私…生まれ変わったらモブキャラになりたいな(なれるとは言ってない)   作:とんこつラーメン

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丸々一ヶ月もお待たせしてすみませんでした。

別に更新しないって訳じゃなくて、単純に個人的な問題です。

一言で言えば、歳は取りたくないなーってことです。







友として

 暗い暗い闇の中。

 

 少女は漆黒の空間に蹲っていた。

 

 彼女は戦いに負けた。

 

 完膚なきまでに負けた。

 

 言い訳のしようが無い程の完敗だった。

 

 敗北の屈辱を味わっている彼女に『声』が語りかける。

 

(汝、力を欲するや?)

「力…?」

 

 それは甘い誘惑。

 

 誰よりも『力』を欲し、『力』に溺れた彼女には甘美の一言だった。

 

(汝、力を欲するや?)

 

 また同じ質問。

 今度は尋ね返すことはせず、手を伸ばす。

 

「欲しい…いや、寄越せ! 私に奴を…ゼクス・マーキスを、仲森佳織を倒せるだけの力を!!」

 

 それは、紛れもない少女の本心。

 『力』さえあれば望むものが必ず手に入る。

 そう信じているが故の渇望。

 

 だが…それは最大にして最悪の悪手だった。

 

(よかろう…汝の望み、しかと聞きいれた)

「おぉ…!」

(受け取るがいい)

 

 途端、少女の全身に『何か』が這いずり回る。

 細く、長い『何か』。

 まるで鱗のような感触に本当的な気持ち悪さを覚えた少女は、思わず顔を引き攣らせながら自分の体を見下ろす。

 

「ひぃっ!? こ…これはっ!?」

 

 それは『蛇』だった。

 赤く光る『眼』を持ち、黒く蠢く鱗を持つ『蛇』。

 少女の体を締め付けるかのように長い体を動かし、彼女と一つになろうと真紅の舌を出しながら、その気持ち悪い顔を少女の顔まで持っていった。

 

(これこそ汝の欲した『力』。怨恨妄執に取り込まれた『暗黒に堕ちし破壊の蛇』なり)

 

 後悔した。

 自分が欲したのはこんな『力』じゃない。

 こんな気持ち悪いものなんて要らない。

 だが…もう遅い。

 少女は受け入れる旨を述べてしまった。

 自らの意志で『破壊』を受け入れてしまった。

 

「や…やめ…やめ…やめ…!」

 

 涙を流しながら必死に首を振るも、少女の身体は全く動こうとしない。

 『蛇』の顔が徐々に近づき、そして……。

 

「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!!」

 

『蛇』は少女を飲み込んだ。

 

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 アリーナの管制室。

 機能停止したはずのラウラのISに突如として起こった変化に、千冬と真耶は戸惑いながらも冷静に勤めようとしながら状況判断していた。

 

「なんなんですか…アレは…!?」

「分からん…! だが、確かな事が二つだけある」

「二つ…?」

 

 自身の無力さに苛立ち、それを抑え込むために拳を握りしめるが、その手からは血が滲み出ていた。

 

「ボーデヴィッヒのISに何らかの仕掛けが施されていたから、あのような事が起っていて、それを止められる唯一の存在が仲森しかいないということだ…!」

「そんなっ!? 凰さんやオルコットさんは無理でも、このアリーナには織斑君やデュノア君もいます! それに、他のアリーナから上級生の専用機持ちも呼んでくれば…」

 

 真耶の必死の考えも、すぐに千冬が首を横に振って否定する。

 

「山田先生…あなたも知っているだろう…仲森の実力を。織斑やデュノアは言うに及ばず、上級生たちすらも凌駕するほどの実力を誇るあいつと即席の連携を出来る者が一人でもいると思うか?」

「それは……」

「恐らく、あの更識でも難しいだろう。試合中は仲森が布仏の動きを計算していたからこそ連携が出来ていた。だが、これは試合ではなく『死合』だ。一瞬の隙、油断が文字通り命取りになる戦闘…仮に私が介入したとしても『戦闘モード』になった仲森に追従は出来ないだろう…」

「織斑先生…」

 

