私…生まれ変わったらモブキャラになりたいな(なれるとは言ってない)   作:とんこつラーメン

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無事にラウラを撃破したかおりん&本音コンビ。

でも、またもや原作とは違う展開になってしまう事をかおりんはまだ知らない。








偽りの破壊将軍

 アリーナの管制室。

 そこでは千冬と真耶の二人が試合の様子をモニター越しに眺めていた。

 

「大凡の予想はしていたが…矢張り仲森たちの圧勝か」

「ボーデヴィッヒさんも実力はあるんでしょうけど……」

「あいつは協調性が皆無に等しい上に、相方がな…」

 

 そう呟く千冬の視線の先にあるモニターに、ボロボロとなったラウラをドーバーガンで狙うトールギスの姿が映し出される。

 

「決まったな」

「はい。仲森さんの一年生とは思えない程の実力に加え、トールギスの持つ異次元の性能。そして……」

「サポーターとしての布仏の実力だな。実に上手い立ち回り方をしていた。見事に仲森の動きの隙間を縫うように攻撃を仕掛けるだけではなく、己という『一般生徒』に攻撃される事でボーデヴィッヒの精神にも揺さぶりをかける。意外なように見えて中々…いいコンビじゃないか」

 

 ドーバーガンの高出力ビームが直撃し、爆発と同時にラウラの専用機『シュヴァルツェア・レーゲン』のSEが一気に尽き、大きなクレーターの中心に彼女が横たわっていた。

 

「決着だな」

「仲森さん達の完全勝利ですね」

「一回戦から派手な試合をしてくれる。これならば委員会の連中も文句は言うまい」

 

 満足げな顔をしながら頷く千冬。

 だが、その顔はすぐに元に戻ることとなる。

 

「ん? 試合はもう終了したというのに、どうして仲森はまだ戻らない?」

「さぁ…? こちらから通信しますか?」

「そうだな。仲森、聞こえるか?」

 

 管制室からプライベートチャンネルを使ってトールギスに通信を送る。

 すると、返ってきた返事は意外なものだった。

 

『来る……』

「来る? 何の事だ?」

『冷や汗が止まらない…ヤバいのが来る…!』

「なんだと?」

 

 日常生活の時ならともかく、試合中の佳織は冷静沈着そのもので、ここまで動揺した事なんて一度も無い。

 そんな彼女がこんな声を上げている。

 通信越しに不安が伝染してしまったのか、千冬は真耶に目配せをした。

 

「山田先生」

「いえ…特に変わった事は……えっ!?」

 

 突然の事に真耶の目が大きく見開かれる。

 彼女がそんな反応をするのも無理は無く、それは通常では決して有り得ない現象だったからだ。

 

「どうしたっ!?」

「て…停止した筈のボーデヴィッヒさんのISに反応を検知! 再起動しています!」

「そんな馬鹿なっ!? エネルギーの補給もしていないのに自動で再起動するなど有り得ん!」

「あ…ボーデヴィッヒさんの身体が……」

「これは…まさか…!?」

 

 それは、目を疑うような光景。

 佳織はこの事を感じてアリーナから出ようとしなかったのだと千冬は理解をした。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 佳織たちの勝利で幕を閉じ、一回戦は終了した。

 だが、当の本人達は全くステージから動こうとはしなかった。

 その様子を不可思議に感じる者は多く、それは当然彼女達もだった。

 

「かお…ゼクスさん…どうしたのでしょうか?」

「試合に勝ったってのに全く嬉しそうじゃないわね…」

「まぁ…あいつが大袈裟に喜んでいる姿も想像は出来ないが」

 

 観客達の中でも佳織の事を良く知っているセシリア達も、試合終了後の彼女の様子がおかしいことに気付く。

 幾ら普段からも物静かな性格をしているとはいえ、今の彼女は明らかに様子が変だ。

 

「一体どうしちまったんだ…?」

「あれ? トールギスからプライベートチャンネルが来てる?」

「こっちもだわ」

「私にも…」

「俺にも来てる」

 

 全く状況が飲み込めない一行ではあるが、一先ずは通信に出てみる事に。

 

『佳織? いきなりどうしたのよ?』

『凰さん…みんな…』

 

 彼女にしては珍しく切羽詰まったような声。

 因みに、プライベートチャンネルなので偽名ではなく本名で呼んでいる。

 

『突然こんな事を言って頭がおかしくなったと思われるかもだけど…よく聞いてほしいの』

『別にそんなこと思ったりしないって。で、なんなんだ?』

『…さっきから猛烈に嫌な予感がするの』

『嫌な予感…ですか?』

『うん…。万が一に備えて、避難誘導が出来るようにしておいてほしい。最悪の場合、ISを展開して観客の人達を守って欲しい』

『最悪の展開って…今から何が起きるっていうの?』

『それは……』

 

