私…生まれ変わったらモブキャラになりたいな(なれるとは言ってない) 作:とんこつラーメン
私の作品あるあるですね。
ISを運ぶ織斑君を私と布仏さんの二人で手伝ってから、本格的に実習が始まる事に。
取りに行った時、山田先生から心配されたけど、まぁ…大丈夫なんじゃない?
知らないけどさ。
『各班長は皆が訓練機を装着するところまで手伝ってあげてくださーい。全員にやって貰う予定でいるのでフィッティングやパーソナライズは切ってあります。午前中には最低でも動かすところまではやってくださいねー』
ここで山田先生からのお知らせ。
午前中に動かす所まで…ね。
普通にやっていれば楽勝だろうけど……。
「だって。どうする?」
「それじゃ、出席番号順にISの装着と起動をやって、そこから歩行までやってみるか。まず最初は……」
「はい! 私でーす!」
誰よ。なんか無駄に元気がいい子が挙手しながら兎みたいに何度もジャンプしてる。
何がしたいのか分かりません。
「出席番号一番の相川清香です! 現在はハンドボール部に所属してて、趣味はスポーツ観戦とジョギングだよ!」
「そ…そっか……」
…どうしていきなり自己紹介なんて始めるの?
本気で理解に苦しむわ…。
「ねぇ…布仏さん。なんで、あの子達は唐突に自己紹介なんて始めたんだろ?」
「皆で一緒にアピール合戦でもしてるんじゃないのかなー?」
「そんな事をしても逆効果だと思うけど」
「どうして?」
「多分だけど、織斑君って前時代的な思想の持ち主だから、あんな風に自分からグイグイいくようなしつこい女の子は苦手なんじゃないのかな」
「…かおりんはおりむーのことをよく見てるんだね」
「そんなんじゃなくて、シンプルに私もグイグイくる子が苦手なだけ。布仏さんや凰さんみたいに、ちゃんと節度を理解して適度な距離感を保ってくれる人が一番だよ」
「かおりん…♡」
ちょっとだけ布仏さんに睨まれたけど、すぐにキラキラした目に変わった。
コロコロと表情が変わって、まるでサイコロみたいで面白いね。
なんて言ってる間も、織斑君が困った顔で女子達のアピール合戦に戸惑っている。
このままじゃ、いつまで経っても実習が終わらない。
それどころか、最悪の場合は織斑先生がやって来る可能性だってある。
実際に、デュノア君の所もこっちと似たような状況になっている所に織斑先生がやって来てからの自慢の1秒間15連射を女子達にお見舞いしてから睨みを利かせていた。
(なんか知らないけど篠ノ之さんも全く動きそうにないし…仕方がない)
はぁ…こんなのは本来、私の役目じゃないんだけどな~…。
でも、あの子達のせいでペナルティを受けるのはもっと嫌だ。
「織斑君。ちょっといい?」
「ど…どうした?」
「このままじゃ、いつまで経っても先に進まないから、まずは私がするよ。で、その後に布仏さんと篠ノ之さんがする。それでいいよね?」
「「「「え…?」」」」
何が『え?』な訳?
別に私は何もおかしなことは言ってないつもりだけど?
「どうやら、その子達は実習よりも織斑君に自分をアピールする方が重要みたいだし。だったら、私達は私達で先にやってる。大丈夫。搭乗と起動ぐらいなら多分できると思うから。行こ? 布仏さん。篠ノ之さん」
「はーい」
「あ…あぁ……」
言いたい事を言い終えると、私は二人の手を引っ張ってからISの近くまで行くことに。
相川さんを初めとする女子達はポカーンとした顔でこっちを見ていたが、そんな事は気にしない。
君達は好きなだけアピール合戦をしていればいいよ。
確実に自分の首を絞めることになると思うけどね。
「かおりーん…アレで良かったの~?」
「いいのよ。回りくどく言っても聞く耳持たなかっただろうし。それに…」
「それに?」
「篠ノ之さん、あの場から離れたいって思ってたでしょ?」
「いや…別に私は……」
「嘘が下手過ぎ。思い切り顔に書いてあるから」
伊達や酔狂で中学の時に『落語部』なんてのに入ってなかったんですよ。
人間の表情の機微には敏感なのですよ。
「何があったのか知らないけど、あんまり無理はしない方がいいよ」
「お前には関係ないだろう…」
「そうだね。全く関係ない」
「だったら……」
「だけどね、無関係な人間だからこそ言える言葉ってのもあるんだよ」
「仲森……」
「ま。自分でも余計なお節介だって理解はしてるんだけどね。私も、あそこにあのまま居続けるのは嫌だったし。あれが原因で授業が延長になるなんてもっと嫌」
あーゆーのは授業中以外の時間でやって欲しい。
完全に真面目にやっている人達への迷惑にしかならないって理解出来ないの?
