私…生まれ変わったらモブキャラになりたいな(なれるとは言ってない)   作:とんこつラーメン

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今回は『彼女』とまさかの交流。

といっても、向こうから一方的になんですけどね。

どんな扱いになるかはまだ未定。











強引な人は苦手です

 生徒会室を後にした私は、そのまま布仏さんと一緒に少し早目の夕飯(ソースかつ丼)を食べてから、一緒に寮まで戻ってきたから中で別れて自分の部屋へと歩いていた。

 

(部屋に戻ったら、寝る前に少しだけ明日に備えての予習でもしておこうかな…)

 

 我ながら殊勝な事を考えながら廊下を進んでいくと、廊下と階段が交差している踊り場に設置してあるソファに誰かが顔を伏せた状態で座っているのが見えた。

 あの小柄な体に特徴的なツインテール…どこかで見た事がるような気がしたが、ここは敢えて無視した方がいいと私の妄想の中のDIO様が仰っていた。

 

(出来るだけ足音を消してから歩いて行こう…)

 

 歩行速度を落としてから、爪先からゆっくりと床に付き、踵を落としていく。

 これを繰り返していけば大丈夫な筈だ。そう思っていた。

 

「…ちょっと待ちなさいよ」

「!!?」

 

 ばれたッ!? この私のハイパーウルトラ気配消し消し走法がっ!?

 おのれ…何者だっ!? 新たなスタンド使いかッ!?

 

(いや…まだだ。まだ大丈夫だ。明確に私を指名している訳じゃない。ここは気が付かない振りをしてから乗り切ろう。だって、私以外にもこの場には他に誰かが…)

 

 そう思って視線を動かして周囲を確認したけど、まぁ見事に誰もいません。

 いつもは無駄に騒がしくしている癖に、どうしてこんな時に限って大人しいのよっ!

 

「待ちなさいって言ってるんだけど?」

(待てと言われて待つ奴はいないんですよ)

 

 私は早く部屋に戻ってからお勉強をしなくちゃいけないんだから。

 こんな所で時間を無駄にするわけにはいかないんですよ。

 

「無視するんじゃないわよ! そこの日本人形みたいな奴!」

 

 日本人形となっ!? 流石に初めて言われたわ!

 呪いの人形みたいとは言われたことあるけど!

 

「人がこんな場所で泣いてんのよ? 少しは慰めようとか思わないの?」

「いや…そんな事を言われても…」

「何よ?」

「…この場で初めて会った上に名前も知らない赤の他人に話しかけるとか普通に考えて有り得ないと言いますか……」

 

 というわけで、私はここらでさようなら―。

 

「あんたには人の心が無いわけ?」

「私の考えの方が普通だと思うんですけど? このご時世、一体何がどう自分の破滅に繋がるか分かったもんじゃないし。下手すると話しかけただけで『セクハラー!』って言われる可能性だってあるし」

「ンなわけないでしょうが! アンタにはあたしがそんな風に見えてるっていうのっ!?」

「見えてます」

「んなっ!?」

 

 見えるに決まってるでしょうが。原作の所業を見ていれば一目瞭然だわ。

 

「あんた…擦れてるわね」

「擦れてません。そちらの考えの方が私には異常に見えます」

「なんですって?」

「そもそも、私は聖人君子じゃないしスーパーヒーローでもありません。どこにでもいる一般人です。そちらの理想を勝手にこちらに押し付けないでくれませんか?」

 

 私はどこまで行っても私だ。それは絶対に変わらないし、変えるつもりも無い。

 その必要性が皆無だからね。

 

「この歪んでしまった世界で人間の善性とか正義感なんて下らない物を求めない方がいいですよ? 後で後悔するのは絶対に自分なんですから。という訳で、さようなら。名前も知らない誰かさん」

 

 本当は知ってるんだけどね。だけど、ここは知らない振りをしよう。

 なんか雰囲気に流されてらしくない変な事を言ってしまったが、とっとと忘れて自分の部屋に戻るのが吉でしょう。マチカネフクキタルもそう言ってる。

 ハッピーカムカム福よ来ーい。

 

「逃がさないわよ…」

「はへ?」

「そこまで言われて黙って言われるわけないじゃないの…! 絶対にあたしの話を聞いて貰うんだから!」

「なんでそうなるの?」

 

 そう言うと、彼女はいきなり立ち上がってからガシっと私の細い腕を掴んだ。

 

「ちょ…痛いんですけど?」

「あ…ゴメン。じゃなくて!」

「なんですか…」

 

 ちゃんと力を緩めてはくれたけど、離してはくれないのね…。

 

「アタシの話を聞いてくれないと、このまま部屋までついていくから」

「それを人は横暴と言う」

「なんとでも言いなさい。もう決めたんだから」

 

 全く…これだから原作ヒロインは自分勝手で嫌いなのよ!

 幾らこっちが近づかないように努力していても、向こうから強引に来られちゃ回避のしようが無いじゃない!

 おいこら原作主人公! こんな時ぐらい自慢のご都合主義でどうにかしてよ!

