私…生まれ変わったらモブキャラになりたいな(なれるとは言ってない)   作:とんこつラーメン

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百合カップルは作りたいけど、ヒロインを誰にするかは不明。

アンチは無いので、この作品内では基本的に千冬さんも束さんも真っ白です。









変わりゆく私の日常

 色々と考えている間に山田先生が入ってきてからの、皆の自己紹介が始まった。

 勿論、あいうえお順で進んでいき、私の自己紹介は後半になるだろう。

 …と、そこまで考えてから、ある事を思い出した。

 

 そういや、これって織斑一夏が自己紹介をしている途中で織斑千冬が教室にやって来てから、そのままの流れで自己紹介が中断からの強制終了になるんじゃなかったっけ?

 ってことは、クラスメイトに対して自ら名を名乗る必要が無くなるって事?

 それはそれで嬉しいかもしれない。

 お世辞にも自己紹介が得意じゃない私的には非常に有り難い。

 変に目立たずに済むしね。

 そう考えると、原作イベントも考え方次第じゃ上手に利用できるのかもしれない。

 これからの学園生活は発想の転換が大事になってくるのかもしれない。

 なんてことを考えながらも、私は密かに両手の人差し指で耳を塞ぐのでした。

 流石に入学早々に鼓膜が破れるなんて事は避けたいし。

 

(あ。織斑一夏の番になった)

 

 カウントダウン開始の合図だ。

 指に力を入れてから顔を俯かせる。

 幸いなことに私の席は窓際の一番後ろという最も目立ちにくい場所に位置しているので、私自身の地味さ加減とも相まって、そう簡単には存在に気が付かれないだろう。

 

 …それから数分後。

 私はそんな自分の考えが甘々星人であることを身を持って思い知るのだった。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

「うぅ…まだ頭が痛む……」

 

 あれから時間が経ち、今は放課後になっている。

 ズキズキと痛む頭を押さえながら、私は一年生の学生寮の廊下をフラフラと歩いて自分に割り当てられた部屋へと向かっていた。

 

 一番最初のホームルーム。

 原作通りに自己紹介の途中で担任の織斑千冬が入って来て、弟君の脳天に気持ちのいい一撃をぶちかました後に、自らの名を名乗って…教室内にいた殆どの生徒達が発狂した。

 

 それに備えて耳を防いでいたのに全く効果が無く、強烈な音波の一撃は私を一瞬で気絶させた。

 目が覚めたのは一時間目の授業が始まる直前。

 実際には違うけど、まるで時間が消し飛んだような感覚がした。

 これがボスのスタンド…キング・クリムゾンか! なんちゃって。

 

 その後はなんとか目立たずに授業を受け続け、休み時間には篠ノ之箒が織斑一夏を誘ったり、その次の休み時間にはセシリア・オルコットが何やら話をしに行ったりと、原作で見た光景が目の前で繰り広げられた。

 私にとっては本気でどうでもいい事なので割愛するけど。

 

 で、それから行われた『クラス代表』に関する一悶着も原作通りに進み、当然だけど私は無言のままそれを見守っていた。

 

 昼休み、午後からの授業もなんとか潜り抜け、それでようやく放課後になったという訳でして。

 はぁ…本当に長い一日だった……。

 これから先、こんなのが三年間も続くと思うと気が重くなる。

 部屋の中に置いてあるであろう私の荷物の中に『精神安定剤』があるから、後でちゃんと飲んでおかなくちゃ…。

 あれ無しでこれからの学園生活を乗り切るなんて絶対に不可能だ。

 

「あ…ここだ」

 

 長い道のりの末にやっとたどり着いた私の部屋。

 一階廊下の一番端という、実に私らしい場所にあった。

 分かり易くて助かるけど、行き来するのが普通に大変なのがデメリットだよな…。

 遅刻をしないように気を付けないと。

 

「鍵は…えっと……」

 

 ポケットの中に入れている部屋の鍵を探っていると、精神的に疲弊しきっている私にトドメを指す出来事が起きた。

 

「ん? 電話?」

 

