私…生まれ変わったらモブキャラになりたいな(なれるとは言ってない)   作:とんこつラーメン

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アンジャッシュ

 旅館の売店で皆への土産物を色々と買い漁ってから、私はそれを置くために一先ず、自分の部屋へと戻った。

 

「おかえり~かおりん」

「ただいま~」

 

 部屋に戻ると、本音ちゃん達は皆で仲良くババ抜きをやっていた。

 どうやら、今使っているトランプも売店に売っていた物らしい。

 

「どうやら、ちゃんと土産は買えたようだな」

「うん。思ったよりも色んな物が売ってあったよ」

「そう…みたいだな。土産物とは思えないようなラインナップだ…」

「それに関しては激しく同意するよ…」

 

 ジト目で私の腕の中にあるお土産を見つめる篠ノ之さん。

 なんつーか…私の中での旅館のイメージが変わりつつあるわ…。

 

「よいしょっと。それじゃ、またちょっと行ってくるから」

「ん? 何処に行くんだ?」

「織斑先生の部屋。買い物をしている途中で織斑君と出会ってさ、そこで先生が私のことを呼んでるって教えて貰ったの」

「教官が佳織を?」

「流石に、ここまで来てお説教って事は無いだろうし…本当になんだろうね?」

 

 いやはや…割とマジで皆目見当がつかないでゴザル。

 私の持つ原作知識は、もう殆ど役には立たないしなぁ…。

 

「兎に角、あんまり待たせちゃ申し訳ないし、今から先生の所まで行ってくるよ」

「うむ。了解した」

「いってらっしゃ~い」

「うん。いってきます」

 

 そういや、先生の部屋ってどこにあったっけ?

 ちゃんと聞いとけばよかったな…。

 でも、扉にちゃんと『教員用』って張り紙がしてある筈だから、それを頼りに探して行けばいいか。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 佳織が部屋を出て行った直後、残された三人娘は手に持っていたトランプを畳の上に置き、顔を見合わせた。

 

「…どう思う?」

「織斑教官が佳織を呼ぶ理由…見当がつくような…つかないような…」

「お昼のやり取りをこの目で見ちゃってるからねぇ~…」

 

 午前中、浜辺にてしていた佳織と千冬の会話。

 思わずラウラが『姉妹みたいだ』と言ってしまうほどに仲睦まじかった。

 それは箒たちもよく分かっている。

 よく分かっているからこそ警戒してしまうのだ。

 

「佳織には申し訳ないが…猛烈に気になる…!」

「このままじゃ、気になって眠れないよぉ~」

「私は特に気にしないが…お前達がそう言うと、私も気になってきたではないか」

 

 佳織争奪戦には特に興味が無いラウラも、場の雰囲気に流されてしまう。

 これもまた彼女が純粋無垢であるが故なのかもしれない。

 

「…どうする?」

「行くしかあるまい」

「だよねぇ~」

 

 三人揃って頷くと、一斉に立ち上がる。

 そうして部屋を出ると、遠くに佳織の後姿がチラっとだけ確認できた。

 

「あそこの角を左に曲がって行ったな」

「いや…あの佳織の事だ。我々の尾行に気が付いて攪乱するつもりなのやもしれん」

「かおりんなら、それぐらいは簡単に出来そうだよね~…」

 

 もう何度説明したかは分からないが、それでももう一回、念の為に言っておく。

 佳織は、そんな名探偵のようなスキルは持ってはいない。

 そもそもの話、佳織は箒たちが自分を尾行しているという発想すらしていないだろう。

 

「それならば猶の事、急がなければ」

「行き先が分かっているならば、先回りをすればいいのではないか?」

「先生達の部屋の場所…聞いてる~?」

「「「………」」」

 

 誰も聞いてない。

 旅館に来た時点で彼女達も例外なく浮かれてしまい、聞くのをすっかり忘れてしまっていた。

 今になって、まさかその事を後悔する羽目になるとは。

 『後悔先に立たず』とはよく言ったものである。

 

「…あんたら、そんな所で何をやってんのよ?」

 

 いきなり背後から声を掛けられる。

 誰かを思い振り向くと、そこにいたのは呆れ顔でこちらを見ている鈴と、そんな彼女と一緒にいるセシリアとシャルロット達。

 

「佳織の部屋に皆で遊びに行こうとしてたら…こんな奇妙な光景に出くわすとはね」

「皆さん、一体どうなされたのですか?」

「実はだな…」

 

 ここで箒からの事情説明。

 

「…という訳なんだ」

「成る程ね…織斑先生が佳織を名指しで部屋に呼び付けた…と」

「そうなんだ。流石に怪しいとは思わないか?」

「普段ならば、特に気にする事も無いんでしょうけど…」

「ボクたちは昼間の『アレ』を目撃しちゃってるからねぇ…」

 

 そう。彼女達もまた見ていた。

 佳織と千冬が仲良くしている様子を。

 故に放置は出来ない。

 大人の魅力の前では、自分達のような小娘では太刀打ちできないと知っているから。

 

「…急ぐわよ」

「えぇ」

「そうだね」

「みんな…」

「ふっ…お前達ならば必ず、そう言ってくれると信じていたぞ」

 

 セシリア、鈴、シャルロットがパーティーに加わった!

