私…生まれ変わったらモブキャラになりたいな(なれるとは言ってない)   作:とんこつラーメン

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今回の話を経て、本格的にシャルロットがヒロイン入りになります。

ここに至るまでの過程で既に落城寸前でしたけどね。







後始末(フランス編)

 生徒会室に到着すると、中ではすでに虚先輩がモニターの準備を行っていた。

 ほんと…この人って万能だよね…。

 マジで欠点らしい欠点を今までに一度も見た事が無いんだが?

 この人、人生何度目なんだろう。

 もしかしたら、転生者としても先輩かも知れない。

 

「佳織ちゃん達を連れてきたわ、虚ちゃん」

「お待ちしておりました。こちらも準備が完了した所です」

 

 虚さんの後ろには、普段の生徒会室には無い中型ぐらいのモニターと、それに繋がった機器があった。

 実に今更だけど、これってどこから持ってきたんだろう。

 IS学園…何気にまだまだ謎が多いよね…。

 

「ねぇ…佳織。この人は?」

「布仏虚先輩。三年生で生徒会の役員…というか、殆ど更識先輩の側近的存在で、整備班の班長で、トドメに布仏さんのお姉さん。あと、紅茶淹れるのがめっちゃ上手い」

「話には聞いてたけど、この人が本音のお姉さんなのね…」

 

 そういや、私と布仏さん以外の皆が虚さんと会うのはこれが初めてか。

 凰さんには今までに何度か話だけはしてきたけど。

 

「皆さん、初めまして。本音の姉の『布仏虚』と申します。いつも妹がお世話になっております」

「「「「「ど…どうも…」」」」」

 

 うん。皆揃って遠慮しがちにお辞儀をした。

 なんて予想通りのリアクション。

 

「本音には姉君がいたのだな…。なんて礼儀正しい方なのだ。まさしく大和撫子の化身のような女性ではないか」

「このような事には慣れているつもりでしたけど、不思議とこちらの方が恐縮してしまいますわね…」

「ぼ…僕も。やっぱり三年生ともなると大人びてるんだね…」

「学年が二つも違うと、流石に緊張しちまうな…」

 

 そうだよね。それが普通の反応だよね。

 二年生の時だったら、そこまでじゃないんだろうけど、私達は一年生。

 下級生と最上級生とじゃ流石に差があるし。

 私も普段から凄くお世話になってるしな~。

 何と言いますか、色んな意味で頭が上がらないよね。いやマジで。

 

「おねーちゃーん。私とかおりんの試合、見ててくれたー?」

「勿論。上手に仲森さんのサポートが出来ていたわね」

「わーい! お姉ちゃんに褒められたー!」

 

 疲れた体に布仏さんの笑顔。

 いい薬になりますわ…。

 まるで心が洗われていくようだ…。

 私ってば完全に布仏姉妹の虜になってますな。

 

「生徒会って、いっつもこんな感じなの?」

「割と。お仕事してる時も似たような空気だし」

「あたしの中の生徒会に対するイメージが変わっていくわ…」

 

 その気持ち、超分かる。

 こんなにもアットホームな生徒会ってアニメの世界にしかないって思ってたし。

 少なくとも、紅茶が飲める現実の生徒会なんて私は知らない。

 

「お話はここまでに。デュノアさん、そして仲森さん。もう向こう側の準備は出来ているとの事です。心の準備は良いですか?」

「「は…はい」」

 

 つーか、なんで私も名指し?

 私がここにいる必要ってあるの?

 完全に部外者でしょ。

 だって、デュノア社にもフランスにも何にも関係なければ、代表候補生って訳でもない。

 あ、それを言ったら篠ノ之さんとかも同じか。

 

「では…いきます」

 

 虚さんが機器を操作すると、何にも映っていなかったモニターが暗転し、すぐにスーツを着た中年の外人男性と、その傍に並ぶように佇んでいる女性がいる光景が映し出された。

 この人達が、デュノアさんのお父さんとお義母さん?

 

『…シャルロットか』

「お…お父さん…」

 

 さてはて…私の予想はどこまで当たっているかな?

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 

『…まずは謝罪をさせてくれ。お前を守るためとはいえ…私たち夫婦は決して許されない事をしてしまった』

「待ってよ…『守る為』ってどういうこと? 二人は僕の事を憎んでいたんじゃ…」

『そんなわけないじゃない!』

 

 わっ!? び…びっくりしたぁー…。

 これ、ちゃんと音量調節してある?

