私…生まれ変わったらモブキャラになりたいな(なれるとは言ってない)   作:とんこつラーメン

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原初こそが最強にして頂点にして究極。

それを証明しに行こう。











ライトニング・カウント(前編)

 完全に死を覚悟して全てに絶望した佳織の体を、眩い光が包み込んでいく。

 生物ではない無人機には目暗ましにもなりはしないが、それでもこんな数秒の間だけ動きが止まる。

 

 アリーナにて一夏や鈴が交戦している無人機には、身動きしていない相手に反応しないという奇妙な特性があるのだが、佳織を狙って襲撃してきたこの機体に限ってはそれは無い。

 仲森佳織の生体反応を検知し、どこまでもそれを追跡するというプログラムが組み込まれているのだ。

 最も、極限の混乱に陥っていた佳織はその事を完全に忘れていたが。

 

「………!?」

 

 光が収束した途端、無人機のカメラアイに真っ黒な銃口がドアップで映し出される。

 これは一体何なのか。どこから出てきた物なのか。対象はどうしたのか。

 そんな事を分析しようとした瞬間、銃口の奥から光が放たれる。

 徐々に光は強くなり、やがて……。

 

「!!!!!」

 

 凄まじい咆哮と共に圧倒的かつ超絶的なビームの砲撃が放たれ、無人機の上半身を文字通り跡形も無く消し飛ばした。

 巨大なビームは既に閉じていた観客席と廊下を貫通し、そのまま観客席を覆っていたシールドバリアーをも易々と破壊する。

 その威力はまさに規格外。

 細い銃身からは想像すら出来ない程に強大な一撃だった。

 

 銃身からは煙が立ち上り、その後ろには緑色に怪しく光るセンサーアイが光る。

 ゆっくりと立ち上がった全身を鋼鉄に包んだ純白のISは、無残にも下半身だけとなってしまった先程まで自らの命を狙っていた漆黒の刺客の残骸を持って、アリーナへと空いた穴へと進んでいった。

 

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 第二アリーナ管制室。

 そこでは真耶が機器を操作しながらアリーナ全体の様子を探り、千冬が各種カメラを見ながら指示を出していた。

 

「織斑君と凰さん、苦戦しています!」

「ちっ…! 三年のシステムクラックはまだ終わらないのかッ!?」

「そちらも苦戦しているみたいですね…」

「一夏さん…鈴さん…!」

 

 画面の向こうでは、一夏と鈴の二人が謎の黒いISと交戦していて、その様子をセシリアが心配そうに見守っていた。

 本当ならば今すぐにでも現場に駆け付けたいが、アリーナの扉が全て強制遮断された状態では行きたくても行けない。

 三年生たちがどうにかして扉を開けてくれるのを待つしか出来ないのだ。

 

「あ…あら…? そういえば、箒さんは一体どこに…?」

 

 いつの間にか姿を消していた箒を捜すセシリアだったが、すぐにそんな事が気にならなくなる程に事態が急変する。

 その事に一番早く気が付いたのは、アリーナの各種センサーを操っていた真耶だった。

 

「こ…これはっ!?」

「どうしたっ!?」

「あの謎のISと同じ反応がもう一体! 恐らくはステルスで隠れ潜んでいたものかと……」

「なんだとっ!? 場所はどこだっ!?」

「これは…Bブロックの廊下にあるトイレ付近です!」

「トイレ付近だとっ!? そこには確か……まさかっ!?」

 

 千冬は頭の中で最悪の想像をしてしまった。

 つい先程、他の教師たちと一緒に生徒の避難誘導をしていた楯無から連絡を貰い、諸々の事を聞いていたのだ。

 そこで彼女はある事を教えて貰っていた。

 現在、佳織がトイレの中で一人隠れ潜んでいると。

 どうやら、トイレに行っている間に今回の事態に巻き込まれてしまったようで、そのまま出るに出られない状態に陥ってしまったのではないかと言うのが楯無の見解だった。

 

「まさか…仲森を狙っているのかッ!?」

「な…仲森さんをっ!?」

「理由は分からんが、そうとしか考えられん!!」

 

 一夏達の交戦する音で分かりにくいが、もう一体の反応があった付近で何かの破壊音がして、謎の機体が暴れているのが一発で分かる。

 

「くそ…最悪だ…!」

 

