私…生まれ変わったらモブキャラになりたいな(なれるとは言ってない)   作:とんこつラーメン

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この作品の中で最重要と言っても過言じゃないクラス対抗戦。

ここから主人公に対する勘違いが一気に加速します。

そして、対抗戦終了と同時にアンケートも終了します。

ここまで拮抗したアンケートって始めて見ました…。






混乱の最中で

 はーい。私が全く待っていなかったクラス対抗戦がはーじまーるよー。

 

 何度も言ったけど、本当にここにだけは来たくは無かった。

 アリーナに向かう直前に今の自分が生徒会役員であることを思い出して、一縷の望みを託してから更識先輩の元へと向かった…のだけれども…。

 

『別に手伝ってくれなくても大丈夫よ。大凡の事は先生達がやってくれてるし、まだ一年生の貴女達に大きな仕事は任せられないしね。だから、今日は一人の生徒としてイベントを満喫してきなさいな。本音ちゃんの事、よろしくね?』

 

 …なんて事を言われてしまった。

 戦力外通告を受ける事に関しては全く気にしてはいない。

 実際、私なんて全く役に立たない事は自分自身が誰よりもよく理解しているし、一年生にイベントの管理の一端を任せるなんて私でもやらせたくない。

 なので、先輩の言い分は非常に正しいし納得出来る。

 結局、私は布仏さんと一緒に対抗戦の一年生の部が開催される第二アリーナの観客席に座っていた。

 

「おりむーとりんりん、何か話してるねー」

「みたいね。いつも思うんだけど、あんな風に高速移動をしながら喋ったりして、よく舌を噛まないわよね」

 

 私が同じことをしたら、舌や唇なんかを噛みまくりそうな気がする。

 ISから降りたら口の中が血だらけになってそう。

 

「「あ」」

 

 さっきまではお互いに剣を使って戦ってたのに、織斑君が距離を取った途端に何かにぶっ飛ばされた。

 

「なんだろーねー」

「さぁ……」

 

 なんて誤魔化したけど、あれは微妙に記憶にある。

 凰さんの専用機に搭載されてる中距離戦の武装で、名前は確か…衝撃砲…だったっけ?

 詳しい原理とかは完全に忘れたけど、空気砲みたいな感じだった気がする。

 距離も威力も微妙だけど、見えないってアドバンテージがあるんだよね。

 看破しようと思えば、幾らでも方法はあるんだけど。

 そこら辺が少しだけ可哀想。

 

「完全に動揺してるね。見えない攻撃を当てられてるんだから無理も無いけど」

「おりむー…大丈夫かなー?」

「大丈夫なんじゃないの? 知らないけど」

 

 彼には『御都合主義』という最強の加護があるからね。

 主人公は絶対に負けないのだ。

 

「微妙ではあるけど、徐々に目が慣れてきたみたい。なんか回避率が上昇してきてる気がする」

「みたいだねー。さっきよりも被弾が減ってきてるねー」

 

 多分、観客の皆はこう思っているだろう。

『もしかしたら、もしかするのか?』…と。

 ところがぎっちょん。

 そうは問屋が卸さないんだよ。主に天災な兎さんがね。

 

「うぅ……」

「かおりん、大丈夫?」

「うん…来る前にちゃんと胃薬を飲んだんだけど……」

 

 なんとか耐えてたけど、流石に限界が来たかもしれない。

 ストレスでずっと胃が痛かったんだけど布仏さんの手前、頑張って我慢をしてました。

 

「ちょっとおトイレに行ってくるね…」

「分かった。気を付けてね」

「うん。ありがとう」

 

 この状況で布仏さんの傍を離れるのは不安しかないけど、今は背に腹には代えられない!

 私のお腹はもう限界だ!!

 目指すはアリーナの廊下にある女子トイレ!

 一刻も早く行くべし!!

 

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 ジャー……。

 

「ふぅ……危機一髪。助かった……」

 

 決壊寸前だった私のお腹は、寸前の所で無事に中身の摘出に成功しました。

 これにて一件落着。第三部完!

 

「…なんだろ? 外が騒がしいような気が……」

 

 私がトイレの個室で孤独な死闘を繰り広げていた最中に何が起こったというの?

