私…生まれ変わったらモブキャラになりたいな(なれるとは言ってない) 作:とんこつラーメン
色んな意味で峠は越えたので、後は今までの感覚を取り戻すだけです。
それが一番大変なんですけどね…。
ボーデヴィッヒさん暴走事件があった次の日の放課後。
私は布仏さんと一緒に生徒会室に行って、心配させてしまった更識先輩と虚さんに謝った。
「何と言いますか…御心配お掛けして、本当に申し訳ありませんでした」
「べ…別にいいのよ? お友達が酷い目に遭っていると聞かされれば、誰だって同じような事をするわよ。ね? 虚ちゃん」
「そうですね。寧ろ、仲森さんの優しさが垣間見えて嬉しくも思いました。いきなり走り出したことには驚きましたけど」
「普段から大人しい佳織ちゃんからは想像も出来ない行動だったわよね。お姉さんもびっくりしちゃった」
「あはは…お恥ずかしいところをお見せしました」
我ながら、まさかあそこまで過剰な反応をするとは思ってませんでした。
間違いなく、あの時が生涯最速の力を発揮してたと思う。
「簡単な報告は私達も聞いたけど、出来れば当事者である佳織ちゃんからも話が聞きたいのよね。お願いできるかしら?」
「私のつたない説明で良ければ…」
「十分よ」
というわけで、私は自分の言葉であの時あった事を説明した。
ボーデヴィッヒさんが半ば一方的に凰さんとオルコットさんを痛めつけていた事。
ギリギリのところで私が駆けつける事が出来て、トールギスを使って暴れている彼女を制圧した事。
その後にボーデヴィッヒさんは反省室にて謹慎処分となり、凰さんとオルコットさんはなんとか大丈夫ではあったが、二人の専用機のダメージがかなり深刻な状態だったようでトーナメント出場を辞退せざる負えなくなった事。
「…てな感じです」
「成る程ね。全然つたなくなんて無いじゃない。凄く分かり易かったわ」
「はい。流石は中学時代に落語部をしていただけはあります。文章の構成、話のペース、全てが素晴らしいの一言です」
「そ…それほどでも…」
「かおりん…すごぉ~い…」
なんでもやっておくもんだね…ホント。
昔取った杵柄とはよく言ったもんです。
「けど…残念ね。代表候補生が二人もリタイヤだなんて」
「大会当日に来訪する方々の中には、候補生達の様子を見に来ている方々もいますからね」
「これが学園内で起きた出来事だったから、まだよかったけど…これがもしも外で起きた事だったら、かなりのスキャンダルになってたわよ?」
「まず間違いなく、ドイツは中国とイギリスから批難をされるでしょうね」
「全く…自分がどれだけの事をしたのかって自覚があるのかしら…」
「仲森さんがいなかったら本当に危なかったですね」
「本当ね……」
ど…どうやら、今回のアレは冗談抜きでヤバかったみたいでゴザル。
トールギス様々ですな。
「ま…トーナメントまで反省室行きになってるなら、暫くは大人しくしているでしょうけど…」
「問題はそれから…ですね」
「今から考えても頭が痛いわ…はぁ……」
先輩二人が頭を抱えていらっしゃる。
後輩としてどうにかしてあげたいけど、私に出来る事なんてたかが知れてる。
今度、何か手作りのお菓子とか差し入れてみるか?
「そうだ。トーナメントで思い出したけど、佳織ちゃんはもう今度のトーナメントがタッグ戦に変更になったのは知ってる?」
「はい。あの後、織斑先生に教えて貰いました」
「そう…なら話が早いわね。佳織ちゃんは誰とタッグを組みつもりでいる?」
「あ~…」
そうですよねー。やっぱ組まないとダメですよねー。
本当は出場とかしたくないんだけどなー。
「あ…あのー…トールギスで出場とかしちゃ拙いんじゃ…?」
「佳織ちゃんなら出力制御とか楽勝でしょ?」
「うぇあっ!?」
そんなの出来る訳が無いでしょーが!
私は乗ってるだけなんですよ! トールギスが勝手に動いてるだけなんですよ!
左手は添えるだけなんですよ! そんなんじゃゴール下の戦場は制せないですよっ!?
