私…生まれ変わったらモブキャラになりたいな(なれるとは言ってない) 作:とんこつラーメン
分かった人は相当なガンダムマニアだと自慢していいと思います。
それに気を良くしたのか、今度はダリルが前に出て攻撃体勢に入る。
「よぉし…このまま一気に攻めるぜ!! くらいな!!」
両肩部の狼の口から超高熱の光線が放たれる。
それはビームなどの類ではなく、自慢の炎を極限まで圧縮した『熱線』。
まともに喰らえば大ダメージは必至。
掠っただけでもタダでは済まないだろう。
福音は今、さっきの攻撃でほんの僅かではあるが動きを止めている。
その時間は僅か数秒だが、こと戦場という場所において、その『数秒』が運命を分ける事が多々あるのだ。
「へへ…コイツで…なっ!?」
直撃は免れず、ここから更に自分達の優勢が続くと思われた…が、福音はその予想を全く想像だにしない形で裏切った。
「んな馬鹿なッ!?」
なんと、福音は頭部から生えている一対の機械の翼で自身の体を覆い尽くしてダリルの放った熱光線を見事にガードし、しかもその状態のまま突撃してきたのだ。
光線と言う性質上、撃っている間はダリルは身動きが出来ない。
しかも、強烈な熱のせいで援護防御にすら行けないと言う有様だった。
結果、ダリルは福音が自分の懐に入り込むのを許してしまう。
「ちっ…クソがッ!!」
咄嗟に両腕をクロスさせてガードするが、そんな事などお構いなしに福音は大きく足を踏み込みパンチを繰り出す。
「お…重い…!」
そこから更に流れるような動作で裏拳、膝蹴りからのローリングソバットを繰り出し、最後は何とサマーソルトキック。
すぐに胴体を逸らして回避をしたが、それでも僅かながらダメージを受けてしまい、すぐに佳織たちの元まで後退をする羽目になった。
「クソ…すまねぇ…油断しちまったぜ…!」
「前に出過ぎだ…と言いたいが…」
「まさか、ここまでだなんて…」
佳織たちは事前情報から『福音がオールレンジ攻撃を主とした高機動射撃を得意とする機体』と知っていたので、自然と『近接戦は苦手。もしくは、仮に行ったとしても緊急時のみ』と完全に思い込んでいた。
だが、現実は全く違い、あろうことか福音は自ら突っ込んで来て近接戦を仕掛けてきたではないか。
「しかもよ…今のは間違いなく…」
「軍隊格闘技…マーシャルアーツか…!」
アメリカの候補生として、ダリルは米軍に出向して何度か彼らと同じ訓練を受けた事がある。
その際に、さっきの福音と似たような技を見た事があるし、教わった事もある。
故に一発で分かったのだ。
福音にはマーシャルアーツのモーションデータがインプットされていると。
「伊達にアメリカ製じゃないってことかよ…クソが…!」
「遠近共に隙は無し…か。相手が近接戦が不得手ならば、織斑教官や佳織を援護して懐に飛び込ませれば…と考えていたが…どうやら浅慮だったようだな…」
「ならば…どうする?」
「決まっているでしょう…教官」
千冬から尋ねられ、ラウラの目に炎が宿る。
相手の距離に隙が無くなった?
だからなんだ。
こちらには『数の理』がある。
しかも、そのメンバーは世界的に見ても有数の実力者ばかり。
その『利点』を最大限に活かせば十分に勝ち目はある。
「各機!」
ラウラの叫びを聞き、全員の顔が今まで以上に引き締まる。
「フォーメーションを組むんだ!!」
「「「「了解!!」」」」
全員が瞬時に自分の役割を理解し散開する。
まさかの行動に福音は理解が追いつかず、一瞬だけ棒立ちとなる。
その僅かな隙に、まずは真耶が拡張領域から手持ち式の6連装ミサイルランチャーを両手に装備し、福音に対してロックオンする。
「まずは私からです!! 当たってぇぇぇぇぇぇっ!!!」
自分に向かってくる複数の熱源を感知し、福音は瞬時に回避行動に移る。
大空を縦横無尽に駆け抜けるが、それでもミサイルは福音を追尾してくる。
『!!??』
仕方がないと判断したのか、福音は自身の主砲でもある両翼『
翼から放たれた無数の光は見事にミサイルを破壊することに成功はするが、それでも全部は出来なかった。
破壊出来たのは6基のみで、残り半分は光の間を潜り抜けて福音の胴体に命中。
この短時間に二度も真耶の攻撃に命中してしまった事で、福音はすぐに真耶に対する警戒を強くする。
それが福音の油断になるとも知らずに。
『!!!』
ミサイル命中によって生じた爆煙を払いのけ、急いで真耶の姿を探す。
だが、そんな福音の両隣りに二体のISが姿を現した。
「何処見てやがんだよ…福音ちゃんよぉ…!」
「真耶に気を取られ過ぎたな…隙有りだ!!」
先程とは違い、その拳に炎を纏わせた一撃を右側からお見舞いし、それと全く同時に左側からは千冬は白式の最大攻撃である『零落白夜』を発動させ斬り掛かる!!