 反対のポケットに入れているスマホに着信が入り、いつも通りにディスプレイを見て相手を確認する。

 画面には『神様♡』と表示されていた。

 

「………」

 

 正直言って出たくない。

 けど、ここで出ないと永遠に鳴り続けそうな気がする。

 電池とかが勿体無いので、仕方なく出る事に。

 

「…もしもし」

『やぁ! 久し振りだね! 元気にしてたかい?』

「少し前まで元気が取り戻せそうでしたけど、あなたの声を聞いた途端に目の前まで迫って来ていた元気が因果地平の彼方まで吹き飛んでいきました」

『そこまで言うッ!?』

「言いますよ。当たり前でしょう」

 

 何を今更言ってんだ、コノヤロー。

 

「…で、何の御用ですか? 私にはもう干渉しないって前に言ってませんでしたっけ? あれは嘘だったんですか。そうですか。上等ですよコノヤロー」

『ちょ…ゴメンって! 別に何かをする為に電話してきたわけじゃないんだって!  ただ、君の後見人的な存在としては入学のお祝いの一つぐらいは言わないといけないと思ったわけで……』

「そんなの必要ありません。入学祝も何も…ここに入る羽目になったのはアナタせいでしょうが! 本気でふざけてるんですかっ!?」

『いや…確かにそうなんだけどさ……』

 

 一体どこまで私をおちょくれば気が済むのやら…。

 なんか話してるだけでイライラしてくる。

 

「お願いですから、もう電話も掛けてこないでください。ちゃんと、そちらの思惑通りにIS学園に入学してあげたんですから、もう満足でしょう?」

『その言い方だと、まるで僕が全部悪いみたいに聞こえるんだけど』

「実際に諸悪の根源じゃないですか」

『こっちは善意のつもりなんだけどな~』

「勝手に押し付けている善意は悪意と大差ないんですよ」

 

 仮にも神なら、それぐらいは分かって欲しいもんだ。

 いや…神だから理解出来ないのか?

 

『まぁ…それは置いといて』

「置いとかないでください」

『僕がもう君や、その世界に干渉しないってのは本当だよ。というか、もうやる事は全て終わってるから、干渉する理由が無いってのが実際の所なんだけどね』

「もう終わっている? それってまさか『もう一つの特典』…即ち『専用機』の事なんじゃ……」

『なんだ。気が付いてたんだ』

「この世界。転生。特典。この三つが揃えば一番最初に考え付くのが『専用機』でしょ」

『御明察。君の為だけに用意した専用機が学園に届く手筈になっている。いつ頃になるかまでは分からないけどね』

「専用機が学園に…ね。どうして到着日時とかを指定しなかったんですか?」

『途中で面倒くさくなっちゃって』

「一回死んでください」

『神なんで無理でーす』

「ちっ…!」

『お願いだから舌打ちやめて。地味に傷つくから』

 

 いい事を聞いた。

 もしもまた電話が有ったら、真っ先に舌打ちしてやろう。

 

『君もきっと気に入ると思うよ』

「どんな機体なんですか?」

『それは見てからのお楽しみ。まぁ…かなりカッコいい機体とだけ言っておく』

「ふーん…」

 

 カッコいい機体…ねぇ…。

 

『あれ? もしかして、どんなのが来るのか楽しみにしてる感じ?』

「ち…違いますから! 別に『好みの機体が来たら少しは許してあげてもいいかも』なんて微塵も考えてないんですからね!」

『ここでまさかのツンデレ…。意外と可愛いからヨシ!』

「死ね」

『さっきよりも辛辣になってるっ!?』

「というか、本当にそろそろ休みたいので切りますね」

『分かったよ。それじゃ、これが本当に最後になると思う。さよなら』

「それを聞いて安心しました。永遠にさようなら」

『最後の最後までそれなのね…』

 

 神様と話していると、いっつも相手のペースに惑わされて長話になってしまう。

 無駄な足掻きと分かっていてはいるけど、念の為に着信拒否をしておこう。

 

「あれ?」

 

 神様との通話履歴が…全く無い?

