私…生まれ変わったらモブキャラになりたいな(なれるとは言ってない)   作:とんこつラーメン

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この寒い時期に夏の話を書く矛盾…悲しい。







天災兎、登場

 前にレゾナンスで買った水着を手に、私達は更衣室へと向かっていた。

 最初こそは『ちゃんと行けるかな~』と心配になっていたけど、そこは流石に高級旅館。

 親切丁寧に更衣室への案内板がちゃんとあって、結果として私達は迷わずに進む事が出来た。

 その途中で別の班となったオルコットさんやデュノアさん、凰さんとも合流し一緒に行くことに。

 それはそれとして、さっき旅館の売店で見たキーホルダー…ちょっと可愛かったかも。

 夜にでも買いに行こうかな…。

 

「ん?」

「どうした佳織?」

「あそこ…更衣室に続く渡り廊下の所に織斑君が立ってる」

 

 どうやら、彼も私達と同様に海へと行くつもりのようだけど…さっきからどこを見てるの?

 なんか廊下の横…というか、中庭的な場所を見つめてない?

 

「ホントだ。あいつ、あんな場所で何をやってんのかしら?」

「行ってみれば分かるだろう」

「そうですわね」

 

 そんなわけで、皆で彼とも合流することに。

 一気に大勢で迫ってきたので、いつもは鈍感な織斑君も流石に気が付いた。

 

「うぉっ!? な…仲森さんたちか…普通にびっくりした」

「織斑君。さっきから何を見てんの? ツチノコでもいた?」

「なんでそこで幻の生物の名前が出る? いや…あそこ」

「「「「「「「あそこ?」」」」」」」

 

 そう言って織斑君が指さした場所には、なにやら機械染みたデザインのウサギの耳…? みたいな物が突き刺さっていた。

 

「しののん? なんか顔色が悪いよ~?」

「いや…なんでもない…気にしないでくれ本音…」

 

 篠ノ之さんが明らさまな反応をして、機械のようなウサ耳。

 しかも、ご丁寧に『抜いてください』と地面に書いてある。

 

(まさか…いや…そんな事が…?)

 

 なんかもう殆ど原作知識が薄れ、こんなシーンがあったかどうかすらあやふやだ。

 けど、この臨海学校で『あの人』が介入してくるのは確実。

 とすれば、やっぱりこれって…。

 

「…確かめてみますか」

「佳織?」

 

 渡り廊下から降りて、地面に埋まっているウサ耳へと近づいていく。

 見た感じでは特に害は無さそうだけど…。

 

「ふーむ? ん?」

「何か分かったの佳織?」

「これって…もしかして…?」

 

 試しにウサ耳をチョンと突いてみると、ウサ耳は簡単に倒れた。

 

「これ…最初から刺さってない。地面に置いてあるだけじゃん」

「その下には何にもないのか?」

「……ないね。マジで種も仕掛けも無い」

「なんじゃそりゃ…」

 

 それはこっちの台詞だよ織斑君。

 取り敢えず、これは無視して更衣室へと急ぎますか。

 時間は限られてる事だしね。

 

 そう思って皆の元へと戻ろうとすると、ずっと上の方からヒュルルル~…と何かが落下してくるような音が。

 

 

「な…何かが落ちてくる! 佳織、急いでこっちに来るんだ!」

「う…うん!」

 

 篠ノ之さんに言われて、我ながらの全力疾走。

 廊下に戻る寸前にこけそうになって、思わず篠ノ之さんに体に抱き着くような形になってしまった。

 

「わわ…ゴメン!」

「いや…全然構わない…寧ろ、大歓迎だ…」

「ふぇ?」

 

 篠ノ之さん…なんか鼻血出てない?

 本当に大丈夫?

 

 なーんて心配していたら、例の落下物が中庭にズド―――ン! という音と衝撃と共に中庭へと落ちてきた。

 

「うわぁぁぁぁっ!?」

「「「「「「「きゃぁぁぁぁぁぁぁっ!?」」」」」」」

 

 落下の勢いのせいで凄い風が巻き起こり、当然のようにスカートが捲りあがろうとする。

 咄嗟に皆でスカートを押さえたけど…大丈夫…だと信じたい。

 

「うぅ…本気でビックリしたぁ……んん?」

 

 閉じていた眼をそ~っと開けて落下してきた物体を確認する。

 それは『にんじん』だった。

 人一人ぐらいは余裕で入れそうなぐらいに大きなにんじん。

 ただし、これは絶対に食べれそうにはない。

 見た感じでは子供向けの漫画とかに登場するデフォルメされたにんじんだけど、細かい場所をよーく観察していくと、至る所が精密な機械で作られ、これが現代技術の結晶として生み出されたことが一発で分かる。

 

「な…なんですの…? これは…」

「これって…にんじん…よね?」

「見た感じはそうだけど…でも…」

「この大きさの人参が存在すること、それが空から落下してくること自体が明らかに異常だ」

「ふぇ~…まるでギャグ漫画みたいな展開だねぇ~…」

 

