私…生まれ変わったらモブキャラになりたいな(なれるとは言ってない) 作:とんこつラーメン
ま、分かりきってたことですけど。
問題は、彼女が登場することじゃなくて、何をするかって部分ですから。
臨海学校2日目。
今日は遊び放題だった昨日とは打って変わって、午前中から夕方までず~っとISの各種装備試験運用と、そのデータ採取を行う予定になっている…んだけど…私は知っている。
この2日目は、皆が思っているような予定には絶対にならないと。
それどころか、この日こそがある意味でのターニングポイント。
入学当初の私は、この日が訪れる日のことをガクガクブルブルとしていたが、それまでの間にこちらの想像を遥かに凌駕する展開が盛り沢山だったせいか、妙に度胸がついてしまっている。
いや…違うな。トラブル耐性が付いてしまったと言うべきか。
…なんか、自分で言ってて悲しくなってきた。
原作通り、専用機持ちの皆は織斑先生の近くに集合し、他の生徒達はその後ろにて、この日の為にこの場に運ばれてきたラファールの前に立っている。
因みに、私達が今いる場所は、これまたこの日の為だけにIS学園が特別に貸し切ったと思われるプライベートビーチで、四方がまぁ中々に切り立った崖で覆われていて、普通の方法でここから海に出るには、一度水中に潜ってから海水の中のトンネルを潜っていく必要があるとのこと。
うん。実に常人泣かせで、ダイバーを歓喜させそうなシチュエーションですこと。
人によっては『これもまた修行の一環だ』とか言って、普通に潜って行きそう。
私のようなカナヅチ星人には考えられませんな。
「はぁ…今朝は本当に危なかった。佳織が起こしてくれなければ確実に遅刻をしていた」
「気持ちよさそうに熟睡してたもんねぇ~」
「面目ない…」
なんか忘れられてそうだから言っておくと、今の私達は他の子達と一緒に後ろでラファールの前に立っております。
表向きは私も『一般学生』だし、今はボーデヴィッヒさんも一般生徒、本音ちゃんは言わずもがな、私達と一緒にいるって事は、篠ノ之さんはお姉さんに『専用機ちょーだい』とは言わなかったって事になる。
原作改変みたいだけど、これはこれで良いと思う。
変に力に溺れてるぐらいなら、最初から無い方がずっといいんだよ。
「寮は基本的にベットだけしかないからな。ドイツ出身のラウラには寝慣れないのだろう」
「こーゆーのってベット派と布団派に別れるよねー」
「「分かる」」
私の場合は、実家では布団だけでしか眠った事が無い。
ベッドなんてそれこそ、修学旅行の時ぐらいだったよ。
だから、恒常的にベッドに寝るってのはかなり新鮮な体験でした。
「全員揃ったな。では、今から各班ごとに振り分けられたISの装備試験を行って貰う。そして、専用機持ちは各種専用パーツのテストだ。全員、迅速に行うように」
「「「「はい!」」」」
本当に…返事だけは良いよなぁ…返事だけは。返事だけは。
大事なことなので3回言いました。2回じゃ足りない。
「なぁ…佳織。トールギスには何か追加の武装などは無いのか?」
「うーん…多分、無いんじゃないかな? これは虚さんが言ってたことなんだけど、トールギスって現時点で既に完成され尽くしてるから、ここで変に武装を追加しても意味無いんじゃないかって」
「お姉ちゃんが、そんな事を言ってたんだ…」
「ふむ…一理あるな。実際、トールギスは攻防全てが見事なバランスで構成されている。これ以上の強化は、それこそ『
簡単に言えば、IS自身がこれまでの戦闘経験を元にして『進化』をする現象。
トールギスの場合は…該当する機体が沢山あり過ぎて、どんな姿になるのか逆に想像しにくい。
「ま、今はそんな事はどうもいいか。私達も作業を初めようか?」
「そうだな」
「うむ」
「さんせー!」
さてはて…例の天災兎さんは、どのタイミングで突撃してくるのやら…。
実はドキドキしながら待ってたりします。
来るのはほぼ確実だと思ってるから、心配するとしたら、いつ来るか…なんだよね。
あの人の登場は、それだけで心臓に悪いから。
「えっと…まーずーは……ん?」
「なんだ? どこからか誰かが走ってくるような音が聞こえてくるような…」
「妙な寒気が背中を走った…なんだこれは…」
「しののん? なんか顔が青いよ? だいじょーぶ?」
え? もしかして篠ノ之さん…何かを感じてる?