 綺麗サッパリと消えている…。

 

「…最後ってのだけは本当だったみたいね」

 

 なんかドッと疲れた。

 今日はもう休もう…はぁ……。

 

「私がSなんて結果を出したのも…IS学園なんて場所に入学する事になったのも…全部アイツのせいなのに…少しは本気で悪びれなさいよね…バカ…」

 

 猫背になりながら扉を開き、部屋に置いてあった私物の入っている段ボールの荷解きもせずにベットにダイブした私なのでした。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 本来ならば女子しかいない筈のIS学園に男子が一人いれば、本来ならば決して起こりえないようなトラブルが、当然のように頻発する訳で。

 

「まさか、入学初日からここまでトラブルが連発するとは…! これから先が思いやられるな……」

 

 なんて愚痴を言いながら一年寮の廊下を歩いているのは、一年一組の担任にして、唯一無二の男子生徒である織斑一夏の実姉、そして一年生の寮の寮長でもある織斑千冬その人。

 

 ついさっき、何故か一夏の部屋の扉が穴だらけになって破壊されるという意味不明な事件が発生し、そこに集まっていた女子生徒達を解散させつつ事件当事者たちの説教をしてきたばかり。

 入学早々から疲れが溜まって仕方がない千冬なのだった。

 

「はぁ…こんな日は酒でも飲まんとやってられんな……」

 

 無類の酒好きな千冬は、当然のように寮の部屋にも酒を持ち込んでいる。

 頭の中で冷蔵庫に保管してある缶ビールの数を数えながら廊下を進んでいくと、ふと端の方から声が聞こえてきた。

 

「なんだ?」

 

 声のする方に顔を向けると、そこには黒く長い髪を持つ少女が扉に背中を預けながら電話をしていた。

 別にそれ自体は何も悪い事ではない。

 何かあるとすれば、それは彼女自身の方だった。

 

(あれは…私のクラスの仲森…か?)

 

 仲森佳織。

 ごくごく普通の一般家庭の出の少女であるにも拘らず、IS委員会から特別推薦枠として入学してきたイレギュラー。

 その理由は、彼女がIS適性検査にて、異例ともいえる『S』を出したから。

 

 Sランクは世界的に見ても非常に珍しく、本当に数えるぐらいしか存在していない。

 かくいう千冬のランクも『S』であるが、それには人には言えない明確な理由が存在している。

 他のSランクたちもそれは同様で、少しでも上を目指そうとした結果、人体改造や精神強化などと言った、お世辞にも正攻法とは言えないやり方で辛うじてSに至った者達ばかり。

 そんな中、ある日突然に一般人の少女が『S』ランクを叩き出した。

 これは異例過ぎる出来事であり、委員会はすぐにこの事を極秘扱いにし、彼女をIS学園に行くように誘導した。

 

 これまでの者達とは違い、何も特殊な事をしていないのにSランク。

 通常ではまず有り得ない事に、専門家たちは彼女の事を一夏と同レベルの最重要人物に指定。

 一部の者達は佳織の事を『ISの申し子』なんて言い出す始末。

 

(あの子も…今という時代とISに翻弄された犠牲者なのかもしれないな…)

 

 全ての事情を知っている千冬としては、どうしても放っておくことは出来ない。

 贔屓…は流石に出来ないが、それなりに気を使っておこうとは思っている。

 

(変に聞き耳を立てては失礼だな。ここは静かに立ち去ろう)

 

 気配を足音を消しつつ、この場を去ろうとした…その時。

 どうしても聞き逃せない単語が耳に入ってきた。

 

「…即ち、専用機の事なんじゃ……」

(な…なにっ!?)

 

 専用機。

 それは文字通り、個人用にカスタマイズされた専用のIS。

 どうしてその話を佳織がしているのか。

 反射的に物陰に隠れてから耳を澄ませることに。

 

「専用機が学園に…ね」

 

 会話自体は途切れ途切れになって全ては聞き取れないが、辛うじて重要そうな部分だけは聞く事が出来た。

 

(一夏だけじゃなく、仲森の専用機も用意されているのかっ!? しかも、それを学園に届けさせるッ!? 一体あいつは誰と話をしているんだっ!?)

