私…生まれ変わったらモブキャラになりたいな(なれるとは言ってない) 作:とんこつラーメン
ゼクスと閣下は泣いていい。
新しい朝が来た。希望の朝だ。
カーテンから差し込む朝日が眩しくて気持ちが良い。
うん。今日も素晴らしい日本晴れだ。
「…なんて現実逃避をしながらのー…お布団オープン!」
……いない。
ほっ…本当に良かった…。
デュノアさんが女子として再編入し、またもや少しだけ寮の部屋替えが発生した。
まず、今までずっと織斑君と一緒だったデュノアさんはボーデヴィッヒさんと相部屋になり、織斑君はついに念願の一人部屋となった。
噂では、部屋替えの際に織斑君と私、一人部屋同士で一緒にすればいいんじゃないか的な話も出たらしいが、織斑先生が鬼のような形相で猛反対した…らしい。
それについては普通に感謝してるし、私も流石に男の子と一緒の部屋と言うのはかなり抵抗がある。
どうして鬼の形相になったのは分からないけど。
「デュノアさんと一緒ならボーデヴィッヒさんも大丈夫だよね。もう二度と私の部屋に不法侵入とかしないよね?」
これは確認と言うよりは願望に近い。
朝、起きたら自分以外の人間の温もりを感じた時の精神的衝撃は本当に凄い。
一撃必殺で目が覚める。いやマジで。
「やっぱり一人部屋こそ至高だよねぇ~……起きよ」
鏡の前に立ち、櫛で軽く髪を整える。
私って凄い髪が長いせいか、寝て起きると髪がかなり乱れてる事が多いんだよね。
だったら切ればいいじゃないって思われるだろうけど、ここまで伸ばすと逆に愛着が湧いてくる。
これが女心と言う奴なのか…?
「こんなもんかな。よし」
髪も整え終わったし、とっとと着替えて食堂に行きますか。
昨日はご飯を食べたし今日は……ご飯だ!
でも、偶には日替わりじゃないのにしようかな?
何が良いかな~? どれにしようかな~?
IS学園の食堂はメニューが豊富過ぎるから困りますなー。
中には『なんじゃこりゃ』って感じの見た事も聞いたもとも無いメニューもあったりするし。
こんなにも色んな国の食事を扱っている食堂なんてここぐらいだろうね。
「いつも皆に迎えに来て貰ってるし、今日ぐらいは私が待つ立場になってもいいでしょ。ってことで、お着替えターイム」
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・・・
・・
・
『彼女』は、本当の意味で僕の事を救ってくれた。
僕自身だけじゃなく、デュノア社や家族まで救ってくれた。
本人は否定するかもしれないけど、その『切っ掛け』を作ってくれたのは間違いなく『あの子』だった。
どれだけ感謝してもしきれない。
彼女の事を考えていると、いつも脳裏に『あの言葉』が浮かび上がる。
僕があの子を本格的に意識する切っ掛けになった言葉を。
『あの二人の優しさを馬鹿にしないで』
今思えば、あの言葉は正しく『一撃必殺』の威力があった。
あんな言葉を言われて何も思わない人間はいないと思う。
事実、あの日からずっと僕は『彼女』を視界に入れると心臓の鼓動が早くなる。
そう…僕にとって…あの子は……。
「お待たせ…シャルロットちゃん。迎えに来たよ」
白馬の王子様ならぬ…白馬のお姫様なのだから……。
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・・・
・・
・
「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!??」
目が覚めると、そこは学生寮の自分の部屋。
窓の外では小鳥たちが鳴き、朝を告げている。
「ゆ…夢…?」
新たな自分の部屋となった場所のベットの上で、シャルロットは頭を真っ白にしながら顔を真っ赤に染める。
夢なのに、最後の光景だけはハッキリと思い出せる。
白く美しい馬に乗った佳織が、男装をした状態でバラの花びらをまき散らしながら登場し、自分に向かって手を伸ばし、そのまま……。
「はわわわわわわわわ……」
大切な恩人で何という妄想をしてしまったのか。
けど、思い出すとそれだけで顔がにやけて…。
「んにゅ~…? シャルロットォ~…? どうして朝から騒いでいるんだ~…?」
「あ! ご…ごめんねラウラ! 起こしちゃった?」
「起こされたというか…今ので目が覚めたというか…」
隣のベッドでは、瞼を擦りながらラウラが起き上がる。
流石に裸は止めたのか、その小さな体には佳織があげたTシャツが着られている。
因みに胸の部分には『ソフト&ウェット・ゴービヨンド』と書かれてある。
「なんだか顔が赤いぞ? 体調でも悪いのか?」