 考えられる可能性は二つ。

 一つは試合が盛り上がって観客が物凄く盛り上がって歓声がここまで響いている。

 もう一つは、原作通りに無人機が乱入して来てアリーナ全体が大パニックしている。

 一番望ましいのは一番目の選択肢だけど、そうじゃないんだろうなぁ…。

 

「念の為、そーっと覗くように扉を開いて…っと…」

 

 顔を半分だけ出してから廊下の様子を確認すると、そこには案の定な光景が広がっていた。

 

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」

「そこどきなさいよ! 私が先よ!!」

「ちょ…後ろから押さないでよ!!」

「なんなのよぉぉぉぉぉぉぉぉっっ!!」

 

 すぐに扉を閉めてからトイレに戻った。

 

「…めっちゃ混乱状態じゃない。完全に阿鼻叫喚モードになってるじゃない…」

 

 間違いない。無人機がやって来たんだ。

 じゃなきゃ説明が付かない。

 

「どうしよう…私も早く避難をしないといけないだろうけど…こんな状態じゃ下手に出て行ったが最後、確実に人の波に押し潰されてアウトだよ…」

 

 暫くの間、トイレの中でジッとしていた方がいいのかもしれない。

 そんな事を考えていると、ポケットの中に入れているスマホに着信が入ってきた。

 

「こんな時に一体誰が…更識先輩?」

 

 急いで電話に出ると、あの人にしては珍しく焦燥に駆られた声が聞こえてきた。

 

『あ…出た! 佳織ちゃん無事ッ!? 今どこにいるのっ!?』

「わ…私なら無事です。今はアリーナ内にある女子トイレにいます」

『そう…良かったわ。さっき本音ちゃんに連絡をしたら、佳織ちゃんと一緒じゃないって聞いて慌てて電話をしたの』

「そ…そうだったんですね」

 

 私よりも先に布仏さんの方に連絡をしたって事は、少なくとも彼女は無事って事でいいんだよね?

 

「い…一体何が起きてるんですか? ちょっとだけトイレのドアから廊下の様子を見ましたけど、凄い事になってて…」

『私もまだ詳しい事は把握してないんだけど、どうも織斑君と凰さんとの試合中にいきなり上空から謎の黒いISがアリーナのシールドバリアーを破壊をして落下してきたのよ。で、今は二人が皆の避難までの時間を稼ぐ為に戦ってるわ』

 

 見事なまでに原作通り…か。

 知ってはいたけど、やっぱり実際に遭遇すると恐怖で手が震える。

 両手でスマホを支えてないと、今にも落としてしまいそうだ。

 

『取り敢えず、事態が落ち着くまではトイレで待機してて。見て分かったと思うけど、下手に出ると却って危険よ』

「は…はい。分かりました」

『私は虚ちゃんや先生達と一緒に避難誘導をしているから。本当は二人に加勢をしたいんだけど……』

「…先輩は先輩がするべき事をしてください。あの二人ならきっと大丈夫ですよ」

 

 だって、原作でもなんとかしてるし。

 

『…そうね。佳織ちゃんの言う通りだわ。生徒会長として、偶には後輩を信じてあげる事も大事よね』

 

 なんか都合のいいように解釈してくれたけど、今は緊急事態だから何も言わない。

 

『そろそろ切るわね。くれぐれも、そこから出ないようにね!』

 

 あ…本当に切れた。

 私もここにいた方が一番いいとは思うから異論はないんだけど。

 

「ま…また掛かってきた。今度は…布仏さんからだ」

 

 急いで出ると、布仏さんの慌てている声が受話器から聞こえてきた。

 更識先輩が彼女に連絡をしてから若干の時間が空いていたから心配だったけど、こうして通話が出来るってことは今はまだ無事って事でいいんだよね?

 

『か…かおりんっ!? 大丈夫ッ!? まだトイレにいるのッ!?』

「う…うん。私なら大丈夫だよ。布仏さんの方こそ大丈夫?」

『こっちは今から避難をするところだよ! 凄く混雑してて、出たくても出られないの!』

「そうでしょうね……」

 

 アリーナの混乱具合は、ここでも十分過ぎるぐらいに確認できたしね。

 廊下でこれなら、無人機を間近で見た観客席は推して知るべし状態になってて当然か。

 

「さっき更識先輩とも電話で話して、暫くはここでジッとしているようにって言われた」

『そうなんだ…』

「だ…だから、布仏さんは私に構わないで急いで避難して」

『うん! 絶対にまた後で会おうね! 約束だよ!』

「分かった。約束」

『それじゃあね!』

 

 通話が切れ、またもやトイレの中が静寂に包まれた。

 布仏さんの無事が確認できたことは大きいけど、まだまだピンチなことには変わりはない。

 

「……あれ? そういえば、急に静かになったような…?」

 

 もう皆、避難し終えたの?

