私…生まれ変わったらモブキャラになりたいな(なれるとは言ってない) 作:とんこつラーメン
これが一体何を意味するのかは想像にお任せします。
何故だか恐ろしく長く感じた五人のお爺ちゃん達による新型機の説明会&トールギス見学会が終了した。
「これで一通りの説明とかは終わったな。では、今から早速、仕事を始めるとするかな」
「ついでだ。メリクリウスとヴァイエイトの方も調整しておくか」
え? それマジで言ってます?
「だ…大丈夫なのですか? トールギスのオーバーホールに加え、オルコットたちの機体の改修も行うと仰っていたような気が…」
千冬さんが心配になるのも無理は無い。
幾ら超天才的頭脳を持っているとはいえ、見た目は完全なお爺ちゃんなんだから。
良識ある大人として普通に気にはなるわな。
「さっきも言ったが、これぐらいならば全然大丈夫じゃ」
「ワシらにとってはいつもの事だしな」
「これに比べたら、トールギスを開発していた頃の方が遥かに忙しかったわい」
「なんせ、あの頃はまだISに関するノウハウが全く無かったからな」
「文字通り、全てを一から手探りでやっていかなくてはいけなかった」
あ…そっか。
そりゃそうだよね。
一番最初のISである白騎士のデータなんて、この人達が持っている筈もないし、そうなると色んな事を勉強しながら機体を開発していったって事になる。
謂わば、フルスクラッチでガンプラを作ろうとするもんだ。
「暫くはここで寝泊まりをさせて貰うが構わんよな? ちゃんと許可なら取ってある」
「えっと…一応聞きますけど…誰からですか?」
「「「「「学園長」」」」」
「ですよねー…」
そういや、最初にあった時に言ってたっけ。
ここの学園長とは古い知り合いだって。
人と人の縁ってのは、一体どこで繋がっているか分からないもんですなー。
「それじゃあ…お邪魔してもアレなんで、私達はこれで失礼して…」
「ちょっと待った」
「ふぇ?」
この期に及んでまだ何かあるんですか?
流石に、もうそろそろ戻ってテスト勉強を再開したいんですけど…。
「最後にお嬢さんに渡しておきたい物がある」
「渡しておきたい物?」
ドクターJのお爺ちゃんからプレゼントを頂くような理由が全く思いつかないのですが?
私の誕生日はまだ先だし、クリスマスとかだってずっと先だし。
「これじゃ」
「え?」
唐突にポンと手渡されたのは、機械仕掛けの翼を模したアクセサリ。
けどなんだろう…この翼、どこかで見た事があるような気が…。
「えっと…これは?」
「ワシら五人がトールギスの後に製作したISじゃ」
「ふみゅう…」
おっと。
超絶的に嫌な予感がしたので、思わず変な声が出てしまった。
「嘗て、ワシらが生み出したトールギスは確かに他を圧倒する程の高性能を獲得したが、その対価として『並の操縦者では碌に動かす事も出来ない』という致命的な欠点も同時に抱え込んでしまう事となった」
まぁ…そうでしょうなぁ…。
実際、ゼクスと言う超人が現れるまでずっと封印されてぐらいだし。
「その時の反省を活かし、『操縦者の方を機体に追従させるシステム』を開発し、トールギス以上の性能を誇る機体をコスト度外視で生み出し、内部に組み込んだ」
「ト…トールギスをも超える機体だとッ!?」
千冬さんが大きく反応してますが、私はそれどころじゃなかった。
だって、私の『嫌な予感』が大当たりしちゃったんだから。
「だが…それは間違いだった。アレはトールギス以上に乗り手を選ぶ。故に我等も最初は設計だけしてから実機の製造はしなかった」
「しかし、今の情勢がそれを許さなかった。女性権利団体とか言うふざけた連中に加え、世界の裏で暗躍する者達」
「そいつらに対抗するためには、いつの日か必ず『コレ』の力が必要になって来ると判断し、我等は断腸の思いで製造をした。それが…」
「これ…ってことですか…」
断腸の思いってのは嘘じゃないだろうな。
劇中でも、余りの危険性に設計図すらも厳重に封印していたぐらいだし。
「無論、この機体は使わないに越したことはないし、ワシらとてそれが最善であると言う事は自覚している。だがな、技術の革新と言うのは想像以上に早く、大きい。それはISと言う存在が生み出されてから十年も経たずに第三世代にまで到達したことからも分かるだろう」
言われてみれば確かにそうかも…。
ついでに言えば、もうすでに束さんは第四世代機まで生み出してるしね。
まるでグリプス戦役以降のMSの恐竜的進化を見ているみたいだ。
「いずれ必ず、トールギスを超えるISは出現する。それがいつかは分からないが、それだけは確実だと断言出来る」
断言しちゃったよ。
「だからもし…もしも、トールギスの力を持ってしても対抗出来ないような敵が現れた時、迷わず『コレ』を纏いなさい。この『ウィングゼロ』を」
言っちゃったー!!
ずっと名前を呼ばないように気を付けてたのに堂々と言っちゃったー!!
「ウィングゼロ…それがトールギスを超えるISの名前…?」
「『虚無なる翼』とは、また仰々しい名前ですわね…」
「トールギスを超えるって言われても、全く想像が出来ないわね…」
「今の時点でも、間違いなくトールギスは全てのISの頂点に君臨していると言っても過言じゃないのに…」
「それすらも超越するISとは一体…」
まぁ…うん。
確かに滅茶苦茶に凄い機体ではあるよ…。
色んな意味でね…。
因みに、私はEW版よりもテレビ版の方が好きです。
「本来ならば危険極まりないが…不思議とお主ならば使いこなせそうな気がするんじゃよ。ゼロに搭載された禁忌のシステム…『ゼロシステム』をな」
「ゼロ…システム…」
そんなん出来る訳ないでしょーが!
