私…生まれ変わったらモブキャラになりたいな(なれるとは言ってない) 作:とんこつラーメン
もうすぐ今年も終わるのに、まだ夏休みにすら突入出来ず仕舞い。
このままだと、夏休みの話は来年になりそうです。
「トールギスの危険な部分を排除して…」
「攻撃力と防御力に分割した機体を私達に…?」
いきなりの衝撃発現に呆然となる我等が先生達。
そりゃ、そうもなりますわ。
先生達のリアクションは何も間違ってない。
「そうじゃ。我ら自身も、トールギスのコンセプト自体は今でも間違っていないと思っているのだが…」
「アレの最大にして唯一の欠点は『人知を超越した存在しか乗ることを許されない』という事だった。丁度、そこのお嬢さんのようにな」
もう何度も言ってるけど、敢えてもう一度だけハッキリと言わせて貰おう。
私は決して超人なんかじゃない!
どこにでもいるごく普通の女子高生です!
…こんな事を今更言っても、どうせ誰も信じてくれないんだろうけど。
「だから、トールギスの製作の時に得たノウハウをどうにかして活用出来ないだろうかと色々と考えた」
「まず最初に、トールギス最大の問題点であった機体自体の危険性を全て排除し、その上でコストダウンを図ると同時に機体の小型化と簡素化を試みた無難な汎用簡易量産型IS『リーオー』を作り上げた。だが…」
「だが? どうかしたのですか?」
「余りにも詰まらない機体に仕上がってしまった」
「詰まらない…?」
うーん…私はそうは思わないんだけどなー。
割と好きだよ? リーオー。
「肩、バックパック、腿の三ヵ所にハードポイントを設け、戦況や相手に応じて各種パッケージや装備を換装することで、あらゆる状況に対応できる機体になった」
「それだけを聞けば、量産型としては素晴らしい出来だと思いますが…」
「一般的にはそうじゃろうな。じゃが、ワシらは違った」
「余りにも汎用的過ぎた。あれではラファールと大した違いが無い」
言われてみれば確かにそうかも。
どっちも『突出した性能が無い』って部分じゃ共通してるかも。
謂わば『個性が無いのが個性』みたいな感じだしね。
「故に考えた。一体の機体でトールギスの後継機が作れないのであれば…」
「最初から二体で連携することを前提にし、『攻撃力』と『防御力』に極振りをした機体を生み出せばいいのではないかとな」
「それならば、安全性を保ちつつもトールギスに匹敵する機体を開発できる」
「無論、トールギスのように人を選ぶような設計にはしていない。誰でも搭乗は可能じゃ」
どーして、この才能をもっと別の方向に活かせないのかしらね…。
お爺ちゃん達らしいからいいけどさ。
「機体の事は分かりましたが…どうして私達に?」
「お主たちの顔じゃよ」
「「顔?」」
ん? 顔って…どゆこと?
「お主たち…生徒達ばかりを危険な戦場に向かわせ、自分達が何も出来ないことを歯痒く思っているのではないか?」
「そ…それは…」
「お前さん達の顔が、そう言っている。教師なのに情けないと。生徒達を守るべき立場の自分達が、逆に生徒達に守られていると」
「「うっ…」」
千冬さん…山田先生…。
もしかして、だから福音暴走事件の時に意を決して一緒に出撃してくれたの…?
「その気持ちは、ワシらも分からんでもないからな」
「我々に出来る事は機体の開発しか出来ない」
「だからこそ、君達に託してみようと思ったのだ」
「あの二機の運用は生半可なパイロットでは難しい。乗ること自体は誰でも可能だが、あれは連携こそが最大の肝となるIS。昔からの知り合いである君達ならば適任だろう?」
この人達…千冬さんと山田先生が候補生時代に先輩後輩関係だった事も知ってるんだ…。
束さんもそうだったけど、この世界の天才科学者には基本的に隠し事は出来ないと思った方がいいのかもしれない。
「一応、聞いておきたいのですが…」
「なんじゃね?」
「機体の方は…持ってきたりなんかはしてないですよね?」
「なんじゃ…その事か。心配は無用じゃ」
「ちゃんと学園側の許可を取った上で、既に搬入を終えておる」
「「やっぱり持って来てた!」」
ですよねー。
ここまで説明しておいて『実はまだ完成してないんですよー』なオチは無いわな。
特に、この変人お爺ちゃん五人組に関しては。
「そんなに実物を見たいのであれば、今すぐにでも見せてやろうか。ほれ。ポチっとな」
そのフレーズ地味に好きだな。
さっきも同じことを言ってなかった?
