私…生まれ変わったらモブキャラになりたいな(なれるとは言ってない) 作:とんこつラーメン
うーん…実に私の好みの反応。
そして、ここから更に福音編は加速する…!
えっと…暴走した福音を止める為の作戦を皆でしている最中、なんか急にモニターにIS委員会の日本支部の幹部を自称する謎のオッサン『原田』が出現した。
何を言っているか分からないと思うけど、私達が一番何が起きているのかサッパリ分からない。
「候補生の作戦参加が認められないだと…どういう意味だっ!?」
『そのままの意味だ。今回の暴走した福音を止める為の作戦に、他国の候補生の参加は何があっても決して認められん。これは私の独断ではなく、日本支部全員の総意だ』
「なん…だと…!?」
…このオッサン…マジでいきなり何を言い出してるんだ?
冗談抜きで意味が不明なんですけど。
私以外にも、他の皆もいきなり過ぎて鳩が豆鉄砲を受けたような顔をしているし。
『そこにいる者達は、IS学園の生徒である以前にそれぞれの国の代表候補生だ。分かるか? そいつらは『国』に属しているのだよ。彼女達の作戦参加に伴い、ちゃんとイギリスと中国とフランスの支部に正式な許可は取ったのか?』
「そんな暇など有る訳がないだろう!! 今の状況を分かっているのかッ!?」
『当たり前だ。だからこそ言っている。お前こそ分かっているのか? もしも正式な許可も取らず、無断に作戦に参加させた挙句、彼女達に万が一の事があった場合の事を』
あー…このオッサンが言おうとしている事が何か分かった。
世の中、正論をぶつけていればいいってわけじゃないだろうに。
辞書で『臨機応変』って言葉を調べてから出直して来い。
『候補生や国家代表…そして専用機。それは今の時代では国の財産に等しい。それらに何かがあった場合、まず間違いなくIS学園は各国から激しいバッシングを受けるだろうな』
「それは…!」
『あの学園が治外法権の場とはいえ、所詮は単なる学校法人。国からの圧力には決して耐えられん。実際、どこぞのドイツの候補生が好き放題に暴れて中国とイギリスの候補生を傷つけた時、ドイツは随分な目に遭ったそうだしな』
「……っ!」
うわぁ…ここでボーデヴィッヒさんの心の傷を抉ってくるとか…。
この時点で、私からこのオッサンに対する好感度はマイナス無限だよ。
「大丈夫…大丈夫だから…」
「うん…すまない…佳織…」
ちょっと泣きそうになっていたボーデヴィッヒさんの頭を撫でて落ち着かせる。
こんな可愛い子を泣かせるとか…お前の血は何色だー!
『命を落とす…とまではいかないが、致命的な重傷や専用機を失うような事があった場合、貴様は責任を取りきれるのか? 言っておくが、お前を初めとする教師共のクビ程度では済まされんぞ? 学園関係者は全員揃って仲良く投獄。IS学園も即座に閉校だろうな』
「なっ…!?」
…なにこれ…めっちゃ頭の悪い脅しじゃない。
聞いてるだけで頭痛が痛いわ。
「あの野郎…!」
「織斑君…落ち着いて」
「でも…!」
「悔しいのは皆同じ。けど耐えてる。だから…」
「…ごめん」
好き放題言いまくるクソオヤジにブチ切れた織斑君が立ち上がろうとしたけど、咄嗟に彼の肩を掴んで静止させる。
ここで怒りに任せて行動したら、それこそこの原田とかいう同じオヤジの思う壺だ。
それだけは何があっても絶対に避けなくちゃいけない。
『それにな、ここで下手に他の国に借りを作ってデカい顔をされるわけにはいかんのだよ。これは日本だけでなく、アメリカとイスラエルも同じ考えのようだ』
「馬鹿どもが…! この緊急事態に政治家共の思惑に付き合っている暇は無い!」
『ふん…所詮は剣を振るしか能が無い女か。事が終わった後の事を考えるような、大局を見据える事すら出来んとは。ブリュンヒルデだなんだと言われても、結局は貴様も単なる『女』に過ぎんかったという訳か』
かっちーん。
今のは普通にかおりんの逆鱗に触れましたよー。
よりにもよって、私がめっちゃお世話になってる織斑先生を罵倒するとか…いつの日か必ず、この世に生まれてきた事を後悔させてやる…!
