私…生まれ変わったらモブキャラになりたいな(なれるとは言ってない) 作:とんこつラーメン
現実は冬ですが、劇中では夏なので、更にヒロインレースが加速する?
臨海学校に備え、山田先生…真耶と一緒に駅前にあるショッピングモール『レゾナンス』へとやって来ていた。
真耶の強い希望により、私達は水着売り場へとやって来て、彼女は意気揚々と奥へと入っていき、一人残された私も店内を見渡しながら中を歩いて行く。
最近は色んな水着があるんだな…知らなかった。
水着に対して特に拘りとか無かったしな。
折角だし、私も何か買おうかと辺りを物色している時だった。
「織斑先生?」
「教官?」
なんと、佳織とラウラが一緒に並んで歩いてきた。
こんな場所で出会うと思っていなかったから、流石に驚かされた。
しかも、まさかの組み合わせだったからな。
学年別トーナメントの一件以降、ラウラは佳織によく懐いていると聞いた。
自分の命を救って貰っただけでなく、元上官との確執も解き解して貰ったのだから当たり前か。
今思えば、佳織の周囲にはラウラだけに限らず、色んな生徒達が集まってきている。
その殆どが、佳織の手によって救われて来た者達ばかり。
本人はすぐに否定するだろうが、それでもこいつが大勢の心と命を救ってきたのは紛れもない事実だ。
私も…その苦労に少しでも報いる事が出来ればいいのだがな…。
「まさか、お前達が二人一緒とはな。他の連中はいないのか?」
「一応、一緒に来てはいますけど…」
「別の場所に行っているのか?」
佳織の話によると、どうやら鈴を初めとする連中は、佳織に似合う水着を探して店内を奔走中との事らしい。
その間に、佳織はラウラに頼まれて彼女に似合う水着を探していた…とのことだ。
「と言うことは、まさか一夏も一緒なのか?」
「はい。今は隣の男性の水着売り場に行ってます」
「そうか」
あいつのことだ。
恐らくは鈴辺りに『荷物持ちとして来い』的な事を言われて来たんだろう。
実際は、佳織と一緒に出掛けられる機会を逃したくない一心だったに違いないが。
それはそれとして…私は佳織の私服が猛烈に気になっている。
真っ白なワンピースに真っ白なリボンが付いたカチューシャ。
ハッキリ言おう…か・わ・い・す・ぎ・る…!
制服も白、専用機も白と言うこともあって、佳織には『白』という色が非常に良く似合う。
もういっそのこと、佳織のパーソナルカラーにしてもいいんじゃないかと思う。
え? それだと一夏と被る? そんなのは知らん。
もしも、この場にラウラがいなかったら私は自分の感情を抑える事が出来なかったかもしれん。
そういう面で、ラウラには本気で感謝したい。
「あー…なk…佳織はプライベート用の水着を持っていないのか?」
「一応、持ってはいるんですけど…臨海学校があることをすっかり忘れてて実家に置いてきちゃったんですよね…たはは…」
…成る程な。だから、こうして臨海学校に備えて水着を買いに来た訳か。
と言うことは、目的自体はこっちと同じなんだな。
しれっと名前で呼んだ事には気が付かれていないか。
嬉しいような、悲しいような…。
「奇遇だな。実は、私も臨海学校に備えて買い物に来たんだ」
「そうだったんですね」
今思えば、こうして学校外で佳織と出会うのなんてこれが初めてだ。
この機に少しでも佳織との距離を縮めておきたい。
「か…佳織は自分で水着を選ばないのか?」
「うーん…自分にどんな水着が似合うのか、良く分からないんですよね…」
「実家にあるという水着はどんなのなんだ?」
「普通のワンピースタイプの水着ですよ。色は確か…水色だったかな?」
水色の水着か…。
清楚なイメージの強い佳織にはぴったりだな。
「なら、私が佳織の水着を選んでやろう」
「え? いいんですか?」
「構わんさ。お前には普段から頼りきりになってしまっているからな。こんな時ぐらい、私に頼ってくれ」
「割と日常的に織斑先生には頼ってるんだけどな…」
「それでも…だ。気になるのなら、佳織が私の水着を見繕ってくれないか?」
「わ…私でいいんですか?」
「勿論だ」
よし!! ナイスな事を言ったぞ私!!
