私…生まれ変わったらモブキャラになりたいな(なれるとは言ってない) 作:とんこつラーメン
その対価として、約数名の胃に甚大なダメージが入りますが。
いきなり現れた篠ノ之束博士の爆弾発言(私にプレゼント)を聞いて、当然のように後ろに控えていた生徒達の間に動揺が走った。
「え? 今…なんて言ったの?」
「あの子が専用機持ち?」
「つーか、あの子って誰だっけ?」
「なんか前に、説教騒動で同じ名前の子が話題になっていたような…」
あー…うん。
なんとなく予想出来たりアクションどうも。
それと、まだあのお説教話って生きてたんだ。
「トールギスって、どこかで聞いたことがあるような…」
「てか、あの仲森って子が専用機持ちってどういう事?」
「別に代表候補生でもなければ、どこかの会社のテストパイロットってわけでもないみたいだし…」
「しかも、篠ノ之博士と仲が良いみたいだし…」
「なーんか…ズルいよねェ…」
「普通に私達の立場が無いって言うか…」
「不公平だよねー…」
いやいやいや。
別に私は、この人と仲が良いわけじゃないからね?
この人とは完全に初対面ですから。
でもちょい待ち。
昨日会ってるから初対面じゃない…のかな?
けど、まだこれで二回目だし十分に初対面の範疇に入るでしょ…多分。
「おやおやぁ? なーんか聞き捨てならない言葉が聞こえたような気がしたなぁ~? 『不公平』? 『ズルい』? お前らさぁ…あんまし調子に乗るなよ」
「「「「「!!!???」」」」」
おっふ…急激に場の空気が氷点下まで下がったでゴザル。
どうやら、彼女達の迂闊な発言が天災サマの逆鱗に触れたみたい。
空気を読んで、私達は揃って黙っている事に。
「そもそもさぁ…『前提条件』が間違ってるんだよ。この宇宙が誕生して以来、ただの一度たりとも世界が『平等』であったことなんて無いんだよ。全ての人間、生き物は生まれた地も今に至るまでの経緯も全く違う。背の高さも、容姿も、顔も、手の大きさも、足の長さも、足の速さも、才能も、何もかもがぜーんぶ違う。自分達の横にいる奴の顔を見てみろよ。それは自分と同じ顔か? 同じ体か? 同じ見た目か? 違うだろ。ほら。その時点でもう既に『平等』じゃない。なのに、どーして『不公平』なんて単語が飛び出すかねぇ?」
まるで『シャルル・ブリタニア』みたいな説教をし始めたぞ…。
同じシャルルなら、私はデュノアさんの方が良いけど。
流石に、あの声は普通に勘弁。
威厳があり過ぎて普通に委縮する。
「っていうか、かおりんとお前らを一緒にするなよ。お前らは『凡人』。かおりんは『天才』。その時点で立ってる場所が違うんだっつーの。候補生じゃない? 企業所属じゃない? だからどうした。そんなの関係ないだろうが。天才は天才。それだけで十分に特別扱いされる理由になるだろうが」
いや。私は天才じゃありませんから。
平々凡々を絵に描いたかのような小市民ですから。
なんて言い訳も、最近じゃすっかり意味が無くなってきてるんだよなぁ…。
「お前らさ…あれだろ? 『IS学園に入った時点で将来は安泰』とか馬鹿な勘違いしてるだろ。『自分はエリート。だから大丈夫』って。アホくさ。なにそれ? 世の中舐め過ぎじゃない? 寧ろ、こーゆーのは入学してからが本番でしょうが。IS学園は良くも悪くも実力主義って聞かされてない? どれだけ必死こいて勉強して入学しても、安心しきって慢心した時点で人生詰んでるんだよ。だから、IS学園の卒業生の就職内定率がいつまで経っても低いままなんだよ」
にゃんですと? それは普通に初耳ですぞ?
というか、IS学園の卒業生って一般就職できるの?