(あ…なんかISが余裕で入りそうな大きさのコンテナが二つ、キャタピラ付きのコンテナがこっちに来たし)
もう、こんな事じゃ微塵も驚かなくなってきたなー。
慣れって怖いわー。
「ここをこうして…よし」
ドクターJのお爺ちゃんが何か操作したら、二つのコンテナがプシューって音と共に開きだす。
その中から出現したのは、私もよく知っている『赤』と『青』の機体。
「こっちの赤い方が『防御力』に特化した『メリクリウス』で…」
「こっちの青い方が『攻撃力』に特化した『ヴァイエイト』だ」
ここで佳織ちゃんのガンダム豆知識ー。
『メリクリウス』はローマ神話の神『メルクリウス(マーキュリー)』が由来で、『ヴァイエイト』の方はエジプト神話の女神『ヴァイエト(ハウヘト。またはヘヘト)』が由来になってたりするんだよ。
「織斑先生には、こっちの『メリクリウス』を頼もうかな」
「山田先生には、こちらの『ヴァイエイト』を運用を任せたい」
それは良いチョイスかも知れない。
メリクリウスにはちゃんと格闘武器が内蔵されてるし、ヴァイエイトの圧倒的な砲撃能力と山田先生のスキルの相性はいいかもだし。
「なんなら、メリクリウスのコアには、お主の『嘗ての愛機』の物を使っても構わんぞ?」
千冬さんの嘗ての愛機?
それって、まさか…。
「『暮桜』の事まで知っているとは…」
「職業柄…という奴じゃよ」
絶対にそれだけじゃ済まされないと思う。
「メリクリウスは…右手に盾を持ち、左手には…牽制用のハンドガンか?」
「あれはハンドガンと言うよりはビームガンだな。どちらにしても牽制用なのには違いないが」
「では、あの盾は?」
「あれは『クラッシュシールド』と言って、盾の中央部からビームサーベルが展開できるようになっている。盾自体にも電磁場フィールドが組み込まれているので、実弾だけでなくビームやレーザーにも高い防御力を発揮する」
「では、あの背中に付いているビットのような物は?」
「あれこそが、メリクリウス最大の特徴にして、こいつを最強の盾にしている特殊武装の『プライネイト・ディフェンサー』だ」
はい出た。
ガンダムWのトラウマ最強防御兵装。
ゲームじゃ厄介極まりない機能なんだよね。
これに軽いトラウマを受け付けられたのは私だけじゃない筈だと信じたい。
「プラネイト・ディフェンサー…? 一種のシールドビットのような物…と考えればよろしいのですか?」
「正確には違うな。確かに見た目はビットに近いが、実際には自分や友軍機の周囲に遠隔操作で展開し、特殊な電磁フィールドを形成、実弾やビーム問わずにあらゆる射撃兵装を完全に防ぐ鉄壁の防御空間を生み出す事が出来る」
「ビームだけでなく…実弾すらも完全に防ぐだと…!?」
「密度を上げれば、ビームサーベルのような密度の高いビームすらも防御可能だ」
改めて聞くとマジでチート性能だよな…。
一応の弱点は存在してるけど、それでもやっぱり厄介なことには変わりない。
これから先、千冬さんと敵対する人達が可哀想になってくるよ…。
「とはいえ、弱点が無いわけではないがな」
「と言いますと?」
「ディフェンサーユニット自体が非常に軽いので、強い質量攻撃には脆いのだ。ま、AI操作でもされない限りは、操縦者の技量でどうにかなる範囲ではあるがな。そこはお前さんの腕の見せどころじゃよ。ブリュンヒルデ殿」
おっふ…敢えてのブリュンヒルデ呼び。
千冬さんがその呼び名を嫌っている事を知っての発言だろうね。
完全に煽ってます。
「腕の見せ所…か。面白い…!」
あ。やる気スイッチがONになった。
「このメリクリウス…喜んでテストパイロットを務めさせて貰います」
「おぉ…やってくれるか」