「え? だだだだだ大丈夫だよ! うん! ちょっと掛布団を被って寝ちゃってただけだから! すぐに良くなるから!」
「…そうか。なら別にいいが…」
助かった…。
純粋無垢なラウラが同室で本当に助かった。
もしもこれが鈴辺りならば、まるで警察の事情聴取並に色んな事を聞かれていたに違いない。
「そ…それよりも、早く朝ご飯に行く準備でもしよ? きっと皆も待ってるから」
「確かにそうだな。佳織を余り待たせてはいけないな」
ラウラの口から佳織の名前が出た途端、再び夢の光景が自動的に脳内再生された。
「な…なんだかまだ体が火照ってるなぁ~! ちょっとシャワーでも浴びて頭を冷やしてくるよ! ラウラは先に準備でもしてて!」
「…? 了解だ」
ラウラにと言うよりは、自分に対する言い訳のように誤魔化しながら、シャルロットは慌ててシャワー室へと入っていき、服を全部脱いでからの冷水で文字通り頭を冷やした。
「何をやってるのさ僕は…もぉ~…」
まだまだ青春真っ盛りなシャルロットであった。
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食堂に行く途中でいつもの皆と合流。
今日は待たせないで済んだ。偉いぞ私。
「おはよう、皆」
「おはようございます、佳織さん」
「おはよー、かおりーん」
「おはよう、佳織」
まずはオルコットさんや本音ちゃん、篠ノ之さんと会って、その後に凰さんと織斑君と会った。
どうやら、まだデュノアさんとボーデヴィッヒさんは来てないみたい。
時間には余裕あるし、問題は無いけど…。
「もう既に全員揃っていたか」
「ボーデヴィッヒさん。おはよう」
「おはようだ、佳織」
噂をすれば何とやら。
一番最後にボーデヴィッヒさんとデュノアさんがやって来た。
デュノアさんはなんだか顔が赤いけど…どったの?
「今日も和食で箸の練習だな。日本で暮らすと決まった以上、一刻も早く慣れなくては…」
嘗ての厳格っぽい彼女はどこへやら。
今のボーデヴィッヒさんは完全に無邪気の化身だ。
もしかしたら、これこそが本当の彼女なのかもしれない。
「デュノアさんも、おはよ」
「お…おはよ! 佳織!」
Oh…完全に声が裏返っておりますがな。
割とマジでどうした?
「「「「………」」」」
そして、篠ノ之さんと凰さんとオルコットさんと本音ちゃんはどうしてすごい形相でデュノアさんの事を見つめてるの?
なんか怖いので、織斑君に尋ねてみる事に。
「ね…ねぇ…皆どうしたのかな?」
「俺にもサッパリ…。ただ一つだけ言えることは…」
「言えることは?」
「『君子危うきに近寄らず』…ってことだな」
「激しく同感」
こんな時、藪蛇だけは絶対に御免被るからね。
大人しく歩みを進めるが吉と見ました。
「食堂…行こっか?」
「…だな」
・・・・・
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・・・
・・
・
朝の食堂は本当に賑やかだ。
生徒達が入れ替わり立ち代わりに出入りを繰り返している。
私達も急いで席を確保しないと、食べる時間が無くなってしまう可能性が高い。
どれだけ時間に余裕を持って出ても、ここで浪費してしまっては何の意味も無い。
「食券の販売機も並んでるね」
「そこまでの行列じゃないけど…それでも少し時間が掛かっちまうな」
「人間が多いことの弊害というやつだな。こればかりは仕方あるまい」
席数はかなり多い筈なんだけど、それ以上に生徒数が多いんだよね…。
お蔭で、毎朝皆で椅子取りゲームだ。
お昼とかは食堂以外で食べる人も多いから、そこまで苦じゃないんだけど。
「素早くメニューを決めて並ばないとね」
「じゃないと、折角注文したメニューが冷えちまう。それだけは勘弁だよ」
「よ…よし。今日は『焼き魚定食』とやらに挑戦だ。上手く食べれるかどうか不安はあるが…」
焼き魚定食かー。
箸に慣れてない人にはかなり難易度が高いんじゃないかな?
けど、本人がやると言っている以上は温かく見守らないと。
チャレンジ精神は大切だし。
「ところで…あいつらはいつまで睨み合っているのだ?」
「「さぁ…?」」
つーか、まだやってたんだ。
密集してコソコソ話してるっぽいけど。
「お前らー。早くしないと食べ損ねちまうぞー。言ったからなー」
織斑君の忠告を聞き、やっと皆こっちに来た。
一体何の話をしてたんだろう?
「シャルロット…さっきの話、後でもっと詳しく聞かせなさいよ?」
「う…うん…分かった…」
さっきの話とな?
いや…気にしない方が良いな、これ。
わーたーしーはーなーにーをたーべーよーかーなー?
