私…生まれ変わったらモブキャラになりたいな(なれるとは言ってない) 作:とんこつラーメン
イフリート改がカッコ良すぎて興奮しました。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!???」
移動式ハンガーに固定されているトールギスを見た途端、仲森が発狂したかのように悲鳴を上げた。
余りにも突然の事に一瞬だけ呆気にとられたが、すぐに正気に戻って彼女の元まで走って行った。
「な…仲森!? いきなりどうしたんだっ!?」
「大丈夫ですか仲森さん!? しっかりしてください!!」
「イヤッ!! イヤァァァァァァァァァァァァァァッ!!!」
私達が傍まで駆け寄っても、仲森は全く落ち着く様子が無い。
どうして彼女がこんなにも怯えているのか、私達には全く分らない。
仲森佳織という少女について、私達は何も知らないから。
「どうしてっ!? どうして『この機体』なのっ!? どうしてぇぇぇっっ!?」
「お前はトールギスに…いや、もしかして『IS』そのものに怯えているのか?」
「こんなのになんて乗りたくないっ!! 私はまだ死にたくないぃぃぃっ!!」
「死にたくない…? 何を言っているんだ…!?」
ISが開発されてから現在に至るまで、ISに搭乗した人間が死亡したという事件は報道されてはいない。
もしかしたら、裏側では死んでいた者達がいたかもしれないが、一般人である仲森がそんな事を知っている筈も無い。
それなのに、どうしてトールギスを見て『死ぬ』という発想になる?
「大丈夫だ。お前が来る前にコレは徹底的に調査したが、怪しい部分や危険物などは一切発見されていない。ISはお前が思っているよりも、ずっと安全だよ」
「そういう問題じゃないっ!! そんな問題じゃないのよっ!!」
そんな問題じゃない?
「殺される……もうおしまいよ……!」
「仲森……」
遂にはその場に座り込んでから頭を抱え込んで全身を震わせ泣き始める。
その姿が余りにも気の毒過ぎて、言葉が出なくなった。
(どうして仲森はトールギスを此処まで怖がる…?)
必死に原因を考えていると、ふとトールギスの調査中に整備班の一人が零した一言を思い出した。
『白騎士みたいだよね』
ま…まさか…仲森は……!?
(あの時…『白騎士事件』の時……どこかで『あの光景』を目撃していた…!?)
幾多のミサイルを迎撃する白騎士の姿を見て、それで怯えて…?
いや、それだけでここまで怖がるとは考えにくい。
それ以上の『何か』が必ずある筈だ。
(もしや…!?)
あの時、政府は『犠牲者は一人も出ていない』と発表していたが、もしも私達が知らない所で誰かが死んでいたとしたら…?
仲森が住んでいる場所と事件が起きた場所とは遠く離れているから、なんらかの理由であの近くを訪れていて、そして……。
「……山田先生。ちょっと」
「織斑先生…?」
今の仲森から離れるのは不安ではあったが、この話題は彼女の前では話せない。
真耶を手招きしてから、ピットの端の方まで移動してから確認してみる事に。
「…ちょっと気になった事がある」
「なんですか…?」
「…仲森の家族は今…どうしている?」
「普通にご存命の筈ですけど…」
「家族構成は?」
「お母様とお父様、それからお婆様が一人だと書いてありましたが…」
「仲森が実は養子だった…とかは…」
「無いと思いますけど…」
となると、他に理由があるとすれば……。
(現地で知り合った、仲森の親しい人間が事件で被害に遭って、それで…?)
いや…流石にそれは飛躍させ過ぎか。
だが、そうなると増々、仲森があそこまで怯える理由が不明になる。
私が見た限りでは、仲森は大人しいイメージのある少女だったが、今のアイツはそんな面影なんて微塵も感じさせない程に恐怖に震えている。
一体…白騎士と仲森との間に何があったというんだ…?