 千冬から見ても、既に佳織の実力は十分過ぎるほどに世界でも通用するレベル…いや、その気になれば世界の頂点に立てるほどの能力を秘めていた。

 だからこそ分かってしまう。

 どれだけ操縦者の実力が高くても、乗っているのが量産機では確実に佳織の足手纏いになると。

 

「腹立たしいが…私達はここで仲森の勝利を信じて見守る事しか出来ない…」

「そんな……」

 

 教師として、こんなにも悔しいことがあるだろうか。

 大切な教え子が死地に立っているというのに、何も出来ずに指を咥えて見ているだけしか出来ないとは。

 

「ス…ステージで動きがありました!」

 

 真耶が急いでモニターを切り替える。

 すると、そこにはビームサーベルを構え、漆黒の巨人と化したISと対峙する佳織の姿が映し出された。

 

『いくぞ!!』

 

 トールギス十八番のスーパーバーニアを使った突撃。

 その速度は通常のISなど比較にすらならない。

 圧倒的スピードから繰り出される斬撃は、あらゆるものを一刀両断する!

 

 だが、敵はあろうことかそれを同じビームサーベルと思わしき武器で受け止め、鍔ぜりあった!

 白と黒。対照的な二体のISが激しく火花を散らす!

 

『すまない…』

「仲森…?」

 

 戦闘中だと言うのに、突如として謝り出した佳織。

 何を言っているのだと訝しんでいると、その言葉に千冬は思わず涙を流した。

 

『我が友よ…私は君をこれ程までに追い詰め、苦しめ、傷つけてしまった…。それは決して許されるべき事ではない…いつの日か必ず我が身を持って贖罪すると誓おう…。だからこそ今は戦おう! この剣で君をその妄執の呪縛から解放する為に!!』

「仲森…お前は…友を傷つけられ…自分に憎しみすら向けていたボーデヴィッヒの事を…それでも『友』と呼んでくれるのか…? お前は一体…どこまで優しいんだ…!」

 

 たった今確信した。

 本当の意味でラウラを救えるのは佳織しかいないと。

 例え、どんな目に遭っても手を伸ばし続ける事を止めない彼女しかいないと。

 

 今、少女の運命は一人の誇り高き白き騎士に託された。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 ビームサーベルを持ち突撃したトールギスの一撃を、同じサーベル系の武器で防いだ再現ハイドラ。

 最初に見た時から『もしかして』とは思っていたが、こうして実際にぶつかりあった事で絶対的な確信を得た。

 

「やっぱり…間違いない!」

(どうした姫よ?)

「このハイドラはVTシステムによって再現された劣化品…真っ赤な偽物だよ。見た目は真っ黒だけど」

 

 機体の操縦は全てトレーズに任せているからこそ、佳織は佳織で冷静に今回の状況を推理する事が出来た。

 何気に彼女も色んな事に慣れてきているのかもしれない。

 

「もしも本当に、このハイドラがオリジナルを忠実に再現しているのなら、トールギスとこんな風に互角に渡り合っている筈がないのよ。ハイドラの出力は、あのウィングゼロすらも凌駕する程なんだから」

(姫の推理が正しければ、我らにも十分に勝機がある…という事か)

「うん。恐らくだけど、オリジナルにあった武装とか機能とかは全てオミットされていると思っていいと思う。その気になれば、最初の一手から高出力ビーム兵器である『バスターカノン』を使ったり、『高機動モード』になってこっちを圧倒出来た筈なのに、こいつはそれをしようとしない…」

 

 正直、オリジナルと同等じゃななくて本気でホッとしていた。

 幾らトールギスが高性能な機体とは言え、単純な出力の違いだけはどうしようがない。

 それが僅差の違いならばまだしも、本物のハイドラの出力はそれこそ化け物級だから。

 

「あのサーベルも、レーゲンが持ってた『プラズマ手刀』を変化させた物だろうし。どれだけ形状が変化しても、物理的に存在していない物までは再現不可能なんじゃないかな?」

(フッ…所詮は偽りの破壊者ということか)

