私…生まれ変わったらモブキャラになりたいな(なれるとは言ってない)   作:とんこつラーメン

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まだまだ青春の一ページを掘り下げます。

嵐の前の静けさですね。

因みに、山葵に関する話は完全に俄か知識なのでご容赦を。











臨海学校は夜こそが本番

 夢中で遊んでいると、時間ってのはすぐに経ってしまうものでして。

 それは子供も大人も変わりは無いのです。

 

 なーんて落語家志望っぽい導入にしてみました。

 

 今は夕食の時間で、大広間を三つも繋げた大宴会場にて一年生全員揃っての夕飯と洒落込んでいた。

 因みに、先生達は別室にて夕飯を食べている。

 と言っても、部屋はすぐ近くにあるので、何かあればすぐに駆けつけてくる。

 

 そういや、なんでか『夕飯時は浴衣着用』とかいう、これまた謎の規則が旅館に存在し、私達は揃って浴衣を着ていた。

 私達のような生粋の日本人ならばいざ知らず、IS学園は色んな国から生徒がやってきているので、この場面だけでも相当にレアな光景に感じる。

 少なくとも、普通に日本で暮らしていたら、こんな風に大勢の外国人の子達が浴衣を着ている風景なんて絶対に見れなかっただろうし。

 

「ん~…♡ お刺身がプッリプリで美味しいねぇ~♡ 流石は高級旅館。スーパーのお刺身とはレベルが違うであります」

「全くだな。もう見ただけで『獲れたての海の幸』って分かるもんな」

 

 私と向かい合うように織斑君が座り、右隣りにはデュノアさん、左隣にはオルコットさんが座っていて、斜め右前には本音ちゃん、左前には篠ノ之さんがいた。

 因みに、ボーデヴィッヒさんは正座が上手く出来ずに特別に用意されたテーブル席で食べていて、凰さんは単純に違うクラスなので普通に離れ離れに。

 

「「「「………」」」」

「ん? なんか…さっきから本音ちゃん達に凝視されてるような気がするんだけど…どうしたの?」

「えっとね…かおりん…」

「部屋で着替えている時から思っていたんだが…」

「佳織って…浴衣が似合いすぎじゃない?」

「自然すぎる着こなしですわ…」

「そう?」

 

 別に普通だと思うんだけどなぁ…。

 そんなに不思議がるような事?

 

「そう言えば、佳織は手慣れた手つきで浴衣を着ていたな。どこで覚えたんだ?」

「中学の時の部活で…かな?」

「部活?」

「そ。私が前に落語部に入っていた事はもう話したよね?」

「えぇ。そこで仲の良い方々と一緒に楽しく活動をなされていたと」

「うん。で、その時に雰囲気作りって事でユニフォーム代わりに、よく皆それぞれに色違いの浴衣を部活中は着用してたんだ。ほら」

 

 大切な思い出としてスマホの中に保存してある中学の時の部活の集合写真を皆に見せる。

 マリーさん達と一緒に並んで撮影したものだ。

 

「この水色の着物を着ているのが私ね」

「「「「「おぉ~…」」」」」

 

 懐かしいな~…。

 また皆で落語を見に行きたいねぇ…。

 

「成る程な…三年間も着続けていれば、慣れるのも道理というものか」

「上手く着れなかったラウラウのことも手伝ってあげてたしね~」

「和服の佳織さんも素敵ですわ…」

「っていうか、寧ろこっちの方が自然な気がする」

「日常的に着物を着てたのか…スゲーな…」

 

 完全な雰囲気づくりなんだけどね。

 三年生になった頃にはもう私服同然になってたけど。

 この着物、まだちゃんと丁寧に保存してあります。

 というか、学園に持って来てるし。

 寮の私の部屋にあるんだよ。

 

「ん? この山葵って…もしかして『本わさ』だったりする?」

「やっぱ仲森さんもそう思ったか。普段、口にしてる山葵って言えば、スーパーとかで売ってるチューブの奴だしな。学園の食堂に出てくるのだって『練りわさ』だし」

「ほ…本わさ? 練りわさ? え?」

 

