私…生まれ変わったらモブキャラになりたいな(なれるとは言ってない)   作:とんこつラーメン

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今週末から一気に全国的に気温がガクッと下がるみたいですね。

寒すぎて、今もガクブルしながらキーボードを叩いています。

あぁ…鍋料理が恋しい…。








カレーは一晩寝かせるに限る

 切っ掛けとなったのは、午前の実習が終了した時だった。

 

「午前中の実習はここまでとする。午後からは、今回使った訓練機の整備の練習を行うので、昼休み終了後にはグラウンドではなく格納庫に班別に集合すること。専用機持ち達は訓練機と自分の機体の両方を見て貰うので、そのつもりでいるように。それでは解散!」

 

 成る程…午後からは整備の実習ってわけね。

 極秘扱いとはいえ、私もいつか必ず自分の手でトールギスの整備をしなくてはいけないんだろうし、その時に備えて色々と勉強しておくことは悪くない。

 流石に全部が全部、そのまんま技術が使えるって訳じゃないだろうけど、それでも基礎的な部分さえ把握しておけば、そこからは応用が効く…と信じたい。

 

 因みに、あれから私達の班のIS起動&搭乗&歩行の実習はギリギリの時間で終わらせることが出来た。

 織斑君に対して謎アピールをしていた子達によって完全に遅くなったから。

 無論、そんな事をしてなにもお咎めが無い筈も無く、私達が真面目に実習をしている横で厳しいお説教を受けつつ、放課後に居残りで強制補習を受ける事が確定していた。

 彼女達には悪いけど、私は全く可哀想だとは思わない。

 授業を真面目に受けようとしない彼女達の自業自得だ。

 

「ん?」

 

 実習が終わった以上、ここではもう使わないISは片付けておく必要がある。

 運んできたISは専用の移動式ハンガーに固定をして動かすんだけど、悲しい事にこれは自動では動かない。

 格納庫まで運んでしまえば、そこからはベルトコンベアが運んでくれるので問題無いらしいけど、そこまでは人力で運んで行かなくちゃいけないらしい。

 因みにこれ、全て虚先輩から教わった事だったりする。

 流石は整備班のリーダー。めっちゃ頼りになる。

 

「織斑君…一人で運ぼうとしてる?」

「みたいだね~」

「他の子達は……あ」

 

 もう帰り始めてるし…。

 どうやら、彼女達は全く懲りてはいない様子。

 IS学園みたいな専門学校では、授業以外の部分もちゃんと見られていて、そこもまた立派な内申の評価に直結したりする…らしい。

 これは、前世で知り合いだった専門学校生の子が言っていた事だ。

 全部が全部、そう言う訳じゃないだろうけど、少なくともそんな所もあるって事を知っているだけでもかなり違う。

 

「…何やってんだか。布仏さん」

「はいはーい」

 

 一緒の班なのに、あのまま織斑君一人に任せっぱなしってのは流石に悪い気がするので、ここは二人で手伝ってあげる事に。

 

「織斑君。手伝うよ」

「仲森さんに布仏さん…」

「しゅっぱつしんこ~!」

 

 織斑君を挟むようにしてから並んで、一緒に押していく。

 三人で押せば、かなり楽になるね。

 

「二人とも…さっきは本当にゴメン。俺がちゃんと出来なかったばかりに、仲森さんに全部任せるような事になって…」

「あの事なら全然気にしてないよ。寧ろ、アレに関して言えば織斑君だって立派な被害者じゃない」

「おりむー、凄くオロオロしてたよね~」

「あはは…面目ない…」

 

 いきなり、あんな事になれば大抵の人は似たような反応をするでしょ。

 あの状況で普通でいられるのは、根っからのナンパ野郎ぐらいだよ。

 

「なんつーか…あれじゃ、仲森さんが班長みたいだったよな…」

「私は普通にゴメンだけどね」

 

 班長もリーダーも私の柄じゃないんだよ。

 私は常に皆の影の中にいれば、それでいいんだから。

 

「ま…待ってくれ。三人共」

「「「ん?」」」

 

 私達を後ろから呼び止めるのは…篠ノ之さん?

