私…生まれ変わったらモブキャラになりたいな(なれるとは言ってない) 作:とんこつラーメン
「「「はふぅ~…♡」」」
夕食後。
生徒達は部屋に備え付けのお風呂に入るか、もしくは時間ごとに男湯と女湯に切り替わる温泉に入るかをしなくてはいけない。
面倒くさがっている子達は適当に部屋のお風呂に入っているが、私達は違った。
折角、こうして高級温泉旅館まで来たんだから、温泉に入らなきゃ損ってもんでしょうよ。
だって、こんな機会でもないと、これから先ずっと入るチャンスなんて訪れ無さそうだし。
「気持ちいいねぇぇ~…♡ まるで本当に体が蕩けちゃいそうだよぉ~…♡」
「これがジャパニーズ・オンセンなのか…なんという心地よさだ…」
「心も体もぽかぽかするねぇ~…♡」
この温泉は中々の広さを誇っていて、それを知ってか知らずか、何故か織斑君を除く、いつものメンバー全員も一緒に入っている。
これはこれで賑やかでいいかもだけど…。
「えっと…どうして、さっきからこっちを見てるの?」
「か…佳織のうなじ…」
「佳織さんの裸体…ゴクリ…」
「やっと…やっと念願の佳織と一緒の温泉…!」
「うわぁ…やっぱり、佳織の肌って綺麗だなぁ…」
うーん…同性同士とはいえ、こうして凝視されると流石に恥ずかしい。
今までは、そんな事って一度も無かったしね…。
「けど…なんつーかアレだね。皆揃って見事に『お団子』だね」
「それは仕方あるまい。温泉には『湯船に髪を付けてはならない』というマナーがあるのだからな」
ここにいるメンバー全員が揃いも揃って長髪揃いなせいか、色んな色のお団子が頭の上に形成されている。
特に私の髪なんて、それこそ膝下ぐらいまで伸びてるからね。
皆よりも一回り大きな『お団子』になっちょります。
「なんつーか…日々の疲れが取れていくような気がするねぇ~…比喩でなく」
「確かにそうかもしれないわねぇ~…。あぁ~…佳織じゃないけど、マジで蕩けるわぁ~…」
そういや、トールギスに乗るようになってから肩こりが酷かったんだよねぇ~。
一応、持参しているマッサージ器(エロくないやつ)を使ってはいたんだけど、それでもやっぱり限界はあるんだよね~。
入口の所にはマッサージチェアーもあったよーな。
よし。上がったら絶対に使おう。
これを機に全身から疲労を全て取り除いてやるのです。
だって、明日には過去最大級の大事件が発生するんだし。
今の内に全回復しておかないと。
「大人になったら、こうして温泉に入りながらお酒とか飲んだりするのかなぁ~…」
「なに? 日本では、そういう事が出来るのか?」
「サービスの一環でね。旅館にもよるけど、ここではそーゆーサービスがあるみたい」
お風呂に入りながらのお酒って、そんな感じになるのかな~…。
きっと、織斑先生とかは迷わず注文するんだろうな~。
あの人、お酒大好き人間みたいだし(織斑君談)。
「千冬さん辺りが入ったら、一瞬の躊躇もなくお酒を頼むでしょうね」
「そうなんですの?」
「うん。あの人、かなりの酒豪だし。ビールとか超大好物よ?」
「知らなかった…」
「そういえば…教官はドイツにいた頃も、よく成人した隊員たちと一緒に酒を飲んでいたな」