 そう思って、確認の意味も込めて警戒しながらそっと扉を開ける。

 すると……。

 

「……え?」

 

 真っ黒な巨体を持つナニかの赤い目と視線があった。

 冗談抜きで血の気が引いた。

 

「…………」

 

 一瞬だけ体が固まった。

 状況が本気で飲み込めなかったから。

 

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」

 

 何も考えられず、なんでか私は扉を閉めて後ろに下がるよりも隙間から転がるようにして廊下に出た!

 怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖いっ!!

 どうしてコイツがここにいるのッ!?

 ステージで織斑君や凰さんと戦ってる筈じゃなかったのッ!?

 

 背後で何かが壊されたような大きな音が聞こえてきたから反射的に降り向くと、そこには巨大な鋼鉄の拳の一撃で粉々に破壊されたトイレの扉があった。

 

(も…もしも、あのままトイレの中に戻ってたら…確実に殺されてたっ!?)

 

 ガチガチと恐怖で歯を震わせていると、何か巨大な物がゆっくりと下がるような音が聞こえてきた。

 またもや反射的に音がした方を振り向くと、廊下と廊下の境目を遮断しようとしている巨大な壁が降りてきていた。

 その時、突如として私の頭の中にとある原作知識が思い出された。

 

(そういえば…無人機襲来の時、アリーナの隔壁が降りてきてたような気が…)

 

 ということは、このままジッとしてたら確実に閉じ込められるッ!?

 そうしたら最後、絶対にこの無人機に殺されるッ!!

 

(で…出なきゃっ! 急いでここから離れなきゃっ!!)

 

 こんな所でこんな奴と二人っきりなんて死んでも御免よっ!

 私は震える体を必死に起こしてから、今の自分に出来る最大の力で閉まろうとしている隔壁に向かって走る!

 幾ら無人機だと言っても、ここに閉じ込めてしまえば!

 

「間に合ってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」

 

 最後の僅かな隙間に滑り込むようにしてから入って、スライディングをしながら超ギリギリのところで隔壁の向こう側へと移動することに成功した。

 思い切り倒れたから制服のお腹の部分が汚れたけど、そんな些細なことを気にしている場合じゃない。

 どうして無人機が私の目の前にいたのかは後で考えるとして、今は兎に角、更識先輩と合流するのが先決だ。

 あの人さえいればきっとなんとか……。

 

 なんて呑気な事を考えていた私の後ろで、何かがゴンゴンと隔壁を叩く音が。

 

「びにゃぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁっっ!!?」

 

 慌てて後ろを振り向くと、隔壁が徐々に歪んでいき、数秒も経たない内に真ん中辺りから真っ黒な拳が突き抜けてきた。

 そこを起点にして黒い指が隔壁に開いた穴を広げていく。

 私が尻餅をついたまま後ずさりをしていると、穴は無人機の体がギリギリと通れるぐらいにまで大きくなって、当然のようにそこから這い出てきた。

 

「こ…来ないで…来ないでよ…! 私が何をしたって言うの…!」

 

 完全に詰み。

 死の一文字が頭を過る。

 これで終わり。終焉。

 元の日常に戻れないまま、私は死ぬんだ。

 

「い…いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!! 死にたくない!! 死にたくないよぉぉぉぉぉぉっ!! 誰か助けてぇぇぇぇっ!! 先せぇぇぇぇぇぇっ!! せんぱいぃぃぃぃぃぃぃっ!! 布仏さぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!!」

 

 黒く巨大な鋼鉄の死神がゆっくりと近づいてくる中、完全に頭の中がグシャグシャになって泣き叫ぶ。

 どうして、こうなっちゃったの?

 私…きっと気付かない所で悪い事をしちゃったんだ。

 それで罰が当たったんだ。

 いるだけで迷惑な転生者は絶対に死ぬ運命なんだ。

 もう…いいや。

 ごめんね…布仏さん…約束…守れないや……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『操縦者の生命の危機を感知。トールギスを緊急展開します(CV子安武人)』

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回、トールギス起動。





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