 

『貴女は私の親友の娘なのよ? 愛することはあっても、憎むなんてある筈がないわ…』

「じゃ…じゃあ、どうしてあんな事を…」

『それは……』

『無理をするな。私から話す』

 

 なんだろう…このまま私達は完全に聞くだけの『観客』になりつつある?

 それはそれで別にいいんだけど。

 

「アナタのご両親はね…とある連中に脅迫された上で監視をされていたのよ」

「きょ…脅迫っ!? 監視っ!? 一体どこの誰がそんな事をッ!?」

「女性権利団体…ですか?」

 

 あ。思わず口を挟んじゃった。

 テヘペロ。

 

「流石は佳織ちゃんね。そこまで分かっていたなんて」

「単なる予想ですよ。今の時代、表立って堂々と悪事を働く連中なんて、それこそ権利団体しか思いつかない。日本でも、その傾向は顕著ですしね」

 

 『裏側』で悪事を働いている連中は、また別の意味で知ってるけどね。

 

『…その鋭い慧眼…そうか。君が話に聞いていた『カオリ・ナカモリ』君か』

「え? なんで私の名前を?」

『日本から派遣されてきた暗部の方々に聞いたのだ。君の行動が日本の暗部が動く切っ掛けを作り、同時に私達の大事な娘の友人になってくれていた…と』

 

 …にゅ? ど…どゆこと?

 私の行動が暗部を動かした?

 え? かおりん、おじさまの言ってる意味が良く分からない。

 

「…日本語、お上手ですね」

『デュノア社の顧客には日本人も多くいる。これぐらいは社長として当然の嗜みだよ』

 

 うわーん! なんとかして話を逸らそうとしたのに普通に返されたー!

 これが大会社の社長の実力かー!!

 

「佳織ちゃんが動いてくれたお蔭で、結果として私達が動くに値する理由が生まれ、同時に今までずっと渋っていたフランス政府も本気で動く決意をしてくれた」

「フ…フランス政府?」

 

 あのー…なんか話が大きくなってる気がするんですけど…。

 私は全くフランス政府となんか関わりを持ってませんよ?

 

『ISが誕生して以降、今までずっと鳴りを潜めていた女性権利団体が表舞台に台頭し、爆発的に勢力を拡大し始めた。それこそ、国によっては政治の中枢にまで潜り込めるほどに』

「そーゆー台詞が出るって事は、フランスも例外じゃないって事ですか?」

『…その通りだ。だからこそ、お偉方も思うように動けないでいた。今までは…な』

「と言うと?」

『フランスもそうだが、ISの開発が盛んな国々は基本的に余程の事が無い限りは他国の介入を認めない。もし認めてしまえば、自国の技術を盗まれる可能性があるからだ。それは同時に、何か不測の事態があっても他国に救援を求めない…という事でもある。頭では『そんな事を言っている場合ではない』と分かっていても…だ』

「大人って…」

 

 子供に出来る事が大人には出来ない…か。

 某有名ゲーム漫画で言ってた『見えないけど見える物』って意外と『国境』の事を指してたりして。

 

『だが、日本はそれでもフランスに暗部を派遣してくれた。無論、将来的な事を見据えてのことだろうが、それでもこちらにはこれ以上ない程に有り難いことだった。昔から、日本はよく自衛隊やボランティア団体などを海外に派遣して援助活動をしていたが、まさかそれが『暗部』という形で現れるとは予想もしていなかった』

「でしょうね。それが普通ですよ」

 

 …あれ? いつの間にか私と社長さんとの会話になってる?

 今回の主役はデュノアさんじゃなかったの?

 

『君が…日本とフランスの橋渡し役をしてくれた。そのお蔭で、私達もデュノア社も、ひいてはフランスも救われる結果となった。本当に…なんて礼を言えばいいのか分からない…』

 

 ちょっとぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!??

 私が知らない所で事態が凄まじいレベルで巨大化してるんですけどぉぉぉっ!?

 少し前までは幼年期だったデジモンが、少し見ない間に一気に究極体にまで進化しちゃったような感じなんですけどぉぉッ!?

