動ですっかり忘れてた…。

 

「本音ちゃんと仲がいいとは聞いてたけど、まさかここに連れてくるとは思わなかったわ」

「まぁ…社会科見学だと思って来ました」

 

 生徒会室なんて普通に考えても滅多にはいる機会なんてないしね。

 実際、中学時代には一度も入った事は愚か、近づいた覚えすらない。

 

「布仏さんも生徒会メンバーで、しかも書記をやってるって聞いたんですけど…」

「それは本当よ」

「そう…なんだ…」

 

 この人の口から言われたら信じるしかないでしょ…。

 因みに、その布仏さんは今、お姉さんである虚先輩と一緒にお茶の準備をしている。

 名前で呼ぶのは、単純に紛らわしいから。

 本当は布仏さんの事を名前で呼べないいんだろうけど、まだ私にはその勇気は無い。

 もっと親しくなれれば、或いは……。

 

「あの…さっき『話に聞いてた』って言ってましたけど、それって…」

「生徒会だもの。特別な事情を抱えた生徒ぐらいはちゃんと把握してるわよ。あなたと同じクラスの織斑一夏君然り。佳織ちゃん然り」

「その『事情』ってのは、やっぱり…」

「…佳織ちゃんが適性検査でSを出して、その結果として半ば強制的に推薦入学させられた挙句、専用機まで持たされてしまった事…とか?」

「随分と具体的に言いましたね…」

 

 更識先輩のお蔭で、図らずも初見の読者さんに簡単なあらすじが出来てしまった。

 流石は生徒会長にしてロシア代表、そして暗部の当主をやってる事はある…恐るべし。

 

「あれからISには乗ってるの?」

「いやまさか…怖くてとてもじゃありませんけど……」

 

 もう何度言ったかは分からないけど、もう一度だけ言っておく。

 トールギスは乗って動いた瞬間に死亡確定なのよ!!

 圧倒的なGによって人肉のミンチの出来上がりなの!!

 転生者だからって死に対する感情が希薄になると思わないですよね!

 生まれ変わっても死ぬのは怖いのよ!!

 

「よかったら、お姉さんが色々と教えてあげて…」

「結構です」

「即答…少しへこむわね」

 

 猛烈に嫌な予感しかしなかったので断らせて貰う。

 それでも来るというのならば、こっちも奥の手である『D4C・ラブトレイン』を使うしかない! 使えないけど。

 

「かおりーん! お待たせ―!」

「お待たせしました」

 

 おっと。ここで布仏姉妹のご登場だ。

 正直、更識先輩のようなグイグイ来るタイプは苦手なので助かった。

 

「仲森さん、こちらをどうぞ」

「ありがとうございます」

 

 虚先輩が私の前に紅茶の入ったティーカップを置いてくれた。

 普段は緑茶とかしか飲まない私だけど、これは匂いを嗅いだだけで分かる。

 絶対に美味いでしょ。間違いないよ。

 

「ケーキもあるよー」

 

 そして、布仏さんが置いてくれたのはイチゴのショートケーキ。

 スタンダードではあるけど、だからこそいい。

 原点こそが頂点とはよく言ったものね。

 私が首からぶら下げてるトールギスだって、原初にして最強って機体なんだし。

 

 紅茶とケーキは人数分用意されて、私だけでなく布仏さんや楯無先輩、虚先輩の分も配膳された。

 もしかして、これがこの生徒会の日常なのかしら?

 これが本当の『放課後ティータイム』か…。

 …後にこのメンバーでバンドとか始めないわよね?

 

 しれっと布仏さんが私の隣に座ってくれたけど、地味に有り難い。

 見知った相手が近くにいるだけで安心できるよね。

 

「い…いただきます」

「はい。どうぞ」

 

 まずは紅茶を一口。ゴクリとな。

 

「ん…!」

 

 熱すぎず、かといって温すぎず。

 実にいい塩梅の熱さに加え、仄かな苦さと僅かな甘みが何とも言えない…。

 紅茶には全く詳しくない私だけど、これだけは断言出来る。

 この紅茶…絶対に最上級クラスの美味しさでしょ…。

 砂糖とかミルクとか全く必要が無い程の美味…。

 

(ここでショートケーキを食べる…っと)

 

 こっちも美味しいけど、この紅茶との相性が抜群過ぎる…!

 甘みと苦みの繰り出すハーモニーがここまでの破壊力を持つなんて…!