今のは自分で自分を褒めてやりたい!!
「教官の水着を選定する役に選ばれるとは…流石は佳織だな」
「流石…なのかな…?」
少しラウラがいた事を忘れかけたが…まぁいいだろう。
他の奴等と違って、今のこいつは全く害は無い。
しかし…あれだな。
こうして佳織とラウラが並んでいると、まるで姉妹のように見えるな。
ラウラの背が低いから猶の事。
ということで、ここから私と佳織とラウラによる水着探しが始まった。
ラウラはもう決まっているようなので、探すのは主に私と佳織の分になるが。
小娘共には悪いが、ここは私に譲って貰うぞ。
「矢張り、佳織には白い水着が似合うと思うんだが…」
「白…ですか?」
「あぁ。今もそうだが、佳織はよく白い衣服を着ているイメージが強いからな」
「それに、佳織は専用機も白だしな」
よく言ったラウラ。ナイスフォローだ。
ご褒美に、後でお菓子でも買ってやろう。
「ふむ…これなんかどうだ?」
「白い…ビキニ…ですか?」
「そうだ。良く似合うと思うぞ」
ふと目に着いた水着を手に取り、佳織に見せつける。
すると、顔を赤くしながら水着を凝視し始めた。
「わ…私みたいのにビキニなんて大胆なの…似合うのかな…」
「何事も挑戦だぞ? それに、佳織ならきっと似合うさ」
というか、私が佳織のビキニ姿を見たい。
「もし恥ずかしいのなら、パレオも一緒に買ったらいい。セット販売のやつだけじゃなく、個別に売っているのもあるみたいだしな」
「パレオ…それなら大丈夫かも…?」
よし! 佳織もその気になってくれた!
本当はここで試着も勧めたいのだが、流石に今はまだそこまで踏み込むのは拙い。
何事も段階が重要なのだ。
「なら、今度は私の水着を選んでくれないか?」
「分かりました。えっと…」
まぁ、佳織が選んでくれた水着ならば、どんな物でも着るつもりだがな。
だがここは敢えて、佳織のセンスに期待してみようと思う。
「ふふふ……」
「どうした?」
「いえ…少し変な事を考えちゃって」
「変な事?」
佳織がこうして笑うのは割と珍しい。
普段の彼女は、いつも暗そうにしているからな。
「ご存じだと思いますけど、私って一人っ子なんですよ」
「らしいな」
「兄弟姉妹が一人もいないんで、クラスメイトがそっち系の話をしているのが羨ましかったんですよね。で、織斑先生とこうして水着を選んでると、ちょっとだけ『もし私に歳の離れたお姉ちゃんがいたら、こんな感じだったのかな』なんて思っちゃって…変ですよね。織斑先生は織斑君のお姉さんなのに…」
ズッキュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン!!!
か…佳織…その顔と、その台詞の組み合わせは反則だぞ…!
呼んでいい…好きなだけ呼んでくれて構わんぞ佳織!!
お前が望むのならば、私は喜んでお前の『お姉ちゃん』になる!!
「えっとな…佳織。私とお前はその…教師と生徒という関係だ。それは分かるな?」
「は…はい」
「けど、それはあくまで『学園内でのみ』に限定される。今はお互いにプライベートで、ここはIS学園じゃない。だからだな…お前がそう望むのであればだな…私の事を『お姉ちゃん』と呼んでk…」
「織斑先生~!」
「「「あ」」」
こ…この声は…まさか…!
「あれ? もしかして仲森さんとボーデヴィッヒさんですか? お二人も来てたんですね~!」
「「「山田先生…」」」
ま…真ぁ~耶ぁ~!!
どうして! よりにもよって! このタイミングで戻って来るんだ!!