 

「ところで、お前達は教官の部屋の場所を知っているか?」

「それを聞くって事は…」

「アンタ等も知らないのね…」

 

 全員、同じ穴のムジナでした。

 

「べ…別に、普通に探して行けば大丈夫でしょ? ほら、行くわよ!」

「いつの間にか鈴がリーダーみたいになってるな」

「だが、こういう時はアイツのようにグイグイと引っ張ってくれる奴の方が逆の頼もしいものだ」

「ラウラウが言うと説得力があるね~」

「少し前まで、現役の軍人でしたものね」

「冷静に考えると、僕らって凄いパーティーだよね…」

 

 天才科学者の妹。

 貴族の家の若き当主。

 暗部の家の娘。

 大会社の社長令嬢。

 元特殊部隊隊長。

 

 こうして箇条書きにしただけでも迫力が違う。

 

「悪かったわね!! あたしだけ代表候補生以外の肩書が無くて!!」

「誰も何も言ってないのに…」

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

「へぷち!」

 

 ん~…なんだろ?

 この季節に急にくしゃみが出るなんて…。

 誰かが私の噂でもしてるのかな?

 ま、どーでもいいか。

 

「ノックしてもしもーし。仲森でーす」

「佳織か。入っていいぞ」

 

 中から先生の返事が来た。

 昔の私なら、先生がいるって分かっている場所に入るのに凄い緊張とかしてただろうに…随分と図太くなったもんだ。

 今までのイベントごとに比べれば、この程度じゃもう緊張とかしなくなってるのかもしれない。

 うーん…慣れって怖い。

 

「お邪魔しまーす」

 

 部屋の中自体は私達と全く一緒。

 別にどこかが違うってわけじゃない。

 ただ、なんでか布団が一式、既に敷いてあった。

 

「あ…そっか。織斑君は先生と一緒だったっけ」

「まぁな」

 

 こうして織斑君もいてくれるなら、少ししかなかった緊張感も更に薄れるね。

 異性とはいえ、クラスメイトがいてくれる安心感は大きい。

 

「ところで、どうして私は呼ばれたんですかね? 何かしちゃいました?」

「あぁ…別に説教をしようと思って呼んだわけじゃない。それ以前に、今の時間は夜。つまりは時間外。完全プライベートな時間だ。そんな堅苦しいことをするつもりはないさ」

「プライベート…」

 

 普段ならいざ知らず、今は臨海学校中だから関係ないのでは?

 そうは思ったけど、織斑先生がこう言ってくれているのだから、それに従うのが筋ってものだろう。

 ぶっちゃけ、私もそう思った方が気が楽だし。

 

「だから、佳織も遠慮なく私の事を『いつも通り』に呼んでくれていいぞ」

「はぁ…」

 

 これはアレですな。

 前みたいに『千冬さん』と呼べと。そう言っておりますな。

 

「分かりました…千冬さん」

「それでいい」

「え?」

 

 うん…織斑君。

 今の君の気持ち…超分かるよ。

 でも、今は特に気にしないでほしい。

 

「普段から、佳織には苦労ばかりを掛けさせてしまっているからな。偶には労ってやりたいと思ってな」

「別に私はそんなつもりはないんですけど…」

 

 私、そんなにも何かをやってるかな?

 生徒会の活動は頑張ってるつもりだけど…それぐらいなんじゃ?

 

「…クラス対抗戦での事件を皮切りに、デュノアの一件やラウラの暴走。フランスやドイツとの交渉。ちゃんと勉学も頑張っているし、それに加えて生徒会の活動も頑張っていると聞く」

「そう言われると、仲森さんってめっちゃ頑張ってるんだな…」

 

 なんか、箇条書きにされると私って何気に苦労人だったりする…?

 各種イベントに関しては、もう殆ど巻き込まれているに等しいんですけど。

 あと、別に私はフランス&ドイツと交渉した覚えはありません。

 単にデュノアさんのお父さんと、ボーデヴィッヒさんの元上官さんとお話ししただけですよね?

 

「けど千冬姉。仲森さんを労うって、一体何をする気なんだよ?」

「ふっ…何の為にお前がここにいると思っている? メンタルな部分の疲労は普段からどうにかなっていても、他の部分の疲労は未だに残ったままになっているだろう?」

「あぁ…そう言うことか。ちょっとドキドキするけど」

「え? え?」

 

 なんか織斑姉弟だけで納得してないで、ちゃんと私にも説明して欲しいのですけど?

 

「佳織。今から一夏にマッサージをして貰え」

「え…えぇ~!?」

 

 お…織斑君からマッサージ!?

 ちょ…それどんなプレイッ!?

 

「変な想像をしているようだが全く違うぞ。こう見えても一夏の奴は中々にマッサージが上手くてな。独学らしいのだが、私もよくして貰っている。お蔭で、この通りだ」

「そう…なんですね…」

 

 弟が姉をマッサージって…それどんな同人誌?