 向こうから話しかけてくるだなんて、また珍しい事もあるもんだ。

 

「わ…私も一緒に手伝う。いや、手伝わせてくれ!」

「箒……」

 

 理由は知らないけど、さっきよりは表情が明るくなってる…気がする。

 

「別にいいんじゃない? 人数が増えれば、それだけ早く終わるんだし」

「それもそうだな。箒…頼めるか?」

「あ…あぁっ! 任せてくれ!」

 

 強気な表情で頷くと、篠ノ之さんは私の隣に来てからハンガーを押し始める。

 いや…織斑君の隣じゃないんかい。

 

「そこでいいの?」

「あぁ…今は仲森の隣がいい」

「…そう」

 

 本人はそう言っているのなら、私はそれを尊重する。

 どうこう言う権利なんて初めから存在してないんだし。

 

(…仲森)

(篠ノ之さん?)

 

 なんか急に小声で話しかけてきた。これまた意外な展開。

 

(…さっきは本当にありがとう。お前がいなかったら、どうなっていたか分からなかった)

(私は何もしてないよ)

(ふふ…今はそういう事にしておこう。いつの日か必ず、この恩は返す。約束だ)

(…お好きにどうぞ)

 

 恩返しねぇ……私、彼女に何かしたっけ?

 本気で身に覚えが無い。

 私はただ、やるべきだと思った事をして、言うべきだと思った事を言っただけだし。

 

「なぁ…仲森さん」

「今度は織斑君か…何?」

「(今度?)昼休みってさ…どこで飯を食う予定なんだ?」

「んー…今日は布仏さんや凰さんと一緒に中庭かな。天気もいいし」

「だったらさ、偶には俺も一緒に食べてもいいか? …まだ何もお礼が出来てないしな」

「気にしなくていいって言ってるのに……」

 

 ここまで頑固な義理堅さも逆に珍しい気がする。

 彼の場合、そこに何にも裏が無いのがまた質が悪い。

 

「…布仏さんが良いって言うのならいいよ」

「私なら全然いいよ~。かおりんと一緒ならどこまでも~」

「…だってさ」

「よっし! そうだ! 折角だし箒も一緒にどうだ?」

「わ…私もだとッ!?」

 

 おう…一気に積極的になりましたな。

 原作じゃ、篠ノ之さんの方から誘ってなかったっけ?

 完全に立場が逆転しとりますがな。

 

「そう…だな。仲森たちと一緒ならば…構わんが…」

 

 どうして私の名前が出てくるの?

 どうしてこっちをチラッとだけ横目で見たの?

 

「決まりだな。それじゃ、とっととコイツを運んでしまおうぜ」

 

 急にやる気を出した織斑君の活躍によって、あっという間にISの片づけは終了した。

 やっぱり、力仕事の時は男の子って頼りになるなぁ~。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 昼休みになり、俺は仲森さん達と一緒に昼食を食べることになった。

 ただし、食べる場所は中庭じゃなくて別の場所なんだけど。

 

「直射日光が眩しいわね…」

「ポカポカしてて気持ちがいいねー」

 

 俺達が今いる場所…それは学校の屋上だった。

 他の学校とかとは違い、IS学園の屋上は基本的に人の出入りが自由になっているみたいで、普通にベンチやらテーブルが設置してあるだけじゃなく、人工芝まで敷いてある徹底振り。

 

(…ちょっと一夏)

(なんだよ鈴?)

 

 俺の隣に座っていた鈴がヒソヒソ声で話しかけてきた。

 いきなりどうしたんだ?

 

(確か、アンタが誘ったのって佳織と本音なのよね?)

(最初はな)

(まぁ…その場にいたから箒も一緒に誘ったってのは、百歩譲って納得はしてあげる。佳織の顔を見ながら笑みを浮かべているのは本気で謎だけど)

 

 そういやそうだ。

 いつの間にか、あの二人が仲良くなっている事は普通に嬉しい。

 クラス対抗戦以降、なんか妙に話しにくい雰囲気になってたからな…。

 

(あのデュノアって奴を誘ったのもアンタなのよね?)

(あぁ。転校した手でまだ友達だっていない状態なんだし、少しでも仲良くなれればと思ってな)

(…その気持ちは理解出来るけどね。そこもまぁ…千歩譲って納得はしてあげる。けど……)

 

 鈴が視線を向けると、そこにはずっと俯いているセシリアが。

 

(どうして、よりにもよってセシリアまで誘うのよ! あんた、あいつが佳織に何をしようとしたのか忘れたわけじゃないでしょうッ!?)