 あー…そっか。

 デュノアさんやオルコットさんには流石に分からないか。

 こればっかりは仕方がない。

 

「『本わさ』って言うのは、獲れたての山葵をそのまま摩り下ろした物を指すんだよ」

「これって『水山葵』かな? それとも『畑山葵』?」

「『水山葵』だと思うよ? 主に生食用として栽培されてるのが水山葵だから」

「み…水ワサビ? 畑ワサビ?」

 

 おっと。ついつい織斑君と二人で山葵談義をしてしまった。

 完全に皆を置いて行ってしまった。

 

「水山葵ってのは、豊富で綺麗な水や砂地などの綺麗な透水性が良い土壌が必要な種類で、今回出されているような生で食べる用の山葵なんだよ」

「そんでもって、畑山葵ってのが加工用の山葵な。さっき言った『練りわさ』とかも、こっちに部類に入るな」

「ということは、食堂にあるお刺身定食の山葵って…」

「色んな種類の山葵を混ぜて合成して、それっぽくしてあるやつね。そーゆーのって外国産の山葵が多かったりするんだよね」

「そうそう。こう言っちゃアレだけど、やっぱ山葵は日本の水山葵が一番だよな。なんたって、山葵自身が刺身になるぐらいだし」

 

 今回は無いけど、機会があればまた山葵のお刺身を食べたいなー。

 中学の時の修学旅行の時に行った旅館には出てきたんだけど。

 

「幾ら美味しいと言っても、一気に食べたりしたら駄目だからね? 流石に辛いから」

「な…なんで僕の方を見て言うの?」

「なんか、デュノアさんは調子に乗って山葵を全部一口で食べそうだったから」

「ギク…」

 

 口で言わない。口で。

 なんか原作でも、そーゆー事があったような気がするから念の為の忠告だったんだけど…やっぱりしようとしてたんだな…。

 何が悲しくて、そんなリアクション芸人みたいな事を自分からしたがるのかね。

 デュノアさんはそんなキャラじゃなかったでしょうに。

 

「山葵の美味しい食べ方は、こうして少しだけお箸で取ってから、刺身醤油に混ぜて、お刺身を少し付けてから…ぱくり」

 

 うん。美味しい。

 この他にも赤出汁のお味噌汁や小鍋なんかもあって凄く豪華。

 IS学園はちゃんと金を掛けるべき部分を分かってらっしゃる。

 

「そう言えば、本音ちゃんは山葵とか平気なの?」

「平気だよ~。お刺身やお寿司やざる蕎麦を食べる時には欠かせないよね~」

「通だね…」

 

 普段からお菓子ばかりを食べているイメージが強かったから、山葵や唐辛子みたいな辛い系の調味料は苦手だと思ってたけど、意外とそうじゃないみたい。

 なんだかんだ言って本音ちゃんも『お嬢様』の部類には入るしね。

 舌は肥えている方かも知れない。

 

「あ…ホントだ。ピリ辛で風味があって美味しいや…」

「でしょ?」

 

 私が本音ちゃんと話している間に、デュノアさんは私が言った事を実践してみた模様。

 これで少しでも彼女が和食を好きになってくれたら幸いだ。

 よく外国の人が日本食を食べて感動しているシーンがあるけど、あーゆーのを見ていると不思議とこっちまで嬉しくなってくる。

 

「う…くっ…!」

「あー…えー…大丈夫? オルコットさん」

「こ…この程度…なんてことは無い…ですわ…!」

 

 どこがじゃない。

 どう見ても足の痺れを我慢しているのが見え見えじゃない。

 そんなに正座が苦手なら、ボーデヴィッヒさんみたいに素直にテーブル席に行けばいいのに。

 

「オ…オルコット家の者として…これしきのこと…乗り越えてみせますわ…!」

「いやいや」

「オルコット家云々は関係ないでしょ…」

 

 自分を奮い立たせる為に言ってるんだろうけど、その一文にツッコみ所が満載だからね?

