私…生まれ変わったらモブキャラになりたいな(なれるとは言ってない) 作:とんこつラーメン
最初は着物風に改造したのを考えていたのですが、それじゃあ流石に目立つよなと思って考えを改めました。
放課後になって、私は暇を潰す為に図書室にでも行こうかと思って教室を出る。
こんな明るい時間帯から勉強はしたくないし、集中も出来ない。
かといって、今の私はまだ部活に入っていないし、織斑君やオルコットさんのように試合がある身でもない。
なので、放課後というのは暇以外のなにものでもないのだ。
ぶっちゃけ、すぐに寮の部屋に戻っても良かったんだけど、それはそれで万が一にでも誰かに見られたら変な目で見られそうだから即座に却下した。
どうせ、戻ってもやる事はパソコンを使ってのネット検索か読書ぐらいだし。
強制的にIS学園に入れられたんだ。
それならせめて、学園生活ぐらいは自由に堪能させて貰う。
そう思っていた矢先、それを阻む存在が私の事を呼び止めた。
「あー…仲森。少しいいだろうか?」
「お…織斑先生…?」
それは、一年一組の担任にして織斑一夏の実姉。
色んな意味で世界的有名人の織斑千冬その人だった。
「な…何でしょうか?」
「いきなりで申し訳ないのだが、実はお前に話があってだな…」
「わ…私に話…?」
話って…なに?
割と本気で心当りが無いんだけど…。
「も…もしかして、入学二日目にして早くも何かしてしまいましたか…?」
「ち…違う。別にお前は何もしていない。説教などの類の話ではない」
「それじゃあ何を…?」
「それは…だな……」
「…ここじゃ話難い内容…だったり?」
「そうなるな…。もし時間があるのなら、今から生徒指導室まで着いて来てくれると助かるのだが…」
「生徒指導室……」
それ絶対に厄介な話じゃないですかヤダー。
中学時代や前世の学生時代でも、生徒指導室なんて進路指導の時以外の用事では一度も入った事無いのにー。
多分これ…断れないやつだよね…。
仮に断っても永遠に選択肢がループする系だよね…。
「…分かりました」
「そうか! では、行くとしよう」
「は…はい」
どうして嬉しそうにするのかしら…。
はぁ…担任と二人っきりで生徒指導室に行くとか、こっちからしたら緊張しかしないんですけど…。
学校に『心の痛み止め』を持って来ておいて正解だった。
話が終わったら、適当な所で飲んでおこう…。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
先生と一緒に生徒指導室へと入ると、当然だが向かい合うように私達は座る事に。
ぶっちゃけ、怖い印象しかない人と顔を合わせるのは色んな意味で辛い。
緊張性の腹痛になりそうだ。
「こんな所まで来て貰って済まないな。だが、これだけはどうしても伝えておかないといけないんでな」
「はぁ……」
一体、私なんかに何の話をするつもりなの?
全く予想が出来ないんですが。
「あんまり回りくどい言い方をしても仲森が混乱するだろうし、私もそう言うのは余り得意じゃない。だから、単刀直入に言おう」
何をだよ。
「実は…IS委員会から仲森に専用機が与えられることになった」
「あぁー…」
やっぱ、神様が言ってた『干渉』ってのは委員会絡みだったのか。
それなら専用機が用意されても違和感ないしね。
少なくとも、何も無い所からいきなりポンと出されるよりはずっとマシだよね。
相手がIS委員会って時点で怪しさは大爆発だけど。
「その様子…矢張り、知っていたか…」
「えっ!? いや、その……」
しまった…! もっと驚いた反応をすれば良かった…!
「いや、別に怪しんでいる訳じゃないんだ。寧ろ、私達はお前の事を護ってやりたいと思っている」
「へ?」
ま…護る? 何から? 誰を? どうして?
「仲森には悪いと思ったのだが…昨日の放課後、偶然にも見てしまったんだ。お前が誰かと電話をしているのを」
「えっ!?」
き…聞かれてた? あの話をっ!?
って事は、私が転生者である事もバレてしまって……!
「い…いや。流石に全部を聞いていたわけじゃないぞ? 距離が距離だったから、途切れ途切れにしか話は聞こえなかった」
「そ…そうですか……」
よ…良かった…のかな?
