私…生まれ変わったらモブキャラになりたいな(なれるとは言ってない) 作:とんこつラーメン
覚醒しますた(誤字に非ず)。
『その瞬間』、彼女達は確かに見ていた。
「な…なんだっ!? トールギスが急に眩しく光り輝き始めるとは…ま…まさかっ!?」
「この土壇場で…至りやがったってのかよ…!?」
「間違いありません…これは…この現象は!」
「初めて見る…これが…」
「「「「
遥か上空にて繰り広げられていた、トールギスと福音との壮絶なドッグファイト。
両者の速度はほぼ互角であり、総合的な火力もまた同様。
だが、暴走している福音とは違い、トールギスは佳織の意志によって動かされている。
長期戦になればなるほどに佳織は不利になっていく。
完全なる時間との勝負。
それは佳織自身もよく分かっている筈の事だった。
そのような状況であるにも拘らず…否。
そのような状況であるからこそ、佳織は自らの意志で『先』へと進む決意をした。
全ては、大切な人達を守る為に。
少女は…『天使』になる。
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槍を構えて突撃をするトールギスの全身が白金に光り輝く。
それは覚醒の光。
真の意味で『未来』を選択した者のみが到達出来る領域。
福音は知っている。
この光が何なのかを。
故に確信をする。
自分の判断は決して間違ってなどいなかったと。
この純白の機体こそが最大にして唯一の脅威。
『!!!』
光が増し、同時にトールギスの速度も増していく。
つい先程までは、ほぼ互角と言った展開だったのに、今はもう違う。
暴走までしてようやく互角だった福音を、眼前の白き騎士は易々と凌駕していった。
一瞬にして懐まで潜り込まれ、とっさの判断で自慢の両翼で相手を包み込んでからの拘束包囲射撃を仕掛けようとするが、そんな事は相手も既に読んでいた。
『『「遅い!」』』
『!!??』
少女と成人男性二人の声が重なって聞こえたかと思った瞬間、光の塊となったトールギスは福音をその自慢の槍で貫き通った。
『……!?』
なんという一撃か。
今までとは比較にすらならない。
たった一撃で全体の半分以上のSEを削られた。
すぐに反撃に出ようとする福音であったが、トールギスの姿はどこにも見当たらない。
急いで探さなければ。
ハイパーセンサーを全開にして速やかな捜索を開始すると、突如として頭上から『声』が聞こえてきた。
「何処を探している。私はここだ。ここにいるぞ」
声がした方向に顔を向けると、そこには…。
「これが…新たなトールギスの姿…か。フッ…」
頭部にある鶏冠のパーツの形状が変化し、まるで龍の鱗のよう。
だが、それ以上に特徴的なのは、背部から大きく生えた二対四枚の翼だった。
さっきまであったバックパックが変化し、全身を覆い尽くすほどの巨大な翼と成り、その間には副翼と思われる形状の違う小型の翼がある。
主翼となる巨大な翼には、円盾と同じエンブレムが描かれていて、主翼を機体前方で合わせる事で形となるようにデザインされていた。
「『トールギス
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そんな場合じゃない。
頭では分かっていても、体が動かない。
雲の隙間から漏れ出る太陽の光が生まれかわったトールギスに降り注ぎ、その純白の装甲を眩しく光り輝かせる。
まるで、本当に天上から天使が降臨したかのような…そんな荘厳さを見せていた。
「あれが…進化したトールギスの姿…なのか…」
「スゲェ…マジでそうとしか言いようがねェ…」
「なんて美しいんでしょうか…まるで…本物の天使みたい…」
「なんと神々しい姿なんだ…ISとは…あんな変化も出来るのか…」
その左手に純白の槍を持ち、その右手には光の剣を持つ白き天使。
それに相対するのは、暴走して我を忘れた銀の天使。
まるで聖書に描かれた一ページを見ているかの如き光景。
もしくは、世界の終焉にて繰り広げられる神々の黄昏か。
「先程聞こえてきた佳織の声…トールギス・フリューゲルと言っていた…」