 ちゃんと自覚してる?

 

「ほ…箒さんは…どうして、そんなにも平気そうにしていられますの…?」

「私は幼少期から正座をして過ごしているからな。剣道を嗜む者として当然の事だ」

 

 流石は篠ノ之さん…。

 剣道場の娘ってのは伊達じゃないね。

 

「で…では…佳織さんも…?」

「そーだねー。落語家なんて長時間正座をして当たり前みたいな職業だしね。寄席に行けば皆揃って正座してるし、高座に行けば正座の状態から動けないし。練習として一時間や二時間ずっと正座をして過ごす…なんてよく皆でやってたっけ」

「専門用語が多くて何を言っているのかサッパリですけど…一時間や二時間…!? この状態でそんな長時間を過ごせるなんて…流石は私の敬愛する佳織さん…ですわ…!」

 

 い…いや…マジで大丈夫?

 冗談抜きで辛そうなんですけど。

 

「んー…別に、少しぐらいは足を崩しても問題は無いと思うんだけど…」

「そうだな。旅館の方々も特に指摘はしていないようだし。あそこにも、足を崩して座っている者がいるぞ」

「え?」

 

 篠ノ之さんの言う通り、チラチラと正座を崩して所謂『女の子座り』をしている子達が出てきている。

 流石に胡坐とかはアウトだろうけど、あれぐらいだったらいいでしょ。

 パッと見は正座と大して変わらないし。

 

「で…では…遠慮なく…」

 

 オルコットさんも彼女達を見て少しは安心したのか、迷う事無く女の子座りになった。

 すると、途端に顔色が変わって安堵していた。

 割と本当にヤバかったんだろうなぁ…。

 

「ふぅ…これで、ようやくまともに食事にありつけますわ…」

「「「そこまでか」」」

 

 思わず、私と織斑君と篠ノ之さんとでシンクロツッコミをしてしまった。

 オルコットさんの、この執念だけは普通に尊敬するわ…。

 これが代表候補生というものか。

 

「この後は夜の自由時間になってるんだっけ?」

「就寝時間まではな。その前にまずは『温泉』に入って、今日の疲れでも癒したいな」

「「「うんうん」」」

 

 どうして篠ノ之さんは温泉の部分だけ強調するように言ったの?

 どうして、本音ちゃんとオルコットさんとデュノアさんは揃って頷いたの?

 かおりんにはさっぱり分かりません。

 

「ここの温泉は、確か時間ごとに男湯と女湯が切り替わるんだったよね」

「ならば、行く時は皆で一緒に行った方が旅館の従業員の方々のご迷惑にならんだろう」

「全く以てその通りですわね箒さん!」

「箒の言う通りだよ!」

「しののん、良いこと言った!」

 

 まぁ…言ってる事は正しいんだけどさ…なんだろう…織斑君以外の皆の目が一瞬だけギュピーンって光ったような気がするのは私だけ?

 昼間に感じた危惧は私の杞憂…だと信じたい。

 

(こ…こんな時は心を落ち着かせる為にお味噌汁を飲むのだ)

 

 暖かい汁物はホッとさせてくれるからね。

 ズズズ…あぁ~…美味し~…。

 

(夜はまだまだ始まったばかり…か)

 

 …今思い出したけど、ちゃんとマリーさん達にお土産とか買って帰った方が良いよね…?

 テトラちゃんやガンちゃんは別に気にしないだろうけど、マリーさんやキグちゃんはめっちゃ根に持ちそうだしな…。

 

(四人纏めてお菓子系の奴に…じゃダメか。ちゃんと全員それぞれに買って帰らないと五月蠅そうだ)

 

 ここの旅館のお土産屋さん…何があったかな?

 温泉に入った後にでも、試しに見に行ってみようか…。

 

 

 

 

 

 

 

 




次回、待望の温泉回。

今度は皆で入ります。
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