 

「離してください」

「いや。っていうか、あんた腕細すぎじゃない? ちゃんと食べてるの?」

「余計なお世話よ」

 

 なんとか力づくで離させようと試みるけど、全くビクともしない。

 ちくせう…代表候補生だからって偉そうにしやがって…!

 

「はーなーしーてー」

「いーや」

 

 あーもー! 誰か助けてー!

 この小さな暴君をどうにかしてー!

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

「ふーん。一番端の部屋なのね。しかも一人部屋?」

 

 結局、あの後も手を離してはくれず、部屋までついて来てしまった。

 はぁ…もう泣きそう…。

 

「…で、お茶とかは出してくれないの?」

「出すわけないでしょう。客でもないのに」

「ひどっ」

 

 酷くない。事実を言ってるだけ。

 なので私は悪くない。悪いのはあっち。

 

「そう言えば、まだ自己紹介をしてなかったわね。あたしは…」

「あぁ…別に言わなくてもいいですよ。別にそちらに興味なんてないんで」

「どうして、そこまで拒否すんのよ…」

「あんな言い方や態度をされれば、誰だって同じような事を思うと思うけど?」

「それは……」

 

 ドカッとベットに座ってから前に図書室から借りてきた『トネガワ先生の人生の勝ち方』のページを開く。

 かなりのベストセラーになってるらしいので、一度でいいから読んでみたかった。

 本当は勉強したいけど、彼女がいるんじゃしたくても出来ないし。

 

「…中国代表候補生の凰鈴音よ。今日、二組に転入してきたの」

「そうですか、そうですか。それは美味しそうねー」

「適当な反応をするんじゃないわよ!」

「はいはい」

 

 ちゃんと話を聞いてやってるんだから大人しく話だけをしててよね。

 私が返事をする必要なんてないじゃない。

 

「そっちは?」

「そっちとは?」

「名前よ。教えてよ」

「え。イヤですけど」

「なんでよッ!?」

「覚えられたくないから」

 

 そして、これ以上の関係になりたくないから。

 ここで徹底的に嫌われれば、これ以上の接近は無いでしょう。

 

「教えてくれないと、今日はここに泊まるからね」

「はぁ…分かったわよ」

 

 今思ったけど、この事を後で織斑先生に報告しておけば万事解決なのでは?

 あの人って割と信賞必罰を体現しているような性格してるし。

 よし。そうと決まれば明日にでも絶対に報告しておこう。

 

「寿限無、寿限無、後光の擦り切れ、海砂利水魚の水行末・雲来末・風来末、食う寝る処に住む処、藪ら柑子の藪柑子、パイポ・パイポ・パイポのシューリンガン、シューリンガンのグーリンダイ、グーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの長久命の長助よ」

「長すぎるわよ!! というか、それって絶対に本名じゃないでしょうが! ふざけてんのッ!?」

「私の部屋で私がふざけて何が悪いの?」

「あんたねぇ…!」

 

 なんか眉間に皺が寄ってるわねぇ。

 そんなに怒っちゃ折角のお顔が台無しになるわよ?

 

「寿限無寿限無ウンコ投げ機一昨日の新ちゃんのパンツ新八の人生バルムンク=フェザリオンアイザック=シュナイダー三分の一の純情な感情の残った三分の二は坂向けが気になる感情裏切りは僕の名前を知っているようでしらないのを僕はしっている留守スルメめだかかずのここえだめめだか…このめだかはさっきとは違う奴だから池乃めだかの方だからラー油ゆうていみやおうきむこうぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺおあとがよろしいようでこれにておしまいビチグソ丸…よ」

「さっき以上に長くなってるから!! というか、完全に銀魂ネタになってるし!! よく全文覚えてたわねっ!? 逆に凄いわ!」

「中学時代に頑張ったから」

「どんな中学に通ってたら、そんなことになるのよ…」

「それは秘密。言う義理も義務も無いから」

「却って気になるわよ…」

 

 しまった。乙女の好奇心を甘く見ていた。

 かおりん一生の不覚。

 

「別に私に名前なんてどうでもいいじゃない。とっとと話したい事を話してから出て行って。邪魔だから」

「わ…分かったわよ…。こうなったら、思い切り愚痴を吐いてやるんだから!」

 

 はい、ここで密かに耳に仕込んでおいたワイヤレスイヤホンが真価を発揮する。

 彼女に見えない角度でスマホを操作して…ポチッとな。

 聞きたくない言葉はデスメタルで聞こえなくしてやるのぜい。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 なんだか気が削がれかけたけど、ついさっきまでの一夏達とのやり取りに関する愚痴を一気に大爆発させた。

 今は兎に角、誰でもいいから話を聞いてほしかったから。

 

「それで、あいつなんて言ったと思う? 『料理が出来るようになったら俺にメシを御馳走してくれるって約束だろ?』って! ふざけんじゃないわよ! 何をどう解釈したら、そんな考えに至るってのよっ!!」

「…………」

 

