私…生まれ変わったらモブキャラになりたいな(なれるとは言ってない)   作:とんこつラーメン

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変な所でまた微妙な勘違いを生んでしまった佳織。

このまま、どこまで彼女は突き進んでいってしまうのか?








先生だって頑張ってるんです

「それでは、これより実際に訓練用のISを用いた実践訓練を始める」

「「「「「はい!」」」」」

 

 織斑先生の一言で午前の授業が開始される。

 授業前に一悶着が無かったのが幸いしてか、毎度御馴染みの出席簿アタックは回避された。

 あれって見ているだけでも痛そうだもんね。

 

(ねーねーかおりん)

(布仏さん? どうしたの?)

 

 授業中に彼女が私に対してヒソヒソ話をしてくるなんて珍しい。

 一体どうしたのかな?

 

(山田先生がいないけど、どうしたのかな~?)

(そういえば……)

 

 原作の通りだと、この後に山田先生がラファールを装備した状態で落下してきて、その落下位置にいた織斑君が見事なラッキースケベをかましてからヒロイン達の怒りを買っちゃうんだよね。

 うーん…一応、彼に注意を促しておくべきかもしれない。

 この程度なら変化しても影響は無いだろうし、何かが間違って大怪我とかしたら大変だ。

 

「まずは手本として専用機持ち達に軽い模擬戦をやって貰う。丁度、この場には専用機を持っている者達が『三人』もいることだしな」

 

 あ…私の事は含まれてないのね。そりゃそっか。

 もしも私が数に入っていたら『四人』って言ってる筈だしね。

 

「凰。オルコット。二人とも前に出ろ」

「はい」

「…………」

 

 あれ? なんかオルコットさんだけ無反応? なんで?

 

「オルコット! 返事をせんか!」

「あ…はい! なんでしょうかっ!?」

「今から模擬戦をやって貰う。前に出ろ」

「わ…分かりました」

 

 申し訳なさそうにしながらオルコットさんが列から離れて前に出た。

 なんだか『心ここに非ず』って感じだったけど…。

 

「織斑先生。もしかして、模擬戦ってこの二人でするんですか?」

「残念だが違う。今回は、お前達二人で即席のタッグを組んでから『ある相手』と戦って貰う」

「ある相手…ね」

 

 あの顔…凰さんにはなんとなく予想がついてるのかな?

 それに比べてオルコットさんは小首を傾げているけど。

 

「申し訳ありませんけど、やるならあたし一人でお願いします」

「ほぅ…?」

「な…なんですって…?」

 

 あらら。いきなりのタイマン宣言。どうしたのかしら?

 

「あんまりこんな事は言いたくないけど…この際だからハッキリと言わせて貰います」

「なんだ」

「こんな訃抜けた顔をしてる奴とコンビを組むなんてお断りです。あたしの実力じゃ、まだ『お荷物』を抱えたまま戦うなんてことは無理ですから」

「お…お荷物ですって…!?」

「あら、違うの? それじゃあ言い方を変えてあげるわ。あたしの大切な親友を見殺しにしようとした奴の手なんか絶対に借りたくない。死んでも御免よ」

「くっ……!」

 

 凰さんが言った『大切な親友』って、もしかして私の事…だよね…?

 凄く嬉しいけど…凄く照れる…。

 しかも、オルコットさんには大ダメージみたいだし。

 私はそんなに気にしてはいないんだけどなー。

 目の前で何かを言われた訳じゃないんだし。

 

「…そうだな。凰の言い分も一理ある」

「お…織斑先生ッ!?」

「オルコット。そんな精神状態で全力を…ベストパフォーマンスが出来ると言えるのか?」

「そ…それは……」

「ISだけに限らず、何事も最高の動きをするには精神状態と言うのは非常に重要なファクターの一つだ。今のお前の精神状態は良好だと断言出来るのか?」

「…………」

「出来ないのなら、ここは大人しく下がれ。余計な怪我をするだけだ」

「…分かりましたわ」

 

 自分で呼び出しておいて下がれとは、これいかに?