「さっき、そこで凰さんや篠ノ之さん達も見かけたんですけど、もしかして一緒に来てたんですか?」
「はい。と言っても、店の中に入った途端に別れちゃったんですけど」
「そうだったんですね。あ、その水着可愛いですね! きっと仲森さんに似合いますよ!」
「あ…ありがとうございます」
まるでマシンガンのように畳み掛ける真耶。
そうだった…すっかり忘れていた。
真耶は仕事中は頼りなさそうにしているが、プライベートとなると途端に饒舌になるんだった。
「「「佳織~!!!」」」」
「かおり~ん!」
「佳織さ~ん!」
げ。ここで更に小娘共もやって来た。
はぁ…私だけの時間はここで終わりか。
仕方あるまい…。
「「「「「この水着はどうっ!?」」」」」
やって来たのは凰と篠ノ之とオルコットと布仏とデュノアの五人。
各々に佳織に似合うと思った水着を握りしめているが…残念だったな。
もう既に佳織の水着は、この私が選んでいる。
「って…あれ? 佳織が既に水着を持ってる? それって…」
「私が選んだ水着だ」
「「「「「織斑先生ッ!?」」」」」
ここでようやく私に気が付いたか。
あと、真耶も一緒にいるんだから気が付いてやれ。
流石に可哀想になってくる。
「ど…どうしてここに…?」
「お前達と同じだ」
「ってことは、水着を買いに…?」
「そうだ。その最中に佳織たちと遭遇したんだ」
なんだろうな…大人げないと分かっちゃいるが、それでもこいつらの驚く顔を見ているとその…込み上げてくるものがあるな。
「白いビキニのパレオ付き…」
「悔しいが…良いセンスをしている…!」
「やっぱり佳織には白が似合うんだよね…」
「かおりぃ~ん…」
「お見事ですわ…織斑先生…!」
フッ…偶には私も一本取るぐらいの事はしなくてはな。
「あ…あぁ~…成る程。そういう事ですか」
「山田先生?」
真耶の奴…何を一人で納得している?
「皆さん、ちょっと私と一緒に向こうに行きましょうね~。ほら、ボーデヴィッヒさんも」
「う…うむ…了解した…」
なんと、真耶が佳織以外の全員を引き連れて何処かへと去って行ってしまった!
結果として、私と佳織の二人っきり状態に。
なんて気遣いの塊…やるな真耶!
今度、私の持っている最高の酒を振る舞ってやろうじゃないか!
「そ…そういえば、まだ佳織に水着を選んで貰ってなかったな」
「あ…そうだった。えっと…」
佳織は近くにある棚を見渡してから、一着の水着を手に取った。
「織斑先生には、これが似合うと思います」
「黒のビキニか…」
「えっと…織斑先生って普段から黒いスーツを着てるから、水着も黒が似合うかなーって思ったんですけど…」
か…佳織…そんなにも私の事を見てくれていたのか…!
不覚にも感動してしまった…!
「では、これにしよう。折角、佳織が選んでくれた物だしな」
「あ…はい。では、どうぞ」
佳織から水着を受けとり、一緒にレジへと向かう事に。
ここでまた大人にしか出来ない戦法を取るか。
「どうせ一緒に払うのなら、その水着は私が奢ってやろう」
「えっ!? 流石にそこまでして貰う訳には…」
「心配するな。IS学園の教師はかなりの高給取りなんだ。それに、普段から余り金を使う機会が無くてな。こういった時じゃないと使わないんだ」
佳織がトールギスの稼働データ料と称して、IS委員会経由でかなりの金を受け取っているのは知っているが、それはそれ。
金を使う機会が無いとは本当だし、私が佳織に奢ってやりたい。
「大丈夫だ。ここで私に奢って貰ったからと言って、何かペナルティがあるわけじゃない。だから、遠慮なんてするな。お前には今まで何度となく学園の危機を救って貰ってるんだ。これはその礼とでも思ってくれてればいい」
「…そこまで言うのなら…お願いします…」
「それでいい」
ちょっと強引だったかもしれないが、佳織を説き伏せることに成功した!
どうなるかと思ったが、なんとなかったな…。
「あ…あの…」
「どうした?」
「…ありがとうございます…えっと…お姉ちゃん…」
「!!!???」
い…今…なんと…?
わ…私の事を『お姉ちゃん』と呼んでくれたのか…!?
その後、恥ずかしそうに俯きながら佳織はレジへと早歩きで行ってしまう。
余りの衝撃に、少しの間だけ私は本気で呆然としてしまった。
千冬さん、まさかの本格参戦。
色んな意味で最強のライバルの出現です。