私…生まれ変わったらモブキャラになりたいな(なれるとは言ってない) 作:とんこつラーメン
そして、その後にどうなってしまうのか?
アリーナのステージにて対峙している両者。
ラウラは殺意マシマシで佳織ことゼクスの事を睨み付け、その佳織は全くの無反応。
本音はいつも通りのニコニコ笑顔のまま待機していて、この中で完全に場違い感を放っている相川はもうさっきから泣きそうな顔で狼狽え捲っていた。
そして、その様子を一夏を初めとした面々が神妙な面持ちで眺めていた。
勿論、すぐに着替えられるようにISスーツの上から制服を着た状態で観客席に来ている。
「あれが…なか…じゃなくて、ゼクスさんの専用機なんだね」
「あぁ。その名も『トールギス』だ」
「ト…トールギスだってっ!?」
名前を聞いた途端、柄にもなく大声を出して狼狽えるシャルル。
それを見て、一緒に観客席にいた鈴とセシリアは納得したように頷いた。
「流石はデュノア社から来たってだけはあるわね。やっぱり知ってたか」
「も…勿論だよ! 全てのISの原型となった最初期に産み出された最強のIS! この世界に存在しているISは全て、トールギスの子供とも言うべき存在なんだから!」
どうやら、シャルルは一夏達よりもトールギスに付いて詳しい様子。
実際、彼らも千冬から聞かされただけの情報しか持っていないのだ。
「で…でも、トールギスが最大出力で稼働した場合…殺人的なまでの負荷が掛かるって聞いてるけど…」
「その通りですわ。でも、あの方はそれを難なく乗りこなしている」
「最初の時でさえも鼻血程度で済んでたしね」
「二回目以降はもう何事も無かったかのようにしてますわ」
「嘘でしょ…!? あのトールギスを乗りこなすには通常の人間ではもはや不可能とされていて、文字通りの『人間を超越した存在』でなければいけないとさえ言われているのに…」
その理論で言えば、佳織はまさしく人間を超越した存在であると言えた。
実際には人間を超越どころか、常人以下の運動能力しかないのだが、そんな事なんて全く知らないシャルルは改めて佳織ことゼクスの凄さを実感していた。
「やっぱり…物凄い子なんだね…彼女は…」
この試合、もう既に鈴とセシリアには勝敗が見えていた。
以前にもラウラと佳織が少しだけ対戦した光景を目撃しているが、それだけで両者の間にある圧倒的なまでの実力の隔たりを感じていた。
しかも、今回に至ってはラウラは謹慎していたが故に特訓などは一切出来なかった状態で、逆に佳織は本音と一緒にコンビネーションの練習を重ねてきた。
唯でさえ最初から実力差があるのに、更にそこへ特訓の有無という要素が加わればどうなるか。
代表候補生でなくても分かる簡単なロジックだった。
「待たせてしまって済まない」
「大丈夫よ。辛うじてまだギリギリで試合は始まってないわ」
少しだけ遅れて、制服の下にISスーツを着た状態の箒が皆に合流した。
因みに、今回の彼女は見事にランダム抽選の罠から逃れ、別の生徒とコンビを組むことに成功していた。
「あの白いのが…そうなのか?」
「そうよ。でも、名前で呼んじゃダメよ?」
「分かっている。ちゃんと織斑先生に教えて貰っているからな」
まるで白い鎧を着た騎士のような姿となっている佳織を見て、胸の辺りで拳を握りしめながら心の中で彼女の勝利を祈った。
(お前ならば、必ずやアイツに勝利し、その上で奴の心すらも救ってみせると信じているぞ…佳織!)
そして…運命の試合が始まった。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
試合開始のブザーと共にラウラは激情と共に咆哮し、レーゲン最大の武装である大口径リボルバーカノンをゼクスへと向ける。
「今度こそ貴様を倒す!! 覚悟しろ…ゼクス・マーキスっ!!!」
ご丁寧にちゃんと今回限定の偽名で呼んでくれるラウラ。
変な所で律儀な性格をしている。
(布仏さん…作戦通りにお願い)
(お任せ~!)
プライベートチャンネルにて最終確認をし、ゼクスはラウラに視線を向ける。
それに合わせるようにして、本音は高速移動でラウラのパートナ(仮)である相川へと向かって行った。
「とぉ~! 私が相手だよ~!」
「ちょ…マジッ!? いや…本音ぐらいなら、なんとかなるかもしれない…」
普段の本音しか知らない彼女は楽観的に考えるが、それは大きなミステイク。
本音は暗部の人間。その見た目に反して身体能力は高いし、操縦技術も整備技術も決して一年生の中では侮れない。
(よし…ちゃんと向こうに行ったね。それじゃ、こっちも行きますか)
二人が考えた作戦というのはズバリ、原作で一夏&シャルルコンビがやったのと同じ。
要は、まずは佳織がラウラを足止めしている間に本音が彼女のパートナーを撃破し、その後に二人でラウラを倒すというもの。
トールギスのお蔭で原作以上に安定してラウラの相手が出来るが故の作戦だった。
『これより、戦闘補助システム【ゼクス】による外部への代理発言を開始します』
(へ? い…いきなり何? 代理発言って?)