 でもまぁ…最初は織斑先生もオルコットさんの状態を良くは知らなかったんだから仕方がないか。

 

「…で、さっき言ってた『ある相手』さんはどこにいるんですか?」

「慌てるな。もうすぐ来る」

 

 …そろそろか。んじゃ、織斑君に少しだけ近づいてから肩をポンポンってね。

 

「仲森さん? どうしたんだ?」

「織斑君。今すぐにそこから少し離れた方がいいと思う」

「なんでだ?」

「鉄の塊が落下してくるかもしれないから」

「て…鉄の塊?」

「うん」

 

 そうだよね。何言ってんだって顔になるよね。

 もうちょっと具体的に言えばよかったかな。

 それとなく伝えるつもりが、逆に意味深な言葉になってしまった。

 

「あああああ~っ!? 織斑くん! 仲森さ~ん! そこをどいてくださ~い!!」

「上から聞こえてくる聞き覚えのあるこの声は…ってっ!?」

 

 はい。正解は『ラファールを装備した山田先生』でした。

 分かったら、すぐに言われた通りにどきましょうね。

 

「仲森さんっ!! 危ないっ!!」

「きゃあっ!?」

「佳織っ!?」

「かおりんっ!?」

「仲森っ!!」

 

 なんかいきなり織斑君に押し倒されたッ!?

 突然すぎて全く反応出来なかった…。

 

 その直後、背後では何か重たい物が地面に落下したような音が。

 間違いなく山田先生ですね。はい。

 けど、今はそんな事よりも……。

 

「ふぅ……危機一髪だったな。仲森さんが教えてくれなかったら本気で危なかったぞ…。大丈夫か?」

「う…うん。驚きはしたけど、怪我とかはしてない。してないけど……」

「けど?」

「……手。どけて」

「手?」

 

 私が睨み付けると、彼は自分の手がどうなっているのかを知った。

 押し倒された拍子に偶然にも彼の手が私の慎ましやかな胸に触れていた。

 いや…触れるってよりは完全に揉んでますな。

 

「うわぁっ!?」

「ひゃうっ!? う…動かさないで…」

「ご…ごめんっ! 決してそんなつもりじゃなかったというか…」

 

 急いでどいてくれたのは良いけど、一言だけ言わせてほしい。

 …どうして山田先生じゃなくて、私に対してラッキースケベが発動するのよ!!

 自分のスタイルの自信が無い私に対する嫌がらせかっ!?

 

「……織斑君のスケベ」

「ち…違うって! 本当にそんな事をするつもりじゃなかったんだって!」

「…私の事を助けようとした結果なのは分かってるし、感謝してる。けれど、それとこれとは話は別」

「…ですよねー…」

「それよりも周りを見た方がいいと思う」

「ま…周り…?」

 

 織斑君が周囲に視線を向けると、そこには憤怒の炎を燃やしている阿修羅すらも凌駕した存在になっている凰さんと織斑先生と布仏さんがいた。

 

「一夏…! あたしの目の前で佳織を押し倒すとか…いい度胸をしてるじゃないの…!!」

「お~り~む~…!」

「よりにもよって大衆の…教師の目の前で女子を押し倒すとは…覚悟は出来ているんだろうな…! 私は出来ている…!」

「ちょ…鈴? 布仏さん? ち…千冬姉…?」

 

 冷や汗ダラダラになりながら引き攣った笑いをする織斑君。

 申し訳ないけど、流石にこればかりはどうしようもないわ。

 大人しく罰を受けて頂戴な。

 

「凰、布仏。ここは教師として、こいつの姉として私に任せてくれないか?」

「「分かりました」」

 

 あ~あ。織斑先生が代表して制裁をするみたい。

 手にはいつもの出席簿があるけど…。

 

「…私の趣味がレトロゲームをする事なのは知っているな?」

「あ…あぁ…。家にはファミコンとかあるしな……」

「そんな私にとって、高橋名人はヒーローのような存在だった。彼のようになりたいと憧れて、彼の代名詞である『1秒間16連射』を会得しようと試みたのだが…私には不可能だった。私に出来たのは精々……」

 

 スパパパパパパパパパパパパパパパンッ!!!!!

 

「1秒間に15連射だった」

「そ…それでも十分過ぎるだろ……ガク」

 

 い…1秒間15連発の出席簿アタックですと…!

 これはまた強烈な一撃を…。

 

「仲森、大丈夫だったか?」

「は…はい。なんとか……」

「こいつは息を吐くようにセクハラをしてくるからな。気を付けるんだぞ」

「わ…分かりました」

 

 織斑先生に手を貸して貰いながら立ち上がったけど、未だに地面には気を失った織斑君が。

 頭にはギャグ漫画みたいに何重にも重なったタンコブがあった。

 余計な事を言ったせいで、これまた変な方向に行ってしまった…。

 なんか織斑君には申し訳ない事をしてしまったかもしれない。

 

「よかったわ…佳織の貞操が無事で」

「うんうん」

「よりにもよってソッチの心配?」

 

 彼に限ってそれは無いとは思うけど……。

 