 

「結局、権利団体は何をしようとしてたんですか?」

『買収だよ。デュノア社のな』

「ば…買収ッ!?」

 

 なんともまぁ…量産ISシェア世界第三位の大会社を買収とか…随分と大胆な事をしてますこと。

 割と冗談抜きで調子に乗って増長してますな。

 

『奴らはデュノア社を乗っ取り、その暁には今の社員たち全てをクビにし、その代わりに自分達の息が掛かった者達ばかりにしてから我が社のISを思うがままに使うつもりだったらしい』

「あー…なんか分っちゃったかも」

「「「「「「え?」」」」」」

 

 はぁ…イヤだなぁー…。

 悪者の思考が分かってしまうだなんて…普通に自己嫌悪ですわ。

 

「さっき言ってた『監視』ってのは外からじゃなくて内部…つまり、お二人も知らない間に会社内にスパイとして権利団体の連中が送り込まれていて、四六時中に渡って監視されていた…とかじゃないんですか?」

『君は一体何者なのだ…。全く以てその通りだ…』

 

 ヤベ。マジで当たってしまった。

 ここまで来たら、もっと言っちゃえー。

 

「スパイを送り込んだ理由は、娘である彼女…シャルロット・デュノアを人質にして貴方達に対する交渉材料にする為。それと、恐らくですけど貴方たちは連中から聞いていたんじゃないんですか? 『会社内のどこかに監視役を送り込んだ』…と。それにより『常に見張られている』というストレスに晒す事で精神的疲弊を誘い自分達を優位に立たせようとした…的な?」

『…まるで全てを見透かされているような気分になるな』

 

 またまた当たりですかい。

 後ろで見ている皆がめっちゃギョッとした顔でこっちを見てくるし。

 布仏さんだけは全身をモジモジさせながらハートマークを出してるけど。

 

『私達は大いに悩まされた。シャルロットは守りたい。だが、同時に社員たちも守らなくてはいけない』

「社長という立場上、アナタは社員全員の人生を背負っているに等しい。幾ら大切な娘を守るためとはいえ、そう簡単に切り捨てられるわけがない」

『あぁ…だから我々は、せめて奴らに示す必要があったのだ。『娘は私達に対する人質には成り得ない』…と』

「その為に敢えて自ら憎まれ役を演じ、監視の目を必死に誤魔化そうとした…」

『…そんな理由で許されていいことではないのは我々も承知の上だがな。この償いは必ずするつもりだ』

「余り早まった事だけは考えないでくださいね。それは誰も幸せにはならない結末になる」

『あぁ……』

 

 本当に分かってるのかな…普通に心配になる。

 

『娘と社員たち…どうにかして両方を助ける術がないかと必死に模索していた頃…私達の耳に驚くべきニュースが入ってきた。それが…』

「男である織斑君がISを動かしたというニュースですか」

「え? 俺?」

 

 そうだよ。いい加減に自分の立場を正確に把握したら?

 今の君は、絶滅危惧種の動物以上に希少価値が高い存在なんだってことをさ。

 

『それこで私たち夫婦は、咄嗟にあることを思い付いた。『男装をして男の振りをして、日本にいる男性IS操縦者のデータを盗んでくる』という名目で、シャルロットを日本に逃がす事だ』

「僕を…日本に逃がす?」

『あぁ。本当はデータとはいえ盗みなんてさせたくはないし、させるつもりもないが、そうでも言わないと連中は首を縦に振らない。正直、苦渋の策ではあった』

「娘さんを日本に逃がし、彼女がIS学園に在籍している三年間の間になんとかして権利団体をどうにかするつもりでいたってことですか。本当に男って…」

『「うっ…」』

 

 モニター越しのデュノアパパと織斑君が同時に苦しそうな声を出した。

 だって、この二人って考えている事が殆ど一緒なんだもん。

 

「あわよくば、今のように彼女が誰かに保護されてくれれば最高…って考えてもいたんでしょ?」

『…楽観的だと言ってくれて構わない。だが、我々もそれ程までに追い詰められていたのだ』

「それは分かりますよ。本当に苦肉の策だったって事は」

 

 これはこの夫婦にとって最も辛い選択だった筈だ。

 全てにケリが付いた暁には、それこそ二度と娘の前に姿を現さないぐらいの覚悟があったと思う。

 

『だが…それももう終わりだ。日本から来てくれた暗部の活躍により、社内にいた監視は排除され、パリ市内に潜伏していた権利団体のフランス支部も壊滅したと聞いた。政府内に潜んでいる者達が排斥されるのも時間の問題だろう。今までずっと動きたくても動けなかった政治家連中も、デュノア社の事を聞いてからまるで水を得た魚のように活気を取り戻し、次々と政界の浄化をし始めたらしい』