「な…仲森さん…顔怖い…」
「え?」
あ…あらら…なんか無意識の内にブッツンしてみたみたい。
おほほほ…ごめんあそばせ。
『このご時世、そこにどのような理由があろうとも、他国の介入を許す事は自国を危機に晒す事に繋がる。どこで、どのような形で自国の技術や情報が盗まれるか分からないからだ』
そういや…デュノアさんのお父さんもそれっぽいことを前に言ってたな…。
あれ? ってことは、このオッサンって更識家がフランスに人間を派遣したことを全く知らないのかな?
だとしたら、こいつってば相当に小者なのでは?
「ではどうしろと言うんですか!? こうしている間にも福音は…」
『そんな事は私も分かっている。確かに候補生の出撃が許可出来ないが…候補生以外にも専用機持ちは他にいるだろう?』
「ま…まさか…!」
うん…その『まさか』…だろうね…。
『一応言っておくが、そこにいる織斑一夏は論外だぞ』
「な…なんでだよっ!?」
『貴様はこの世にたった一人しかいない男性IS操縦者だ。特別天然記念物や絶滅危惧種などとは比較にすらならない程に貴重な存在なのだ。それをあろうことか、命の保証すら出来ない戦場に送り出す? 冗談ではない。もしも、そんな事をしたら世界中のIS関係の科学者たちから総攻撃を受けるぞ? そうなればIS学園など一瞬で崩壊だ』
言ってる事は分かる…分かるけど…!
もっと言い方ってもんがあるでしょうが…!
『だが…問題はあるまい? なんせ、そこにはあのトールギスを駆る事が出来る唯一無二の人間がいるのだからな』
「…佳織をたった一人だけで出撃させろと言う気が…!」
『別に問題はあるまい? そもそも、トールギスは単機であらゆる戦場に介入して制圧することが可能と言われているISだ。そして、仲森佳織には確かな実績がある』
実績って…え? まさか…全部知ってるの?
『クラス対抗戦にて謎のISが乱入してきた時に、それを単機で撃破してみせるだけでなく、学年別トーナメントではVTシステムの暴走すらもたった一人で食い止めてみせた。これだけの実績があれば十分過ぎるだろう』
「な…何故、貴様のような者が知っているッ!? あれらには全て箝口令が敷かれていた筈だ!」
『IS委員会を舐めるなよ? 学園内で起きた出来事で、我々に隠し事が出来ると思うな』
まぁ…その大元だからねェ…。
『もしも、仲森佳織以外に誰にも文句を言われずに作戦に参加出来る者がいるとすれば、それは今回の被害者とも言うべき日本の人間と、福音の開発を行ったアメリカとイスラエルの人間だけだろうな。勿論、そんな奴がいれば私とて何も言うつもりは無い。候補生であっても問題はあるまい。もしも、この場にいたらの話だがな。はっはっはっ!』
「じゃあ、お望みどおりにしてやるよ」
『へ?』
「え?」
「「「「「は?」」」」」
いきなり室内に聞こえてきたこの声は…もしかして!?
「お…お前は…いつの間にか姿を消していたと思っていたら…!」
徐に襖が開いて、そこから姿を現したのはウサ耳を付けたお馴染みの…。
「束! 一体どこに行っていたんだっ!?」
「え? あの人が篠ノ之博士!?」
あ…そっか。山田先生は初対面だったっけ。
あの人が海岸に来た時にはもう束さんはいなくなってたし。
「ちょっちIS学園までひとっ飛びしてきたんだよ」
「IS学園だとっ!? なんでまた…」
「それは今から説明してあげるよ」
おぉ…なんか流れが変わって来ましたよ?
ここからは私達のターンですか?
「おい、そこのお前」
『な…なんだ…いくらISの開発者とはいえ、我々の考えは変わらんぞ! これは非常に重要な国際的な問題であってだな…』
「さっきさ、『アメリカとイスラエルの人間なら作戦に参加しても良い』って言ってたよな。その言葉に二言は無いよね」
『そ…それがどうした!? あぁ! 二言は無い! だからこそ、そこにいる…』
「だってよ。入って来ても良いよ」
入って来ても良い?
誰かを廊下に待たせてるの?
でも…誰を?
「あいよ。ったく…どうして『このオレ』を強制連行しやがったのか意味不明だったけどよ…今ので全部理解したぜ」
この声はー…誰?
少なくともオレっ子であることは分かるけど。
「お前は…ダリル・ケイシーかっ!?」
「そうでーす。IS学園三年生にしてアメリカ代表候補生のダリル・ケイシーでーす。お前ら、よろしくな」
「「「「「「ど…どうも…」」」」」」
ダリル・ケイシーって…どこかで聞いたことがある気がする。
でも、良くは思い出せないんだよな~…。
つーか今、アメリカの候補生って言ったッ!?