左右同時から放たれる強力な一撃に、福音も思わず回避ではなく、両腕を使った防御をしてしまう。
バチバチと火花を散らしながら二人の攻撃を防ぐが、福音の腕はプルプルと震えている。
「流石は軍用機…! 競技用とはパワーが違うか…! だがしかし!」
「こうなることは最初から読んでたんだよ…そうだろ!!」
「あぁっ!! その通りだ!!」
両腕が塞がり、更には身動きすらも取れなくなった福音に目掛けて、ラウラが突撃を敢行する!
その両手には二振りの近接ブレード『ブレッド・スライサー』が握られていて、勢いを突けたままの状態で全力で振り被る!!
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!」
だが、この状態で福音は器用に頭部の翼を盾にように使用し、ラウラの一撃すらも防いでみた。
スライサーと翼との間で激しい火花が散り、若干ではあるがラウラがパワー負けし始めた。
だと言うのに、ラウラは『してやったり』と言わんばかりに不敵な笑みを浮かべる。
「フッ…見事に引っかかってくれたな。今だ!! 佳織!!!」
「了解した!!」
何事かと上を向く福音。
そこには何と、自分に向けてドーバーガンを構えているトールギスの姿があったではないか。
ここに来て福音はようやく全てを悟る。
今までの一連の行動は全て、この最大の一撃を確実に自分に命中させるために布石でしかなかったのだと。
その為に、他の者達はミサイルで牽制したり、敢えて近接戦を挑む事で自分の身動きを止めようとした。
全ては、この一瞬の為だけに。
『!!!!!』
このままでは拙い。
ドーバーガンの威力は、もう既に見ている。
最初に放たれた巨大なビーム砲。
直撃だけは絶対に避けなくていけないと理解したからこそ、あの時は咄嗟に避けたのだ。
だがしかし、今度はそうはいかない。
自分は見動きが不可能な状態であり、相手はもう既にロックオンを完了している。
考える。福音は必死に考える。
どうすれば被害を最小限に抑えられるか…と。
『……!』
なんと、福音は急激に出力を上げ、その場で高速回転をする事で自分に纏わりついている三人を無理矢理に振り解いた!
「クッ…! 我々三人を纏めて!?」
「振り届くほどのパワーを有しているというのかッ!?」
「この細身のボディのどこに、んな力があるってんだよ!!」
三人がいなくなったことで福音は自由の身となったが、もう既にドーバーガンは発射寸前。
体勢を崩した今の状態では回避も難しい。
ならばどうするか。
なんと、福音は銀の鐘の出力を最大限まで上げ、トールギスにそれを向ける。
そして…両者の一撃が放たれた。
「ドーバーガン最大出力!! いけ!!」
『!!!!!』
金と銀のビームの一撃が空中でぶつかり、激しくスパークする!!
周囲一帯に凄まじいまでのエネルギーと衝撃波を撒き散らし、閃光が走った!