まさかニュータイプかっ!?
「ち――――――――――――ちゃ―――――――――――んっ!!!!!」
「この声は…まさか…!」
流石は織斑先生。
この声だけで全てを察した御様子。
まぁ、世界広しと言えども、織斑先生を『ちーちゃん』って呼ぶのは、この世に一人しかいない訳で。
「どうして貴様がいる…束…!」
そう。やって来たのはISの開発者にして天性のトラブルメーカーの篠ノ之束博士。
今更言うまでもないけど、篠ノ之さんの実のお姉さんでもある。
胸以外は全く似てないけど、そこはツッコんではいけない。
「やぁやぁ、ちーちゃん! こうして直に会うのはすっごい久し振りだねぇ~!」
「そうだな。で、どうしてお前がここにいる。ここは関係者以外は立ち入り禁止だ」
「何を仰る。ある意味、私はこれ以上ない程に超絶関係者じゃああーりませんか」
やってることはぶっ飛んでるけど、言ってる事は超正論。
確かに学園の関係者ではない。
けれど、ここは『IS学園』。
そのISを世に産み出した人間が関係者では無いなんて言い出したら、世の中にいる全てのIS関係者が無関係になってしまう。
IS学園には常識なんて通用しない。
「おっ! かおり~ん! 昨日振りだね~!」
「ははは…ども…」
満面の笑みを浮かべながら、こっちに手を振るなよ!!
必死に私達が気配を殺してたのにさ!
皆がめっちゃ私達に注目してるじゃんか!!
「おやおや~? どーして、かおりんが
「おい束…貴様、何を言って…」
え? ちょ…は?
いきなり博士が私の手を引いて織斑君達がいる場所まで連れて来たんですけどッ!?
「折角だし、箒ちゃん達もこっちに来なよ~」
「「「は…はぁ…」」」
下手に逆らっても意味が無いと判断したのか、篠ノ之さん達も困惑しながらこっちにやって来た。
結局、こうなっちゃうのか…はぁ…。
「え? ど…どういうこと?」
「血縁者である篠ノ之さんはともかく、どうして他の子達まで?」
「意味分らないんですけど…」
それはこっちの台詞だよ! 名も知らぬ女の子たちさん!
一番混乱してるのは私達なんだから!
「箒ちゃんも久し振りだね~! って、昨日も会ったか! ははは!」
「姉さん…お願いですから、何の前触れもなく、いきなりやって来るのは本当に勘弁してください…主に私の胃の為に」
篠ノ之さん…哀れだ…。
後で私と一緒に胃薬を買いに行こうね。
行きつけの薬局を紹介してあげるよ。
「昨日も…だと? どういう事だ?」
「あれ? もしかしてかおりん達から聞いてない? 私、昨日も皆が海に行く直前に会いに来たんだよ?」
「…そうなのか?」
そこで何故か睨まれたのは、私じゃなくて織斑君でした。
「あ…あぁ…。そういや、言うの忘れてたな…」
「ど・う・し・て言わなかったんだ…この馬鹿が…!」
「いだだだだだだだだだだだだだだっ!? 割れる割れる割れるぅぅぅぅっ!?」
おぅ…顔に血管を浮き上がらせながらのアイアンクロー…。
本当に頭蓋骨陥没とかしないでしょうね…。
「はぁ…で、本当に何をしに来た? まさか、本気で私達に会いに来ただけ…なんてふざけた事は言わないだろうな?」
「もっちろん! 実は~…かおりんにプレゼントを持ってきました~! どんどんぱふぱふ~!」
「……は?」
へ?
今、一瞬…言われたことが理解出来なかった。
誰が。誰に。何を持ってきたって?
「「「「「「「「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」」」」」」」」」
何がどうなって、そうなるのっ!?
昨日も思ったけど、別に私とアナタって全く接点とか無いですよねっ!?
それどころか、前に一回無人機を使って殺されかけてるんですがっ!?
「プ…プレゼントとは一体なんだっ!? 何の事を言っているッ!?」
「何の事って、そのまんまだけど? あ、後でいいから、いっくん。そのISをちょっと調べさせてね?」
「え? あ…はい…」
織斑くんも流れで返事をしてしまう。
うんうん…そうなるよね…分かる。
「まずは~…ハイこれ! 昨日言ってたのね!」
すっごい嬉しそうに手渡されたのは、なにやら赤い服っぽいの。
昨日言ってたの……あ!