『ば…馬鹿なッ!? アメリカの候補生だとッ!?』
「そうだよ。ちーちゃんたちが手話で福音の暴走の話をしていた時に、もしかしたらって思って超特急でIS学園まで飛んで、急いでこの子を連れて来たの」
「だから、いつの間にか姿を消していたのか…」
すげー…流石は天才科学者…。
このオッサンが無理難題を言ってくることを想定して先に動いていたなんて…。
「おう、オッサン!」
『ひぃっ!?』
「オレは正真正銘のアメリカの候補生だ。ウチの国の不始末を処理するのに文句はねぇよなぁ? テメェ自身が言った事だもんな?」
『あ…あぁ…』
現役JKに思いっ切り怒鳴られてビビってるし…。
こんな時になんだけど、めっちゃおもろー。
「お前が、あのトールギスのパイロットの仲森佳織だな?」
「は…はい」
「大方の事情は篠ノ之束から聞かされてる。安心しな。お前の背中はオレが守ってやるよ」
やば…割とマジで胸キュンした…。
こーゆーワイルドな姉御肌系の女性って周りにいなかったから新鮮だ…。
「これで戦力は二人になったな。これだけでも大きな前進だろ」
「いや…三人だ」
「え?」
織斑先生…?
三人って…まさかっ!?
「全く…我ながら自分が情けない。まさか、束に教えられる日が来るとは…」
バチンっ!!
いきなり織斑先生が自分の頬を両手で叩いた。
すっごいスッキリした顔になってるけど。
「もう二度と、佳織を大人の悪意に晒したりしないと言っておきながら、実際にやっている事は口で命令するだけ…これでは何も守れはしない。何も成せはしない。私には『覚悟』が足りなかった。自ら『剣』を取る覚悟が」
「ちーちゃん…」
お? 織斑先生が織斑君の所に言って…手を出した?
「おり…いや、一夏。お前の白式を貸してくれ」
「白式を…千冬姉に?」
「そうだ。お前の代わりに…私が出撃する」
「なんだってっ!?」
お…織斑先生…いや…千冬さんが一緒に出る…?
ちょ…え? マジで?
「今までは後ろで吠える事しか出来なかったが…それももう終わりだ。出る事が出来ないお前の代わりに、今は私が佳織を傍で守る。だから…頼む」
「…分かったよ。白式を千冬姉に預ける。俺の代わりに…仲森さんを守ってあげてくれ」
「ふっ…任せておけ」
自分の腕から白式の待機形態であるガントレットを外して、それを千冬さんに手渡す。
千冬さんは、それを自分の右腕に装着した。
その時、心なしか白式が僅かに光ったような気がした。
「これで三人だな」
「いえ…四人です」
今度は山田先生?
いつもの優しい顔とは違って、めっちゃ真剣な表情になってる。
「織斑先生が行くのなら、私も一緒に行きます。リヴァイヴの高機動パッケージを装着すれば、援護ぐらいは出来る筈です」
「…頼めるか?」
「勿論です。仲森さんは、私にとっても大切な生徒ですから」
や…山田先生…なんかカッコいい…。
普通に尊敬できる人になってる…。
「待ってください山田先生」
「デュノアさん?」
「行くのなら、僕のリヴァイブ・カスタムⅡを使って下さい」
「いいんですか?」
「はい。僕は一緒に行くことは出来ませんけど…機体だけなら。それに、山田先生なら安心して預けられますから」
「…分かりました。デュノアさんの想い…確かに受け取りました」
な…なんか段々と凄いことになって来た…!
これってつまり、三年生の先輩と千冬さん、山田先生と共闘するってことでしょ?
「文句は無いだろう? 原田とやら。私も山田先生も日本人であると同時に、今はIS学園の教員だ。国家代表でも代表候補生でもない。出撃するのに何の支障も無いと思うが?」
『うぐぐ…!』
なんて典型的な悔しがり方。
何もかもが全て矮小に見えてきた。
「では、私も問題は無いな」
「ボーデヴィッヒさん?」
「佳織。私も織斑教官や山田先生と同様に『元候補生』だ。つまり、今は単なる一般生徒。そして、国外追放を受けた身でもある。今ここで私が出撃をしてもドイツには何にも支障はないし、国際問題に発展することは無いと言うことにもなる。違うか? 原田とやら」
『そ…それは…!』
良いぞ良いぞ~! もっと言ってやれ~!