「フリューゲル…ドイツ語で『翼』…か」
「名は体を表すって事か…」
少しの間だけトールギスと福音が睨み合う。
それはまるで、壊れた堕天使を断罪する熾天使のように。
「う…動くぞ!!」
千冬の叫びと同時に、トールギスの主翼のパーツがそれぞれに展開し、生物的な動きを見せる。
それを大きく動かすと同時に、背部にある副翼内にあるブースターが展開、同時に腰部にあるサブスラスターまでもが展開した。
数瞬の静寂の後、トールギスは一筋の流星となった。
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・
福音から放たれる羽の形状をした無数のビーム。
通常ならば回避することが困難なのは勿論、防御するなど論外。
どっちの行動を選択しても致命傷は免れない。
だがしかし、文字通りの『翼』を得た今のトールギスには、その常識は一切通用しなかった。
「甘い!!」
急停止。急加速。急旋回。
慣性の法則を力技で強制的に無視し、鋭角的な動きでビームの隙間を縫うようにして全ての攻撃を完全回避していく。
しかも、凄まじい速度で回避行動をしているにも拘らず、その速度が落ちる様子は一切見受けられない。
それどころか、更に加速しているようにすら見える。
「捉えたぞ!!」
『!!??』
気が付いた時、トールギスが右手に握ったビームサーベルで福音の胴体を斬り裂いていた。
「はぁっ!!」
一度目の攻撃で右肩から斜めに斬撃を繰り出し、流れるような動作で二撃目となる腹部への横一文字斬りを放つ!!
トールギスの動きに合わせて主翼も動き、周囲に真っ白な羽が散る。
福音が放つのとは違う、純粋に美しい羽根を。
「ここから一気に畳み掛ける!! 反撃の隙など与えん!!」
すぐに福音の背後からトールギスが離脱し、一瞬で間合いを取った。
その手にはドーバーガンが握られていて、当然のようにその銃口は福音の方を向いている。
「そこだ!!」
あの一撃はヤバい。
福音はドーバーガンの威力を身を持って味わっている。
何があっても絶対に直撃だけは避けなくてはいけない。
万が一に備えて少しでも相手の攻撃力を軽減させる為、銀の鐘を使った弾幕を張りながら高速で回避運動を取る。
だが、福音の予想に反してドーバーガンは発射されなかった。
「お前が回避運動をする事は読んでいた。だからこそ!!」
ドーバーガンの銃口が明後日の方向を向く。
軍用ISとして合理的な指向を持つ福音には理解が出来ない行為。
だが、福音にとっては都合が良かった…その時までは。
「…その程度の動きで!!」
引き金が引かれ、巨大なビームが自分の放った光の羽を消滅させながら迫りくる。
その時、初めて福音は自分の致命的なミスを悟った。
『!!!!!』
動きを読まれた。
トールギスは福音が回避する場所を先読みし、そこへと目掛けてビームを発射した。
それに気が付いた時はもう遅く。福音は自らビームが来る方向へと動き始めている。
今から緊急停止をしたら、それこそ自分の中にいる操縦者に大きな負担が掛かるのは明白。
軍事用として生み出された己が、あろうことか競技用のISに完全に圧倒されている。
その事実を受け居られないまま、福音はドーバーガンの一撃をモロに受けた。
「ここから一気に決める!! ヒートランス…セット!!」
左手に握られた白き槍が赤熱化し、真紅に燃える。
副翼のブースターを全開にしてから全力で飛ぶ。
主翼が鳥の翼のように
人知を超越した動きにて暴走した機械天使に迫り来る。
「逃がさん!!」
全速力で逃げようとするが、全く引き離せない。
もう福音とトールギスは互角ではなかった。
天使の翼を手に入れた騎士は、福音よりも遥かな高みへと至ったのだ。
そしてついに…その槍が完全に福音に突き刺さる。
「これで決める!! おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」
槍に刺されたまま、福音はトールギスに引き摺られるような形で自身では決して到達できないような速度を体験する。