「はい。この機体で今度こそ、佳織たちを守ってみせる…必ず…!」
千冬さん…やっぱり、気にしてたんだ…。
私からしたら、もう十分にお世話になってるんだけどな…。
「あの…このヴァイエイトって機体…武装が一個しかないようにしか見えないんですけど…」
「一個しかないように…ではなく、実際にヴァイエイトの武装は、この『大口径ビームキャノン』だけだが?」
「本当に一個だけだったっ!?」
そうなんだよねー。
でも、ヴァイエイトはこの気持ちいいまでの潔さが逆に良かったりするんだよ。
「一個しかない分、その出力はお墨付きじゃ」
「背部に装着してある円形の専用ジェネレーターからケーブル経由でエネルギーを供給してから使用する」
「コアとはまた別の場所からエネルギーを持ってくるんですね…。それだけ威力があるってことなんでしょうか…」
「そうだな。威力を絞ればエネルギーの節約も出来て連射も可能だが、最大出力で発射した時の威力はトールギスのドーバーガンや、セシリアのウィング・ティアーズのバスターライフルすらも軽く超える威力を発揮する」
「そんなに凄いんですかッ!?」
「うむ。最大出力時には放熱の為にジェネレーターの蓋を開ける必要が出てくるが…その辺は問題あるまいて」
「それをどうにかする為にメリクリウスが存在するのだからな」
この二機の関係は、まさに中国の故事にある『矛盾』そのものだよね。
『最強の矛』である『ヴァイエイト』と、『最強の盾』である『メリクリウス』。
だからこそ出てくる疑問も当然のようにある訳で。
「つまり、私が前衛で盾となって山田先生のヴァイエイトを守り…」
「織斑先生のメリクリウスが守ってくれている間に、必殺のビームキャノンを撃つ…と言う訳ですね」
「その通りじゃ。お前さん達ならば楽勝じゃろう?」
「簡単に言ってくれますね…」
まるでお手本のような煽りに山田先生の眉間もピクリと反応した。
凄く穏やかなイメージがあるけど…怒る時にはちゃんと怒る人だしなぁ…。
「分かりました。私も、このヴァイエイトを受領します」
「そうか。それは良かった」
「織斑先生じゃないですけど…私だってもう…生徒達を送り出すだけなんて御免ですから」
やっぱり…山田先生は優しい人だ。
そんな人だから、私も遠慮なく教師として頼ることが出来る。
今までも…これからもね。
「あのー…ちょっといいですか?」
「ん? いきなりどうした少年よ」
ここでまさかの織斑君の発言。
今までずっと空気を読んで黙ってたのに。
「この二体が凄い機体ってのはよく分かったんですけど…こいつらが対決した場合、どっちが勝つんですか?」
言っちゃった。
原作でもレディ・アンが尋ねた事を言っちゃった。
「どっちが勝つか…か。良い質問だな」
「だが、その答えは非常にシンプルで簡単だ」
「え? そうなんですか?」
「あぁ。どっちが勝つか…それは…」
「それは…?」
私、この後に出てくる台詞は地味に名言だと思ってます。
だからちょっとだけドキドキです。
「パイロットの技量が高い方が勝つ」
デスヨネー。
考えてみれば当たり前の答えでした。
「どんなに優れていても、ISは所詮『道具』に過ぎん。故に、使う人間次第で良くも悪くもなる。そういう事じゃ」
「なる…ほど?」
ここで敢えて『強くも弱くもなる』と言わないのが、実にこの人達らしい。
ISの事を『兵器』として見ていないって証拠だからね。
(今の発言、実はどこかで束さんも聞いてたりして…)
んで、モニターの向こうで地味に感激していると見た。
知らんけど。
つーわけで、教師二人には風神と雷神をプレゼントしました。
問題はここからなんだよなー…。