「相打ちだとっ!?」
これ以上ないタイミングでの一撃だった。
命中させれば、倒れるまでとはいかないものの、確実に致命的なダメージを追わせられていた筈。
福音もそれを分かっていたからこそ、必死になって防ごうとしたのだ。
「流石は軍用のIS…こちらとは初期の段階からのパワーが違うか! だが!」
こんな事で諦めてなどいられない。
まだまだ勝負を捨てるには早すぎる。
その時、不気味な機械音声が聞こえてきた。
『ターゲットを最大脅威と断定。これより迎撃行動を開始します』
「なに?」
瞬間、福音の顔が眼の前にあった。
あの攻撃の直後に、一瞬にしてトールギスの懐にまで潜り込んできたのだ。
「ちぃっ!」
すぐさまスーパーバーニアを全展開し、最大出力でその場を離脱しようと試みるが、何と福音はその状態のトールギスに易々と追従して来てみせた。
「トールギスの最大出力に追いついてくるか! 面白い!!」
盾の中からビームサーベルを取り出し、それと同時にヒートランスに熱を入れる。
赤熱化した槍を構え、トールギスは一旦距離を取って、鋭角的な旋回をした後に福音へと目掛けて突貫していく!!
それに合わせるかのように、福音もまた両手刀にエネルギーを纏わせ、トールギスを貫こうと突撃を敢行してきた!
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!」
トールギスと福音が空中でぶつかり合い火花を散らす。
それは長くは続かず、すぐに両者ともに離脱をし、再びぶつかった。
まるで大空を舞台に二つの流星が意志を持って衝突しているかのように。
その光景を、千冬たちは遥か下で悔しそうに見ているしか出来なかった。
「矢張り…佳織を最大の脅威としたか…!」
「野郎…オレ達の事なんて眼中にすらないってことかよ!」
「今すぐにでも援護に行きたいですけど…」
「今のトールギスと福音には、我々のISでは追いつけない…! 却って邪魔になるだけだ…!」
この中でも最も飛行速度が高い白式でも、今の両者には全く追いつけない。
こうなることを一番危惧していただけに、千冬は思い切り歯を食い縛っていた。
「またしても…我々は佳織に全てを賭けるしかないのか…!」
「織斑先生…」
「教官…」
「ちっふー…」
今度こそ、隣りで佳織の事を全力で守ると誓ったのに、結局はこの体たらく。
本気の本気で自分自身が情けなくなり、殴りたくなってくる。
「せめて…せめて私の手元に『暮桜』があったら…!」
現役時代に自分が乗っていた嘗ての愛機。
故あって、今は千冬の手元には存在していない。
もしあったら、少なくとも佳織の援護ぐらいは出来ていたかもしれないのに。
「借り物のISでは…これが限界なのか…!」
現役を退いても、一度だって鍛錬は怠っていない。
それどころか、佳織と関わるようになってから前以上に体を鍛えるようになっていった。
自分の不甲斐無さを少しでも払拭する為に。
いざと言う時に佳織を守る為に。
悔しさに拳を握りしめる千冬。
その時、誰も気が付かなかったが、白式の装甲が僅かに光った。
何かの意志に呼応するかのように。
何かの呼び掛けに応えるかのように。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
速い。重い。強い。
福音の強大さは想像以上だった。
トールギスの最大出力を以てしても完全に引き離す事が出来ない。
攻撃力だけで言えばほぼ互角。
ならば、この勝負を決定づける物があるとすれば一体何か。
それは『スピード』だった。
佳織自身もそれは分かっていた。
このままでは完全にジリ貧だって事が。
長期戦になれば圧倒的にこちらが不利だと言うことも。
(ならば、どうする?)
共に戦っている男の一人が語りかける。
(暴走状態の奴とトールギスはほぼ互角。この均衡状態を打破するには、決定的な『何か』が必須となる)
何か。
その正体を佳織は知っている。
(我等が姫よ。答えるがいい。
(私は…)
怖がる必要は無い。
迷う必要も無い。
求める『答え』はたった一つだけ。
「…『
少女の決意に『騎士』が応える。
『その言葉を…』
『我々はずっと待っていた』
槍を構え突撃をするトールギスの全身が光り輝く。
真っ白に、黄金に。
『成る程…これは、この場にいる『もう一人の原初の騎士』の意志か。嘗ての『主』と共に戦場を駆けた事が余程、嬉しかったようだな。『彼女』の想いが…力が…トールギスに『新たなる翼』を与えてくれる』
そして…『天使』が降臨した。
次回、決着。
そして、遂にトールギスが…?