「完全に改革じゃないですかヤダー」

『全て…君の行動が切っ掛けとなった事だ』

 

 …つーか、今までずっと我慢してたけど、私発進で動いたことがエラいことになってストレスで胃がずっとキリキリ痛んでおります。

 お願いだから、誰か胃薬持ってきて…。

 

「じゃ…じゃあ…もう…?」

『あぁ。男装をする必要もないし、日本にいる理由も無い。その気になれば、今すぐにでも戻ってきて構わない。勿論、まだそっちにいたいというのであれば、我々はその意思を尊重する。ちゃんと長期の休みの日になどに戻ってきてくれればな』

「僕は……」

 

 ん? なしてコッチを見るんじゃい。

 

「…僕はまだこっちにいるよ。まだ学びたい事も沢山あるし、それに…」

「ふぇ?」

「…大切な友達も出来たしね」

『そうか…。図らずも、お前を日本に送った事は正解だったようだな』

 

 完全に不幸中の幸いだけどね。

 これもう殆ど賭けに等しいじゃん。

 

『シャルロット…戻ってきたら、今度こそゆっくりと話をしましょう。アナタのお母さんの思い出話とかをね』

「うん…その日を楽しみに待ってるよ…お義母さん」

『ありがとう…シャルロット…』

 

 取り敢えず、これでハッピーエンド…かしらね?

 よかった。よかった。

 

『カオリ・ナカモリ君』

「はい?」

『我々夫婦の感謝の気持ちは、とてもじゃないが言葉だけでは言い尽くせない。だから…デュノア社から君個人に物資を送りたいと思っている』

「物資…?」

『そうだ。実は、君が非常に優れたIS操縦者という話もこちらには届いているのだよ。あの禁忌とされた原初のIS『トールギス』を乗りこなせた唯一無二の人間であることもね』

「マジですか…」

 

 流石はIS関連の大企業…ソレ系の情報収集能力は半端じゃないか。

 

『実は、トールギスの開発には我がデュノア社もスポンサーとして関わっていた事があってね。その名残として社内の格納庫にはトールギスの予備パーツが幾つか残されている。それを全てそちらに送ろう。きっと役に立つ筈だ』

「えぇっ!? い…いいんですか?」

『構わんさ。君はデュノア家、デュノア社、フランス全土の恩人とも言うべき存在だ。これでも足りないと思っているぐらいだ』

「大げさすぎますって…」

 

 そもそも、幾らパーツとはいえ一個人に送るのはどうかと思いますよ?

 私じゃ完全に持て余しますから! 整備の仕方もまだ碌に勉強してないのに!

 

『シャルロット。お前が女として再編入する手続きの方はこっちでやっておく。ほんの少しだけ時間が掛かるが、今までに比べればあっという間だ。すぐに本来の姿、本当の名前で皆と同じ学園生活を送れるようになる。それが…私達夫婦の最初の償いだ』

「大丈夫だよ。僕はもう一人じゃないし。遠い空の向こうで家族が待ってると思うと、それだけで頑張れるから」

『そうか…強くなったな。それでこそ…私達夫婦の愛娘だ』

 

 …これが本当の家族愛ってやつか。

 ウチには無縁のものだな…。

 

『では…これで失礼する。シャルロット…元気でな』

『アナタが帰って来る日を待ってるわ。またね』

「うん…またね。お父さん…お義母さん…」

 

 最後に感動的な挨拶をしてから通信は終わった。

 ふぅ…なんかもう…疲れが倍になった気分だ。

 

「仲森…こんな所にいたのか。探したぞ」

「織斑先生?」

「千冬姉?」

 

 先生が生徒会室に来るなんて珍しい。

 一体何の御用なのかしらん?

 

「お前達。少しだけ仲森の事を借りるぞ」

「へ? 私?」

「そうだ。ボーデヴィッヒの事でちょっとな。頼む、一緒に来てくれ」

「はぁ……」

 

 普段からお世話になってる以上、断ることは出来ない。

 私がゆっくりと休めるのは、まだまだ先になりそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




デュノア社から来るトールギスの予備パーツ…。
 
これでトールギスⅡのフラグが立ちました。

次回はラウラの後始末のお話。


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