「因みに、どの部分が聞こえてました?」
「専用機とか、お前が誰かの企みによってIS学園に強制的に入学させられていた、とかの部分だな」
…地味に重要な部分だけをピンポイントで聞かれてるし。
いや…確かに私はあの神様野郎の企みで強制入学に近い事をさせられたけどね。
それが何か邪悪な計画の一部とか、そんな壮大な感じじゃ絶対ないし…。
「お前が誰と話していたとか…聞いても構わないだろうか?」
「えっと……」
そう言われてもな…なんて説明をすればいいのか全然分からないよ…。
神の存在なんて絶対に信じないだろうし、どう言えばいいのやら…。
「あの人は…その…私もよくは知らないと言いますか…」
「知らない? その割には普通に話していたようにも見えたが?」
「いえ。私が知らないってのは相手の素性に関してなんです。親すらも知らない私個人の関係者って感じで…」
「仲森個人の知り合い…」
そうとしか言いようがないじゃん。
他にどんな言い回しをしろと?
って、なんか先生の顔が急に険しくなった?
私、何か変な事でも言った?
「実際に会ったのは物心ついた頃で、今じゃもう顔もおぼろげになってて…」
「では、それ以降は?」
「今から二年ぐらい前…中学二年生の二学期後半辺りに一度だけ電話を掛けてきてきました。声を聞いてから『あの人だ』って思い出したんです。で、その時に『プレゼントがある』とかって言って、それで…」
「プレゼント?」
「私も、最初はそれが何を意味するのか分からなかったんですけど、それから少ししてから私の中学にIS委員会主導の簡易IS検査が行われたんです」
「…読めたぞ。恐らく、その検査自体がプレゼントだったのだろう」
「私も後でそう思いました」
ホント…巧妙と言いますか、狡猾と言いますか。
搦め手で攻められるのが一番腹立つよね。
「しかし、そうなると『その相手』は仲森が『S』適性を出すと最初から知っていたという事になる。何故だ…?」
神様だからです…って言えれば苦労はしないよね。
「名前などは分かるか?」
「分かりません。一度も教えてくれませんでしたし」
「聞けば聞くほど、怪しさしかないな…」
「私もそう思います」
頭の先から爪先まで怪しさが詰まってるよ。
詰まってるのはトッポだけでいいのに。
「どうして、そんな奴と知り合いなんだ?」
「あの…一応、私の名誉の為に言っておきますけど、別にこっちから知り合ったわけじゃないですからね? 向こうから勝手に近づいてきたと言いますか…」
別に間違った事は言ってない。
死んだ後に自分の意志で神様の元まで向かったわけじゃないし。
転生させてくれた事だけは素直に感謝してるけどね。
その後の『余計なお世話』さえなければ本当に完璧だったのになー。
「やっぱりそうなのか…!」
「ふぇ?」
な…なんで、そこで怒りゲージがMAXになるの?
なんだか、話せば話すほど先生の顔が怖くなっていくんですが…?
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「向こうから勝手に近づいてきたと言いますか…」
その言葉を聞いて、私の中に疑問が確信に変わった。
間違いない。仲森はストーカー被害に遭っている。
しかも、そのストーカーは普通の相手ではない。
幼少期の頃から彼女に目を付け、いつの間にかIS委員会の一員にまで上り詰めている程の人物。
幾ら、相手が『S』適性の少女だからと言っても、そう簡単に素人の少女に対して専用機なんて渡せる筈が無い。
その無茶を易々とこなせる程の相手となると、相当に地位の高い人物に違いない。
(何も知らない仲森の優しさに付け込んで、まるで操り人形のように弄んで…!)
許せる筈が無い。許していい筈が無い。
一方的に連絡先を手に入れ、そのくせ名前だけは頑なに告げない。
相手が何も知らない無力な少女だと知って完全に調子に乗っている。
(恐らく、仲森はまだ自分がストーカーされているという自覚が無いのだろう。そうでなければ、こんな顔が出来る訳が無い)
まだ相手にとって今は準備段階なのだ。
これから先、時間をかけて徐々に仲森を籠絡していき、やがては……。
(そんな事…絶対にさせると思うなよ…!)
まだ知り合って二日しか経ってはいないが、それでもこいつは私のクラスの生徒だ。
担任として、私には彼女を守る義務と使命がある!