 佳織が説明を始めようとした瞬間、全員のISがほぼ同時に何かを検知した。

 検知先は…シュヴァツツェア・レーゲンだった。

 

「これ…どういうことよ? どうしてSEが無くなったISから反応が出てるのよッ!?」

「再起動をしようとしている? けど、どうやって…」

「なんとなく…仲森さんが言ってた『嫌な予感』ってのが分かった気がするぜ…! 確かにこれはヤバそうだ…!」

「…お前達が通信越しに佳織と何を話していたのか、なんとなくだが理解したぞ…。私にも分かる…猛烈に嫌な感じがするのを…!」

「反応が段々と大きくなっていく…! このままじゃ…!」

 

 そして…最悪の存在が降誕した。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 倒れているラウラを見たまま、いきなりプライベートチャンネルをし始めた佳織を見て、流石に怪訝に思ったのか、本音が彼女に近づいていった。

 

「かおりん? もう試合は終わったよ?」

「あぁ…そうだな。だが……」

 

 どうもハッキリとしない態度。

 まるで、何かを恐れているような、そんな感じがした。

 

「…最悪の事態になる前に彼女を回収すれば、或いは……」

 

 そう言って倒れているラウラに近づこうとした…その瞬間!

 

「が…はぁっ!? がぁぁぁぁああぁぁあああぁぁああぁぁっ!!?」

「ラウラ・ボーデヴィッヒっ!?」

「ラウラウっ!?」

 

 突如として、ラウラの身体が浜辺に打ち上げられた魚のように全身をビクビクと痙攣しているかのような動きをし出した。

 もしや彼女が息を吹き返したのか?

 通常ならばそう思うかもしれないが、未だにラウラは白目を剥いたまま。

 つまり、気を失ったままという事だ。

 

「ちぃっ! だがまだ!」

「かおりんっ!?」

 

 急いでトールギスのブースターを吹かしてラウラに近づこうと試みるが、まるでそれを阻むかのようにラウラの身を覆っていたシュヴァルツェア・レーゲンの装甲が溶けるように融解し、ドーム状になって彼女の体をその周囲を覆い隠してしまった。

 

「ラウラウのISが…溶けちゃった…?」

「遅かったか…!」

 

 悔しさを滲ませながら本音のいる場所まで戻る。

 もう最悪の事態は避けられないと悟った佳織は、本音の肩を叩き隅の方で座り込んでいる相川の方を見た。

 

「頼みがある」

「きよっぺと一緒に避難をしてほしい…でしょ?」

「分かっていたのか…」

「かおりんの事だしね」

「…すまない」

 

 フルフェイスであるが故に表情は見えないが、その仮面の下では本当に申し訳なさそうな顔をしているのだろう。

 今までずっと佳織と一緒に過ごしてきた本音には、彼女が今考えている事がなんとなく分かっていた。

 

「その代わり、一つだけ約束して」

「なんだ?」

「絶対に無事に帰ってきて…ラウラウと一緒に」

「無論だ。必ず君の元へと帰ってみせる。約束する」

「ん…約束…」

 

 最後に本音の頭を撫でてから、彼女の背中を軽くポンと叩いて行くように促す。

 それに応じるように、本音は急いで相川を回収した後にピットへと戻って行った。

 

「…これで後顧の憂いは無くなった。後は…」

 

 ゆっくりを背後を振り向くと、まるで羽化直前の繭のように身動き一つしない。

 突然すぎる出来事に会場全体は騒然とし、誰も何も喋らずにシーンとしていた。

 

「…そろそろ姿を現したらどうだ?」

「……………」

 

 黒い繭に声を掛けるが返事は無い。

 律儀にこのまま誕生を待ってやる義理はないし道理もない。

 中に取り込まれたとされるラウラの安否も気になるので、ここは一刻も早くケリを付けなくては。

 完全に『発動』するまえに破壊出来れば御の字だ。

 

 シールド内にあるサーベルラックからビームサーベルを取り出し、いつでも刀身を出せるようにしてから近づいていく。

 その時、再び千冬からプライベートチャンネルが来た。

 