割とマジでIS関係の企業に一直線だとばかり思ってた。
「おやおやぁ? そんなの知らないって顔をしてますにゃ~? ねぇ、ちーちゃん」
「…なんだ」
「去年のIS学園の卒業生の内、ちゃんと大学に進学出来たり、一般就職出来たりした奴ってどれだけいるの?」
「…一割にも満たん」
い…一割ですか…それはまた壮絶ですな…。
「そーだよねーそーだよねー。IS学園卒業生って時点で世間からは良い顔されないし、寧ろ、普通に高校を卒業した子達よりも遥かに就職難易度が高くなってるんだよね。だって、お前らはISの事をちょっとしたファッションとか、流行のアクセサリーぐらいにしか見てないもんね。ISの本来の使用目的とが普通にガン無視だもんね。そんな奴等が就職とか出来る訳がないもんね。もし私が面接官だったら、ISの威を借りてアホ丸出しで増長してる奴なんて書類審査の時点で即座に払いのけるけどな~」
それには私も同感。
『自分はエリートです』って感じを出しまくってる奴なんて、場の調和を乱す原因にしかならない。
ぶっちゃけ邪魔です。
「私が知る限りだと、ちゃーんと卒業後も就職できた子達は、入学前からちゃんと将来に向けて色々と準備をし続けて、入学後もその努力を惜しむことなく続けて、その成果が各種イベントでちゃんと発揮されて、その結果として『ちゃんと見ている人達の目』に留まったから、それが卒業後の立派な形となって表れてる。んで、お前らはどうよ? 今の自分がちゃんと『頑張ってる』って自信を持って言えるワケ?」
なんだろう…話を聞いている内に、この人の印象が段々と変わってきた。
最初は原作のイメージそのままに『破天荒で唯我独尊』な人だと思ってたけど、この人はこの人なりにちゃんとISや、それに関わる人の事を真剣に考えてるんだな…。
「かおりんだって、まさにそうなんだよ。この子は私と同じ『生まれながらの天才』なのに、入学後もちゃんと毎日毎日勉強をして、予習復習もちゃんとして、生徒会の活動だってキチンとやってる。そんなにも忙しいのに、ちーちゃん達が放課後にやってる補習授業まで自分から参加してる。お前らの中に一人でも自分から積極的に補習授業に参加した奴が一人でもいるのかよ? いないだろ。私は知ってるんだぞ」
なんか急に私のプライベートが地味に暴露されてるんですけどぉぉぉぉっ!?
止めてぇぇぇぇぇぇぇっ!! 割とマジで恥ずかしいからやめてぇぇっ!?
そして、篠ノ之さん達を初めとした皆揃って、こっちを見るのも止めて貰えませんかねぇぇぇぇぇっ!?
つーか、補習授業を受けてるのは私だけじゃないでしょっ!?
途中参加だけど、最近は篠ノ之さんや織斑君だって頑張って参加してるじゃない!
私だけを矢面に立たせるのは勘弁してくれませんかねぇっ!?
「お前らが呑気に放課後や夜に遊び呆けたり、ISの操縦訓練と称して、実際には遊び半分でやってたりしてる間も、かおりんはその天才的な才能を更に伸ばし続けてる。分かる? かおりんは『生まれながらの天才が努力をした結果』ってのを身を持って証明してくれてるの。お前らみたいのよりも良い評価や良い待遇を受けて当たり前の立場にいるんだよ。理解したか? この間抜け共が」
もう…私の顔は真っ赤に燃えて、お前を倒せと轟き叫んでます…。
褒められてるのは分かるんだけど…前世も含めて今までの人生でここまで誰かにベタ褒めされたのって冗談抜きで初めてだからさ…慣れないんだよぉぉぉっ!!
「かおりんだけじゃない。ここにいる代表候補生達の子にしてもそうだよ」
え? 候補生の子達って…もしかして、オルコットさんや凰さん達の事を指してる?
ま…マジで? この人が候補生の皆の事を擁護しようとしてる?
「お前らは『専用機を持ってて羨ましい』って言ってるけどさ、それだって彼女達がお前達以上に、文字通り血反吐を吐くような必死の努力を勉強をした末に手に入れる事が出来た『勲章』みたいなもんなんだよ。『候補生は専用機があってズルい』? 寝言は寝てから言えよな。本当に専用機が欲しいなら必死に足掻けよ。命以外の全てを賭けるぐらいの根性見せろよ。石に齧りついてでも絶対に手に入れるぐらいの意志を見せろよ。泥水を啜ってでも必ず成してやるぐらいの根性見せろよ。ま、お前らには無理だろうけど。専用機だって所詮は『自分を引き立てる特別なアクセサリー』ぐらいにしか見てないんだろ。そんな安い考えしか持ってない奴に専用機なんて永遠に与えられるわけがねぇじゃん。努力つっても所詮は、必要最低限の事しかせずに、ISに乗れるだけで満足して、挙句の果てはIS操縦の腕をあげたり勉強する事よりも、いっくんに言い寄ることを優先する始末。お前らぁ…マジでいい加減にしろよ? そんな、お遊び気分でISに乗られると作った側としても非常に迷惑なんだわ。かおりんみたいに真剣に頑張ってる奴の邪魔にしかならないって理解出来ない? あ…出来ないか。お前らみたいな色ボケした連中にはさ」
…私が常日頃からずっと思ってる事を一字一句漏らさず全て言ってくれたよ…。
あ…あれぇ? 私の中の篠ノ之博士の印象が180°変化したんですが?
