私…生まれ変わったらモブキャラになりたいな(なれるとは言ってない) 作:とんこつラーメン
あとは第二期のヒロイン姉妹だけですが、姉の方はもう既に陥落寸前なので、妹だけになりますね。
アンケートでは夏休み中のフラグ建設が有力になってますが…。
モニターの灯りだけが光源となっている真っ暗な空間。
束は沢山あるモニターの一つを眺めながら、満足そうに笑みを浮かべていた。
「いやー…流石は私のかおりんだねー。あの変な形になったVTシステムすらも一方的にボコるだなんて…お見逸れしたよー」
相変わらず、束は学園で起きている事の一部始終をモニタリングしていた。
少し前までは千冬や箒、一夏のことばかりを見ていたが、最近ではすっかり佳織一筋になったらしく、彼女のことばかりを眺めていた。
ある意味、質の悪いストーカーである。
「けど…もっと凄いのは、その優しさにあるよね…。私でさえも不可能だった、箒ちゃんの心と真っ直ぐに向き合って、あの子の心を解き放ってくれた。ほんと…参っちゃうよねェ…お姉ちゃんとしての面目、完全に丸潰れだよ~…」
言葉とは裏腹に、彼女は優しい笑みを浮かべており、佳織に対して感謝の意を示しているのが良く分かった。
「しかもさ、デュノア社の問題やドイツの事も解決する切っ掛けになっちゃうし…。もしかして、かおりんって私よりも凄い?」
もし本人が聞けば速攻で否定するだろうが、例え独り言とはいえ、束は滅多なことでは他人を褒めたりはしない。
それは裏を返せば、束が本気で佳織のことを認めたという証拠にもある。
「私じゃ精々、力技での解決しか出来ないしなぁ~。そこら辺は私もちーちゃんの事は責められないや」
どうやら、似た者同士の友人のようだ。
今頃、千冬は自分の部屋でくしゃみでもしているかもしれない。
「あぁ~…早く、かおりんに出来立てほやほやの『テンペスト』を直接、渡してあげたいなぁ~。どんな顔をするかなぁ~…喜んでくれるかなぁ~?」
まるで遠足の前の日の小学生のようにドキドキしながら、佳織との邂逅の日を待ち続ける。
束の中ではもう既に、佳織と直接会う日は決めてある。
こういうのは只、闇雲に会いに行けばいいというものではない。
タイミングこそが最も重要なのだ。
「それはそれとして……」
カタカタカタ…とキーボードを操作してモニターの映像を切り替える。
そこには、寮の自室のベッドの上でスヤスヤと静かな寝息を立てている佳織の姿が映し出されていた。
「この『牛さん着ぐるみパジャマ』を着たかおりんが可愛過ぎて生きてるのが辛い。っていうか本当に可愛い。可愛過ぎ。マジで天使の寝顔じゃん」
ここで束の顔が急に真剣になる。
彼女がこんな顔をした時は、大抵が碌な事を考えていない。
「なんとかして部屋に忍び込んで、かおりんに添い寝するか…? こんなにも可愛い生き物を独占したいと思う私は何も悪くない。これは人間として当然の感情。うん。良し決まり。決定。そうと決まれば早速…」
佳織の貞操の危機が迫った瞬間、いきなり束のスマホに着信が入る。
誰かと思い画面を確認すると、なんと千冬だった。
「も…もしもし? ちーちゃん…?」
『もしも佳織に手を出そうとしたら、この私が容赦せんぞ』
「な…ナンノコトカナ~?」
『とぼけるな。お前の事だ。あれ程までの戦闘力を持つ佳織に興味を持たない筈がない。どこかで必ず、アイツの事を監視していると思ってな』
鋭い。
伊達に束と十年以上に渡って友人関係をしていなかった。
「ど…どうして私がかおりんに何かしようとしているって思ったのかな~?」
『只の勘だ』
鋭すぎる。
勘だけで天災の動きを止められるのなんて千冬ぐらいだろう。
『もしも佳織の貞操を脅かそうとしたら……』
「したら……?」
『コンクリートの上でスクリューパイルドライバーの刑だ』
「流石の私も絶対に死んじゃうんですけどッ!?」
『死にたくなかったら何もするな。あの子はお前が思っている以上にデリケートなんだ』
あの千冬が本気で佳織の事を心配している。
千冬が束の事を分かっているように、束にもまた千冬の事が良く分かっていた。
最初こそは教師として、一人の大人としての義務感で佳織の身を案じていたのだろうが、最近になってその感情が徐々に変わりつつある。
今の千冬は『一人の人間』として佳織の事を想っている。
何の仕掛けも無く、対話と行動で周りの人間を良い意味で変えていく。
これこそが『仲森佳織』という少女の本当の凄さなのではないか。
束はそう思い始めていた。
「…大丈夫。私だってかおりんを悲しませたいとは思ってないし。あの子が不幸になるような事だけは絶対にしないよ」
『…いいだろう。今だけはその言葉を信用してやる』
「ありがと」
やっぱり親友には敵わない。
この短い会話の間に、きっと自分の真意は見抜かれてしまっているだろう。
『ついでだ。少し私の愚痴に付き合え』
「え~? 長い間話してたら、通話料も馬鹿にならないよ~?」
『IS学園教師の給料を舐めるなよ。これでも私は高給取りなんだ』
「ちーちゃんの自慢なんて初めて聞いたかもしれない…」
結局この夜、束は久し振りに友人との会話に花を咲かせたのであった。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「うぅ~ん…?」
日の光と思われるものが瞼を貫通して網膜を刺激する。
これが朝の来た合図であると私は知っている。
知っているけど…この体全体に感じる謎の柔らかい感触は何?