いや…違うな。仮に私が教師でなかったとしても、きっと仲森の事を護ろうとしただろう。
同じ女として、弱者に付け込むような真似をする輩から守ってやりたい。
「仲森」
「は…はい?」
「何か困ったことがあれば、いつでも私や山田先生などに相談しろ。喜んで力になってやる」
「あ…ありがとうございます…?」
仲森の小さな手を握りしめ、私は彼女に協力することを約束する。
真耶がここにいても同じ事を言っただろう。
アイツは優しさの塊みたいな性格をしているからな。
「あの…少し質問があるんですが」
「なんだ?」
「私に与えられる専用機に付いて分かってる事って何かあるんでしょうか…? 例えば、名前とか、いつ頃来るとか…」
「申し訳ないが、私達もお前の専用機に関する情報は何も与えられていないんだ。本来ならば、その手の情報は少なくとも学園側に公開するのが通例なのだが…」
今にして思えば、その事もまた怪しい。
だからこそ、こちらは最大級の警戒をしておかなければいけないのだが。
「心配するな。もし機体が届けられたら、まずはこちらの方で徹底的に調べておく。それから仲森に連絡するようにしよう」
「あ…ありがとうございます」
ふぅ…後で整備班の連中の所に行って、事情を話しておかなければな。
仲森の専用機が来た時、アイツ等の力をどうしても借りなければいけなくなる。
「それと、分かっているとは思うが、この事は出来る限り秘密にしておいた方がいい」
「他の子達に知られたら大変なことになるから…ですよね」
「その通りだ」
現状、仲森が『S』ランクだと知っているのは担任である私と副担任である真耶を除けば、学園内のごく一部しか存在しない。
表向きは、仲森は他の少女達となんら変わりのない一般生徒なのだ。
それがいきなり専用機を手にすることになったらどうなるか。
確実に仲森の学園生活に波風が立つのは明確だ。
そんなのはこちらも望んでいないし、仲森だって同じ気持ちの筈だ。
(仲森は一夏とは違う。アイツの場合は『唯一の男子だから』という理由が成り立つが、彼女の場合はそうはいかない)
Sランクだからどうしたと言われれば、それまでだ。
しかし、そうなるとまた別の問題が発生してくるわけで。
(仲森に専用機が届いた時、他の生徒にバレ無いようにしながら各種設定などや訓練などをさせないといけないのか……)
アリーナを貸し切れば、それも決して不可能ではないが…。
今の時期、それは非常に難しいだろう。
「よかった…。てっきり『専用機が与えられるなら、織斑たちの試合にお前も参加して貰う』的なことを言われるかと……」
「いや…流石にそんな事は言わないぞ? アイツ等のは完全に自業自得だし、ああでもしておかないと収拾がつかなかっただろうしな」
どこか楽観的な一夏にはいい薬になるだろうし、オルコットもまた『あの考え』を改めるいい切っ掛けになればいいと思っている。
そこに試合をする理由が全く無い仲森を乱入させるような真似はさせられないだろう。
「私、推薦って形で入学してるから、受験もさせて貰えなかったし…。ISだって今まで一度も触れた事は愚か、見た事すらないのに……」
そうだった。
仲森が住んでいる町は他の町と比べても比較的穏やかな場所だと聞いている。
女尊男卑の影響も殆ど無く、平穏な日常を送っているとか。
(そんな日常を奪ってしまったのがISとは…皮肉なものだな。よくよく考えれば、私もまた仲森をこんな目に遭わせた一端を担っているようなものか…)
本当に仲森には申し訳ないと思っている。
だからこそ、せめて学園内では少しでも平穏な日常を送って欲しい。
これは私の偽らざる願いだ。
「大丈夫だ。仲森だけじゃなく、ここにいる連中は殆どがそんな奴等ばかりだ」
「言われてみれば確かに…」
「勉強や実技を繰り返していけば、おのずと実力は上がっていくさ。悩み事以外でも、勉強などで分からない事があっても聞きに来ていいぞ。教師らしく、何でも教えてやる」
自己満足…かもしれないな。
だが、私はそれでも構わない。
誰に何と言われようとも、私はもう仲森を護ると決めたのだから。
整備班の所に行った後は生徒会室にも行ったほうがいいかもしれん。
アイツ等ならば、仲森に届けられる予定となっている専用機の事も調べられるかもしれないし、いざという時は彼女の護衛も任せられるだろう。
幸いなことに、一組には布仏という生徒会の一員もいる事だしな。
やれることがあれば徹底的にやってやる。
それで少しでも彼女を護れるのならば。
主人公の佳織ちゃんは、別に原作キャラを忌み嫌っている訳ではありません。
トラブルの元になるとは思っていますが、感情自体はニュートラルです。
良くも悪くも、これからの関係性次第ってところですね。