 佳織は確かに専用機を持ってはいるが、本人はISに乗る事を怖がっている上に、碌に搭乗訓練すらもしたことが無い素人中の素人だ。

 戦力として期待するのは余りにも酷すぎる。

 現状、彼女は何の力も無い一般生徒と大差ないのだ。

 

「まだ扉は閉まったまま…織斑君達も苦戦を強いられていますし…!」

「更識を向かわせたいところだが…まだ完全に避難が完了していない以上、あの場からは離れられない…!」

 

 万事休す。

 この状況をどうにかする方法が全く思いつかない。

 一夏達が今すぐにでも謎の機体を撃破して、その後に佳織の救助に行ってくれるのが一番の理想なのだが、現実はその甘い考えを真っ向から否定してくる。

 

「…オルコット」

「は…はい!」

「貴様のISのレーザーライフルを最大出力にすれば、アリーナの扉ぐらいは破壊できるな?」

「勿論ですわ!」

「…責任は私が全て取る。緊急事態故に特別にISの展開を許可する。今すぐにBブロックのトイレ付近まで急ぎ仲森を救出しろ!」

「い…一夏さんたちの援護に行くのではないのですかっ!?」

「馬鹿者が!! 貴様も代表候補生ならば優先順位を間違えるなっ!! アイツ等はISを纏っている限り死ぬことは無い! だが仲森は違う!! 全く同じ物に生身の状態で狙われているんだぞ!! 一歩間違えば確実に死ぬ!! 貴様はクラスメイトを見殺しにする気かッ!?」

 

 これまでに一度も見た事が無い程の鬼気迫る表情に怒号。

 それ程までに千冬が焦っているという証拠でもあった。

 

「もしこの場にISがあれば、貴様に頼らずに私が直に行っている。だが、生憎と格納庫への扉すらも閉じてしまっている。だから、お前に頼むしかないんだ!!」

「わ…分かりましたわ。余り気のりはしませんが…行きます」

「それでいい。今、目的地までの最短ルートを検索して…」

 

 その時だった。

 突如、反応があった所から巨大なビーム射撃が放出され、その威力で閉じていた扉どころかアリーナのシールドバリアーすらも貫通したのだ。

 

「い…今のは…まさか…!」

 

 遅かったのか。

 そう言いかけた千冬だったが、明らかに普通じゃない真耶の顔を見てから言うのを止めた。

 

「こ…この反応は…まさか…!」

「ど…どうした?」

「型式照合…間違いありません!」

 

 ビームが発射された場所から悠然と出現したのは、千冬も真耶もよく知っている全身が真っ白に染まったISだった。

 

「ト…トールギスです!!」

「そんな馬鹿なッ!?」

 

 あれだけ乗るのを嫌がっていたISに佳織が乗っている。

 幾ら緊急事態とはいえ、それが信じられなかった。

 千冬は知っている。自分の腕の中で『怖い』と言いながら体を震わせ泣いていた佳織の姿を。

 

「…くそっ!!」

 

 思わず近くにあった壁を殴る。

 その拳から血が出ても全く構う事無く。

 

(私は誓った筈だ…! ISの…大人の理不尽の犠牲となった仲森を必ず守ると!! それなのに!! それなのに私は!! 結局はあいつをISに乗せてしまっている!! 私は…私が憎い…!!)

 

 久し振りに己の無力さに心の底から腹が立っている。

 どうして自分はいつもいつも、肝心な時に限って何も出来ないのか。

 第二回モンドグロッソの時も。今回の事も。

 どれだけ悔やんでも悔やみきれない。

 

「…さっきのビームは…トールギスから放たれた物なのか…?」

「恐らくは…。謎の機体が放っているビームとは色が違いますから…」

「アリーナのバリアすらも簡単に破壊する程の威力…! 委員会の馬鹿どもは、仲森にとんでもない機体を与えたようだな…!」

 

 平穏を望む少女には明らかに過剰すぎる力。

 委員会の身勝手さに本気で腹が立つ。

 

 一方、全く状況が飲み込めないでいるセシリアは、思わずモニターを見て叫んだ。

 

「あ…あの機体が動きますわ!」

 

 ビームにて赤熱化した扉から出てきたトールギスは、その左手に何か残骸のような物を抱えていた。

 最初はそれが何なのかよく分からなかったが、真耶の分析によってすぐに判明する。

 