私…別に抱き枕とか買った覚えないんですけど…。
「ふわぁ~…」
意を決して目を開けて起き上がる。
すると、なんだか私の掛布団がいつも以上に膨れ上がった。
え? マジでなにこれ?
「なんだろ……えぇっ!?」
掛布団を捲りあげて正体を確かめようとしたら、そこには全裸の状態で猫のように体を丸めて寝ているボーデヴィッヒさんの姿が。
「な…なんでボーデヴィッヒさんが私の部屋にいるのッ!? は…え?」
寝ぼけていた頭が一発で覚める衝撃に混乱していると、その原因であるボーデヴィッヒさんが瞼を擦りながら起き上がった。
「もう朝か…?」
「『もう朝か…?』じゃないから! どうしてボーデヴィッヒさんが私の部屋にいて、私と一緒に私のベッドで寝てるのッ!?」
「うん…? 夜中に忍び込んだからだが?」
「『何を言ってるんだ』的な顔で言われても困るんですけど…。というか、ちゃんと鍵は締めてた筈…だよね?」
「勿論、普通に開けた。軍でピッキングの技術を叩きこまれていたからな」
なんちゅーことを教えてるんだドイツ軍は!!
お蔭でボーデヴィッヒさんが不法侵入するような子になっちゃったじゃないのよ!
「あとさ…なんで裸なの?」
「こうじゃないと眠れないんだ」
「気持ちは分からなくはないけどさ……」
今はまだこの『牛さん着ぐるみ風パジャマ』を着てるけど、暑くて寝苦しい夜とかは流石の私も服を脱いで寝たりする。
だけど、それは本当の本当に追い詰められた時の最後の手段であって、日常的にはしないんだよな~…。
「と…兎に角、まずは服を着ないと! 制服は?」
「自分の部屋にある。後で取りに行くつもりだ」
「裸の状態でッ!?」
「あ…そうだったな。迂闊だった」
「どんな格好でここまで来たとか…聞かない方が良いよね…」
「聞きたいのか? 別にいいぞ。私は……」
「無理して話さなくてもいいから! ク…クローゼットの中にある適当な服を…」
急いでベットから飛び出して、クローゼットの中を漁ることに。
あぁ~…もう! どうして朝からこんな事になってるのよ私!?
「か~おり! 一緒に朝ご飯を食べに行きましょ!」
「おはようございます、佳織さん」
「ちゃんと起きてるか? 起きていなければ、この私が直々に…」
「かおり~ん! おはよ~…お?」
ちょ…このタイミングで呼びに来ますかッ!?
しかも、いつもは誰か一人なのに今日に限って凰さんとオルコットさんと篠ノ之さんと本音ちゃん四人揃って来てるし!
「「「「…………」」」」
「「…………」」
重苦しい沈黙が部屋を支配する。
うぅ…私が一体何をしたってのさ…。
「「「佳織(さん)の牛さんパジャマが可愛い…♡」」」
「まさかのそっちっ!?」
あぶねー! 何か知んないけど気付かれずに済んだッ!?
「…なんでラウラウがかおりんの部屋にいるの?」
本音ちゃんだけはちゃんと気が付いてたー!
そうだよね! それが普通の反応だよね!