「けど、ワイヤークローはあるかもしれない。レーゲンにもワイヤーを使った武器があったから…」

(油断は禁物というわけか。我が友相手に最初から油断も慢心もする気はないがな)

「流石はトレーズ様…」

 

 どんな状況でも堂々としている姿は、本当にエレガントとしか言いようがない。

 強くて、カッコよくて、カリスマ性もあって、しかも超天才。

 非の打ち所が無さすぎて逆に困る。

 完璧超人もここまで極めれば、なんかもう清々しさすら感じてしまう。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 トールギスと偽ハイドラの真っ向勝負は、再現力不足に加えて佳織(トレーズ)の実力と相まって優勢に進んでいた。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

 トールギスのバーニアが更に火を吹き、徐々にではあるがハイドラを押していく。

 この状態を最大限に利用する為に、ここでもう一手追撃を掛ける!

 

「友よ…忘れたか? トールギスのビームサーベルは一本だけではないということを!」

『!!?』

 

 シールドを引き寄せ、左手で器用にサーベルの柄を掴んでからビームの刀身を展開、そのままの動きで下から切り上げた!!

 

「これでっ!」

『トレェェェェェェェェェズゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!!』

 

 ファーストアタックを許してしまったハイドラは野獣のように怒りの咆哮を放つ。

 今のハイドラは液状のようになってはいるが、流石に刀身が高熱であるビームサーベルの一撃はそう簡単に再生が出来ないのか、まるで火傷で化膿したかのようなグジュグジュな切り傷となっていた。

 

「成る程…これならば…!」

 

 まるで融合するかのように取り込まれたラウラをどうやって救出するかを考えていた佳織であったが、この一撃による結果を見て一筋の光明を見い出した。

 これなら、どうにか出来るかもしれない。

 

『ウガァァァァァァァァァァァッ!!!』

「ちぃっ!」

 

 暴れるかのような横薙ぎの攻撃を回避する為に少しだけ距離を取る。

 通常ならばなんて事の無い動きではあるが、そこは流石のヴァルダー・ファーキルと言うべきか。

 たった一瞬の隙すらも決して見逃さずに、肩部を展開して追撃のクローアームを放ってきた!

 

「矢張りか…だが、そのような緩慢な動きでは!」

 

 オリジナルのハイドラのクローアームはビームを撃ってきたが、元となったレーゲンにビーム兵器は搭載されていない。

 それ故にクローからビーム砲を撃ってくることは無かった。

 

「甘い!!」

 

 自分に向かってくる二対のクローをドーバーガン(実弾)にて呆気なく撃破。

 だが、その瞬間に己に向かって飛んでくる何かを感知して、咄嗟にシールドを構えて防御の態勢を取った。

 

「くっ…! これは…」

 

 シールドに直撃したのは実弾…レールガンの弾丸だった。

 何事かと思い前方を見ると、そこにはバスターカノンを構えた偽ハイドラの姿が。

 それを見て、相手が何をしたのかを察した。

 

「そうか…レーゲンのリボルバーカノンを変化させてバスターカノンにしたのか…!」

 

 オリジナル程の威力は無いとはいえ、それでも相手が遠距離攻撃の手段を得たのは普通に脅威だった。

 

「見事だ…我が友よ。だが、こちらにも負けられぬ理由があるのだ!」

 

 右手にはドーバーガン。左手にはビームサーベル。

 出力、武装構成はほぼ互角。

 勝敗を分けるのは互いの技量だけ。

 

「嘗て、私は敗者になりたいと思っていた。例え敗北したとしても、戦う意思を…前へと歩もうとする意志があれば敗者であっても美しいと…そう思っていた」

 

 腰を低くし、再び突貫する構えを取る。

 

「だが、今の私に求められているのは絶対的な勝利。それでしか得られぬ物…救えぬ者がいる。だからこそ…」

 

 スーパーパックが最大出力で解き放たれる。

 トールギスが一筋の光となって、黒き異形へと立ち向かう!

 

「私は必ず勝利する! 悲しき妄執に捉われた君の魂を救い出す為に!!」

 

 白き騎士と黒き蛇の戦いは激しさを増していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回、決着&ラウラヒロインフラグ?
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