突如として意味不明な事を言いだしたシステムに困惑しつつも、彼女の意志を少しだけ反映してトールギスが突撃体勢へと入った。
背部のスーパーバーニアが完全展開し、同時に腰部などにあるブースターも展開。
ラウラの武装であるリボルバーカノンがガコンと鳴った直後に全力での高速突撃を開始!
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」
(ちょ…ゼクスっぽい台詞が私の声で再生されてるんですけどぉぉぉッ!?)
完全に周囲からは変な奴だと思われてしまう。
唯でさえゼクスのコスプレをしているのに、ここで羞恥心が倍プッシュ状態だ。
「真正面から突っ込んでくるとは…勝負を捨てたかゼクス・マーキスッ!!」
勿論、こんな絶好の機会を見逃すほどラウラも間抜けではなく、正面目掛けてリボルバーを発射する!
どれだけ凄まじい速度であろうとも、目の前から迫って来ている相手に外しようがない!
だがしかし! トールギスが優れているのは決して、その爆発的な加速性能だけではない事をラウラは身を持って思い知ることとなるっ!
「甘いっ!」
「なんだとっ!?」
電磁加速によって威力が増した弾頭を、あろうことかゼクスはトールギスのシールドによって易々と防ぎ、そこから更なる加速をしてみせた!
しかも、リボルバーカノンの一撃を受けた筈のシールドには傷一つすらついていない!
「そこだっ!!」
「しまっ…!」
一気に懐まで潜り込まれたラウラは体勢を崩し、その隙を付いてゼクスはビームサーベルを抜刀、その勢いのままリボルバーカノンの砲身を光の刃にて一刀両断してみせた!
「レーゲン唯一の射撃武装が…おのれっ!!」
ゼクスの方を向きながら後退をしつつ、相手の追撃を防ぐ為に肩部と腰部に搭載れた四基からなるワイヤーブレードを射出するが、そんな事になんて一切構わずに再びスーパーバーニアを最大出力で動かし突貫!
迫りくるワイヤーブレードを、まるで最初から来る場所が分かっているかのような動きで全て回避をし、しかもそこからビームサーベルを使ってワイヤーそのものを切断、またもやラウラの武器を一つ封じた。
「ワイヤーブレードもだとっ!?」
「その程度の動き…見切れないとでも思ったか!」
「き…貴様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
後退して体勢を整えようとしていたラウラだったが、ゼクスの安い挑発にまんまと乗せられ、すぐに両手にプラズマ手刀を展開して逆に突撃してきたっ!
「遠距離武装やAICなど無くとも貴様程度…この手で切り裂いてくれる!!」
「フッ…愚かな」
ここでゼクスは直進を止め、急に右へと曲がってラウラから離れるような行動をした。
「怖気づいたかゼクス・マーキスッ!!」
「勘違いをするな。もう忘れたのか?」
「何をだっ!」
「この試合はタッグ戦…つまり、私は一人で戦っているのではないという事だっ!」
「一人では…ない…!?」
言っている事の意味がよく分からずに一瞬だけ動きを止めてしまった。
それがラウラにとって最大の過ちとなる事も知らずに。
「熱源接近……はっ!?」
気が付いた時にはもう時既に遅し。
ラウラの眼前にまで四基もミサイルが迫ってきていた。
「い…いつの間にっ!? ぐあぁぁぁぁぁぁっ!?」
普段ならば簡単に避けられる筈の攻撃が直撃してしまった。
ラウラはずっとゼクスにばかり執心し、彼女の事しか見ていなかった。
だからこそ気が付かなかったのだ。
とっくの昔に相川を倒した本音が自分を狙ってミサイルを撃とうとしていた事を。
爆発を見届けながら本音の所へと戻ると、彼女は空となった四連装のミサイルランチャーを肩に担いでいた。
「ナイスアシスト。よくやってくれた」
「えへへ…それほどでも~」
「ところで彼女は?」
「あそこにいるよ~」
自分を援護してくれた本音を労いつつ、彼女が相手をしていた相川がどうなったかを尋ねると、本音が指さした場所…ステージの右端の方にてISのエネルギーが尽きた事で身動きが取れなくなり座り込んでいる相川の姿があった。
「うぅ~…本音があんなにも強いだなんて聞いてないわよ~…」
完全に相手を見た目や普段の言動だけで侮った結果だ。
彼女と戦っていた筈の本音は息一つとして乱していないのに対し、倒された相川はもう疲労困憊と言った様子。
嘗てはハンドボール部に所属していたらしいが、スポーツをしていた彼女よりも暗部の本音の方が体力があるというのは皮肉な話だ。