 でも、この二人の事だから、至って普通の健全なマッサージなんだろうなぁ…。

 

「実際、佳織はトールギスに乗るようになってから一度でも体を解したことはあったか?」

「そう言われてみると…無いかも…?」

 

 温泉から上がってマッサージチェアを使いはしたけど、それで全ての凝りが取れたかと言えば嘘になるしな…。

 人の手でのマッサージだからこそ、効果があるってこともあるかもだし…。

 

「だ…大丈夫だ! 変な所は触らないから!」

「もしも、そんな事をしたら即座に私が止めてやる。だから安心していい」

「うーん…そこまで言ってくれるのなら…お願いしよう…かな…?」

 

 実を言うと、肩とかが凝っているような感じがしてるんだよね。

 机に座って勉強をしているせいもあるんだろうけど、トールギスの武装って基本的に肩から懸架してるから地味に負担が掛かってるんだよね。

 IS側でどうにかしてくれているとはいえ、それでも蓄積はしていくものでして。

 

「なら、そこの布団に寝てくれないか。うつ伏せでな」

「ん…分かった」

 

 言われるがままに、敷いてある布団に横になる。

 長い髪の毛は簡単に纏めて邪魔にならないようにする。

 

(…なんかこれ…別の意味でドキドキするかも…)

 

 冷静に考えたら、織斑君に触られるのはこれで二回目になるのでは?

 一回目は実習の時に山田先生が落下して来て、それを咄嗟に助けて貰った時ね。

 あの時とは違って、今回はお互いに同意の上で…なんだよねェ…。

 

「そ…それじゃあ…いくぞ」

「うん…お願い」

 

 織斑君が私の上に来て、そっと背中に触れていく。

 そして、親指でツボらしき場所を思い切り突いた。

 

「んん~…♡」

「うっわ…なんだこれ…めちゃくちゃ凝ってるじゃないか…! よく今まで平気だったな…」

「普段…は…はぅっ♡ 寝て起きたら…きゃうっ♡ どうにかなって…ふにゃぁっ♡ からぁ…にゃうぅっ♡

 

 なにこれぇ…めっちゃ気持ちいいかもぉ…♡

 頭の中がぽわ~んってしてくるぅ~…♡

 

「ふぇ?」

 

 なんか織斑君の顔が真っ赤になって、千冬さんが鼻を抑えてそっぽを向いてる。

 

「な…仲森さん…その喘ぎ声は…反則だろ…」

「ヤバい…佳織がエロ可愛過ぎる…!」

 

 姉弟揃ってなんか言ってる…。

 けど、今はそんなのどーでもいいや…。

 まさか、織斑君のマッサージがここまで気持ちが良いとは…いい意味で予想外だった…。

 あぁ…気持ち良すぎて瞼が重くなってきたかも…。

 

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 一方その頃。

 無事(?)に千冬たちの部屋まで到着したヒロイン御一行様は、中から僅かに聞こえてくる声が気になってドアに揃って耳を当てていた。

 

『次…足…いいか?』

『うん…お願い…』

『うお…これはまた…』

『ふみゅぅっ♡ そこ…いいぃ…♡』

『えっと…この辺か?』

『ん…そこ…もっとぉ…♡』

『あの…さ…出来れば、もっと上の方をしたいんだけど…』

『いいよ…来て…♡ 私なら平気だから…』

『わ…分かった…。絶対に気持ち良くするから…』

『ん…信じてる…』

 

 声だけを聞けば完全に『行為』に及んでいる。

 ドア越しにピンク色の空気が漏れてきているような錯覚さえ覚える。

 

 そんな男女の声を盗み聞きしながら、ラウラ以外の少女達は顔を真っ赤にしながら鼻から真っ赤な『愛』をダラダラと流し続けていた。

 

「な…なんだこれはぁ…!?」

「か…佳織さんが…佳織さんと…佳織さんに…佳織さんを…」

「ヤ…ヤバ…佳織の姿を想像しただけで鼻から…」

「あわわわわわ…! か…佳織が一夏と…そんな…!」

「か…かかかかかかかおりんががががががががが…」

 

 色んな意味で大混乱に陥っている者達を余所に一人、ラウラだけが冷静に状況を考えていた。

 

(これは…マッサージでもしているのか? 私から見ても佳織の実力は間違いなく本物だ。だがしかし、それは同時に疲れが溜まり易いという証拠でもある。成る程…流石は教官だ。この機会に佳織の身体を癒してやろうと思われたのだな)

 

 ラウラ、大正解。

 この中で彼女だけが正解を引き当てるというのも皮肉である。

 

「こ…これ以上、一夏の狼藉を認める訳にはいかん! 皆、いくぞ!」

「「「「了解!」」」」

「え? 行くのか?」

 

 ラウラ以外の全員の顔にはハッキリと『佳織の痴態が見たい』と書かれてあった。

 

 意気揚々と立ち上がってドア伸びに手を掛けた瞬間…。

 

「そんな所で何をやっている。小娘共」

「「「「「げ」」」」」

「教官?」

 

 いきなり部屋のドアが開かれ、そこから我等が担任教師サマが降臨した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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