私…生まれ変わったらモブキャラになりたいな(なれるとは言ってない) 作:とんこつラーメン
当然ですが、本当に話をするだけです。
それぞれ、織斑君に注文したドリンクを受け取ってから、各々に好きな場所に座った。
備え付けの椅子やベッドの上とか、そりゃそう好き放題に。
「普通のココアじゃなくて、気を利かせてミルクココアにするなんて…分かってるじゃない」
「それぐらいはな」
「その細やかな気遣いをデュノアさんにも使えればよかったのにね~」
「うぐっ!」
いや? 織斑君が胸を抱えて蹲ってる。
持病の『失敗したことを指摘されると胸が痛くなる病』でも発症したのかしら?
「それじゃあ、改めて色々と事情を聞こうか? …と言いたいところだけど、その前にまずは私達が予想したことを言ってもいい?」
「予想したこと…?」
「そ。ここに来るまでの間に私達で色々と話し合ってね。もしも合っているなら話が早く済むから」
「わ…分かったよ。聞かせて…」
「りょーかい」
デュノアさんの了承を得たので、私は皆に目配せをしてから頷いた。
それに合わせて皆も同じように頷いてくれる。
「まずは確認からしますわ。デュノアさん…あなたはあのフランスの大企業『デュノア社』の人間ですわね?」
「その通りだよ、オルコットさん。デュノア社社長『アルベール・デュノア』…その人がボクの実の父なんだ」
「やっぱり…。デュノアと言う名前はそう多くはありませんから、最低でも親戚ぐらいの関係とは思っていましたが、社長の子供だったとは…」
オルコットさんの質問によって、彼女の血の繋がりなどに関しては原作通りであることが確認できた。
では次だ。
「アンタが態々、男装なんてことをしてまでIS学園に乗り込んできたのは…デュノア社の経営危機が原因…でしょ?」
「…その通りだよ。良く知ってるね」
「この程度の事は、ネットを調べればすぐに出てくるわよ。デュノア社の事に関しては割と大きなニュースになってたしね」
それは私も知ってる。
テレビのニュースは勿論、ネットニュースでも割と頻繁に話題に上がっていた。
「ま…待ってくれよ鈴。デュノア社って確か、量産型ISのシェアが世界第三位の大企業なんだろ? なんでそんな会社が経営危機になんてなるんだよ?」
「それは……」
「デュノア社で製造しているIS『ラファール・リヴァイヴ』が第二世代機だからだよ」
「仲森さん……」
凰さんから交代して、今度は私のターンだ。
長話は疲れるから苦手だけど、頑張るぞー。
「第二世代の何が悪いんだ?」
「今や、IS業界全体の流れは第三世代機が主流になりつつある。そんな中、未だに第二世代止まりというのは余りにも致命的なの」
「時代に遅れているってことか…」
「その通り。そもそも、IS一台を製造するにも莫大な資金が必要になってくる。量産機は当然、それが専用機ともなれば尚更ね。だから、デュノア社に限らず世界中の殆どの企業は国からの資金援助を受けながら辛うじて開発が成立しているの」
うぅ…ISについて改めて猛勉強した甲斐があったよぉ~!
山田先生…虚先輩…本当にありがとう!!
「現状、フランスは欧州連合の統合防衛計画『イグニッション・プラン』というのから除外されてる。その理由は単純明快で『次世代機である第三世代機を開発できていないから』。だからこそ今のフランスにとって第三世代機の開発は国家をあげての急務になっている。勿論、そこには国を守る為って言う名目もあるけど、それ以上に資金力で劣っている国が一番最初の一手を取れなかった場合…その後に見るも無残な事になってしまうの」
ひ…一息で言えた…。
お蔭で凄く喉が渇いた…ごくごく…。
「佳織さんの仰った通り、欧州連合では現在、第三次イグニッション・プランの自機主力機の選定中なのです。トライアルに参加中なのは、私の故郷であるイギリス…ブルー・ティアーズを初めとする『ティアーズ型』。ボーデヴィッヒさんが所属しているドイツの『レーゲン型』。そしてイタリアの『テンペスタ型』の三機で、今のところはギリギリのところでイギリスがリードをしていますが…それでもまだまだ厳しい状況であるのには変わりはありませんわ。その為の実戦データを少しでも多く取って今後に生かす為に、私がこうしてIS学園へと派遣されて来たのです」
こっちが体力回復している間にオルコットさんが補足をしてくれた。
ナイス! という意味を込めてサムズアップをすると、なんでか顔を赤くしてしまった。なんで?