 今までは緑茶党だったけど、紅茶党に鞍替えしたくなる。

 

「ん~…♡」

 

 ケーキを食べて、紅茶を飲む。

 この繰り返しだけで永遠に時間を潰せる自信がある…。

 やばぁ……これは魔性の組み合わせだわ…。

 

「美味しそうにはしてるけど、リアクションが薄いわね…」

「かおりんだからね~」

「私だからね~」

「「ね~」」

 

 う~ん…理解者がいるって素晴らしい。

 布仏さんも非常に美味しそうな笑顔でケーキを食べてるし。

 なんだろうね。この顔を見ているだけで気持ちがほんわかしてくる。

 

「本当に仲がいいのね。二人とも」

「かもですね。最近じゃいつも一緒にいますし」

「私とかおりんは仲良しさんなのだ~」

 

 仲良しさん…ね。昔なら即座に否定してたけど、今は悪い気分じゃないかも。

 嘘はついてないし。

 

「あ、そうだ。思い出した」

「何を?」

「ここに来た本当の理由。虚先輩にお礼を言おうと思ってたんだ」

「私にお礼…ですか?」

「はい」

 

 姿勢を正しながら振り向き、ちゃんと頭を下げてから一言。

 

「この子の調査を手伝ってくれて、本当にありがとうございます」

「な…仲森さん! 頭を上げてください! あの時は私個人の興味も有りましたし、そこまでご丁寧にお礼を言われるような事は決して…」

「だとしても、感謝の気持ちを伝えない訳にはいきませんから」

 

 これは、私が中学の時に学んだ事の一つだ。

 向こうにとっては些細なことであったとしても、感謝の気持ちだけは絶対に忘れずに伝えなければいけない。

 

「…お嬢様も、仲森さんぐらいにお淑やかな部分があれば……」

「うぐっ…!」

 

 あぁ~…それは何か分るかも。

 更識先輩って、お嬢様ってよりは近所に住んでるお節介焼きのお姉さんって感じがする。

 私の場合は『お淑やか』ってよりは『根暗』と言った方が正解だけど。

 表現方法は人それぞれだから気にしない。

 

「なんか、かおりんのほうがお嬢様よりも『お嬢様』って感じがするよね~」

「本音ちゃんまでっ!?」

 

 ここで意外な人物からの追撃入りましたー。

 この一撃は痛いでしょー。

 

「ま…まぁ…確かに佳織ちゃんは和風美少女だし…黒くて長い髪も綺麗に整ってるし…深窓のお嬢様ってイメージがピッタリだし……」

 

 なんか卑屈な顔になって色々と言い出したんですけど。

 別に私は美少女じゃないし、この髪質も天然ですから。

 特に何か特別な事なんて全くやってないし。

 中学時代にそれを言ったら、クラスメイトに物凄く羨ましがられた。

 

「…そういえば、佳織ちゃんって部活はもう何か入ってたりするの?」

「いえ、まだ何も」

 

 このIS学園は部活への入部が必須という、これまた意味不明な校則が有ったりする。

 別に部活に入ること自体には問題は無いが、入りたいと思わせるような部活が何一つとして存在していないのが現実なのだ。

 まず、前提条件として運動部系は体力的な意味と運動神経的な意味で完全アウトだし。

 文化部系も種類によっては普通にアウト。

 なので、必然的に入部できそうな部活が厳選されてしまうのです。

 

「だったら、生徒会に入ってみない?」

「生徒会…ですか」

 

 これもなんかパターンな気がする。

 どの部活に入ろうか迷っている間に、いつの間にか生徒会のメンバーになってる的な。

 

「そう。このIS学園じゃ、生徒会も部活動として扱われているのよ」

「ほへー…」

「ここなら佳織ちゃんと仲のいい本音ちゃんもいるし、虚ちゃんの紅茶も飲めるわよ? どう? 悪い提案じゃないとは思うけど?」

「うーん…」

 

 悪いどころじゃない。私にとっては非常に魅力的な提案だ。

 最初から仲のいい知り合いがいるのは本当に助かるし、そこに美味しい紅茶までプラスされる。

 原作ヒロインの一人がいるのが最大にして唯一のネックではあるけど、そこはもう諦めて臨機応変に対応していくしかないでしょう。

 というか、私にはもう生徒会に入る以外のいい方法が全く思いつかない。

 余りにもメリットが大き過ぎる。

 なにより……。

 