 

 専用機の話をするという事は、間違いなくISに深く関わりのある人間の筈。

 だが、これまでに佳織がそれ系の相手と接触をしたという報告は受けていない。

 だからこそ分からない。誰と、どうして専用機の話なんてしているのか。

 

(誰にも知られる事無く仲森に接触できるISに深い関わりのある人間…)

 

 その条件に合致する人間を一人だけ知っている。

 だが、『彼女』が自分の身内でもない相手と自ら接触しに行くだろうか?

 

(それとも、私の知らない何者かが仲森の背後にいるとでも言うのか…? だとしたら、一体何者が……)

 

 千冬が思案に耽っていると、通話を終えた佳織が立ち上がって部屋へ入ろうとドアを開ける。

 その時に呟いた言葉の最後の部分だけ、千冬の耳にハッキリと聞こえた。

 

「…IS学園に入る事になったのも…全部アイツのせいなのに…少しは悪びれなさいよね…バカ…」

 

 扉が閉まり、佳織の姿は部屋の中へと消えた。

 けれど、まだ千冬はその場に留まったままだった。

 

「仲森がIS学園に来ることになったのは…誰かに仕組まれていた…?」

 

 だとしたら、佳織は一夏以上に望まぬ運命を辿らされている事になる。

 本人は心の底から嫌そうにしていた。

 授業中などもずっと、彼女は俯いて目立たないように努めていた程。

 

「仲森自身は、本当にどこにでもいるごく普通の少女なのだろうな…。本来ならばISとは無縁の人生を送れただろうに…何者があいつを学園に引き入れようとしたんだ…?」

 

 まず『親友』の線は薄いだろう。

 その理由が全く思いつかないし、赤の他人で遊ぶほどに酔狂な奴でもない筈だ。

 とすれば、必然的に考えられる可能性は限られてくる。

 

「まさか…IS委員会の中にいる誰かが…密かに仲森に接触して…!?」

 

 考えれば考えるほどに嫌な事を考えてしまう。

 委員会の誰かが、もしくは委員会の息が掛かった誰かによって佳織は傀儡同然の扱いをされているのではないか?

 しかも、あの様子から察するに、相手は全く悪びれる様子すらなかったようだ。

 電話をしてきたという事は、互いの連絡先を知っているという事でもあるが、佳織が進んで自分を陥れた相手に対して電話をするとは考えにくい。

 とすれば、相手から一方的に掛けてきたことになる。

 

 そこで千冬は、最も想像したくない考えに至ってしまった。

 

「仲森は…IS委員会に監視されて…いや、それだけではないかもしれん。個人の権限で専用機の受け渡しなんて離れ業が出来るほどの相手だ。もしかしたら、その権力を利用して仲森の事をストーキングして…!」

 

 幼少期からずっと目を付けていた佳織の体がある程度成熟してきた頃を見計らって、彼女の通う学校に簡易適性検査を実施、なんらかの違法な手段でSランクを出すように仕向けた後に、委員会の御膝元とも言うべきIS学園へと引きずり込んだ。

 恐らく、その際に家族などを人質に取った可能性もある。

 そこから更に専用機をプレゼントと言って与えてから、自分から逃げられないようにして、それから最後にはその体を……。

 

「な…なんてことだ…!」

 

 流石に誇大妄想が過ぎるが、一度でも悪い方に進んだ考えはそう簡単には変えられない。

 それどころか、もっと最悪の想像すらしてしまうのが人間だ。

 責任感の強い千冬がそんな事に思い至ってしまったら、当然のようにこうなってしまう。

 

「…仲森を委員会のバカ共の玩具になんてさせてたまるか…! 教師として、大人として、同じ女として、アイツの事を絶対に守らなければ…!」

 

 こうして、本人が全く知らない所で佳織は何故か『悪のIS委員会から体を狙われている悲劇のヒロイン』になってしまったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




なんか、書いてる途中で大人の女性がヒロインってのも有りな気がしてきた。






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