私…生まれ変わったらモブキャラになりたいな(なれるとは言ってない)   作:とんこつラーメン

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今回は勘違いを促進させる…かも知れない説明会&兎さん視点。

彼女は何を思って行動したのか?









もう一つの白騎士

 クラス対抗戦中に突如として発生した『無人機乱入事件』が終結し、佳織や一夏、鈴を初めとした生徒達は体を休めるために一足先に寮へと戻させ、楯無によって呼ばれた千冬は生徒会室に足を運んでいた。

 

「あら? 山田先生はどうしたんですか?」

「彼女ならば先に例の『地下解析室』に行って貰っている」

「佳織ちゃんが倒した無人機の残骸を調べる為ですね」

「そうだ。最も、二体揃って上半身が消し飛んでいるから、碌な情報は出てこないだろうがな」

「でしょうね。確実にISコアは消滅してるでしょうし」

 

 楯無も避難誘導をしながらトールギスの無双は見ていた。

 現行のISでは有り得ない程の機動性と加速力、そして攻撃力。

 昔とは違い、今のISは『競技用』としての側面が強いので、殺傷力の高い武器なんて無用の長物なのだ。

 

「それで? 隠蔽されていたトールギスの事が判明したという話だが…」

「はい。避難誘導が少し落ち着いてきた時、虚ちゃんのスマホに布仏の本家が行っていた調査結果が送られて来たんです」

「そうか。お前はもう見たのか?」

「一応は。正直、我が目を疑いましたけど」

 

 千冬の前に紅茶を置いた虚に向けて目配せをし、説明をしてくれるように頼む。

 IS学園整備班の筆頭である虚の方が自分よりも詳しく説明できると踏んだからだ。

 

「OZ-00IS トールギス。一言で言えば、これは間違いなく『化け物』です」

「化け物…だと?」

 

 千冬からしても非常に高い性能を持っているように見えたが、それでも『化け物』と言えるようには思えなかった。

 だが、虚程の人物がそこまで断言すると言うことは、そこにはそれだけの確固たる理由が有る筈だ。

 

「順番に説明をします。まず、織斑先生にはトールギスが第何世代機に見えましたか?」

「第三世代機…じゃないのか?」

「残念ながら違います。トールギスは……」

 

 楯無の隣に座り、自分の分の紅茶を一口飲んでから、静かに答えを言った。

 

「…第一世代機です」

「なんだとっ!?」

 

 信じられない。信じられる筈が無い。

 第一世代と言えば、まだISに対する知識や技術がまだまだ未熟だった時代の頃に産み出された機体群。

 今あるISとは比較にすらならない程に性能が低い筈だ。

 なのに、実際にこの目で見たトールギスの性能は現行のISすらも軽く凌駕するほどの超性能を発揮していた。

 

「しかも、ただの第一世代機ではありません。あの機体は…最初期に産み出されたISなんです」

「最初期とは…どれぐらいの頃を指している?」

「…白騎士事件の直後…と言えば分かり易いでしょうか」

「そんな…ばかな…!」

 

 白騎士事件のすぐ後なんて、それこそISと言う呼称すらもまだ世間に浸透していない時代だ。

 一部の専門家たちしかISの存在を知らなかったような頃に、あんな高性能機が生み出されていた。

 千冬でなくても俄かには信じられない。

 

「白騎士事件の後、篠ノ之博士によってISが発表されました。各国家群に製造方法不明のISコアが規定数ばら撒かれ、そこから色んな国々が自分達のISを生み出そうとした…訳ではありません。当時の科学者たちと言うのは、どうやら私達が思っている以上に慎重だったようです。その慎重さが完全に裏目に出てるんですけど」

 

 いつも冷静な虚が苦々しい表情をしている。

 それだけで、トールギスという存在が普通では有り得ないような経緯で生み出されたことが伺える。

 

「ISの発表がされた後、世界中の名立たる科学者たちが一堂に会し、自分達の国や個人の持つ頭脳を総結集させ、まずは一機のISを試作してみようという事になったようです」

「そんな事になっていたとはな…。賢明な判断だとは思うが…」

 

 まさか、自分達の知らない所でそんな大々的な事が起きていたとは。

 暗部が調査をしなければ分からない程に隠蔽されたことなのか。

 