(当たり前だ。けど、だからと言って、いつまでもこのままって訳にはいかないだろ? セシリアと仲森さんが少しでも仲良くなれたら、それに越したことは無いじゃないか)

(はぁ…全く…アンタって奴はどこまで……)

 

 なんでそこで溜息を吐かれないといけないんだ?

 別におかしなことなんてしてないつもりだが?

 

「…もういいわ。それよりも早く食べましょ。本気でお腹空いてきたし」

「そうだな。…って、仲森さん? そのリュックから取り出した保温性能がありそうな鍋は一体…?」

「私のお弁当だけど?」

「それをお弁当と言い張るか…」

 

 大きさ自体はそれなりだけど、学校で食べる昼食で鍋を持ってくるなんて聞いたことが無い。

 

「かおり~ん、それはなんなの~?」

「今日のお昼はカレーライスです」

「「「「「カレーライスッ!?」」」」」

 

 いやいや…食堂で食べるのならいざ知らず、自作したのを普通持ってくるかッ!?

 仲森さん…大人しそうな顔に似合わず大胆な事をするんだな…。

 

「一応言っておくけど、この程度は普通だよ。中学の時なんて、お昼に友達みんなで鍋料理とか食べてたし」

「…あのメンバーなら普通にやりそうね」

 

 弾の家で見た、あの子達か…。

 確かに個性豊かな面々ではあったけど。

 

「な…仲森。どうしてカレーなんだ…?」

「昨晩、急にカレーが食べたくなったんだけど、どうせなら少しだけ我慢をして明日のお昼にでも食べようと思ったの。じっくりコトコト煮込んでから一晩寝かせてあるから美味しくなってると思う」

「ほ…本格的なのね…」

 

 カレーは次の日に食べる方が美味しいとは聞いたことはあるけど、それを実践している人は初めて見た…。

 因みに俺は、作ったその日に食べてしまう派だ。

 

「に…日本の女の子って凄いんだね」

「いや…佳織を基準に考えるんじゃないわよ。この子がぶっ飛んでるだけ」

「…これぐらい普通だと思うんだけどな」

 

 仲森さん。申し訳ないけど、君の普通と俺達の普通は違うと思うぞ?

 中学時代、どんな学生生活を送ってきてるんだよ…。

 色んな意味で気になってきたぞ。

 

「てなわけで…はい。布仏さん」

「わーい!」

 

 ちゃんと市販のお弁当箱にご飯を用意して、そこにカレールーをかける形で食べるみたいだ。

 布仏さんに渡されたやつは…匂いからして絶対に美味い事が確定できた。

 具が入っていない…いや、煮込んだって言ってたから、溶け込んでるのか?

 

「凰さんにもあげる」

「いいの? ありがと。驚きはしたけど、佳織の料理の腕も気になってたから良い機会だと思って有り難く頂くわ」

 

 そんな事を言っている鈴が持参しているタッパーには得意料理の酢豚があった。

 いや…酢豚は良いけど、それは白米とセットになってる方がいいんじゃないのか?

 そう言う意味じゃ、仲森さんのカレーとの相性はいい…のかな?

 

「それと…はい。デュノア君にも」

「え? ボクにも?」

「うん。こんな事もあろうかと思って、ライスもルーも少し多めに作ってきたから。お弁当…無いんでしょ?」

「う…うん。食堂か購買部で何かを買う事を考えたんだけど、まだちゃんと詳しい場所とかを把握してないから…」

「だと思った」

 

 それもそっか。

 同じ男同士として色々と勉強を教わろうと思っていたけど、その前にまずは校舎の案内を先にした方が良さそうだな。

 

「本当に…仲森は気遣いの天才だな」

「そんな事は無いよ。料理を作る際、念には念を入れて予定よりも少し多めに作っておくのは当たり前の事だし」

「そうなのか?」

「うん。もしかしたら、予想以上にお腹が空いてお替りをするかもしれないし、誰かお客さんがやってくるかもしれない。誰かの事を思って料理を作るって言うのは、別に気持ちを込める事じゃなくて『もしも』の時を想定して作る事を言うんだと私は思うよ」

 

 気持ちじゃなくて『もしも』を想定する…か。

 そんな事、今まで一度も考えた事が無かったな…。

 やっぱり仲森さんは凄いな…。

 

「では、この世の全ての食材に感謝を込めて…いただきます」

「「いただきます」」

「い…いただきます?」

 

 どこぞの美食屋みたいな事を言ってから食べ始める仲森さん達。

 こ…これは匂いだけでもお腹が空くヤツだ…!