はっはっはっ~! これは気分が良いですな~!
「これで合計5人だな。頭数だけなら十分過ぎる数だ」
「結局、メンバーが変わっただけで出撃する人数自体は変わらなかったわね」
「でも、織斑先生達ならば私達以上に安心ですわ」
「旅館は僕達が守ります。だから…」
「分かっている。福音は私達に任せろ」
そして、最後に皆揃ってモニターに映っている原田のオヤジを睨み付ける攻撃!
『か…勝手にしろ! だがしかし、もしも失敗したらタダでは済まんぞ!!』
「最初から失敗することを想定して出撃する馬鹿がどこにいるのよ。バッカじゃないの?」
『く…くそっ!!』
トドメに私からの一言で原田はめっちゃ悔しそうにしてモニターを切った。
いやー…マジでスッキリした。
「では、これから作戦準備に入る。出撃は今から一時間後だ」
「「「「了解!」」」」
一時間後か…なんか急に緊張してきた。
「皆の機体の整備は私に任せて。白式とリヴァイヴ・カスタムⅡも、即席ではあるけど二人が扱いやすいように調整しておくから」
「頼んだぞ、束」
そして、束さんもなんか当然のように手伝ってくれる。
これなら…本当になんとかなるかもしれない!
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
IS委員会日本支部 会議室
原田はそこで息を荒くしながらモニターが乗っている机を怒りに任せて叩いていた。
「くそっ! くそっ! くそっ! あの小娘共が!! 調子に乗りやがって!!」
「原田」
「ひぃっ!? あ…貴方様は…!?」
背後から突然、声を呆気られて原田の怒りが一瞬で萎んでいく。
後ろにいる相手は、胸から上が影になって顔が見えないが、それでも体型から性別が男であることが分かった。
「もういい。よくやってくれた」
「ほ…本当にこれで良かったのですか? 仲森佳織一人の出撃ではなくなってしまいましたが…」
「別に構わないよ。これはこれでまた面白い展開だ」
「はぁ…貴方様がそう仰られるのなら…」
どうやら怒っていないと分かると、原田はホッと胸を撫で下ろした。
「じゃあ、お前には次の『役目』を与えよう」
「や…役目? それは一体…なっ!?」
いきなり、原田は男からアイアンクローをされ、何事かと大きく目を見開く。
「原田。お前には『必要悪』になって貰うよ」
「ひ…必要悪…?」
「そうだ。目が覚めた時、お前は『何の罪もない幼気な女の子を突け狙う、最低最悪のストーカー野郎』になっている事だろう」
「な…何を言って…がぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
原田が突如として苦しみだし、全身が激しく痙攣する。
数秒後、原田は白目を剥いて机の上に倒れた。
「これでよし…と」
男は近くにある椅子に腰かけると、静かに天井を見上げた。
「ごめんねぇ…佳織ちゃん。本当の本当に、僕は君がIS学園に入学した時点で、君やこの世界に対する干渉をしないつもりでいたんだけど…事情が変わってしまったんだよね。まさか、あんな風に些細なことから始まった『勘違い』が、ここまで肥大化するなんて想像もしなかったんだ。このままだと、どこかで何かが『破綻』してしまう可能性が出てきた。だから、それを防ぐ為にも、これからは僕も積極的に干渉をしていくことにするよ。約束を蔑にした償いは、いつか必ずするからね」
男は千里眼を使って花月荘での佳織たちの様子を伺う。
それを見て微笑を浮かべた。
「にしても、流石は篠ノ之束。原田の馬鹿が言った無理難題を、まさかIS学園からダリル・ケイシーを連れてくることで解決し、そこから原作とは別のメンバーの参戦を連鎖発生させるとは恐れ入ったよ。彼女はまだ登場する予定が無い人間。それを先行登場させるという力技で、この事態を乗り切るなんて。しかも、彼女は原田の後ろにいる『僕』の存在にも薄々とではあるけど気が付いている節がある。本当に…油断がならないな。でも、だからこそ面白い」
肘当てに頬杖を突いてから、男は不敵な笑みを浮かべた。
「いいだろう…来るなら来いよ『天災』。お前が『神』である僕と何処まで張り合えるのか…試してやろうじゃないか。お互いに考えている事は『佳織ちゃんの安寧』の一つだけ。僕達は同志であり…同時に敵同士だ」
謎の男…『神』は、椅子から立ち上がった後に背を伸ばした直後…まるで最初からこの場にいなかったかのように姿を消した。
次回、まさかのメンバーと一緒に福音との本格バトル開始。