 ある意味、本音ちゃんの言葉が真理を突いてるかもしれない。

 私の中じゃ、こんな破天荒な事をする原作キャラなんて一人しかいない。

 その事は篠ノ之さんや織斑君もすぐに理解したようで、二人揃って驚くと言うよりは呆れた顔をしていた。

 

「なぁ…箒…これって絶対……」

「言うな…認めたくはないし、信じたくもないが…それしか有り得ないのが悲しい…」

 

 悲しいって。

 中々に凄い感想を言うね…。

 

「に…にんじんが開きますわ!」

 

 にんじんが開くって。

 いや…言ってる事は正しいんだけど、字面にすると凄くシュールなんだよね…。

 オルコットさんみたいなお嬢様が言うと特に。

 

 プシュー…という音を出しながら機械のにんじんが真ん中から割れて、その中から一人の成人女性が姿を現す。

 

 その頭には機械のウサ耳を着け、その服装は奇抜の一言に尽きる『不思議の国のアリス』を彷彿とさせるワンピース。

 そして、無駄に凄まじいグラマースタイル。

 うん…間違いないわ。

 これは絶対に『あの人』だ。

 まぁ…どうせ妹である篠ノ之さんや、親友である織斑先生、その弟である織斑君に会いに来たんだろうけど。

 つまり、こっちから何もしなければ、同時に何もされないという訳だ。

 彼女からしたら、他人は全て『路傍の石』も同然だからね。

 

「……アイルビーバーック…」

 

 …なんでそこでターミネーター?

 しかも、ちゃんとしゃがみながらの登場だし。

 

「なーんちゃって! 驚いた? 驚いた?」

「「驚く以上に怖かったわ!!」」

 

 おぉ~…ここでまさかの織斑君&篠ノ之さんのダブルツッコミ炸裂ですか。

 流石は幼馴染同士。見事に息が合ってますな。

 

「えへへ…久し振りに会うから、ついついハッスルしちゃった♡」

 

 ハッスルて。

 それちょっと意味が違いませんかね?

 

「それにしても、二人とも久し振りだね~! 特にいっくん! 前に会った時からかなり背が大きくなってますな~!」

「そりゃ…最後に会ったのって、かなり昔だしな…」

 

 そういや、この二人が天災兎さんと最後に会ったのっていつ頃になるんだろ?

 別にどうでもいいことではあるけど、地味に気になりますな。

 

「箒ちゃんも元気そうで何よりだよ!」

「お蔭様で…」

 

 さっきのツッコミから一変して、急に複雑そうな顔に。

 やっぱ、まだまだお姉さんに対して色々と思う事があるんだろうなぁ…。

 

「けど、ごめんね! 実は束さんは、今日は箒ちゃんの傍にいる子に会いに来たんだよね~!」

 

 篠ノ之さんの傍にいる子…?

 この中で篠ノ之さんの一番近くにいる人物と言えば…?

 

「初めまして! 仲森佳織ちゃん! ようやく会えたね! この時をず~っと待ってたよ!」

 

 って、私か~い!!

 どうして、よりにもよって私!?

 別にこの人に注目されるような事はして……るわ。

 あの時は気を失ってて全く知らない事だけど、なんかトールギスが無人機相手に無双ゲームしてたっぽいし。

 無人機の製作者はこの人だし、当然のようにその事を知っててもおかしくない。

 

 自分の知らない所で起きた事で興味を持たれるってのは、非常に複雑な気分なんですけど…。

 後で織斑先生に相談とかした方がいいのかしら…。

 

「は…初めまして…? えっと…どこかでお会いしましたっけ…?」

「またまた~! どうせ私が誰なのか、とっくに気が付いてるんでしょ~?」

 

 うぐっ!? す…鋭い…!

 流石は世界に名立たる天才科学者…!

 こっちの頭の中も既に御見通しって事か…。

 

「それにしても……」

「な…なんですか?」

 

 見た目通り、凄くグイグイ来る人だな…。

 めっちゃ顔が近くにあるんですが…うぅ…美人特有のいい匂いがする…。

 

「直に見ると想像以上の美少女で驚きだよ~! もぉ~…たまらん!」

「ふぎゅっ!?」

 

 い…いきなり抱きしめられた…!?

 凄い怪力…全く抗えない…!

 バタバタしてるのに全く無意味だし…!

 つーか、さっきから顔面が大きな胸に圧迫されて息が出来にゃい…!