 

「んっ!? かおりんのカレー…ちょーちょーちょー美味しいよ~♡」

「ちょ…これマジで美味過ぎなんですけどッ!? 完全にお店の味じゃないのっ!」

「うん。凄く美味しいよ! 仲森さん…だったっけ? 料理が上手なんだね」

「普通だと思うけど? 家じゃ私が主に家事をやったせいか、自然と作れるようになったってだけだし」

 

 うわ…なんか他人事とは思えない台詞。

 俺もある意味、似たようなもんだしな…。

 

「な…なぁ…仲森さん。よかったら俺にも少し分けてくれないか? 参考に食べてみたいんだ」

「別にいいよ。まだ少しだけなら残ってるから」

「ありがとう!」

 

 こんな事すらも想定していたのか、仲森さんは紙の小皿に少しのご飯をよそってからルーをかけてからスプーンも用意してくれた。

 それを受け取ってから、我慢できずに一口パクリ。

 

「う…美味っ!」

 

 カレールーの中に野菜の旨味がこれでもかと凝縮されてる!

 よく見たら牛肉らしき物も入ってるけど、それは本当に少しだけ。

 これは完全にプロの味だ…!

 

「もしかしてとは思うけど…これって摩り下ろしたリンゴとか入れてる?」

「よく分かったね。大正解」

「やっぱり…」

「隠し味として仕上げに入れたの」

「カレーの隠し味と言えばリンゴとハチミツだよなって思って」

「それは私も同感。ソースとかも入れるけど」

「俺も時々、入れたりするな」

 

 まさか、仲森さんと料理談義が出来るとは思わなかった。

 共通の趣味がある人ってのは、それだけで貴重だよな。

 鈴に続いて二人目になるな。

 

「な…仲森…もしよかったら…その…私にも少し分けてくれないか?」

「このカレーを?」

「あぁ…ダメだろうか?」

「別にいいけど…もう予備は無いんだよね…。一口だけでもいい?」

「も…勿論だ! 弁当ならば持参はしているからな!」

「そうなんだ」

「うむ! だから安心してくれ……んぐっ!?」

 

 お…おぉ…マジか…。

 

「か…かおりん…?」

「佳織…?」

「うわぁ……」

 

 いきなり、箒の口に自分が使っていたスプーンを捻じ込んだ仲森さん。

 普段の彼女からは想像も出来ないような大胆な行動に皆がポカーンとなっている。

 特に箒は自分の身に何が起きたか分からないって顔になっていた。

 

「どう? 美味しい?」

「う…うん…美味しい…です…」

 

 驚きの余り、あの箒が敬語になってる。

 本人に言ったら絶対に怒られるだろうけど、珍しい物を見たなー。

 

「それは良かった。あむ」

「な…仲森っ!? それはそのまま使うのかっ!?」

「そりゃ使うでしょ。使わないと食べられないし」

「そ…それはそうだが…その…汚いとか思わないのか…?」

「…篠ノ之さんは、ちゃんと朝に歯磨きはしてるんでしょ?」

「も…勿論だ。毎朝欠かさずにやっている」

「それなら別に汚くはないでしょ」

「いや…そう言う問題じゃなくてだな…」

 

 けどこれ、完全に間接キスになってるよな? 大丈夫なのか?

 いや…女の子同士は流石にノーカウントか。

 仲森さんも気にしてないっぽいし。

 

「かおりん! 私も! 私も『あーん』ってして~!」

「布仏さんも? もしかして足りなかった?」

「うん! 足りなかった! だから『あーん』!」

「はいはい。お口を開けて…あーん」

「あーん♡ ん~♡」

 

 布仏さん…よっぽどお腹が空いてたんだな。

 あんなに嬉しそうな顔をして。

 

「あ…あたしも…あれぐらいした方がいいのかしら…」

「鈴? 何をブツブツと言ってるんだ?」

「なんでもないわよ!」

 

 怒られた。なんでだ?

 俺…なんか変な事でも言ったかな?

 

 それからも、仲森さんが話題の中心となって昼食は賑やかに進んでいった。

 箒に元気が戻ったようで本当に安心した。

 

 それとは別に、セシリアは終始俯いたまま無言を貫いていた。

 …少し事を急ぎすぎたかもしれないな…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




箒、完全に攻略一歩手前状態に。

佳織自身は全くの無自覚ですが。




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