「お話はここまでにして、本当に始めようか。織斑君はまだ、あの包囲網から逃げられそうにないし」
「そーだねー」
「わ…分かった」
まずは私からか。
ISに搭乗するところからだけど…これはトールギスの時と同じ要領でやれば大丈夫かな?
実際に戦闘をした時の事は全く覚えてないけど、初めて起動をした時の事は鮮明に覚えているからなんとかなると思う。
(座るような感覚で…体を預けて…っと)
うん。意外となんとかなるもんだ。
今回だけはトールギスに感謝だね。
「ここで外部のコンソールを開いてから起動をして…っと。よし、出来た」
トールギスの時とは全く違う感覚だけど、なんとかなりそう。
後は、このまま動いて……ん?
「ど…どうした? 何か問題でもあったのか?」
「ううん。そうじゃないけど…」
試しに右掌を何回か開いたり閉じたりしてみる。
うん。やっぱりそうだ。
「ISってこう…もっとぎこちない動きをするって思ってたけど、意外とそうじゃないんだね」
「かおりん…?」
右足を踏み出して、次に左足を踏み出す。
自分の意志でISを動かすのはこれが初めての筈なのに、驚くぐらいにスムーズに動けた。
流石は最新技術の塊……私のようなハイパー素人でも、こんな動きが出来るとは…普通に感服した。
まるで自分の身体の一部のように動かせる。
お散歩気分で歩いてから、呆気なく私の番は終了した…けど、最後に一言だけ言わせてほしい。
「……疲れた」
「「えぇ――――っ!?」」
「動くこと自体は苦も無く出来たけど…やっぱISを纏った状態で地面を歩くのは疲れるよ……」
とっとと降りてから布仏さんに交代しよう。そうしよう。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
クラス対抗戦の時、自分の無力さを知った私は、せめて一夏へ向かって激励の一言をあげたいと思った。
それは完全に自分勝手な我儘。
あの時は、それがどんな結果を招くか理解すらしていなかった。
衝動的に体が動いてしまう。昔からの私の悪い癖だ。
今回は、それが最悪の方向に傾いてしまった。
結果として未遂では終わったが、だからと言って許される事ではない。
もしかしたら、私だけではなくて大勢の人達を死なせてしまっていたかもしれない。
いきなりいなくなって先生達にも迷惑を掛けた。
緊急事態であるという自覚が全く無いまま身勝手に動いてしまった。
織斑先生から物凄い形相で怒られた時、初めて私は自分がしてしまった事を自覚した。
本当は反論をしたかった。
私だって何かに役に立ちたかったと。一夏に何かしてやりたかったのだと。
その言葉は全て、織斑先生の迫力によって封殺されてしまったが。
それからだった。一夏との間に気まずい雰囲気が流れ始めたのは。
クラス対抗戦の後、食堂にて一夏は鈴や見知らぬ生徒達と一緒に話をしていた。
その時、織斑先生から私やセシリアの話を聞いていた時の一夏の顔が今でも忘れられない。
絶句。
大切な人にそんな顔をさせてしまった。自分のせいで。
部屋に戻ってからも碌に会話をする事など無く、そのまま眠りについた。
申し訳なかった。謝りたかった。心配を掛けて済まなかったと。
けど、自分の中にある醜いプライドがそれを邪魔する。
どうして自分が謝罪をしなければいけないのだと。
一夏の事を思ってやった事なのに、どうして。
…分かっている。それは全て言い訳だ。最低の言い訳だ。
私が素直になれさえすれば、それで解決する話なのに…なんて返されるかが怖くて話しかける事が出来ない。
一夏に拒絶されたらどうしよう。嫌われたらどうしよう。
いつしか、そんな事ばかりを考えるようになっていき…一夏の傍にすら近づくのが怖くなり始めた。