「どうしましょうか…。あんなにも怯えている仲森さんをISに乗せるのは良心の呵責があると言いますか…余りにも可哀想すぎると言いますか……」
「あぁ……」
仲森の怯えている原因は不明のままだが、このままトールギスを放置しておくのもまた危険だ。
私だって、本当は泣いている彼女をISに乗せるような真似はしたくない。
だがしかし、このままだと仲森もトールギスも両方危険な目に遭う可能性があるのだ。
せめて、どうにかして仲森の恐怖心を少しでも和やらげる事が出来れば…。
(……そうだ)
前にどこかで、混乱している人間を落ち着かせるには人肌の温もりが一番いいと聞いたことがある。
ならば、今の私がするべき事は……。
「仲森……」
「イヤだ…イヤだよぉ…。死にたくない…まだ死にたくないぃぃ…助けてよ…誰かぁ……ヒック…ヒック…」
嗚咽をしながら泣く事しか出来ない仲森を見ていると、痛々しくて胸が苦しくなる。
もしかしたら…仲森こそが私と束の犯した罪の象徴とも言うべき存在なのかもしれない。
だからこそ、私は……。
「大丈夫だ」
「ふぇ……?」
彼女をこれ以上、怯えさせないように気を付けながら、そっとその小さく華奢な体を抱きしめた。
すると、体の震えは止まり、真っ赤に腫れた目でこちらを見上げている仲森と目があった。
「こんな事で免罪符になるだなんて微塵も思ってはいないが…これだけは言わせてくれ。お前を絶対に死なせはしない。私が…私達が、必ずお前の事を守ってみせる」
「織斑…先生……?」
ようやく落ち着いてくれたのか、仲森は私の腕の中で静かに深呼吸を繰り返していた。
私という人間はどこまで…罪深い人間なのだろうか。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
『凡人パイロット絶対殺すマシン』であるトールギスに対する恐怖で幼児退行していた私を、織斑先生がそっと抱きしめてくれた。
その意図は全く以て不明だけど、その温もりのお蔭で不思議と落ち着くことが出来た。
やっぱ、人肌って偉大なんだな……。
なんか免罪符とかって言ってたけど、それってどういう意味?
「す…すみませんでした。いきなり大声なんか出しちゃって…」
「いや、構わないよ。こっちこそ本当に済まなかった。お前を守ると言いながらも、結局は怯えさせてしまった」
いや…これは先生のせいじゃないって言うか。
100%神様のせいですから。あの野郎がトールギスなんて超級にヤバい機体をチョイスするのが一番悪いんだから。
そりゃね? 私だってトールギス自体は好きだよ?
めっちゃカッコいいし、劇中でも大活躍だったしね。
けど…それはあくまで『第三者目線』で見てたからだよ!
実際に乗るとなったら話は全然別だから!
将来的にトールギスを完全完璧以上に乗りこなしてみせたゼクスだって、最初は文字通り血反吐を吐きながら戦ってたんだよ?
ガンダム界屈指の最強クラスのパイロットであるゼクスでその有様なんだから、私なんかが乗ったらどうなるかなんて言うまでもない。
神様だから、その辺の事が全く理解出来てないんだろうね。
「…どうして私が泣いたのか…とか、聞かないんですか?」
「聞きたいのは山々だが…だからと言って生徒のトラウマを刺激するような真似は出来ない」
トラウマ…じゃないんですけどね。
だって、トールギスは本当に危険すぎる機体で、素人が乗ったが最後、ほぼ確実にあの世行きになる曰く付きのブツなんですよ。
相手の命よりも先にパイロットの命を奪うって本末転倒でしょ。
けどまぁ…言わなくていいのなら、別に言う気は無いけどね。
IS絶対安全神話が浸透しまくっているこの世界で私の言い分を信じてくれるとは思ってないし。
「そんな仲森に非常に言い難い事ではあるのだが……」
織斑先生は、物凄く言い難そうにしながらも少しずつ今の状況を説明してくれた。
トールギスを調べた結果、怪しいと思われる物は一切確認できず、全身装甲である事を除けば至って普通のISであること。
本当は、もっと他にも色んな事を調査し終えてから私の渡したいと思っていたのだが、そうなると必然的にこの整備室に置きっぱなしになるわけで。
そんな事をしていたら、ほぼ確実にトラブルの種になるのは目に見えている。
なので、ここで各種設定をしてから正式に私の専用機にしてから待機形態にしておいた方が色んな意味で安全だってこと。
「…つまり、ここでするのは設定とかだけであって、動かす必要は全く無い…んですよね?」
「勿論だ。織斑みたいに目の前に試合が待っているのならばいざ知らず、仲森は別に試合をする予定なんて無いだろう? ならば、ここで無理に動かす必要はない。ゆっくりと慣れていけば、それでいいんだ」
「そうですよ、仲森さん。ここには私も織斑先生もいます。何かあったら必ず助けますから」
必ず助ける…か。
基本的にコミュ障な私だけど、先生達なら信用してもいいかも…。
「や…約束ですからね? 絶対ですからね?」
「あぁ。約束する」
「指切りしてください! もしも破ったら針千本…は危ないから、えっと…その…」
「ははは…心配するな。生徒との約束を無下にするような真似はしない」
はぅ…頭を撫でられた…。
両親にも最近は撫でられてないのに…。
「ひっひっふー…ひっひっふー…よし。佳織…いきます」
「「なんでラマーズ法?」」
その方が落ち着くから。他意はありません。
「それじゃあ、今から装甲を開きますからね?」
山田先生がなんか端末っぽいのを操作すると、いきなりトールギスの前面の装甲が観音開き状態に。
うわ…IS版のトールギスってこんな風になるんだ…。
「ゆっくりでいいから乗ってください」
「自分の身体を機体に預けるようにして…そうだ。それでいい」
「うんしょ…っと…」
うぐ…中々に難しいな…。
これでいい…のかな? かな?
