私…生まれ変わったらモブキャラになりたいな(なれるとは言ってない) 作:とんこつラーメン
まさか、主人公の出番を完全に奪い取った束さんの演説(?)が、こんな事になろうとは…。
こうなりゃ、これからもどこかで定期的に演説回を入れていくか?
私が良い演説を思い付くか次第ですが。
まぁ…何と言いますか…。
突然現れた束さんの口から放たれた怒涛のお説教(?)にて、目の前にいる一般生徒の皆さんのメンタルが完全崩壊して死屍累々な状態に。
私も束さんも気持ちは非常に良く理解出来るので、彼女達の事を擁護しようとは思わないし、寧ろこれをバネにしてこれから頑張ってほしいと言う淡い願いもあったりするわけでして。
…割とマジな話、ここまで言われて意識改革出来なかったら、本気でIS学園を自主退学することを勧めたい。
あの演説で何も思わなかった時点で、その人は学園にいても何も成せないし、その先の人生は真っ暗になると思うから。
「ほらほら、かおりん! あ~んな『身勝手』な連中の事は無視してさ、早く君のトールギスを見せてよ~!」
「え? あ…はい…」
本当なら見せられないんだけど、この人がもう全てを暴露しちゃったんだよなぁ…。
試しに織斑先生の方を振り向くと、困ったような顔をしながら溜息交じりに頷いてくれた。
この人にも苦労を掛けっぱなしだなぁ…。
「き…来て…トールギス…」
首から掛けているトールギスの待機形態である首飾りを握りしめ、静かに頭の中で念じる。
もうすっかり慣れたもんで、あっという間にトールギスが展開されましたとさ。
織斑先生曰く、私の展開時間は0.1秒ほどらしい。
これは国家代表クラスらしく、それを言っていた時の織斑先生は自分の事のように嬉しそうにしていたのをよく覚えている。
「おぉ~! これが本物のトールギスなんだね~! うんうん! 見ただけでよく分かるよ。これは明らかに『普通のIS』じゃない。凡人共には乗ることすら叶わない…文字通り『選ばれた人間』だけしか乗ることが許されない玉座だ」
玉座って…そんな大袈裟な。
確かに、トールギスの本来のパイロットであるゼクスことミリアルドは本物の王子様だったけどさ。
(トールギスが玉座か…フッ。言い得て妙な表現だな)
なーんかゼクスも私の頭の中で皮肉ってるし。
流石に、これに関しては黙ってた方が良いような気がする。
つーわけで、交代お願いしまーす。
(承知した。任せておけ)
わー頼もしいー。
「う…嘘…あれって…」
「あの時、学年別トーナメントの時の…」
「って事は…本当に、あの仲森って子が…?」
あーあ。とうとうバレちゃった。
こうなったら、ここでゼクスの本気で度肝を抜かせて、イジメに発展させないようにしよう。
それでも、もしされたら即座に織斑警察に通報してやる。
「んじゃ早速、トールギスにテンペストを装着してみようか? いいよね、ちーちゃん?」
「はぁ…どうせ言っても聞かないのだろう?」
「とーぜん!」
「堂々と胸を張って言うな」
一応、織斑先生に確認を取る辺り、またマシな部類…なのかな?
先生は頭を抱えているけど。
「仲森…いきなりで申し訳ないが頼む…」
「了解しました」
しっかし、このテンペストとかいう大型ヒートランス。
どこに装着すればいいのかしらん?
やっぱ、原作通り左腕のシールドの部分?
「そーだねー…右肩にはドーバーガンがあるし、ここは左腕に装着しようか! その円盾にくっつけるような形が良いかもだね! 絵的な意味でも!」
ですよねー。
流石に、これ以上右側に武装を積んだらバランスが悪くなっちゃうよね。
「でも大丈夫? かおりんって右利きだよね?」
「心配は無用だ。剣などならば難しかったかもしれんが、槍…特に『
ここで、かおりんの豆知識のコーナー!