「さて…まだ試合終了のブザーは鳴っていない。ということはつまり、彼女はまだ戦えるという事だ」
「そーだねー。どーするの?」
「決まっている。私が前衛を務める。だから…」
「私は援護をするんだねー。りょーかいです!」
「いい返事だ。いくぞっ!」
「おー!」
お互いに頷くと、ゼクスは左右に蛇行しながらの低空飛行にてラウラに接近して行き、一方の本音は拡張領域から三脚が装着された固定式大型マシンガンを取り出し、それを地面に置いてからグリップを握りしめた。
「ラウラウには悪いけど~…今日の私は本気モードだよ~!」
本音が狙いを定めた瞬間、ラウラの周囲を覆っていた煙が掻き消され、中から怒りで血管を浮かび上がらせてるラウラが出現した。
「おのれ…おのれぇぇぇぇぇっ!! 有象無象の雑魚の分際で…よくもこの私をぉぉぉぉっ!!」
「その傲慢さこそが貴様の敗因であると何故、気が付かん!!」
「黙れぇぇぇぇぇぇぇっ!! 貴様と織斑一夏…お前達さえいなければ私がっ! 私がぁぁぁぁぁぁっ!!」
もう戦法も何もあったものではない。
完全に怒りで我を忘れたラウラは、我武者羅にプラズマ手刀を振り回しながら突っ込んでくる!
だが、それに素直に応じるような馬鹿な真似をするゼクスと本音ではなかった。
「邪魔はさせないよぉ~!」
「貴様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
もう回避という考えすらも無くなっているのか、本音の撃ったガトリングが全弾命中し、それでもまだ止まる気配が無い。
もうレーゲンのSEは無くなりかけている筈なのに。
「いい加減に目を覚ませ!! ラウラ・ボーデヴィッヒっ! 貴様が歩こうとしているのは破滅への道であると!!」
「この程度ぉぉぉぉぉぉっ!!」
今のラウラを動かしているのは『執念』という名の炎。
それを燃料にして、本当ならばとっくに動けなくなっている筈の体を動かしていた。
トールギスのドーバーガン(実弾)を喰らっても一切怯まず、その目は血走った状態でゼクスだけを見つめている。
その姿はまさに狂戦士バーサーカー。
何が彼女を此処まで掻き立てるのか。それをゼクスは全て知っている。
知っているが故に、この悲しい戦いに終止符を打たなければいけない。
その後に待ち受けているであろう、本当の戦いに備えて。
「いいだろう…それ程までに私との決着を望むのであれば、この手で引導を渡してやろうっ!」
本音の方を振り向いて目配せをすると、彼女は笑顔のまま納得したかのように頷いて攻撃を止めた。
「この一撃で終わりにしよう…私達の戦いを!」
ブースターを吹かしてアリーナ上空まで昇っていき、そこでドーバーガンを構える。
その銃身には光の粒子が収束し、エネルギーがチャージされていく。
「これで……終わりだっ!!」
「ゼクス…マーキスゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!!!」
無情にも引き金が引かれ、ドーバーガンから嘗て無人機たちを一撃で葬ったビームが放たれる!
回避不可能な速度で真っ直ぐにラウラへと向かい、眩い光が彼女とレーゲンを包み込む。
巨大な爆発と共に地面が抉り取られ、周囲に土煙が立ち込める。
すぐにアリーナの排煙機構によって取り除かれ、煙が晴れた場所には地面に出来た巨大なクレーターの中心付近でボロボロになった状態で横たわるラウラの姿。
『し…試合終了ッ!! 勝者…ゼクス・マーキス&布仏本音!』
試合終了のブザーと共にアナウンスが流れ、それと同時に一気に観客達が盛り上がる。
初戦から凄まじい試合を見せつけられたのだから無理もないが。
「どうして止まれなかった…。何がお前をそこまで歪ませた…」
地面に降り立ちながら呟くゼクス。
その口調こそ戦闘補助機能によるものだが、言葉自体は佳織が本気で思った事だった。
(なんとかなった…けど、本当に大変なのはここから…だよね…!)
未だにピクリともしないラウラを警戒し続けるゼクス。
それを見て本音は不安そうに彼女の近くへと寄っていった。
「どうしたの? もう試合は終わったよ?」
「あぁ…そうだな。だが……」
「だが?」
「…嫌な予感がしてならないのだよ」
「それって……」
その『予感』はすぐに的中する事となる。
しかも…佳織が想像している以上の事態によって。
歪んだ戦乙女は最早、戦乙女に有らず。
それは無念と妄執によって蘇る『暗黒の破壊将軍』なり。
次回…本当の戦い。
まさかの『あの機体』が登場。
私…めっちゃ好きなんですよね…アレ。