幾らなんでも私の事を買いかぶり過ぎだからー!
って言いたいけど、この場の空気がそれを許してくれないー!
「少し気負わせてしまったかもしれんが、これはあくまでも『保険』じゃ。トールギスをあそこまで乗りこなし、あまつさえ機体の性能すらも越え始めた今のお前さんなら、実際に使う機会は無いかもしれんな」
それフラグー!!
完全に近い未来に私がウィングゼロに乗るフラグになってますからー!!
「それに、ワシらが持っているよりはお嬢さんが持っていた方が安全じゃろうしな」
「は…はぁ…」
どんな根拠でそう思った?
原稿用紙3枚ぐらいで教えて欲しい。
「ご心配は無用ですわよ、佳織さん」
「オルコットさん…?」
おっと?
急に皆が集まって来ましたよ?
「私達と佳織が力を合わせれば、その機体を使う事は無いだろう」
「箒の言う通りよ。アンタは一人じゃないのよ?」
「そうだね。今までずっとボク達は佳織に助けられてきた。今度はボク達は佳織を助ける番だよ」
「あぁ。佳織の背中は私達が全力で守ってやる。だから安心しろ」
み…皆…。
「こいつらの言う通りだ」
「織斑先生…」
「もう、お前だけに頼るような事はさせない。私がお前の盾になってやる」
「私もですよ、仲森さん。先生達に任せてください」
「山田先生も…」
うぅ…不覚にも感動してる自分がいますです…。
流石に泣いてはいないけど。
「セシリアちゃん達だけじゃないわ。お姉さんだって全力で佳織ちゃんを助けるんだから」
「お…俺もだ! 絶対に仲森さんの事を守ってみせる!」
「更識先輩…織斑君も…」
…そっか。
いつの間にかもう私は…ボッチじゃなくなっていたんだな…。
「かおりん」
「本音ちゃん…」
「私は専用機も持ってないし、お世辞にもISの操縦が上手とは言えないけど…でもね、私はずっとかおりんの傍にいるよ」
「うん…うん…ありがと…」
はぁ…ホント…駄目だなぁ…。
無意識の内にぼっち根性が根付いちゃって…。
いい加減、自分の中にある『原作の先入観』ってのを払拭しないとだなぁ…。
今いるこの場所は『原作』じゃなくて『現実』なんだから。
「どうやら…良い友を持ったようじゃな」
「はい。私には勿体無いぐらいに最高の友達たちです」
「そうかそうか。彼女達の事はこれからも大事にしてあげなさい。お前さんにとって生涯の宝となる筈じゃからな」
「勿論です」
うん…ちょっと…いや、かなりモチベーションが上がったかも。
これからはもっと前向きにトールギスに乗ろう。
実を言うと、私もトールギスには愛着が付き始めてるんだよね。
ここまで苦楽を一緒にすると、もう怖がることは出来ないと言いますか。
だからもう…迷うのはもうやめよう。
トールギスと、ここにいる皆と一緒に…戦ってみせるよ。
私の大切な人達を傷つけようとする奴等と。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
夜になってから私はベットの上に寝転がりながら、ウィングゼロの待機形態であるアクセサリを眺めていた。
「これ…別に機体性能を調べるぐらいの事はしても大丈夫…だよね?」
(別に問題は無かろう。見てみたいのか?)
「うんまぁ…一応」
ゼクスがなんか懐かしそうに語りかけてきた。
彼にとっても因縁浅からぬ機体だから無理も無いけど。
「つーわけで、ちょっち見てみましょう。えーっと…このケーブルをこれとパソコンに繋いでから…っと」
待機形態をパソコンに繋いでから機体の確認をするとか、こんな作業が当たり前に出来てしまえるようになっている自分が地味に悲しい。
もう何度言ったか分からないけどさ…私もマジでISに染まってますなぁ…。
「はい起動…っと。どれどれ?」
カタカタカタっと最近習得したブラインドタッチを駆使して確認していく。
すぐに機体の全体像が明らかになった。
「これって…」
見た目は完全にテレビ版のウィングゼロ…?
いや…違う。これはテレビ版のやつじゃない!
これは…ウィングガンダムプロトゼロだ!
個人的にめっちゃ好きなガンダム!
「武装は……うげ」
肩部マシンキャノンにビームサーベル。ウィングシールド。
そして…。
「ツインバスターライフル…か」
やっぱり、これだけは外せないよね…。
ゼロの象徴的な武装だし…。
「流石にこれは安易にはぶっ放せないよね…」
威力が威力だし、もし間違って最大出力で発射とかしたら、相手さんは間違いなくISごと完全消滅待ったなしだし、IS学園なんて物理的な意味で消えてしまう。
(まさか、トールギスだけじゃなくてウィングゼロまでもがこうしてISになってるなんてね…。皆の専用機も主役五人の機体を模したやつに強化されたし。ここまで来ると、いつかガンダムエピオンとかも登場しそうな気が…)
いやいやいや。
これは止めよう。考えちゃいけない。
今までのパターン的に、この考え自体がフラグになりそうで怖い。
「…シャワーを浴びてから、もう寝よ」
嫌な考えを払拭する為に、私は体をサッパリさせてから床に就いた。
もうすぐ夏休みだってのに…休まる暇もありゃしない…。