「あの手に持っている物は…あの機体の残骸…?」

「ま…待ってくださいまし! 一夏さん達が未だに攻めあぐねている程の者と同じ相手を一撃で倒したというんですのッ!? しかも、あの感じはまるで…」

「下半身だけになっているにも拘らず…血が一滴も滴っていない…。それどころか、至る所からコードやら部品やらが露出している…まさかあれはっ!?」

「無人のIS…! そんな物が存在するなんて…!」

 

 誰もが一度は夢想し、実行に出来ないでいた次世代の産物。

 それが目の前に実在し、無力と思われていた教え子によって撃破されている。

 余りにも現実味のない光景に、誰もが言葉を失った。

 

「ということは、一夏さん達が戦っているISも無人なんですのッ!?」

「その可能性が高いですね。それならば、あの無茶苦茶な動きや性能も納得できます」

 

 無人機最大の長所は、有人機の時のような機体の安全性を全く考慮しなくていい点と、コックピットの分だけスペースが空くので、その部分に追加で色々と載せる事が出来る点だ。

 これが超一流相手ならば、そのような要素はハンデにすら値しないが、まだまだ発展途上にいる一夏と鈴にとってはこれ以上ない程に強大な相手となっていた。

 

「トールギスが腰を低くして…もしかしてっ!」

「ステージまで飛ぶ気かっ!?」

 

 トールギスの背部にある巨大なバックパックの左右が展開し、そこから更に上下に装甲が開く。

 そこからは二対三基の巨大なブースターが出てきた。

 

「仲森…頼む…! 無茶だけはしないでくれ…!」

 

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 アリーナのステージ内にて謎の機体もとい無人機と交戦中の一夏と鈴の二人。

 だが、突如として放たれた巨大なビームに目が行って動きを止めてしまった。

 

「な…なんだっ!?」

「今のって…ビーム攻撃ッ!? 一体どこからっ!?」

 

 急いでビームが発射された場所を探す二人。

 その間、動きを止めてしまっているので無人機もその機能に従って動きを止めていた。

 

「お…おい鈴! あそこっ!!」

「白い…IS…?」

 

 一夏が指さした場所には、哀れな姿となった無人機を抱えたトールギスが悠然と立っていた。

 その姿はまさしく敵を討ち取った騎士の如く。

 

「何よ…あれ…!」

「なぁ…アイツ、なんか持ってないか?」

「え?」

 

 トールギスが持っていたのは、二人が戦っている相手に似ている残骸。

 下半身だけにはなっているが、実際に戦っている二人にはすぐに分かった。

 

「まさか…あいつが倒したって言うの…?」

「俺達が二人がかりでもまだ倒せてない奴を…たった一人で…?」

 

 驚いている間に、トールギスは腰を低くしてからの飛行体勢に入る。

 巨大なバックパックが展開し、ブースターに火が点く。

 

「く…来るわよっ!」

 

 鈴が叫んだ瞬間、トールギスは最大出力でステージへと向かって突っ込んできた!

 通常ならば観客席を覆っているバリアによって阻まれるところだが、つい先程のビームの一撃によって空いた穴から出ようとしているので問題は無い。

 それよりも驚くべきなのは、その信じられないような速度にあった。

 

「は…速すぎるッ!? 何なのよアレはッ!?」

 

 そう叫んでいる間にトールギスは一夏達の真上…即ちステージ上空に到着していた。

 トールギスが発進してから一秒も経過していない。

 

「こ…こっちに来るぞっ!」

「なんか肩にある大砲みたいのを向けてる…? そうか!」

 

 何かを察したのか、鈴はすぐに一夏へと向けて警告をする。

 

「一夏! そこでジッとしてなさい! 絶対に動くんじゃないわよっ!」

「何言ってんだっ! 避けなきゃ当たっちまうだろっ!」

「いいから言う事を聞きなさい!」

 

 言われた通りにジッとしていると、トールギスは超高速飛行をしながら主武装であるドーバーガンを無人機へと向ける。

 その際、ちゃんとカートリッジを交換する事も忘れない。

 無人機も自分が狙われている事を瞬時に察して回避行動をしようとするが、それよりもトールギスが引き金を引くのが早かった。

 

「う…撃ってきた!…けど、こっちを狙ってない…?」

「やっぱりね…!」

 

 その場でジッとしている一夏と鈴の間を縫うようにして器用にドーバーガンの実弾を連射する。

 あくまで牽制のつもりなのか、無人機のは殆ど命中してはおらず、何発かが腕部や脚部に当たっただけだ。

 だが、まるで雨霰のように降り注ぐ弾幕に無人機は上手く動く事が出来ずに立ち往生してしまう。

 その隙を狙い、さっきからずっと左手に抱えていた残骸を全力で投擲した!