一動きする度にSEが劇的に減っていき、このままでは確実に負ける。
福音は最後の力を振り絞って『奥の手』を使おうと試みる。
だが…そんなことは『転生者』である佳織には全て御見通しだった。
「SEを回復させると同時に一時的な機体強化をする為に『疑似的な第二形態移行』をしようとしてるんだろうけど…そうは問屋は降ろさないんだよ!!」
『この期に及んで強化などさせはしない!!』
『破壊の権化となってしまった哀れな機械天使よ。我等の手で安らかなる眠りにつくがいい!!』
少女の声と二人の男の声が再び聞こえる。
なんと強き意志を秘めた声なのか。
成る程。
自分では勝てないのは道理か。
この者達ならば…或いは。
そう判断した瞬間、福音は全ての抵抗を止めた。
「これで終わらせる!!」
「『『うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!!』』」
福音を突き刺したまま、トールギスは地図にも載らなさそうな小島へと激突し、巨大な爆発が起きる。
落下の勢いとテンペストの威力で福音のSEが遂に尽き果てようとしていた。
徐々に福音の装甲が量子化していき、中にいた操縦者が姿を現す。
それを確認した佳織は、テンペストの稼働を停止させた。
すぐに操縦者を救助、その両腕に抱え込みながら、翼を広げて静かに浮遊する。
戦いが終わった事をその身に感じながら。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
お…終わった…のかな…?
なんか、途中からよく覚えてないんだけど…もしかしなくてもトールギスが第二形態移行しちゃいました?
え? マジで?
「これで…終わったんだよね…」
『あぁ…そうだ』
『よく頑張ったな…姫よ』
「いや…私、マジで殆ど何もしてないんですけど」
『『フッ…』』
「なんか笑われたし…」
まぁ…今はどうでもいいけどね。
つーか、マジで冗談抜きで超絶疲れた…。
今すぐにでも布団に倒れ込みたいです。
「「「佳織!!」」」
「仲森さん!!」
あ…千冬さんにケイシー先輩。
それからボーデヴィッヒさんと山田先生も。
やば…途中から完全に三人の存在を忘れてましたわ…どーしよ。
「本当に…本当に良くやった!」
「千冬さん…」
「自分自身に対する情けなさと、お前が無事だった事の喜びがごちゃ混ぜになっているが…今は素直に喜びたい…! お前は私の自慢だよ…佳織…!」
「あ…ありがとうございます…」
うわ…なんかストレートに凄いことを言われた。
めっちゃ照れるんですけど。
「おいおいおいおい! まさか、初共闘で第二形態移行なんて超レアな光景を見せてくれるとはよ! タダの一年とは思ってなかったが…スゲェじゃねぇかお前!」
「はは…どもです」
ついさっき会ったばかりの先輩からの大絶賛。
っていうか、さっきしれっと私の事を『佳織』って呼んでませんでした?
「仲森さん…御無事で何よりです…! しかも、軍用ISと互角に渡り合うだけじゃなくて、倒してしまうだなんて…」
「無我夢中だったんですけどね…でも、止められてよかったです」
山田先生…ちょっと泣いてません?
心配してくれたのは嬉しいけど、ちょっとだけ罪悪感。
「流石は佳織だな!! よもや、ほぼ単独に近い形で軍属のISを圧倒するとは!」
「単独って…そんな事は無いよ。皆がいてくれたから、私も戦えたんだし…」
少なくとも、私一人だけだったら絶対にこうはいかなかったと思うよ。
これは間違いなく、皆で得た勝利だ。
「それが…福音の操縦者か?」
「みたいです。鍛えているからなのか、そこまで消耗はしてないっぽいですけど…」
「それでも、念の為に速やかに安静にさせるべきだろう。では…戻るとするか。皆の元へ…な」
「はい」
こうして、意外過ぎる形で福音との戦いは幕を閉じるのであった。
けど、この大きな戦いもまた、この後に起きる諸々の事件の前では単なる序章に過ぎないと思い知るのは…もう少し後になってからなのでした。
これにて福音戦終了!
次回は、その後に話になると思います。