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
仲森がトールギスに乗り込んでから全身の装甲が一気に閉じる。
ここまで来れば、あと一息だ。
「乗り心地は大丈夫か?」
『な…なんとか…』
まだ戸惑っている様子ではあるな。無理も無い。
生まれて初めて目にする機械に乗っているのだから、緊張して当然だ。
「後は自動で設定が開始される。そのままじっとしていれば大丈夫だ」
『わ…分かりました』
真耶に目配せをすると、彼女が頷いて設定が開始されたことを確認した。
少しの間暇になってしまうが、こればかりは仕方がないか。
『わ…わわわっ!? なんか時間が表示されたっ!? なにこれっ!? もしかして自爆しちゃうッ!?』
「そんなわけないだろう…。それは、設定終了までの残り時間を表しているだけだ」
『そ…そうなんだ…』
やれやれと思いながら真耶の方を見ると、今度はこっちが驚いていた。
「どうした?」
「お…織斑先生…これを見てください…」
震える手で端末をこちらに向けると、そこには普通では有り得ない事が表示してあった。
「設定完了まで…残り1分だとっ!?」
「は…はい。こんなの有り得ません…。織斑君の時でさえも30分もかかったのに…」
「それが普通の事だ…。それなのに1分だと…? 幾らなんでも短すぎるぞ…!」
これが『S』ランクの成せる技なのか…?
私の時はどうだった? ええい…この肝心な時に限って、どうして思い出せないんだっ!
そうこう言っている間にも時間は過ぎて行き、気付けば残り十秒ほどになっていた。
『な…なんかドキドキしてきた…』
装甲越しに仲森の声が聞こえてくる。
ドキドキしているのはこっちも同じだ。
カウントがゼロになると同時に、トールギスの全身が白式の時と同じように光り輝く。
その光が収束すると、目の前には先程よりも更に輝きが増した純白のトールギスが屹立していた。
「黒かったバックパックまで真っ白に染まってる…。本当に全身が白くなってますね……」
「これが…トールギスの本来の姿…なのか…」
白式以上に白い部分が多く、心なしか艶まであるようにも見える。
ここまで美しいISもそうないだろう。
『お…終わったんです…かね?』
「そのようだ。どこか具合が悪くなったりはしてないか?」
『それは大丈夫ですけど…これってどうやって待機形態にすればいいんですか?』
「頭の中でISを外すように思い浮かべるんだ。そうすれば自動的に解除される」
『外す…ISを外す……』
瞬間、トールギスの全身が粒子化して消えて行き、中からISスーツ姿の仲森が出てきた。
着地し損ねたのか、倒れそうになっていたが。
「わ…っと…」
「お疲れ様でした。といっても、すぐに終わっちゃいましたけどね」
「っぽいですね……」
どうやら、仲森自身も設定完了までの時間が短すぎた事に驚いているようだ。
あれだけ覚悟を決めて挑んだのに、いざ蓋を開ければ一分で終わってしまったんだからな。
拍子抜けしてしまっても仕方がないだろう。
「ん? こんなペンダント…持ってたっけ?」
仲森の首元には、トールギスのシールドに描かれていた鳥のエンブレムに酷似した首飾りがぶら下がっていた。
「恐らく、それがトールギスの待機形態になるのだろう」
「これが……」
何事も無く無事に設定が完了したのは良いが、これで名実共に仲森も専用機持ちの仲間入りを果たしてしまったわけか…。
その事を知っているのは、私達と生徒会のメンバー、それから整備班の連中だけだがな。
担任教師としては複雑な気持ちになる…。
「これからは、仲森さんの意志でいつでもISを呼び出せますけど…」
「規則があるんですよね?」
「はい。それが書かれてある本も用意はしてあるんですが…持てます?」
「多分…無理です。少なくとも素手じゃ絶対に。鞄とかがあれば別でしょうけど」
「なら、明日にでも改めて渡すって事で良いですか?」
「それでお願いします」
「分かりました。もう帰っても大丈夫ですよ」
「はい…お疲れ様でした…」
背中を丸くしながら、仲森は更衣室まで戻って行く。
肉体的にというよりは、精神的に疲弊したという感じか。
あれだけ泣き叫んだんだから当たり前か。
「仲森さん…大丈夫でしょうか…」
「さぁな…。本人は無理をして頑張っているようにも見えるが…」
これから先…仲森はどうなってしまうのだろうか。
一介の教師に過ぎない私に、どこまで守れるのだろうか。
「後で、仲森自身に付いても、もっと詳しく調べてみる必要があるかもしれないな…」
「そうですね……」
仲森…あれだけISを…白騎士を怖がったお前の過去に、一体何があったというんだ……。
初期状態(テレビアニメ版トールギス)→第一形態(EW版トールギス)。
では、第二形態になると…?