 

「「な…投げたッ!?」」

 

 普段ならば容易に避けられる鉄の塊の投擲であるにも拘らず、牽制攻撃によって一瞬だけ反応が遅れた結果、その一撃を真正面から受けてしまうことに。

 

 その大き過ぎる隙を見逃す筈も無く、円形のシールド内に格納されているビームサーベルの柄を握りしめながら突貫。

 一瞬でよろめいている無人機の懐へと潜り込み、まるで居合斬りのようにすれ違いざまに一閃。

 光の刃が煌めき、刹那の瞬きの間に無人機の両腕が切断された。

 

「い…一瞬で…!?」

「攻撃する瞬間が全く見えなかった…!?」

 

 それは紛う事無き絶技。

 ISのハイパーセンサーを以てしても捉えられない程の速度の剣技だった。

 

 両腕を斬り飛ばされよろめいた無人機の背後で、トールギスは右手に握っていたビームサーベルを盾の中へと戻しながら流れるような動作で再びドーバーガンを握りしめる。

 その銃口は無人機の背中に向けられ、最初の時と同じようにビームの光が収束していく。

 それを見た鈴は、今度はさっきとは真逆の事を叫んだ。

 

「これは…! 一夏!! 早くここから離れるわよ!!」

「それは流石に分かる!」

 

 一夏にもビームが集まっているのが見えたのか、二人は残ったエネルギーを全部出す勢いで、その場から離れた。

 

 まるで二人が離れたのを確認したようなタイミングで、トールギスはそのトリガーを引いた。

 

「!!!???」

 

 別の任務を与えられた同胞と同じように、アリーナにて猛威を振るっていた無人機はドーバーガンのビームの一撃の前に下半身だけを残したまま跡形も無く消し飛んだ。

 そのビームの威力は相変わらず凄まじく、無人機を屠った後も前進を止めず、そのままアリーナの天井を覆っていたシールドバリアーを破壊してから青空の向こうへと消えていった。

 

「お…終わった…の…?」

「そうみたい…だな…」

 

 正直、今回の一番の当事者である一夏と鈴の二人には本当に何が起きているのか分らなかった。

 試合をしていたと思ったら、いきなり謎の機体が現れて襲撃を受け、それを応戦していたら今度はまた別の謎の機体が出現、呆気なく敵を倒してしまった。

 

「ま…まさか、今度は俺達とか言わないよな…?」

「そうならない事を祈りたいけどね…」

 

 無人機を撃破してからトールギスは自分が出てきた場所をじっと見つめている。

 こちらなど全く眼中には無いといった風に。

 

 一体どうすればいいのか考えていると、いきなり二人に向けて千冬からプライベートチャンネルが送られてきた。

 

『お前達、無事かッ!?』

「ち…千冬姉ッ!?」

「こっちなら大丈夫です。それよりも……」

『分かっている。心配するな。あの機体は味方だ』

「「味方…?」」

 

 二人が疑問に感じていると、トールギスは徐に飛び上がって自分が出てきた穴へと戻って行く。

 今度はそこまで速度を出していないようだが、それでも並のISよりも桁違いのスピードを出していた。

 

『ま…待ってくれ! もう大丈夫だ! 仲森っ!!』

「な…仲森って…もしかして仲森さんなのかッ!?」

「嘘でしょ…? なんで佳織があんなのに乗ってるのよッ!?」

 

 二人の疑問に答えることなく、トールギスは自分が来た場所へと姿を消した。

 勿論、それを見て何も行動をしない二人ではなく。

 

「一夏、行くわよっ!」

「あぁっ! 仲森さんに色々と聞かないと!」

 

 まだISが動くことを確認してから、二人はトールギスを追い駆けてアリーナに開いた穴へと飛び込んでいった。

 その中で目撃したのは……。

 

「はぅぅ……お鼻ぶつけた……」

 

 鼻血を出しながら鼻を押さえ、床に女の子座りをした状態で目尻に涙を溜めている佳織の姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  




次回は今回の舞台裏。

何がどうして今回のようになったのか。



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