「…で、ここからがあたし等の予想なんだけど……」
「デュノア社でも第三世代機の開発をしようとした…が、他の国々とは違って致命的なまでにスタートダッシュに出遅れている。故にデータや時間などが圧倒的に不足していて明確な形にする事すら難しい状態だった。そんな最中に政府から通達が開発に関する予算が大幅にカットされてしまった。しかも、万が一にも次回のトライアルに選出されなかった場合…援助そのものを完全に打ち切られる上にISの開発許可すらも剥奪されてしまう…と言う感じか?」
ここでまさかの篠ノ之さんが説明役に。
いや…確かに彼女も話し合いには参加してたけどさ…ここまでちゃんと説明してくれるとは思わなかった。
なんだかんだ言っても、こんな所はお姉さんに似てるんだね。
「はは…皆、凄すぎるよ…。見事に全部当たってる。大正解だ」
「おぉ~。正解した私達に織斑君は賞品として茶菓子を提供してください」
「シリアスな話を一瞬で壊すのは止めてくれないかッ!? まぁ…別にいいけどさ」
いいんだ。しかも、ちゃんと用意してるんだ。マジでやるな…。
「仲森さん達の説明でなんとなくは理解した。けど、それとシャルルが男装することに何の繋がりがあるんだよ? というか、そもそも誰がそんな事をしろって言いだしたんだ?」
「もう分かってるんじゃないの?」
「…………」
茶菓子を用意しながら織斑君が尋ねるけど、途中で黙り込んでしまった。
流石の彼も、彼女に男装を命じたのが誰なのかは分かったみたい。
「親父さん…か?」
「うん。こんな風に使うには丁度良かったんじゃないかな? なんせボクは…愛人の子供だから」
ここからの話は原作通りだからちょっとだけ省略。
聞いていても胸糞な気分になるだけだしね。
事実、織斑君はめっちゃ怒ってるっぽいし。
「そして、ボクが男装をしていた理由は大きく分けて二つ。一つは世界中から注目を浴びる為の広告塔としての役目。もう一つは……」
「同じ男子なら、織斑君とも接触しやすいから…でしょ?」
「…その通りだよ。仲森さん」
「織斑君と接触する理由は、彼が使った機体そのものを…最低でも稼働データを手に入れて、あわよくば織斑君自身の遺伝子情報を持ち帰る…かな?」
「…うん。機体のデータは今後の開発の為に、一夏自身のデータは他国との差を少しでも縮める為に必要なんだ。『自分達の国には男性IS操縦者の遺伝子データがあるんだぞ』ってアピールしてね」
なんともまぁ…聞いているだけで頭が痛くなりそうだわ。
やってることは、まんま子供じゃないのよ。
私達が知らないだけで、上の連中でこんなのばかりなのかもしれない。
「なんだよそれ…! そんなの…そんなの…!」
「…織斑君。気持ちは分かるけど今は抑えて」
「でも!」
「ここで大声を出して外に漏れたりしたらどうするの?」
「うっ…!」
実際には防音処理ぐらいはしてそうだけど、念には念を入れてね。
こーゆーのはどこから漏れてるか本当に分からないから。
「…あんまりこういう事は言いたくないけどさ…今の世の中、脛に傷が無い人間なんて本当にごく少数なんだよ。誰だって一つや二つ、人に言えない…言いたくない事情を抱えているものだよ」
「それは…仲森さんも?」
「さぁ…どうだろうね」
いや…ぶっちゃけて言うと、私なんて後ろめたい事情の塊みたいな人間ですからね?