「あ! ほんとだ!」
「ラ…ラウラさんっ!? な…ななななんで裸なんですのッ!?」
「こ…これは一体どういうことなんだ…?」
あ…良かった。三人も普通の反応してくれた。
原作みたいに、ここでいきなり殴り掛かられたら一溜りもないし。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「…というわけなんだよ」
取り敢えず、皆を中に入れてからの説明タイム。
ボーデヴィッヒさんにはクローゼットの中にあった適当な服(胸の所に『スタープラチナ・ザ・ワールド』って書いてある)を着させてある。
流石に下着までは貸せなかったけど…。
「成る程…佳織が寝ている間にラウラの奴が部屋に忍び込んで…」
「そーゆーことなの。一番驚いたのは私の方なんだから…」
IS学園に来て色んな目に遭ったけど、精神的な意味で驚いたのは今回が初めてだったよ…。
うぅ…この部屋だけが私にとっての安息の地だったのに…。
「佳織。本当にこの服は貰ってもいいのか?」
「うん。別にいいよ。一着ぐらいなら」
「そうか…うん。嬉しいぞ」
似たような服は他にもいっぱいあるから。
例えば『クレイジー・ダイヤモンド』とか『ゴールド・エクスペリエンス』とか。
「か…佳織さんの服…なんて羨ましい…」
「いや。ちゃんと洗濯した服をあげてるからね?」
その言い方だと、まるで私が服を洗ってない奴みたいに聞こえるじゃない。
こう見えても私は割と綺麗好きな方なんですよ?
「あのさ…ボーデヴィッヒさん。昨日、話してたこと…今言ってみたら? 割とナイスなタイミングだと思うけど」
「そ…そうだな……」
うーん…ちょっと無茶振りだったかな。
ボーデヴィッヒさんもなんか言い難そうにしてるし…。
「…セシリア・オルコット。凰鈴音…済まなかった。私はお前達に酷いことをしてしまった…心から謝罪する。この通りだ」
うんうん…ちゃんと謝れて偉い…って、なんかベッドの上で土下座してるっ!?
いやいやいや! 幾らなんでも、そこまでしろとは言ってないからねッ!?
「ちょ…ちょっと待ってって! 確かにムカついてはいたし、謝ってほしいと思った事もあるけど、土下座までしなくていいから!」
「そ…そうですわ! 顔を上げてくださいまし!」
「しかし……」
愚直で真面目な部分が悪い方向で暴走しちょる…。
つーか、土下座なんて何処の誰に教わった?
例の『日本文化に詳しい副隊長さん』とやらか?
「アンタの謝罪はちゃんと受け取ったから! もうあたし達も気にしてないし! ね? セシリア!」
「鈴さんの仰る通りですわ! ですから、そこまでしなくても大丈夫ですから!」
「うん…ありがとう…二人とも…」
ふぅ…二人がちゃんと言ってくれたお蔭でなんとかなった…かな?
こーゆーのって部外者が口を挟んでも意味無いからね。
当事者同士で話し合って解決しないと。
「ふっ…一先ずは落ち着いた感じだな」
「そーだねー」
やっと部屋の空気が軽くなった…。
自分の部屋なのに落ち着かないとか、一体どんな地獄だよ。
「取り敢えず、ボーデヴィッヒさんは部屋に戻って着替えてきた方が良いよ。それから皆と一緒に朝ご飯を食べに行こ?」
「了解だ。すぐに着替えてこよう」
言うが早いが、ボーデヴィッヒさんはそそくさと部屋から出て行き自分の部屋へと戻って行った。
行動力があるのが本当に助かる…。
「なんか佳織…あの子のお姉ちゃんみたいね」
「お姉ちゃんって…同い年なんだけどな~…」
同じ歳のクラスメイトのお姉ちゃんって…キャラ濃過ぎでしょ…。
純粋無垢な彼女の目の前で今みたいな話をしたら、即座に私の事を『お姉ちゃん』って言ってきそうで怖い。
あの子がここにいなくて本当に良かった…。
「んじゃ、私も着替えるから廊下で待っててくれる?」
「「「手伝おうか?」」」
「結構です! 本音ちゃん!」
「はいはーい。みんな~廊下に行こうね~」
「ちょ…本音ッ!?」
「お…押さないでくださいましッ!?」
「分かった! 分かったから!」
はぅ~…本音ちゃん…マジでサンクス。
この借りはいつか絶対に返すと約束するでござるよ…。
次回もまだまだ朝のお話が続くんじゃよ。
ここからは原作通りに『臨海学校編』まで一直線に行く予定なので、その間の買い物の話とかもするつもりです。
なので、暫くは戦闘シーンなどは無いと思っていてください。