「その中でも特に優れた6人の科学者たちが筆頭として活躍したようです」

「6人の科学者?」

「日本から派遣されたビーム兵器技術の天才科学者『ドクターJ』。アメリカから派遣されたステルス技術の最高権威『プロフェッサーG』。イタリアから派遣された火器管制技術者の頂点に君臨する『ドクトルS』。アラブから派遣されたコクピットシステムの第一人者『H教授』。中国から派遣された機体駆動技術の生みの親『老師O』。そして、推進器、姿勢制御装置のプロフェッショナルの『ハワード博士』。この6人です」

 

 いずれの名前も全く知らない。

 楯無や虚だって、今回初めて名前を知った者達ばかりだ。

 

「世界中の科学者たちの中でも、この6名の持つ技術は完全に別次元の領域だったようで、通常では絶対に考え付かないようなISを設計、開発したそうです。それが……」

「トールギス…か」

「はい。あのトールギスのカタログスペックが意図的に隠蔽されていた理由も、それでハッキリしました」

 

 どこからか取り出した端末を操作し、ある画面を出してから千冬に向けて差し出した。

 

「トールギスは…人間が乗る事を全く想定していません。あらゆる矛盾を全て力技で解決しているんです」

「これは…!?」

 

 画面を見て、千冬は目を見開きながら絶句した。

 トールギスの性能は、どう考えても第一世代機のそれではなかったからだ。

 

「幾つもの装甲を重ねる事で圧倒的な防御力を得ることに成功しますが、そうなると今度は機動性や運動性に難が出る。ならば、それを補って余りあるほどの超高出力を誇るブースターを装備させて、無理矢理に重量以上の大出力を叩き出す大技を施す。そこへ更に、第二世代の量産機程度ならば複数纏めて一撃で葬れるほどの威力を持つ超出力の射撃兵装『ドーバーガン』を装備して攻撃力も抜かりが無い。ドクターJの持つ技術によって、今でもまだ搭載が困難とされている『ビーム・サーベル』を完璧な形で持たせていますし…」

「滅茶苦茶だな…!」

「でしょうね。なんせ、トールギスの開発コンセプトは『究極の攻撃力と無敵の防御力と最強の機動力を組み合わせ、白騎士を自分達の手で再現する』だったそうですから」

「白騎士の再現…だと…!?」

 

 つまり、トールギスとは束が全く関与していない形で生み出された『もう一つの白騎士』という事になる。

 他の者達がトールギスを白騎士に似ていると錯覚するのも当然の事だったのだ。

 

「結果として、トールギスは世界で一番最初に産み出された第一世代機であるにも拘らず、今存在している第三世代機すらも完全に圧倒する程の性能を有してしまった…」

「だけど、その強大な力の代償は非常に大きかった…」

「それが、さっき言った『人間が乗る事を全く想定していない』…と言う言葉に繋がるのか?」

「そうです」

 

 少し冷えかけた紅茶で喉を潤してから自分を落ち着かせ、虚は話を続ける。

 ここからは自分でも言葉に出すのが辛いから。

 

「トールギスは…最大出力で稼働した場合…一瞬で15Gにまで達してしまうのです」

「じゅ…15Gだとっ!? そんな馬鹿な事があるかっ! トールギスにはPICが搭載されていないのかッ!?」

「いえ…ちゃんと搭載されています。PICを最大に稼働させて15Gまで『軽減』されているんです。旋回性能もラファールの軽く三倍はあるみたいで、その気になれば鋭角的な動きすらも可能だとか」

「…狂っている…!」

 

 苦々しく呟く千冬だったが、そこである事を思い出す。

 

「ちょっと待て…仲森はトールギスをまるで手足のように操っていたぞ! あれはどういう事だっ!?」

「それは分かりません。考えられることがあるとすれば……」

「仲森が15Gという圧倒的な負荷に普通に耐えてみせていた…のか…?」

「普通では絶対に信じられませんが、それしか有り得ません」

「さっきの佳織ちゃんは、鼻血を出していたけど…」

「15Gの負荷を受けても鼻血が出る程度で済んだ…という事なんでしょうか…」

 

 それこそ絶対に有り得ない。

 普通の人間が15Gなんて威力を受ければ、即座に全身が潰れてしまうのがオチだ。

 

「当時、幾人ものテストパイロットが搭乗したそうですが…いずれも帰らぬ人になったらしいです」

「当たり前だ…!」

「良くて瀕死の重傷か致命的な障害を残し、最悪の場合は死亡しています。そんな事になったせいか、結局トールギスは試作機を一機だけ製造し、後は幾つかの予備パーツを残してから何処かへと封印されたそうですが…」