言えない事なんて、それこそ山のようにありますがな。
「な…なぁ…」
「何よ?」
「もしも…もしもだぞ? このままだったら…シャルルはどうなっちまうんだ?」
「多分だけど…まず間違いなく候補生の称号は剥奪されるでしょうね。その後に裁判に掛けられて…良くて投獄。最悪の場合は……」
「…もういい」
「…そう」
凰さんの容赦のない口撃に織斑君は静かに怒りを堪えている感じがした。
流れ的に、そろそろ彼が『あれ』を言いだす頃かな…。
「そ…そうだ。思い出した! 特記事項第21! あれならなんとか…」
「ならないよ」
「……え?」
はぁ…言うと思ったよ。
それこそが最大の罠だとも知らずにさ。
「織斑君が今言おうとした特記事項第21…それはデュノアさんには使えないよ」
「なんでだよっ!?」
「『本学園における生徒は、その在学中においてありとあらゆる国家・組織・団体に帰属しない。本人の同意が無い場合、それらの外的介入は原則として許可されない』…これが第21の内容。普通に考えれば、これでなんとかなるかも…なんて考えてしまう。けど、それこそが罠」
「わ…罠って…なんだよ…」
「オルコットさん」
「はい」
ここは、私なんかよりもデュノアさんと同じ代表候補生の一人であるオルコットさんに説明をして貰った方が分かり易いし、説得力もあると思う。
「まず、代表候補生がなんなのかはご存知ですか?」
「そりゃ…あれだろ? 国家代表の候補生…」
「その通りですわ。ですが、候補生とはいえ国の名を背負っている事には変わりはない。そして、私がつい先ほど言った『IS学園に来た理由』をもう一度言えますか?」
「えっと…『ISの実戦データを取る為に派遣されてきた』…だよな?」
「そう…『派遣』です。つまり、半分は『国の仕事』で訪れている訳なんです。これが何を意味するのか分かりますか?」
「何をって……」
「『代表候補生と言う存在は、IS学園に入る前から既に国に所属している』…ということですわ」
「は…はぁっ!? なんだよそれっ! そんなのおかしいだろっ!? IS学園は国の介入とかが出来ないんじゃないのかッ!?」
「普通ならばそうですわ。だけど、何事にも『例外』は存在する。その例外こそが……」
「代表候補生ってわけか……」
「正確には『国家代表』もですけど」
そう…それが重要。忘れちゃいけない項目。
これを無視したら、痛い目を見るのは自分自身。
「織斑君。IS学園は立派な学校法人…分類上は高等学校になってる。それはつまり『義務教育』じゃないってこと。学校経営という名の商売をやってるんだよ。特に、IS学園は日本だけじゃなくて世界各国から色んな生徒が入学してくる。別にそれ自体は何の問題も無い。けど、中にはオルコットさん達みたいに『最初から国に所属している人間』だって入学してくる場合もある。けど、それだとさっきの特記事項が邪魔をしてしまう。じゃあ、どうすれば彼女達は入学できると思う?」
「それは……」
「答えは簡単。国の介入を認めればいい。そうすれば候補生でも入学できる。もしかしたら、その際に学園側は多額の金とか貰ってたりしてね」
これは私がずっと疑問に思っていた事の一つだ。
国や企業の介入を許さないと言いつつも、実際には様々な国から候補生が入学して来ている。
余りにも矛盾してるんじゃないかって。
「一夏…アンタがさっき言おうとした特記事項第21ってのは、あくまで『一般生徒』を守る為のものなのよ」
「一般生徒のもの…?」
「そ。一般生徒の中には練習次第で候補生クラスの優秀な実力を持つ人間が出てくる可能性がある。佳織や箒なんかがその最たる例じゃない。それは一夏だってよく知ってるでしょ?」
「あ…あぁ……」
「あたし達のような候補生には『国』という強力な後ろ盾があるから手が出せないけど、他の生徒はそうじゃない。その気になれば口八丁手八丁で幾らでも好きに出来る。そういった時の為に『いざと言う時はIS学園が無所属の子達の後ろ盾になりますよ』って言ってるのが、さっきの特記事項第21なのよ。分かる? あたし達『代表候補生』は『一般生徒』として最初からカウントされてない。所謂『特別枠』として入学して来てるの。だから、代表候補生の生徒にさっきの特記事項は適用されない」
凰さんが物凄く分かり易く説明してくれた。
…今度、勉強でも教わろうかしら。
「デュノアさんに至っては『国』と『企業』の両方にデフォルトの状態で所属している。これをどうにかするのは普通じゃ絶対に無理だよ」
「そもそも、事は既に私達だけでどうにか出来るレベルを遥かに超越している。お前の『誰かを守りたい』という気持ちは立派だが、それだけではどうにも出来ない事も世の中には沢山存在している」
おぅ…篠ノ之さんがトドメを刺しおった…。
織斑君は項垂れて完全に意気消沈になってる。
「ちくしょう…! 俺じゃ…シャルルを助けてやることは…救ってやることは出来ないのかよ…!」
「少なくとも、個人の力だけじゃ天地がひっくり返っても絶対に不可能だよ」
あ…私もつい言っちゃったゼ。
「ありがとう…一夏。その気持ちだけでも嬉しかったよ。でも、もう…」
…なんか急に腹立ってきた。
私達はあくまで『説明』をしただけ。
全ての希望を摘み取ってはいない。
どうして最後まで足掻こうとしないの?