…途中から何言ってんだ私は。
「大丈夫。当日は私と虚ちゃんがどうにかするから!」
「お任せください」
「は…はぁ……」
ふ…不安しかない…虚さんがいるから大丈夫だと信じたいけど。
「で、タッグ相手はどうする?」
「うーん……」
織斑君とデュノアさんは論外として。
よくある二次創作だと、篠ノ之さんを押しのけてボーデヴィッヒさんと組んでたりしてるよね。
でも、個人的に彼女とは波長が全く合いそうにないので却下。
篠ノ之さんもいいかもだけど…その場合、一体誰がボーデヴィッヒさんとのランダムくじに選ばれるか分からない。
ここは原作準拠を心掛けながら、最も妥当な選択肢を選ばないと。
となるともう…タッグ相手は一人しか思いつかない訳で。
つーか、さっきからずっとその相手が私に向けて期待の目を向けまくっているのです。
「…布仏さんが良ければ…私と組む?」
「いいのっ!? やった~!」
いや…絶対に最初からその気だったでしょ。
あの視線を無視出来るほど私のメンタルは超合金で出来ていない。
私の精神はべちょべちょに濡れた習字紙よりも脆い。
「タッグを組むのは良いですが…問題はトールギスの性能に本音が合わせられるかですね…」
「その辺はなんとかなるんじゃないの? こう見えて本音ちゃんって意外とやるし」
「えっへん!」
マジか…あの更識先輩がここまで言うって事は、本当に布仏さんって凄いのかもしれない。
「それは私も知ってます。ですが、それとこれとは話が別なんです」
「「どゆこと?」」
ハモった。
私も心の中で同じことを思ったけど。
「そもそも、仲森さんのトールギスは僚機と行動することを前提にしていないんですよ」
「そ…そうなの?」
「思い出してください。トールギスが第何世代機であり、いつ頃生み出されたのかを」
「あ……成る程」
え? 今の説明だけでかいちょーは答えに辿り着いたの? 凄くない?
「トールギスはまだISという存在すらまだ曖昧だった時代に誕生している。つまり、全てのISの試作機とも言うべきトールギスに『連携』という概念は存在していない」
「その通りです」
そういや…原作でもトールギスっていっつも単独で行動してばっかりだったような気が…。
それだけ機体性能が化け物だっていう証拠なんだけど。
「トールギスはISの『兵器としての側面』の可能性を極限まで追求する為に『単独での敵戦域への介入する能力』と『単独で拠点制圧を行える圧倒的戦闘力』と『確実に帰還できる能力』を備えられています」
「改めて聞くと、トールギスってとんでもないわね…」
「それだけじゃありません。トールギスは一切のパッケージ換装無しで陸海空、果ては宇宙空間でも活動が可能な程の究極的なまでの汎用性があるんです」
そうなんですよねー。
トールギスってつまるところ『こいつ一人でいいんじゃね?』を本気で実現しちゃった機体だからね。
そりゃガンダム相手にも互角以上に戦えますわ。
「考えうる全ての状況に完全完璧に対応できる能力…要はトールギスは単機で何でも出来てしまえるんです。だからこそ、その所有者である仲森さんとタッグを組む際に最も重要なのは『いかに仲森さんに合わせられるか』になると思います」
「どれだけ機体制御が出来ても、トールギス自体が破格すぎる性能を持っているせいで生半可なことじゃ相棒が付いて来れないって事なのね…」
うぉぉい…トールギスよ…お前さんはどれだけ暴れ馬なんですか…。
これが本当の『私の愛馬は凶暴です』ってか?
って、私はトールギスとうまぴょいする気は無いんだよ!
いや…ゼクスやトレーズ閣下との3Pなうまぴょいならアリかも…?
「となると、トーナメントまでの間に二人の特訓は必須だけど…まだトールギスは機密扱いになってるから、放課後に普通にアリーナで練習…なんて不可能よねー」
そこなんだよなー…現在のトールギス最大のデメリットは。
かといって『実は私も専用機持ちでしたー!』なんて言えるわけないし…。
「仕方がないので、そこは学園にある『シミュレーター』を使うしかないかと」
「あー…あれね。搬入したのは良いけど、使ってる子が殆どいないやつね…」
「そんなのがあるんですか?」
「一応ね。本当は実機に乗る前にシミュレーターで習熟訓練するのが一番だろうけど、誰もそれを嫌がって使いたがらないのよね…結構本格的で面白いんだけど」
知らんかった…。
でも、この学園の生徒達ならば『シミュレーターとかだっさーい(笑)』とか言って使わないだろうな。
危機感の欠片も無いような人間達の集まりだし。
「専用機の待機形態を装置に設置すれば、ちゃんとシミュレーター内でも使えるようになるので個人的にはお勧めですよ?」
「ですね…私達は基本的にそれで練習しようか?」
「うん! かおりんとならきっと大丈夫だよ!」
「その根拠はどこから来るのか聞きたい…」
「かおりんだからだよ!」
「答えになってないし…」
その100万ドルの笑顔がかおりんには眩しいでござんすよ…。
私には一生掛かっても出来ない笑顔だわ。
こうして、私は布仏さんとタッグを組むことになったのでした。
非常に高い確率で無意味に終わりそうな気がするけどね。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
夕飯時になって食堂で食事をしていると、いつものように織斑君達も傍にやって来た。
しかも、怪我をして安静にしている筈の凰さんとオルコットさんも一緒に。
なんでも、怪我自体はISに守られていたお蔭でそこまで酷くは無かったようで、一晩寝たお蔭でいつも通り動けるようにはなったらしく、明日から授業にも復帰すると言っていた。
「そっかー…仲森さんは布仏さんと組んだんだな」
「うん。そっちは?」
もう分かり切ってる事だけど、話の流れ的に一応ね?