ランスと言う名前は、ラテン語で『軽い槍』と言う意味の『ランシア』という言葉が語源になっていて、このランシアは6世紀頃にフランスで用いられた槍で、歩兵も使用していたんだって。
けど、本格的な騎兵用のランスが登場したのは、それから1000年以上先になる16世紀頃で、この頃には騎馬戦用に考案された『ランスチャージ』と呼ばれる騎兵突撃が良く使われていたの。
これは、ランスを腋に抱えるようにして構えてから、その状態で馬ごと相手に突撃して、そのまま突き倒すという戦法だったの。
非常に攻撃力が高い反面、一直線にしか攻撃出来ない上に、側面からの強襲には非常に弱いと言う致命的な弱点も抱えていたんだね。
ま、トールギスの場合は全身の装甲がアホみたいに固いから、その弱点も十分に補えると思うけど。
それ以前に、トールギスの全速力のランスチャージとか、普通に誰も避けれないし、同時に防ぐことも出来ないでしょ…。
なんて話している間に、トールギスの左肩から伸びたシールドにドッキングする形でテンペストが装着されていた。
「おぉ~! 中々に良い感じだね~! トールギス自体が騎士っぽいデザインだから、より一層これ系の武装が似合う気がするよ~!」
「そうかもしれんな」
「トールギスに乗ってる時のかおりんはクールだね~。もしかしてアレかな? ハンドルを握ると性格が変わる的な?」
「…そんな所だ」
半分正解で半分ハズレだから怖い。
一瞬マジで心臓がドキってなった。
「あ、そうだ! 後で良いから、いっくんのISも見せてね。一応、色々と調べておきたいからさ」
「え? あー…分かりました」
完全に空返事。
無理もないけどね…だって、他の皆も見事に蚊帳の外状態だし。
あの篠ノ之さんだって、さっきから空気を読んで静かにしてるしね。
けど、ここで彼女に対して何の反応もしてないって事は、本当に専用機『紅椿』が開発されてないんだなぁ…。
あれはあれで色んな意味で厄災の元となるから、本当は無い方が良いんだけどね。
「んじゃ、実際に使い勝手を試してみようか。空に上がってくれる?」
「了解だ。では…いくぞ!」
安全の為に皆から少し離れてかーらーの…スーパーバーニア全開!!
「おおおおおおおおおおおおおおおおおっ!?」
なんか束さんが叫んでるけど、ここは流石に無視して飛ぶ。
文字通り一瞬でかなりの高さにまで到達した。
皆は大丈夫だったかな?
「あ…ははは…成る程ね…確かにこれは『化け物』だわ…」
およ? ISであるトールギスのお蔭で、地上で束さんが言っているのが聞こえるぞ?
「束…? どうした?」
「いやね…実際に、この目で見て確信したよ…。あれは…トールギスは本当に人間…っていうか『人類』が搭乗することを全く想定していない…。あれに乗って全速力なんて出そうものなら、私やちーちゃんでも、下手したらミンチ肉になるかもしれない…」
「トールギスが異常なのは私も知っているが…それ程なのか?」
「うん。あんなに全ての問題を力技で解決したISはこの世に一機も存在しないんじゃないかな? 幾ら、開発時期がISの技術がまだまだ未成熟な頃だったとはいえ、あの当時にこんな機体を生み出した連中は、確実に良い意味で頭のネジが捻じれまくってるよ。普通なら『操縦者を保護する為のIS』なのに、あのトールギスは『操縦者をISのパーツの一つとして計算している』ように感じるよ」
私がトールギスと言うISを動かす為のパーツ…か。
ある意味で、その解釈は合っているのかもしれない。
事実として私は一度もトールギスを動かしたことは無い。
実際に動かしているのは、ゼクスやトレーズ閣下だし。
「そんなトールギスをまるで自分の手足のように軽々と扱えるかおりんはきっと、私達以上に『選ばれた存在』なのかもしれないね」
「そう…かもしれんな…」
いやいや。流石にそれは大げさすぎ。
私は単なる転生者で、それ以上でも、それ以下でもありませんから。
いつの世も、私はどこにでもいる一般人Aに過ぎない…と思っている時期もありました。
今となっちゃ、その自称も完全に無意味になって来てるよなぁ~…。
「かおり~ん! 今からそっちに向けてミサイルを撃ってみるから、それを全てテンペストで迎撃してみせてね~!」
「いいだろう…来い!」
なんだろう…昔なら『アイエェェェェェッ!? ミサイルナンデ!?』ってなってたのに、今となっちゃ『ミサイルなら、まずはここはこんな風に移動して…』って、冷静な頭で真っ先に対処法を考えようとしている自分が怖い。
私も本当に変わったなぁ…。
いや、この世界観に染まってしまったと言うべきか?
つーか、他の皆も私に向けてのミサイルに対して何にも言ってないし。
もう私は、ミサイル程度じゃビクともしないって認識になってるのかしら…。
「気合入ってるね~! んじゃ…いっくよ~!」
そう言うと、拡張領域内に入っていたと思われるミサイルコンテナが了し空間から物質化され、岩の上にドンと置かれた。
んでもって、それらが一斉にパカパカパカと開いて、全てのミサイルが私…というか、トールギス目掛けて飛んでくる。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
全てのバーニアが展開し、テンペストを前方に向けながらミサイル目掛けて突撃!!