そんな簡単に諦めちゃうの?
「…確かに、私達には何も出来ない。けど…どうにか出来るかもしれない可能性を秘めた人物を『紹介』する事は出来る」
「「…えっ!?」」
これこそが私の奥の手…じゃなくて、実は最初から想定していた事だったりします。
本人からも『その時になったら自分を呼んで』って言われてるし。
「今から、その人物をこの部屋まで呼ぶ。けど、その前に2つだけデュノアさんに尋ねたい事があるんだけど…いい?」
「な…何を聞きたいの?」
「まず一つ。まだ織斑君の機体からデータとかを抜き取ってはいないよね?」
「う…うん。何もしてないよ…」
「んじゃ次。今回の事はデュノアさんのお父さんの独断? それとも国から命令?」
「お父さんの独断…だと思う」
「国からお父さんが命令されて…とかでもないんだね?」
「多分…詳しい事は分からないけど、それっぽい事は一度も聞いてないから…」
「ん…分かった。それさえ聞ければ十分だよ」
あの人が来る前に判断材料は揃えた。
後は私が電話をするだけだ。
ピポパ…ってね。
「もしもし? 仲森です」
『佳織ちゃん? そっちから掛けてきたって事は…』
「はい。例の件で知恵を貸してほしくて掛けました」
『了解よ。でも、思ったよりも早かったわね』
「織斑君が自慢の特技を披露しまして。それで判明しました」
『あぁ…なんとなく理解したわ』
「流石です。今は織斑君の部屋にいるんですけど、来れますか?」
『大丈夫よ。彼の部屋の場所はちゃんと把握してるし、別に何かをしていたって訳じゃないしね』
「助かります」
『さぁーて…佳織ちゃんが頼ってくれたんだし、お姉さん張り切っちゃうわよー!』
「ほ…程々にお願いします…」
『それじゃ、今すぐにそっちに行くからー! またねー!』
「お待ちしてます」
これでよしっと。後は待つだけだね。
「なぁ…仲森さん。一体誰に電話したんだ?」
「私達生徒の頂点に君臨してる人。それで、織斑先生と同じぐらいに私がめっちゃ頼りにしてる人でもある」
「あの佳織が…」
「頼りにしている人…」
「一体誰なんですの…?」
「あー……」
凰さんと篠ノ之さんとオルコットさんは、どうして怪訝な表情になるの?
さっきから難しい話だったからずっと傍観してた布仏さんはすぐに誰なのか分かったみたいだけど。
「それよりも織斑君。お茶もう一杯用意して。お客さんが増えるんだから」
「お…おう。それもそうだな」
彼をキッチンに向かわせた直後、部屋の扉がノックされた。
この部屋の主は忙しいので、代わりに私が返事をしますか。
「佳織ちゃん? 来たわよー」
「どうぞー。遠慮なく入ってくださいなー」
「それじゃ遠慮なく…失礼しまーす」
呑気な声と共に入ってきたのは、我等がIS学園の生徒会長『更識楯無』その人だった。
暗部の長として裏の事情にも必要以上に詳しい、この人ならばきっといい知恵を貸してくれるに違いない。
私なんかとは頭の出来が違うからね。
次回、たっちゃん大活躍?
もう完全にヒロイン候補の一人になってますね…。
割と好きなキャラだからいいんだけど。