「その封印が何者かの手によって解かれ日の目を見て、仲森に手に渡った…のか…」

 

 なんという数奇な運命。

 『もう一つの原初』が自分の教え子の専用機になるとは。

 特に千冬にとっては因果を感じられずにはいられない。

 

「現代に存在している全てのISは、いずれも何らかの形でトールギスの技術を応用、デチューンされた機体だと言えます」

「本当の意味での『全てのISの原点』ってワケね…」

「原点にして頂点とはよく言ったものだが…」

 

 それの法則がISにも当て嵌まるなんて思わなかった。

 自分の教え子がそれを乗りこなしているのだから質が悪い。

 

「普通に機体自体を調査しても、この過剰な性能は分からなかったでしょうね。私も実際に見て思いましたが、見た目だけは非常に完成度が高い事を除けば、よく知っている全身装甲のISでしたから」

「仲森から回収するべきか…?」

「それは拙いかもしれません。トールギスの事は分かりましたが、まだ誰が佳織ちゃんをストーキングをしてトールギスを用意したのかまでは判明してませんから」

「下手に動けば却って仲森が危険になるか…」

「委員会から用意された機体である以上、定期的に稼働データを提出しないといけないでしょうし、そこからこちらが佳織ちゃんから機体を回収していることがバレてしまう危険性があります」

「前途多難…か…。どうしてアイツばかりがこんな…!」

 

 佳織は何もしていない。

 ごく普通の日常を送っていただけだ。

 悪意ある第三者とISによって、その日常が無残にも壊された。

 

「佳織ちゃんを生徒会に入れた事は本当に正解だったかもしれないわね…」

「そうだな。教師と言う立場上、どうしても思うように身動きが取れない状況もある。その時は仲森の事を頼む…」

「分かっています。私達にとっても佳織ちゃんは大切な後輩であり、生徒会の仲間でもありますし…」

「仲森さんは本音とも仲良くしてくれています。困っている妹の友人を助けない理由はありません」

「助かる…」

 

 千冬も改めて決意が固まった。

 これからはもう絶対に間違えたりはしない。

 必ず佳織を守ってみせると。

 

「それと、いつか機会を見て学園の設備を使って佳織ちゃんのIS適性をもっと詳しく調べた方がいいかもしれません。あの異常なまでのGに普通に耐えてみせたというのがSランク故だとしても、そう簡単には納得できませんし」

「私もそれが良いとは思っていた。あくまで仲森がSだと判定されたのは簡易的な機器によってのみ。もっと詳細に調べれば、あるいは……」

 

 千冬、楯無、虚は揃って同じことを考えている。

 佳織の真の適性値はS程度では収まらないのではないかと。

 本来、ISの最高ランクはSなのだが、実は密かにその『先』が確認されているのだ。

 未だに一人も確認されていないが、本当の意味での最高ランクは『SSS』となっている。

 因みに、千冬は『SS』ランクである。

 

「一先ずはここまでにしよう。お前達も疲れているだろう。今日はゆっくりと休んでくれ」

「分かりました。これから織斑先生はどちらに?」

「山田先生の所に行く。無人機の分析結果を聞かなければいけないし、ここで話したことも伝えないといけんしな…」

「そうですか。先生もあまり無理をしないでくださいね。佳織ちゃんが心配しますから」

「ふっ…承知しているさ」

 

 守ると誓った相手に心配されるなんて言語道断…なのだが、彼女の部屋を見られたら確実に心配されるだろう。

 頑張って部屋の掃除でもしてみるかと思う千冬なのだった。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 辺り一面に色んなコードが散らばり、モニターの灯りだけが光源となっている真っ暗な空間。

 そこに『彼女』は笑みを浮かべながら座っていた。

 

「ふふふ……あははははは……!」

 

 何が面白いのか、彼女はさっきからずっと笑みを浮かべていた。

 モニターに映っているのは、食堂にて休憩をしている佳織の姿。

 

「天然の『S』ランクなんて聞いたもんだから、どんな奴かと思って試しに遊び半分で『ゴーレム』をもう一機だけステルス全振りバージョンで送ってみたけど……」

 

 別のモニターには、トールギスが無人機を一方的に破壊している様子が映し出されている。

 圧倒的としか言いようがない蹂躙劇であるにも拘らず、彼女の笑みは全く消えない。

 

「まさか、この束さん特製のゴーレムを完全に雑魚扱いするなんてね! だけど、生身の時は完全に怯えていたよね…? あれは一体…?」

 

 彼女…『篠ノ之束』は考える。

 否、天才ゆえに考え過ぎてしまう。

 用心深く深読みをしてしまう。

 

(まさか…あれは芝居? ゴーレムが最初から無人機であると見抜いて、何者かが自分を機体越しにモニタリングしていると判断し、油断をさせる為に…?)