「かおりーん…生徒会に入ろーよー…」

 

 布仏さんの、このウルウルな瞳に勝てる気がしない。

 これに抗える人間がいたら紹介して欲しいぐらいだ。

 

「…そちらが良いのでしたら、入らせて貰います。大して役には立たないかもしれませんけど…」

「やった! これでメンバー追加ね! それじゃ早速、佳織ちゃんには生徒会副会長になって貰って…」

「いやなんでっ!? まだ何もしてないのにいきなりすぎなのではッ!?」

「冗談よ。冗談。一先ずは本音ちゃんと一緒の書記ってことにしておきましょ」

「ひ…一先ず…?」

 

 なんだか不穏な言葉の響き…嫌な予感しかしない。

 ホントにこれで良かったのかしら…。

 

「これからはカオリンも一緒だ~!」

「…すみません、仲森さん。なんだか強要するような事をしてしまって…」

「あ…いえ。大丈夫ですよ。寧ろ、これぐらい強引にして貰わないと、ずっと迷ってそうでしたし…」

 

 最悪の場合、適当な部活に入れられそうだしね。

 その時は幽霊部員を決め込むけど。

 

「担任の織斑先生には、こっちから伝えておくわ。多分、後で入部届を渡されると思うから、それを記入したら正式に佳織ちゃんは生徒会のメンバーね」

「分かりました」

 

 こーゆー所だけは普通の高校と変わりないのね…。

 中途半端な近代化って、逆に不便なのかも。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 佳織と本音が帰った後、楯無と虚は真剣な顔になってから話し合っていた。

 

「虚ちゃんから見て、佳織ちゃんはどんな感じだった?」

「印象通りの、丁寧で優しい少女と言った感じでしょうか。特に、私にお礼を言ってきた時は本当に驚きました。なんて義理堅い性格なんだろうと」

「そうねー。あれには私も驚いたわ」

 

 本音から彼女に対する印象などは予め聞いてはいたが、実際に会ってからその印象はいい意味で変わった。

 二人の想像以上に佳織は好印象を持てる少女だったのだ。

 

「だけど、なんだか感情表現が希薄なような気もしたわね…」

「彼女の家庭環境を考えれば無理も無いかと」

「そうよねー…」

 

 ふと手に取った書類には、佳織の顔写真と一緒に彼女に関する諸々の情報が記載されていた。

 

「お嬢様はどう感じられたのですか?」

「大まかな部分は虚ちゃんと一緒。だけど、一つだけ気になった事があって」

「気になった事?」

「うん。あの子…ISに乗る事を怖がっていたのよね」

「それは…織斑先生が仰っていた事と…」

「一緒だった。私が『色々と教えてあげようか』っていっても即座に断ってたし」

 

 本人は誤魔化している様子だったが、あれは余りにもあからさまだった。

 だからこそ気になって仕方がない。

 

「やっぱり佳織ちゃんはISに関する、人には言えないような辛い過去があるのかもしれないわ。普通に調査をしても出てこないような部分で」

「トールギスの事と並行して調べていくしかありませんね」

「あれもあれでまた、謎が多すぎるISだものねー。想像以上に情報が少なすぎて、本家の方でも困り果ててるぐらいだし…」

「それだけの秘密がトールギスにはある…という事なのでしょうが…」

「どうして、そんな機体が佳織ちゃんに譲渡されたのか。そして…」

「一体誰が仲森さんに目を付けたのか…ですね」

「そいつこそが、佳織ちゃんをストーキングした挙句、IS学園に無理矢理に入れさせた人物。普通に考えても許せることじゃないわよね…!」

「はい。どんな事情があろうとも、何も知らない仲森さんを振り回していい理由にはなり得ません」

「守らなきゃね…絶対に」

「そうですね。もしかして、その為に仲森さんを生徒会に?」

「それもあるけど……」

 

 書類を置いてから、カップに残った紅茶を一気に飲み干し、目を細めながら優雅に笑った。

 

「佳織ちゃんに私も興味が出てきちゃったのよね……」

 

 それは、佳織も一夏も知らない物語。

 裏で繰り広げられる三つ目の話。

 

「お嬢様。分かってはいるとは思いますが、織斑君の件も忘れないでくださいね?」

「勿論よ(今、言われて思い出したとか絶対に言えない…)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




やっぱり入った生徒会。

だけど、それは同時に本音と更に仲を深めるフラグでもあるわけでして…。




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