「にしても、あんなにも一夏に対してお熱だった二人が大人しいのは珍しいわね」

「本当だね~」

「言われてみれば……」

 

 篠ノ之さんは織斑君と私を交互に見て落ち込んでるし、オルコットさんに至っては体を震わせながら俯いていた。

 本気であの二人が何を考えているのかが分かりません。

 

「はぁ…山田先生。本気で気を付けていただきたい。あと少しで怪我人が出るところだった」

「すみませ~ん……」

 

 ラファールを纏ったまま立ち上がる山田先生だったけど、なんだか弱った小動物を彷彿とさせた。

 今回、山田先生を相手に選んだのって、普段のあの人の教師としての威厳を少しでも取り戻させる為でしょ? これで本当に大丈夫かな…?

 

「けど、山田先生がISを纏ってるって事は、もしかしなくても模擬戦の相手ってのは……」

「山田先生だ」

「やっぱり……」

 

 なんか別の意味で心配そうにしている凰さんだけど、それは無用とだけ言っておこう。

 単なる眼鏡なドジッ子だと思って侮るなかれ。

 ああ見えても実力『だけ』は本物だから。

 

「凰…準備は大丈夫か?」

「はい。いつでも行けます」

「そうか。時間も押しているしな…早速、試合開始だ」

「「了解!」」

 

 専用機である『甲龍』を纏った凰さんが、山田先生と一緒に上空へと昇って行く。

 原作じゃ、オルコットさんと二人掛かりでも完全に圧倒されてたけど…。

 

「先生。織斑君はいいんですか?」

「心配はいらん。放っておけ」

「えぇ~…」

 

 哀れ織斑君。他の子からの心配も呆気なく一蹴されてしまった。

 

「それよりも、二人が模擬戦をしている間に…そうだな。デュノア」

「はい」

「山田先生が使用しているIS『ラファール・リヴァイヴ』について説明してみろ」

「分かりました。山田先生が使用しているラファールと言う機体は……」

 

 ここで原作通りにデュノア君の説明という名のナレーションが入るけど、私は完全に右から左へと受け流しながら、上空で繰り広げられている模擬戦に見入っていた。

 

「あの山田とか言う教師…中々にやるではないか」

「え?」

 

 誰かと思って振り向くと、それはボーデヴィッヒさんの台詞だった。

 驚いた…この時期の彼女が誰かを素直に褒めるだなんて…。

 

「武器の切り替えタイミング…リロードのスピード…そして、命中精度。どれを取っても申し分ない実力。成る程…織斑教官が副官として置きたがるのも納得だ」

(…時期とか関係無しに、この子は純粋な感性の持ち主なのかもしれない)

 

 良くも悪くも真っ白な子だしね…。

 変な風に染められていないだけ、まだずっとマシか…。

 

「あの凰という候補生も悪くは無いが…機体の相性と相手が悪すぎたな。完全に相手のペースに乗せられて、自分の距離を保てないでいる。奴自身もそれを自覚しているのか、肩から発射される衝撃砲で対処しようとしているが…それだけでは決定打に欠ける。勝負あったな」

 

 完全な独り言なんだろうけど、図らずもボーデヴィッヒさんの分かり易い解説のお蔭で私達も試合を見る事に集中出来た。ありがとう。

 

(あ……)

 

 凰さんが武器を引っ込めてから両手を上げて降参のポーズをした。

 どうやら負けを認めたみたいだ。

 

「ははは…ぜ~んぜん駄目だったわ。山田先生、普通に強すぎ。IS学園の教師は伊達じゃないわね。さっきのドジが嘘みたい」

「きょ…恐縮です…」

 

 照れ顔の山田先生が普通に可愛い。

 原作でも織斑君が言ってたけど、本当に制服を着てたら生徒に間違われるよ。

 

「こう見えても、山田先生は元日本の代表候補生だ。これぐらいの実力は持っていて当然だ」

「こ…こう見えてもって……」

 

 そこに反応しちゃうんだ。

 そして、自分が幼く見られてる事を気にしてるんだ…。

 

「これでIS学園の教員の実力は分かっただろう。今後はちゃんと敬意を持って接するように心掛けろ。いいな?」

「「「「「はい!」」」」」

 

 もう何回言ったかは分からないけど、もう一度だけ言わせて。

 …本当に返事だけは良いよね…。

 それと、私は最初から先生達には敬意を払って接してますよ?

 織斑先生だけじゃなくて、山田先生の事だってちゃんと尊敬してるし。

 

 

 

 

 

 




次回も授業内のお話。

因みに、一夏はまだ気絶中です。



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