「私は甘いお酒が良いな~」
未成年なのに、何故かいきなりお酒談義に発展。
まだ飲めないからこそ、こういう話をしたがるのかもしれない。
(…いつの日か、私達も大人になって…皆と一緒にお酒を飲んだりするのかな…)
成人したら、きっと皆はバラバラの道を進んでいくことになるだろう。
それでも、年に一回ぐらいはこうして集まってお酒でも飲みながら、下らない話をして盛り上がりたい。
私は…やっぱりまだ落語家への道を諦めきれないな~…。
無事にIS学園を卒業出来たら、その時こそは改めて落語家目指して頑張ろうかな。
「温泉を出たら、ちゃんと水分補給もしておかないとね」
「それなら『コーヒー牛乳』一択ね」
「売店には『フルーツ牛乳』もあったよ?」
「…マジ? 甲乙つけがたいわね…」
どっちも美味しいからね~。
ちゃんと腰に手を当てながら、肩幅に足を広げ、天井を見ながら一気に飲み干す。
これが正しい入浴後の水分補給の仕方ってもんだ。
「コーヒー牛乳? フルーツ牛乳?」
「それは…普通の牛乳とは違うんですの?」
「あ…そっか。アンタ等は知らないんだっけ。なら、あたし達がちゃんと教えてあげないとね」
「そうだな。あれもまた立派な日本の伝統だ」
「「うんうん」」
これでまた一段と日本への理解を深めてくれたら幸いだ。
銭湯の湯上りに飲む一本でさえも極上なんだから、こんな場所で温泉に入った後に飲むコーヒー牛乳やフルーツ牛乳は、きっと言葉に出来ない程の美味しさに違いない。
なんか、今から楽しみになってきた。
「皆が美味そうな話をするから、私も飲みたくなってきたぞ」
「なら、上がったら一緒に飲もうか」
「うむ!」
その為にも、今はゆっくりまったりとして英気を養いますかね~。
はぁ~…温泉…サイコー…♡
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
温泉から上がった後、皆と一緒にコーヒー牛乳&フルーツ牛乳を飲み、近くにあったマッサージチェアーで体内にある疲れにトドメを刺した後、私達はそれぞれに部屋に戻ったり、旅館内を見て回ったりと思い思いの場所へと向かった。
そんな中、私は向かったのは…。
「うーん…何が良いかな~?」
お土産物屋さん。
ここでマリーさん達へのお土産を選んでいるのです。
「皆が喜びそうなもの…喜びそうなもの…」
ぶっちゃけ、マリーさん以外はどれをあげても喜びそうだから普通に困る。
特にテトラちゃんが一番、何をお土産にしたらいいのか見当がつかない。
「あ…仲森さん。こんな所にいたのか」
「織斑君?」
おやおや。まさか彼が土産物屋に来るとは。
これまた意外ですな。
「どうかしたの?」
「いや…別に俺が用事があるってわけじゃないんだけど、千冬姉が仲森さんのことを呼んでてさ」
「織斑先生が私を?」
一体何の用事だろう?
お説教…じゃあないよね?
「といっても、別に急ぎの用事じゃないらしいから。何かしているんだったら、そっちを優先して、その後に部屋まで来てくれればいいってさ」
「そーなんだ」
急ぎの用事じゃない…?