『仲森! これは一体どういう状況だっ!?』

『見ての通り…としか言えません』

『ボーデヴィッヒは…どうなった…?』

『不明です。だからこそ、一刻も早く救出しなくては。外からでは何も分からない以上、ぐずぐずしている暇はない』

『そ…そうだな。…頼めるか』

『最初からそのつもりです』

『……すまない。私は…大人としても…教師としても最低だ…!』

『あまりご自分を卑下しない方が宜しいかと。大丈夫。貴女はよくやっている』

『仲森…』

『では、通信を切ります』

『あぁ……』

 

 プライベートチャンネルが切れ、再び静寂が場を支配した。

 因みに、さっきまで話していたのは佳織ではなく、佳織の声をした『ゼクス』である。

 

「……来るか!」

 

 僅かだが繭が動いたかのように見えた佳織は、すぐに腰を低くしながらサーベルを構えた。

 形状変化した瞬間を狙ってラウラを救出しようという腹積もりだ。

 だが、その作戦は彼女達が全く想像すらしていなかった事態によって脆くも崩れ去る事となった。

 

「な…なんだ…これは…!?」

(この形って…まさかっ!?)

 

 先程までドーム状になっていた黒い物体がスライムのように形態変化していく。

 しかし、それは佳織が知っているような姿ではなかった。

 

 本来、ここでは千冬の専用機である『暮桜』が再現されるはずだった。

 しかし…現実は全く違った。

 暮桜とは到底思えないような角ばった形状。

 爪先や頭部といった各部が鋭く尖り、その姿はまさしく『破壊の化身』そのもの。

 トールギスよりも一回り大きくなったソレを…佳織はこの場にいる誰よりもよく知っていた。

 

(ハイドラ…ガンダム…!)

 

 嘗て『暗黒の破壊将軍』の異名で呼ばれた男が駆る専用機。

 凄まじい性能と破壊力で幾度となくグリープを追い詰めた異形の身体を持つ漆黒の悪鬼。

 

 一体誰がこんな事を予想するだろうか。

 流石の佳織も、一瞬だけ動きが止まってしまった。

 

「くっ…! どんな形になろうとも…やることは変わらん!」

 

 気を取り直して再び突撃しようとした時、ハイドラガンダムから声が聞こえてきた。

 

「…レーズゥ…!」

「なに?」

 

 最初は僅かな声量だったそれは、次の瞬間には黒い感情が籠った怒号へと変化した。

 

「トレェェェェェェズゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!!!!」

「なんだとっ!?」

 

 凄まじい声に再び足が止まる。

 まさか、ハイドラが声を出すとは思わなかったのだ。

 

(…ゼクス。そして姫…)

(トレーズ?)

(え? もしかして『姫』って私の事を言ってる?)

 

 いきなり脳裏に響くよく知った声。

 これまでに色んな事が起きすぎて、大半の事じゃもう驚かなくなった。

 もしかしたら、佳織の心臓に毛が生え始めたかもしれない。

 

(いきなりで申し訳ないが、今回だけは私に譲ってはもらえないだろうか)

(お前に…?)

(そうだ。あの偽りのハイドラは、我が友『ヴァルダー・ファーキル』の無念と怨恨と妄執が具現化した存在だ。嘗て、私は彼と手合せ出来ないままに終わってしまった。だからこそ、私がこの手で彼を開放しなくてはならない)

(トレーズ…お前は……)

(まぁ…私には何も出来ないですし? ぶっちゃけどっちでもいいんだけど。ちゃんとボーデヴィッヒさんさえ助けられれば)

 

 なんかいきなり原作パイロットを再現した人工知能同士が話し出しても気にしなくなった。

 今ならば一人でお化け屋敷に入っても平気かもしれない。

 

(…いいだろう。トレーズ…ここはお前に任せる)

(感謝する。そして誓おう。必ずや偽りの破壊将軍を倒し、囚われの少女を救ってみせると。だが……)

(ん?)

(真の意味で彼女を救う事が出来るのは君しかいない…我が姫、仲森佳織よ)

(私だけが…?)

(そうだ。私に出来るのはヴァルダーの怨念が宿りしハイドラガンダムを倒すことのみ。そこから先は君の仕事だ…頼んだぞ)

(マジですか…)

 

 一体自分に何が出来るのかサッパリ分からないが、それでも『やれ』と言われた以上はやるしかない…というか、もう状況的に断れない。

 

 一瞬だけトールギスのカメラアイが消え、再び点灯する。

 今、機体を操っているのは嘗てライトニングカウントと呼ばれた者ではない。

 誰よりも平和を願い、そして人間を愛した戦士。

 

「待たせたな…我が友ヴァルダー・ファーキル。さぁ…今こそ決着をつけようではないか」

 

 トレーズ・クシュリナーダ…推参。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回、トレーズ様対VTSハイドラガンダム



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