……よし。決めた。
ずっと気になってた『卵定食』にしよう。
そうと決まったら、早速食券を購入でゴザル。
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・
卵焼きに目玉焼き。
それに錦糸卵が振り掛けられていて、味噌汁には溶き卵が入っている。
卵豆腐もセットになっていて、トドメに『卵掛け御飯もどうぞ』と言わんばかりにドンと生卵も一個ついてきた。
TKG専用の醤油のおまけ付き。
…うん。これこそ、どこに出しても恥ずかしくない立派な『卵定食』だ。
「仲森さん…すげーの注文したな…」
「完全な卵オンリーじゃないの…」
「ここまで卵だらけだと、却って清々しいな…」
「前に一度見て、ずっと注文してみたかったんだよね」
なんか普通に引かれてるけど気にしない。
そんなのは今更なのです。
因みに、あれからちゃんと全員が座れるぐらいの席は確保できた。
割と奇跡的じゃないかと思う。
「か…佳織さん? その…生卵をライスに掛けて食べるのですか?」
「そーだよ? シンプルかつ最高の食べ方。これが卵を一番美味しく味わえる食べ方なんだよ。ね、本音ちゃん」
「TKGは日本が生み出した卵料理の最高傑作だよ…」
イギリス生まれのオルコットさんには衝撃的な光景だったのか、普通に驚かれた。
そういや、外国の人は日本人の『生食』って文化がイマイチ理解出来ないって聞いたことがある。
今じゃ刺身とかも受け入れられてるみたいだけど、最初はそりゃもうドン引きされたって。
これは完全に日本独自の文化だよねぇ~…。
「ふにゅ? ボーデヴィッヒさん? どうして私の頬を触るの?」
「いやな。こんなにも卵料理を食べているから、佳織の肌はこんなにも綺麗なのかと思ってな」
「別に普段から頻繁に食べてる訳じゃないよ?」
にしても大胆ですな…普通に驚いたよ。
織斑君以外は恐怖新聞見た時のリアクションみたいな驚き方してるけど。
「卵掛け御飯かー…いいよなー…。迷った時は取り敢えず食うって感じだよな。絶対にハズレ無いし」
「そうよねー。ホカホカの白米に卵を掛けて、その上に醤油を垂らしてるだけなのに、なんでか物凄く美味しいのよねー」
「一度でも味わったら最後、この魅力にはそう簡単には抗えんしな…」
「これだけでもう十分過ぎるよねー」
卵焼きをおかずに、卵焼きご飯を食べる。
傍見てると変な光景かもだけど、これは想像以上に美味しい。
この『卵定食』を生み出した人は天才だな。
ノーベル平和賞を受賞してもいいでしょ。
「むぅ…魚を食べようとすればするほど、魚の原型が無くなっていく…なんでだ?」
ボーデヴィッヒさんも悪戦苦闘しながら頑張って箸で焼き魚を食べようとしてるけど、お皿の上の焼魚はまぁ見るも無残な姿に。
逆に食べやすそうではあるけどね。
「えっと…佳織は卵料理が好きなの?」
「卵料理が好きってよりは、卵料理『も』好きって感じ? 自分で言うのもアレだけど、私ってあんまり食べ物の好き嫌いってないから」
「そう…なんだ…良い事聞いちゃった…」
「ふぇ?」
最後の方…なんか言った?
「そっか…佳織は好き嫌いが無いのね…」
「これは重要な情報だな…」
「それならば……」
なんだろう。
急に背中に悪寒が走りましたよ?
「前に屋上で食べた時に思ったけど、仲森さんって料理が得意なのか?」
「得意ってよりは、必要に迫られた結果、自然と上手になっていったって感じ?」
「俺と一緒だ。千冬姉が家事がからっきしだったから、俺が出来るようにならなくちゃって…ってさ」
「…苦労してるんだね」
「色んな意味でな…」
前に一回だけ部屋の前まで行って、まだ室内は見たことないけど織斑先生の部屋って相当な『汚部屋』なんでしょ?
それを一人で掃除していると考えると…なんか急に同情の念が出てくる。
「今度、織斑先生の部屋を掃除する機会があったら教えてよ、私も一緒に手伝うから」
「いいのか?」
「勿論。普段から凄くお世話になってるんだし、ちゃんといつか恩返しをしたいなって思ってたの」
こういう機会でもないと、マジで恩返せないし。
チャンスは最大限に生かす。それが私の主義なのですよ。
「もう十分に恩返ししてると思うけどな…」
「何か言った?」
「な…なんでもないよ。ほら、とっとと食っちまおうぜ。朝のHRに遅刻しちまう」
またなんか言われたような気がしたけど…別にいいか。
因みに、原作とは違ってちゃんとHRには遅刻しないで間に合いました。
次回から臨海学校に向けて本格始動。
佳織にはどんな水着を着せようかな?