 目の前にいる名前も知らない子は、否定も肯定も共感もせずに黙って聞きながら本を読んでいる。

 反応が無いのは、まるで壁に話しているようで気味が悪いが、余計な横やりを入れられるよりはずっとマシだと思って話を続ける。

 

「あたしは…ずっとずっと…アイツにまた会える日を楽しみにしてたのに…それなのに…こんなのってないわよ…! しかも、いつの間にか知らない女の子たちまで侍らせてて…信じらんない!!」

「…………」

 

 またもや無反応。だけどもう、私の愚痴は止まらない。

 

「あたし…なんで頑張ってたんだろ…。もう分からなくなっちゃった…」

「…………」

「はぁ……」

 

 もう溜息しか出てこない。

 もしかして、これまでの事は全て独り相撲だったのかもしれない。

 自分の都合のいいように勝手に解釈して、向こうも約束を覚えてくれていると勝手に思い込んで……。

 

「日本に来るのも結構苦労したのに…どうしてこんな事になっちゃうのよ…もう…」

「…………」

 

 こっちが何を言っても無反応。

 あれだけ嫌がっていれば当たり前…か。

 

(…言いたい事を言い終えたら急に罪悪感が湧いてきたわね…)

 

 幾ら自棄になっていたとはいえ、この子には物凄く悪い事をしちゃった気がする…。

 多分、相当に嫌われてるわね…あたし。

 あ~…もう!! なんでこうも上手くいかないのよ!!

 一夏に約束は忘れられるわ! いつの間にか別の女の子が傍にいるわ!

 …知らない女の子に迷惑を掛けてしまうわ…マジ最低…。

 

「話…黙って聞いてくれてありがと。それと…ごめん。あんたには本当に悪い事をしたわね…。このお礼…というか、詫びは絶対にするから。それじゃ…おやすみ。今度はちゃんと名前を教えてよね…」

「…………」

 

 結局、最後まで全く反応は返ってこなかったが、今はそれでいいような気がした。

 それだけの事をしてしまったわけだし、そうされても当然だ。

 一夏の件ではスッキリしたけど、今度は完全に自業自得な事でモヤモヤしてしまった。

 

 明日からはちゃんと頑張らないとな……。

 

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

「……あれ?」

 

 あれ? なんかいつの間にかいなくなってる? 

 音楽を聞きながら本に夢中になっていたとはいえ、全く気が付かなかった。

 イヤホンを取りながら周囲を見渡すと、視界の外にいる気配も無い。

 完全に部屋から出て行ったようだ。

 

「はぁ……やっと終わったか」

 

 話の内容はなんとなく想像は出来るが、私は赤の他人の惚気話を聞かされて正気でいられるほどに上等な人間じゃない。

 聞きたくない話には蓋をする。それが私だ覚えとけ。

 

「もうこれ以上、原作ヒロインと接触するのはこりごりなのよね…」

 

 更識先輩と毎日に渡って会う可能性が生まれてしまっただけでも普通にしんどいのに、この上で更に厄介この上ない相手とまで関わりを持ってしまったら、私のメンタルが耐えられない。

 このままだと、本当にいつの日か織斑先生とかに泣きついてしまうかもしれない。

 

「…それはそれとして…っと」

 

 スマホを手に取ってからピポパってね。

 掛けようとしているのは織斑先生。

 一体いつ番号交換したとかは内緒。

 本当は明日にしようかと思ったけど、よくよく考えたら電話で報告すればいいじゃない。

 今は休んでいるかもしれないけど、時間的にはまだ大丈夫だと信じたい。

 

「もしもし? 織斑先生ですか?」

『仲森か? こんな時間にどうした?』

「実はですね…」

 

 私はついさっきまであった事を話した。

 すると、先生は受話器越しでも分かるぐらいに大きな溜息を吐きだしていた。

 

『はぁ~…本当にすまん。あいつには明日にでも私から言って聞かせておく。二組の担任である榊原先生にも報告をしておかねばな…』

「そうしてくれると助かります。じゃないと、勉強する時間すら無くなってしまいますから。本当は今日だって、明日の予習でもしておこうと思ってたのに…」

『…仲森は偉いなぁ…。一夏にお前の爪の垢を煎じて飲ませてやりたいよ…』

「割と普通にイヤです」

『冗談だ。真に受けるな』

 

 冗談に聞こえないから怖いんですよ。

 

『兎に角、凰の事に関しては私と榊原先生に任せておけ。それと、前にも言ったが何か勉強で分からない事があれば遠慮なく尋ねてこい。必要ならば放課後に補習を行ってもいい』

「ありがとうございます。いざって時はそうさせて貰います」

『では、また明日な。おやすみ』

「はい。おやすみななさい」

 

 通話を切ってから一息。

 やっぱり、頼りになる大人が傍にいるだけで安心感が違いますなぁ。

 

「…なんかもう疲れたし、今日はもうパパッと体を流してから寝よう」

 

 その後、私は適当にシャワーを浴びてからぐっすりと寝たのでした。

 おやすみなさい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




書いてる途中で鈴ちゃんがヒロイン候補に名乗りを上げそうなエピソードが生まれかけました。

割とマジでどうしよう…。



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