あっという間にトールギスとミサイルは接敵し、一番先頭にあったミサイルをすれ違いざまに貫いて破壊。
背後では真っ二つになったミサイルが派手に爆発した。
「続けてミサイルを破壊する!」
もう、ここからは完全にトールギス無双の始まり。
急加速、急停止からのほぼ直角な急旋回をしまくり、ハイパーセンサーから見たトールギスの動きはまるでUFOそのもの。
だってもうカーブしてないもん。
軌跡だけならモロに真ゲッターだしね。
そんな状態で大型ヒートランスであるテンペストを前方に向けて、そのままの速度で突撃なんてしてるから、場合によっては本当にミサイルが止まって見えた。
もう私…どんなジェットコースターに乗っても怖がらない自信があるわ。
「ミサイルが次々と破壊されていきますわ…」
「まさか、トールギスとランスとの組み合わせが、ここまで相性が良いなんてね…」
「これは…あれかな。佳織との差が増々、広がっちゃう感じかな…?」
「さ…流石は佳織だ…。あれ程の動き…世界でもどれだけ出来る者がいるか…」
なんか言ってますけど、それに反応する余裕はありませんのよ。
あ、あと三つぐらいで終わりだ。
このまま一気に終わらせますか。
「一気に決める!! 行くぞ…トールギス!!」
全てのバーニアを全開にして、遂にはミサイルを後ろから追い抜くという芸当を披露してしまった。
トールギスという機体がつくづく化け物だと気付かされる瞬間だ。
「これで…終わりだ!!」
ミサイルを追い抜いた後に、堂々と真正面から迎え撃ち、ズババ!っと一瞬の内に三基のミサイルを一度の動きで貫き破壊。
『怖かったー』って感想よりも『終わったー』って感想が普通に思い浮かぶ私はもうダメかもしれません。
「もう終わったのッ!? 時間はー…まさかの1分ジャスト! 凄いじゃん!!」
え? 一分? 嘘でしょ?
私には一時間にも二時間にも感じられたけど?
うわー…何この現象。普通に怖い。
「かおり~ん! もう降りてきても良いよ~!」
許可が出たので、とっとと降りますか。
たった一分間とはいえ、なんか地上が恋しい。
空に昇る時とは違い、降りる時はゆっくりと静かに降りていく。
あんだけ派手に動いても、まだまだSEに余裕があるのは普通に凄いなーって思う。
なんて言ってる間にIS解除…っと。
「どうだった? テンペストの使い勝手は?」
「えっと…凄く良いと思います。ランス系の武器はトールギスの速度とは相性がバッチリですし」
「そうだよね! そうだよね! かおりんなら、きっとそう言ってくれると信じてたよ~!」
まるで子供みたいにはしゃぐ束さん。
純粋なのか、それともお芝居なのか。
「か…かおりん!? 大丈夫だった!?」
「うーん…特に怪我とかはしてないよ? ちょっと疲れたけど」
「あれだけの動きをして『ちょっと』なのか…佳織は凄いな…」
「流石は仲森さん…体力も規格外だぜ…」
いや、普通に乗ってるだけで疲れただけですが。
実質的に自分の身体が自分の意志とは関係なく動かされてるに等しいし。
それでも、最初の頃と比べてマシになってるから凄い。
最近じゃ、トールギスを動かした日の夜はぐっすりと眠れます。
安眠効果抜群です!
「ご苦労だったな仲森。喉が渇いただろう。これでも飲むといい」
「ありがとうございます」
織斑先生から、労いの言葉と同時にスポドリが手渡された。
それは嬉しいし、非常に有り難いんだけど…。
(なんだろう…これ、気のせいか飲んだ形跡があるような…)
気のせい…だよね? 私の勘違いだよね? ね?
「何よ…あれ…」
「あんなの…人間の動きじゃない…」
「しかも…本人は全く疲れた様子じゃないし…」
「どうなってんのよ…これ…」
どうと言われましても。
全てチミたちの勘違いなのだよ。
と言っても、信じて貰えないんだろうなぁ…今じゃもう。
「やっぱり…かおりんは凄いね。君に会いに来て大正解だったよ。私は一人じゃないって確信できたから」
「はぁ…」
『一人じゃない』とは?
最初から束さんは一人じゃないでしょうが。
妹である篠ノ之さんもいれば、親友である織斑先生もいる。
それだけでも相当に恵まれてると思うけど?
世の中には『ぼっち』と言う名の孤独を愛する人種もいるんだし。
「念の為に、トールギスの事を少し見せてくれる? いっくんは、その後でね~」
「お構いなく~」
完全に他人事だね織斑君!
よーし…絶対に君にも番を回してやるんだからね!
「お…織斑先生~! 大変です~!」
「山田先生? 一体どうした?」
旅館の方向から山田先生が慌てた様子で走ってきた。
…遂に来てしまったか…この時間が。
覚悟…決めた方が良い…よね…?
次回、遂に福音編のクライマックスに突入する…?