 

「やば~…かおりんの匂い…最高なんですけど~…♡ これだけで濡れる~…♡」

「ね…姉さん! 佳織の匂いが素晴らしいのは同感ですが、そろそろ離してやってください!! 佳織の顔が洒落にならない色になってますから!!」

 

 なんか…篠ノ之さんが私の事を助けようとすると同時に、とんでもない爆弾発言をしているような気がする…。

 

「おっと。興奮の余り、ついつい暴走しちゃった。それもこれも、かおりんが可愛過ぎるからだね!」

「「「「「「「うんうん」」」」」」」

 

 はいそこ。どうして皆して同時に頷いてるんですかね。

 天災さんの意見に同意しない。

 

「本当は明日、会う予定だったんだけど…我慢できずにフライングしちゃった」

「フライングって…」

 

 案の定、明日の実習の日に来るつもり満々だったんだな…。

 やっぱり、原作の運命は変えられないって事なのか…。

 

「実は~…」

「ふぇ?」

 

 い…いきなり顔を耳元に寄せてきて、私にしか聞こえないようにそっと呟いてきた。

 

「かおりんに最高の『プレゼント』を用意してあるんだよ♡」

「プ…プレゼント?」

「そ。私と同じ『本物の天才』のかおりんなら絶対に喜んでくれるプレゼント」

 

 私が喜ぶプレゼントって…一体なんぞや?

 想像がつくような…つかないような?

 表現が曖昧すぎて良く分からない。

 

「本当は一つだけで済ませるつもりだったんだけど、かおりんの日々の活躍を見ていたら興奮が収まらなくって、思わずもう一つも作っちゃった」

「もう一つ…?」

「かおりん専用のISスーツ♡」

 

 わ…私専用のISスーツゥ…?

 

「かおりんの専用機に合わせたデザインにしてあるから、きっと気に入ると思うよ」

「はぁ…ありがとうございます…?」

 

 もう色んな意味で訳が分からないけど、一応はお礼を言っておくべき…だよね?

 それがどれだけぶっ飛んだ人物であっても。

 

「おっと! もうそろそろ行かないと! ちーちゃんがやってくるかもしれないしね! いっくん! 箒ちゃん! かおりん! また明日ね~!」

 

 突然離れたかと思ったら、手を振りながらの全力ジャンプで柵を飛び越えていった。

 色んな意味でドキドキさせられた、嵐のような人だったなぁ…。

 

「あ…あの…箒さん? 先程の方は一体…?」

「…私の姉…と言えば分かるか?」

「しののんのおねーさんって…」

「まさか…!」

「あれがISの生みの親の『篠ノ之束』博士なのっ!?」

 

 さっきまでずっと空気を読んで静かにしていた皆が再起動。

 そして、即座に正体を知って驚きまくる。

 それが普通の反応だよ。

 

「で…でも、どうして佳織の事を知っていたんだろう? 凄く嬉しそうにしてたけど…」

「それは俺達が聞きたいぐらいだよ。仲森さんもビックリしたんじゃないか?」

「うん…めっちゃ驚いてる…」

 

 さっきからドキがムネムネしっぱなしで止まらない。

 美人に抱き着かれたことが理由ってよりは、原作屈指のサイコパスに顔と名前を知られていた事実に驚いたことが原因の方が大きい。

 

「ところで織斑君」

「なんだ?」

「このニンジン…どうする?」

「「「「「「「あ」」」」」」」

 

 あの人…これ置きっぱなしにして去って行ったよね…。

 回収する気…は無いのか?

 あったら、外に出た瞬間にしてそうだし。

 

「俺等じゃどうしようもないし…後で千冬姉辺りにでも報告しとけばいいんじゃないかな?」

「それが一番妥当か…」

 

 こんなの、こんな場所に置いておいたら旅館としても迷惑極まりないかもしれないけど、こればかりは仕方がない。

 学園側がどうにかしてくれるまでは我慢して貰おう。

 

「あの地面に置いてあったウサ耳も放置されたままだし…」

「試しに佳織、付けてみたら? 意外と似合うかもしれないわよ?」

「えぇ~?」

 

 そう言うと、徐に凰さんがさっきの機械ウサ耳を手に取ってから私の頭に付けた。

 このウサ耳は見た目が奇抜なだけのカチューシャだったみたいで、本人が持っている物とは違い、完全なるフェイクであることが分かる。

 

「よいっしょっと。あら…結構可愛いじゃない」

「そう?」

「ウサギの耳を付けた佳織さん…可愛らしいですわ…♡」

「オ…オルコットさん…?」

 

 そんな風に目をキラキラさせながら見られると、流石に恥ずかしいのですが…。

 

「とっても良く似合ってるから、かおりん貰っちゃえば~?」

「ん~…」

 

 生来の貧乏精神のせいで、このまま捨てるのは勿体無いと私のゴーストが全力で叫んでるし…まぁいいか。

 別に死ぬわけじゃあるまいし。

 

「それよりも、思ったよりも時間食っちゃったし、早く着替えて海に行きましょうよ」

「それもそうだな。もう既に皆、向かっているだろうしな」

 

 天災さんの予想だにしない登場により驚かされた私達は、気を取り直して更衣室へと向かう事にした。

 はぁ…海に行く前から凄く疲れた…。

 せめて、綺麗な海を見て癒されよう…。

 

 

 

 

 

 

 




次回、やっと海に行けます。



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