もう私の中じゃ、この人は『ISに関わる全ての人の意思を尊重する人格者』には見えないわ…。
なんだろ…無人機の一件も不思議と許そうって気になるわ…。
「私はね、お前らのクソどうでもいい自尊心を満たす為にISを開発したんじゃないんだよ。人類の宇宙進出を自分なりに本気で模索して、それを形にしたのがISなの。ISの正式名称分かるよね? 『インフィニット・ストラトス』だよ? 『無限の成層圏』って意味なんだよ? 宇宙での活動を目的としたパワードスーツなんだよ? IS乗ってー…空飛んでー…わー凄ーい…楽しかったー…で満足するんならさ…とっとと学園なんか辞めちまえよ。お前らのやってる行動全てが、本気でISに自分の人生を捧げようとして頑張ってる子達の邪魔にしかなってないんだからさ。今のお前らみたいに、頑張ってる人間を羨ましがることは別に学園にいなくても出来るだろ。誰かを羨ましがる暇があるなら、自分が誰かに羨ましがられる立場になる為に努力しろよ。まだ自分達は一年生だからって油断とかしてると、あっという間に時間だけが過ぎ去って行くだけなんだから。気が付いた時には、何の成果も残せないままに学園を卒業して、どこにも行けずに実家に戻ることになるよ。いや…その前に学園を辞めるかもしれないね。だって、もう既にかおりん達とお前達とじゃ大き過ぎる差が出来てるんだから」
完全に他の子達の精神はズタボロですな…。
誰もが俯いて何も喋らないし。
けど、擁護は出来ないし、するつもりもない。
だって、前の実習の時に君達は自分達の手で篠ノ之博士の言ってる事が全て正しいって証明してみせてるんだから。
あの時は私も本気で呆れて何も言えなかった。
少し前のボーデヴィッヒさんが一部の生徒達に対して憤っていたのも同じ理由だし。
「今の自分達がいる場所と、私達がいる場所を良く見てみろよ。大きく分かれてるだろ? これが『境界線』だよ。お前らとかおりんたちを分ける『境界線』。自分の才能に胡坐を掻かずに頑張った側と、学園に入学した時点で満足して努力を辞めてしまった側との『境界線』」
…ちょっと前までは、オルコットさんとかも『言われる側』だった。
けど、最近の彼女達は全く違う。
少なくとも、原作のようにはなっていない。
あくまで私が知る限りではあるけど、みんな頑張って放課後の練習とかしてる。
自分なりの課題を見つけ、それを克服する為に足掻いている。
そんな彼女達だからこそ、私は皆を本気で尊敬しているし、そんな子達と友達になれた自分を誇らしいと思っている。
…入学時からは考えられない程に心境が変化してますな。
だけど…悪くない。寧ろ、これで良かったとさえ思ってる。
「束…もういい。その辺で勘弁してやれ」
「え~? もっとも~っと言いたい事があるんだけどな~?」
「だとしても…だ。だが…」
だが?
「…感謝する。過激な言い方だったとはいえ、お前が言った事は私達も常日頃から思っていた事だった。だが、私達は教師と言う立場故に言葉を選ばなければいけない。しかし…それは間違っていたのかもしれないな」
「ちーちゃん…」
「時には、どんなに嫌われようとも、生徒の将来を左右することなのだから、私達もちゃんと『自分の言葉』で言わなければいけなかった。かなり言い過ぎではあったが…それでも、それぐらいをしなければあいつらの『価値観』はそう簡単には変えられない…のかもしれんな…」
織斑先生だってずっと悩んでた。
候補生を初めとした一部の生徒達以外のISに対する歪んだ考え方に。
図らずも、篠ノ之博士の長々としたお説教が、先生の背中を押してくれた…って事になるのかな…。
「姉さん…」
「ん? どーしたのかな? 箒ちゃん」
「正直…見直しました。まさか、姉さんがあそこまで真剣に誰かに何かを言う瞬間に立ち会うとは思わなかったから」
「酷いな~。束さんだって、真剣にISの事を考えている人間の一人なんだよ? それに、全てのISは私にとって子供も同然なんだから。それを『ファッション扱い』されたら怒って当然でしょ」
「ふふ…そうですね」
あら…? なんか篠ノ之姉妹の仲が良くなってる…?
これはまた意外な展開…。
「って、なんか思わず話し込んじゃったね! かおりん!」
「は…はい」
「トールギスにテンペストを装備して、試しに使ってみようか? というわけで、トールギス出して?」
「わ…分かりました」
この空気の中で普通に自分のペースを貫くとは…心臓強すぎでは?
篠ノ之博士は、頭脳や身体能力だけじゃなくて、そのメンタルもチートでしたってワケなのね…。
やヴぁい…殆ど束さんかしか喋ってない…。
今まで出番が無かった分の鬱憤を晴らすかのように。
でも、不思議と書いてて楽しかったです。