 

 そこまでの考えに至った時、束は盛大に笑った。

 

「きゃはははははははははははっ! そっか…そうなんだ! あんな『白騎士のパチモン』を自由自在に操ってみせた時点で普通じゃないとは思っていたけど、そうなんだ! だって、そうじゃなきゃ説明できないよね! あの恐怖に怯えた状態から、一瞬で打って変わって一切の容赦のない攻撃を繰り出すなんてさ! 甘さなんて全く無い攻撃の数々! 『作られた天才』のちーちゃんとは違う…。私と同じ『自然に生まれた天才』…私の同類! 私の本当の仲間!」

 

 生まれて初めて、心の底からの歓喜を味わっている束。

 その喜びようはまるで、ずっと欲しがっていた玩具を買って貰った子供のよう。

 

「名前は確か…仲森佳織ちゃん…だっけ? 佳織ちゃん…かおりんか~…」

 

 まだ本人に会ってもいないのに、早くも渾名で呼び始める束。

 それだけ佳織の事を気に入ったという事なのだろうが…。

 

「はぁ……な~んか…かおりんっていう同類を見つけちゃったせいかな~。急にちーちゃんやいっくん、箒ちゃんの事なんてど~でもよくなってきちゃった~。ちーちゃんは所詮『養殖品』だし、いっくんはその『劣化品』。箒ちゃんに至っては私の事を嫌ってる癖に、都合のいい時だけ利用してくるしね~」

 

 親友とその弟と、実の妹に対する気持ちが急激に冷めていくのを感じた。

 これまでは一度もそんな事は無かったのに、三人の事を話している束の表情はどこまでも冷たくて、まるで路上の石ころでも見ているような顔つきだった。

 

「こんな事なら、いっくんなんかじゃなくて、かおりんに白式をあげればよかったかな~。もう遅いけどさ。これから先、もしも箒ちゃんに『自分専用のISを作って』なんて頼まれたらどうしようかな~。適当に打鉄でも改造して渡そうかな? それでいいよね? 実の姉の事を利用する事しか考えてない愚妹なんかに手の込んだISなんて作る義理はないし。何もあげないで文句だけを言われるのは普通にムカつくし」

 

 幾つものモニターが目の前に並んでいるが、その中から一夏と箒が映っている物だけを消した。

 まだ千冬が映し出されている物だけは残っているが、それは彼女が佳織の事を心から案じているからかもしれない。

 

「そんなことよりも! 私からかおりんに向けてプレゼントを作ってあげようっと! 何がいいかな~? あの超絶的な加速と相性が良さそうなのは……そうだ!」

 

 何かを閃いたのか、束は両手をパチンを叩いてから高々と叫んだ。

 

「槍を作ろう! それも普通の槍じゃなくて、高熱を発して攻撃力を高める槍を! 名前は……」

 

 目の前の機器を凄まじい速度で操作し、あっという間に設計図を完成させる。

 そこには、トールギスの全高とほぼ同じぐらいの大きさを誇る巨大な槍があった。

 

「『テンペスト』! トールギス専用ヒートランス『テンペスト』だ!」

 

 その設計図を見ながら、うっとりとした顔で佳織が映っているモニターを眺める。

 さっきまでとは違って、今の顔はまるで初恋を知った思春期の少女のようだった。

 

「かおりん…喜んでくれるかな~? 今から会うのが本当に楽しみだな~…」

 

 こうして、佳織の周囲は更に混迷を極めていくのだった。

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




かおりん、完全に束さんから勘違いの果てにロックオン。

次回はそんな彼女達サイドのお話です。

そして、次回で鈴ちゃんヒロイン化に関するアンケートを閉め切りたいと思います。

想像以上に沢山のご意見を下さって本当にありがとうございました。


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