そうなれば当然、二人の間の会話はみるみるうちに激減していき、部屋割りの変更で私が部屋を去る日が来ても、これと言った会話は無く『それではな』ぐらいしか言えなかった。
なんでか、一夏と離れ離れになれたことに対して心からの安堵をしている自分がいた。
あんなにずっと恋焦がれて会いたいと願っていたのに…どうしてこんな事になってしまったのだろう。
そして今。
実習にて一夏と同じ班になってしまった時には本気で焦ってしまった。
一刻も早く実習が終わって欲しい。それだけを願っていた。
他の女子達に取り囲まれている奴を見ても、何の感情も浮かび上がらない。
前までなら、すぐに怒りがこみあげてきていたのに。
そんな私の手を引っ張ってくれた女子がいた。
仲森佳織。
あの時、食堂で一夏や鈴と話をしていた女子だ。
知らない間に一夏達と親しくなっていたようで、一夏に対して他の女子のように媚びるような口調ではなく、友人同士のような会話をしていた。
さっきもそうだ。全く臆することなく自分の意見を言って、こうして私とあの場から引き離してくれた。
何も言っていないのに、こっちの心情を察してくれただけでなく、私が一番言って欲しかった言葉を言ってくれた。
「あんまり無理はしない方がいいよ」
そんな何気ない一言が…とても嬉しかった。
私がいつもの調子で思わず言い返してしまっても、彼女は怯む事は無かった。
「無関係な人間だからこそ、言える言葉ってのもあるんだよ」
無関係だからこそ言える言葉。
私には絶対に思いつかない事だ。
だからこそ、仲森の事を本気で凄い奴だ思った。
それから仲森は慣れた様子でISに乗り込み、起動をしてからゆっくりと歩き出す。
途中で何かあったようだが、全く気にはしていないようだ。
(こ…これは……!)
普通に歩行をしているだけ。
それだけなのに、不思議な凄みを感じた。
まるで生身で動いているかのような滑らかさ。
本当に私と同じ一般の生徒とは思えない動き。
セシリア達、専用機持ちでもここまでスムーズに動けるかどうか。
私が初めてISに乗った時は、力任せに動かしていたせいか、どこか動きにくいと感じていたが…。
だが、そんな凄みも歩行が終わった瞬間に消えてなくなった。
「……疲れた」
「「え――――っ!?」」
歩いた距離は僅か数メートル。
なのに、もう疲れてしまったという。
もしかして、余り体力が無いのだろうか?
凄いのか、凄くないのか。
仲森と言う人間が分からなくなるが、これだけはハッキリと言えた。
彼女は他の奴等とは違う。
私や一夏といった『特殊な事情』を持った人間にも、色眼鏡無しで分け隔てなく接してくれる人物なのだと。
その後、仲森の友人である布仏が続くようにしてISに乗り、三番目に私も乗って動かした。
布仏もそうだったが、やっぱり仲森のようにスムーズには動けない。
仲森は隠れた実力者なのかもしれない。
結局、一夏は女子達を振りきれず、最終的には織斑先生の雷が落ちる事となった。
私達の班の実習が終わったのは授業終了直前で最後から二番目。
一番最後だったのは、ボーデヴィッヒとか言う二人いる転入生の一人が班長をやっている所だった。
今回の箒の事を簡単に説明すると……。
クラス対抗戦で完全にやらかして気まずい空気になった。
↓
謝らなくてはと思っているけど、プライドが邪魔してなかなか言えない。
↓
そのままズルズルと引きずって時間だけが過ぎていく。
↓
最終的には会話すらも無くなって部屋移動になってしまう。
↓
そのまま今に至り、実習にて一夏と同じ班になった。
…って感じですかね。
よく『時間が解決する』って言いますけど、その時間が長かったりするんですよね。
似たような経験をした人は多いんじゃないんでしょうか?
因みに、私は過去に何回もあります。
その時は本気で死にたくなる程に後悔しました。