増々、意味が分からない。
「ところで、仲森さんは何をやってるんだ?」
「お土産探し。皆に買って帰ろうと思って」
「皆って…あぁー…あの時、一緒にいた子達か」
「そ」
一度しか会ってない筈なのに覚えててくれたんだ。
割とマジで驚いた。
「マリーさんは…これでいっか。男の子が好きそうな、無駄に装飾が多い剣のキーホルダー」
「なんか適当だな!?」
「そこまで適当ってわけじゃないよ? マリーさんって、れっきとした現役女子高生なのに、中身は男子小学生だから。こーゆーのとか普通に好きなんだよ。あと不整脈」
「ひでー言い草だ…っていうか、最後にしれっと、とんでもないカミングアウトしなかったか?」
「気のせいだよ」
私達にとってはいつもの事だし。
「ついでだし、あれも追加でお土産にしようか」
「あれって?」
「あそこにある『観光地に良くある機械でガチャコーンとメダルに日付をつける』やつ」
「『花月荘滞在記念にお一つどうぞ』って書いてあるな」
「一回500円か。これぐらいなら」
「なんか俺達、ISに乗るようになってから金銭感覚が狂ってきてるよな」
「それは言わないお約束だよ。織斑君」
一昔前なら500円使うのにだって凄まじい迷いがあった筈なのに、今じゃ財布から躊躇いなく千円札が出せるようになっちゃいました。
行方不明になったお母さん。
アナタの佳織は金の亡者になってしまったようです。
「明らかに0の数が違う入金を見せられたらねェ…」
「狂っちまっても仕方がないよな…」
お金に困らないのは良いけど、これはこれで逆に虚しい気がする。
やっぱ…お金じゃ幸せは買えないんだなぁ…。
「テトラちゃんは…このタペストリーでいいか。なんでか『大漁』って書かれてるけど」
「海沿いだから?」
さて…と。
お次はガンちゃんのお土産だけど…。
「ん? あれはー…」
「何かあったのか?」
ガンちゃんは眼鏡キャラなのに普段着が何故かゴスロリ系一択。
まさか、そんな彼女に相応しい逸品がこんな場所にあろうとは…。
「フリル付きの浴衣が売ってあった。これにしよう」
「色んな意味でスゲーなッ!? なんでこれを作ろうと思ったっ!? 売ろうと思ったッ!?」
「インパクト重視じゃない?」
「インパクトあり過ぎだろッ!?」
「あと、何故かセット販売されていた、このフリル付きメリケンサックも買おう」
「フリルの意味が無いっ! どうして、この二つをセット販売するっ!?」
よし。これならきっとガンちゃんも泣いて喜んでくれるに違いない。
我ながらナイスなチョイスだな私。
「最後がキグちゃんか…。なーにーがーいーいーかーなー……え?」
「今度は何を見つけたんだ?」
「…この旅館…マスコットキャラなんていたんだ」
「マ…マスコット?」
私が指さした場所には、丸い目と猫の口を持つ、満月に鬣のように花弁をくっつけたマスコットのぬいぐるみが置かれたコーナー。
因みに、その一角には『かづき君コーナー』とファンシーなゴシック体で書かれた紙が貼ってあった。
「…最近の旅館って、あんななのか?」
「さぁ…私も旅館なんて来るの、中学の修学旅行の時以来だし…」
「ここだけが特別なのか…?」
「その可能性もあるね」
旅館にもマスコットが作られるような時代なのか…。
来年辺り、IS学園にもマスコット…っていうか、ゆるキャラが誕生しそう。
「これでいいや。キグちゃん、可愛いの好きだから」
「さっきとは違って妥当なのが逆に凄い」
このぬいぐるみ…1500円もするのか。
…ぶっちゃけ、超余裕っす。
「後は…ウザンヌちゃんは猫飼ってるし、この浴衣の帯柄の首輪でいいか」
「適当だな」
「あの子はウザいから。マスクさんは…この浴衣柄のマスクにしよう」
「なんでもかんでも浴衣柄にすればいいってもんじゃないだろうに…」
マスクが売られている事にはツッコまないんだ。
織斑君も段々とツッコミ目線がおかしくなってきているね。
「最後に、皆で食べる用のお菓子でも買えば大丈夫かな。これくださーい」
「はーい」
ってなわけで、さっき選んだお土産を全部一括で購入。
中々の値段になったが、まだまだ余裕がありまくりです。
こんなにも懐が暖かい日が来るとは…。
「ありがとうございましたー」
これでよし…かな。
ちゃんと部屋に置いてこないと。
「それじゃ一旦、部屋に戻ってこれを置いてくるから。その後に部屋に行くよ」
「分かった。千冬姉にそう伝えておくよ」
「お願いね」
買い物を終えた私は織斑君と別れ、そのまま部屋に戻ることに。
にしても織斑先生…私に何の用事なんだろう?
冗談抜きで見当がつかないでゴザル。