「俺はシャルルと組むことにしたよ。ほら…同じ部屋だから作戦を立て易いし…」
「ボクのラファールなら接近戦特化の一夏の白式のフォローもし易いしね」
だと思った。理由もかなり妥当です。
やっぱ仲間の欠点をフォローする役は必要だよね。
「しののんは~?」
「私はまだ決めかねているな。もしかしたら、当日のランダム決定に委ねるかもしれない」
ネタバレになるから言えないけど…それだけはやめた方が良いと思うな~。
100%に近い確率で『大凶』を引くことになると思うから。
「そういえば、あのボーデヴィッヒさんを仲森さんはたった一人で制圧したんだよね? どんな風に戦ったの?」
「あの時の佳織は凄かったわよ~。まさか剣一本で無双するなんて思わなかったし」
「相手の弱点のみをピンポイントで狙い、凄まじい機動力で圧倒する…。あれこそまさに絵画に書かれているような『天駆ける騎士』そのものでしたわ…」
「そうなんだ…ボクも見てみたかったかも…」
なんか凰さんとオルコットさんが惚気てるけど、実際にはそんないいもんじゃなかったからね?
こっちはマジで大変だったんだから。色んな意味で。
「トーナメントが開催されれば嫌でも見れるわよ」
「他の皆さんは想像もしていないでしょうけど、優勝候補筆頭は間違いなく佳織さんが率いるコンビですわね」
「だよなぁ~。仲森さんの実力って素人の俺でも分かるぐらいに頭一つ分以上に飛び出してるからな…。ぶっちゃけ、全く勝てる気がしないし…」
「この三人にそこまで言わせるほどだなんて…今から楽しみになってきたよ」
「あはは…お手柔らかにね?」
「私とかおりんは無敵のコンビなのだ~」
「ちょっ!?」
下手に相手を煽るような発言は止めてッ!?
プレッシャーでまた『心の痛み止め』のお世話になるから!
・・・・・
・・・・
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・・
・
反省室のベッドの上。
シーツにくるまって体を縮めこませながらラウラは考える。
(どうしてだ…どうして私は負けた…。私は織斑教官の教えを受けた栄光あるドイツの軍人…。そのはずなのに…!)
ギリッ…!
悔しさに歯を食い縛り、顔がゆがむ。
(何も出来なかった…! 文字通り、手も足も出なかった…! あんな、どこにでもいそうな女がどうしてあれ程までに強い…!? あの凄まじい機動力を持つ白い機体は一体何なのだ…!)
ISのハイパーセンサーを以てしても追い切れない程の速度。
それは最早、ISという存在そのものすらも凌駕するほどの性能。
(AICを完全に破壊され、本国にて本格的に修復しなくては再生は不可能な程のダメージを負わされた…! 何故…奴はあれ程までの動きが出来る! 軍人として教官の教えを受けた私を完全に圧倒する程の動きを何故ッ!?)
どれだけ考えても答えは出ない。
瞼を閉じれば、暗闇に浮かぶのは殺気を出しながらビームサーベルの切っ先を突き付けてくる佳織の姿。
(奴は言っていた…その気になればいつでも私を殺せると…だから手加減をしていたのだと! 教官もそれを理解していた! まるで…奴の事を認めているかのように……)
その時ふと思い出す。
千冬が佳織に向けていた視線を。
(そういえば…あの時、教官はあの女に変な視線を送っていた…。慈愛に満ちた…優しい視線を…私は一度でもあんな視線を向けられたことがあっただろうか…)
分からない。覚えていない。
あの頃は強くなることに夢中だったから。
だからこそラウラは、自分の感情が制御できなくなる。
「織斑一夏だけでなく…仲森佳織…貴様もなのか…! 貴様も私から教官を奪おうと言うのか…!」
シーツを握りしめ、ラウラは決意をする。
自分の大切なものを奪おうとするものを駆逐すると。
「仲森佳織…貴様だけは必ず…この手で…!」
怒りに染まった少女の呟きは、静かに部屋の中に消えていった。
次回はトーナメントになる…かも?
大凡は原作通りになるとは思いますけど。