「ISスーツ…?」
「そ! かおりんのサイズに合わせた上に、私の手で特別にデザインしました~!」
ま…まぁ…ISスーツぐらいなら別に…?
でも問題はデザインだよね…パッと見は赤いってことしか分からないけど…。
「ん?」
バサっと広げて見てみると、なんかどこかで見た事があるようなデザイン。
金色のフリフリが付いた肩当っぽいのが付いてて、まるで西洋の軍服っぽい感じで、所々に金色のエングレービングっぽいのが施されてて…って。
(これ、まんまゼクス・マーキスの着てた軍服をISスーツにしたやつじゃあないですかぁぁぁぁぁぁぁっ!?)
ちゃんと律儀に下半身の部分は従来のISスーツと同じになってるし!
幾らなんでも無駄に煌びやか過ぎませんかねぇっ!?
「どう? 気に入ってくれた?」
「あ…はぁ…カッコいい…ですね…ハハハ…」
「そう!? よかった~!」
もう、そうとしか答えようがない。
他になんて言えと?
「なんなら、今ここで着替える?」
「「「「「「「!!!???」」」」」」」
「どうして皆して動揺する?」
博士の発言にボーデヴィッヒさん以外の全員が私を見た。
幾ら見られても着替えませんからね!?
私の生着替えなんて全く需要ないでしょうが!
「さ…流石にそれは…」
「そう? なら、学園に戻ってから試着してみてね!」
「そう…します。ありがとうございました…」
一応、お礼は言っておく。
この辺の礼儀はしっかりとしないとね。
「…で、そのスーツはあくまで『前座』。本命は……こっちだよ!」
博士が指をパチン! と鳴らすと、いきなりこの場にコンテナっぽい金属製の箱が落ちてきた。
ちゃんと地面に着く直前にブースターを吹かせて速度を殺してたのが凄い。
「束…これはなんだ。サイズから見て、流石にISが丸々一体入っている…と言う訳ではなさそうだが…」
織斑先生の指摘通り。
落下してきた箱は縦長になっていて、とてもじゃないがISが入っているような感じじゃない。
原作では、ここで篠ノ之さんが頼んだ専用機『紅椿』が登場したけど…。
「これはね…私が一から全て製作した、かおりんの専用機『トールギス』の追加武装だよ!」
「トールギスの…」
「追加武装だとッ!?」
ちょ…えっ!? マジでッ!?
つーか、なんでそれをここで言っちゃうのッ!?
何にも知らない他の子達の注目度が更に増しちゃったじゃないのよッ!?
「この…バカが! どうして貴様は我々の気苦労を全て台無しにするような事をするッ!!
「へ? 何の事? 別に隠す必要とか無いじゃん」
「なんだと…?」
「だって、かおりんは私の『同類』。『天然の天才児』だし。私みたいに誇示こそすれ、隠す必要なんて何処にも無いじゃん」
「お前と言う奴は…どこまで…!」
えーっと…? 一度に色んな事が起きすぎて脳がスパークしてるんですが…。
要するに、この天災サマも見事に勘違いをしてると見ていいのかしら…?
(けどこれ、逆説的に言えば、この人が私達の事を監視していたって言う確固たる証拠にもなるんだよね…)
だって、中身を見ないで戦闘の様子とかだけを見ていただけなら、他の皆と同じように勘違いをしていても不思議じゃない…のか?
なんか自分で言ってて恥ずかしくなってきた。
「かおりんは、私がやっと見つけた同じ『天然の天才仲間』なんだよ? その子に私がプレゼントをしたいって思うのは当然じゃない?」
「頭が痛くなってきた…」
諦めないで!!
ここで諦めたら試合終了だよ織斑せんせ―――!!
「はい! と言う訳で、これが私がかおりんの為に作ったトールギスの追加武装…その名も…」
コンテナがゆっくりと開き、煙と共に中の物がお目見えになる。
それは、白銀に光り輝く一本の巨大な槍。
この槍って…まさか…あの…!
「大型ヒートランス『テンペスト』だよ!!」
次回、束さんが一般生徒の皆さんにモノ申します。
もしかしたら、ある意味で今までで一番真っ白な束さんになるかも。
皆さんがISと言う作品に関して思っている事を少し代弁してくれる…かも?