私…生まれ変わったらモブキャラになりたいな(なれるとは言ってない)   作:とんこつラーメン

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登校日ぐらいはあります

 八月の初め頃。

 IS学園も他の学校の例に漏れず、当然のように夏休み中の登校日が存在している。

 

「まさか、織斑君の家から登校することになるとはね…」

「俺も、まさか自分の家から女の子と一緒に学校に行くことになるとは思わなかったよ」

 

 これもまた、ある意味では新鮮な体験だ。

 因みに、千冬さんは私達よりも先にIS学園へと向かっているので、もう家にはいない。

 

「忘れ物は無いよね?」

「おう。何度も確かめたから大丈夫だ。仲森さんは?」

「私も大丈夫」

 

 自分がドジッ子なのは自覚しているからね。

 ちゃんと指差し呼称で幾度となく確認済みだよ。

 

「モノレールの時間もあるし、早く行こうか」

「そうだな。今の時間なら、普通に歩いて行っても間に合うだろ」

 

 靴をちょっとトントンとしてから…よし。

 それじゃあ出発…あれ?

 

「織斑君。ちょっと待って」

「ん? どうしたんだ?」

「制服の襟、ちょっと変になってる。ジッとしてて」

「え? ちょ…」

 

 ここをこうして…これでよし。

 

「はい。これで問題無し」

「あ…ありがとう…」

「どういたしまして」

 

 IS学園に男子生徒は織斑君だけ。

 ってことは必然的に、その制服の汚れや歪みなんかや嫌でも目立ってしまう訳で。

 

「じゃあ、改めて出発しようか?」

「そ…そうだな…行こうか…」

 

 ん? なんか…織斑君の顔が赤くなってない?

 朝とは言え、もう八月だしなぁ…流石に暑いか。

 時間に余裕があれば、途中で何処かによって冷たい飲み物とか買った方が良いかもしれない。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 IS学園に到着したからって、すぐに何かが始まる訳ではない。

 朝礼までにはまだ時間があるし、海外から来ている子達は基本的に皆がそれぞれの国に帰省をしているから、どれだけ頑張っても遅れてしまう事がある。

 だからだろうか、登校日の日だけは始業はいつもよりも遅くなっていた。

 当然、日本出身の子達は時間を持て余してしまう。

 その時間の使い方はそれぞれで、久し振りに会った友達と話をしたり、食堂で過ごしたりとか様々だ。

 そんな中、私と織斑君はと言うと…。

 

「うーむ…一週間ちょっとぐらいとは言え結構、埃とかで汚れてるなぁ…」

 

 学生寮にある自分のお部屋の掃除です。

 だって、二学期が始まったらまた使う事になるんだし、出来るだけ綺麗にはしておきたいじゃない?

 まだまだ夏休みは続くんだし、また汚れるだろって思われるかもだけど、だからと言って無視していたら、後で自分が痛い目を見る。

 掃除ってのはこまめにすることが大事なんだから。

 

(そう言えば…まだ本音ちゃんや篠ノ之さん達に会ってないなぁ…)

 

 あの二人も日本出身だから、特別に登校が遅れるなんてことにはならない筈だけど…。

 

「ま、教室に行けば会えるか」

 

 二人が病欠でもしない限りはね。

 今はとにかく、目の前の部屋の掃除が先決。

 まだ大丈夫とは言え、時間は有限なんだから。

 

(我々にも肉体が有れば手伝えるのだがな…)

(フッ…部屋の掃除もエレガントに…)

 

 その気持ちだけでも十分過ぎるよ。ありがとう。

 それと、エレガントな掃除って何?

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

「やーっと…お掃除が終わったよぉ~…」

 

 思わず、部屋の隅から隅までやってしまった…。

 昔からマリーさん達に『ククルは妙な所で凝り性な所がある』って言われてたけど…今回はそれがモロに出てしまいましたなぁ…。

 お蔭で、部屋は新品みたいにピカピカになったけど。

 

「はぁ…外の空気が美味しい…」

 

 一息つく為に寮の外に出る。

 織斑君は、まだ部屋の掃除をしているみたい。

 途中で部屋に寄ったら、私以上に徹底的にやってた。

 なんせ、三角巾にマスクにエプロンにゴム手袋のフル装備だったから。

 あれはもう…時間ギリギリまで掃除しまくる気満々ですな。

 彼らしいと言えばらしいけど。

 

「おや? あれは…?」

 

 寮の前に真っ白な高級車が停車した。

 確か…ロールスロイス…だったっけ?

 

「さて…ようやく戻って来れましたわね」

「オルコットさん?」

「え? か…佳織さんッ!?」

 

 なんと、車から降りてきたのはオルコットさんだった。

 そういや、彼女って超が付くほどのお嬢様だったっけ…。

 そりゃ、こんな高級車ぐらい乗り回して当たり前か。

 

「まさか…IS学園に戻ってきて早々に佳織さんにお会いできるだなんて…これはもう運命ですわ…」

「何が?」

 

 単なる偶然じゃない?

 私は本当に偶々、外に出て来ただけだし。

 

「なんか疲れてる? そんなに大変だったの?」

「そうですわね…日本にいる間に溜まっていた事を全て片付けてきましたわ」

「そっか…」

 

 代表候補生に名家の当主までやってるんだもんね。

 私なんかじゃ想像も出来ないぐらいに忙しかったに違いない。

 

「でも、こうして佳織さんにお会いできたことで疲れなんて全て吹き飛びましたわ!」

「そ…そうなんだ…よかったね」

 

 一体いつから私にそんな癒し効果が?

 マイナスイオンでも出てるのかな?

 

「ところで、もう他の誰かにお会いになられましたの?」

「ううん。織斑君とは一緒に来たけど…他の子達とはまだかな」

「それじゃあ…私が一番最初と言う事に…?」

「うん。そうなるね」

「…やっぱり運命ですわ」

「何が?」

 

 いつからオルコットさんは運命論者になったんだろうか。

 たった一日の登校日の為とはいえ、イギリスから日本に戻ってきたわけだしね。

 きっと、かなりの強行軍だったに違いない。

 今日が終わったら、今までの分もゆっくりと休んでほしいな。

 

「お嬢様」

「きゃっ!? チェ…チェルシーッ!?」

 

 び…びっくりした…。

 いつの間にか、オルコットさんの背後にメイドさんが立ってた…。

 マジで全く気が付かなかったわ…。

 

「あのお方が、お嬢様のよく仰られていた『仲森佳織』様ですか?」

「え…えぇ…そうですわ」

 

 わぉ…生まれて初めて様呼びされた。

 ちょとだけ照れ臭いね。

 

「お初にお目に掛かります。オルコット家にお仕えしているメイドの『チェルシー・ブランケット』と申します。以後、お見知りおきを」

「初めまして。仲森佳織です。オルコットさんとは、とても仲良くさせて貰っています」

 

 凄いなぁ…まさか、専属のメイドさんがいるとは。

 急にオルコットさんが眩しく見え始めたよ…。

 

「とても丁寧なご挨拶…。もしや、仲森様もどこかの御令嬢で?」

「いやいや、まさか…。私は単なる一般人ですよ。ただ…」

「ただ?」

「中学時代、礼儀作法に関しては学校で徹底的に叩き込まれましたので。もう殆ど反射的に出来るようになっているんです」

「成る程…納得です」

 

 芸事に礼儀作法は必須中の必須事項だからね。

 これを疎かにする者に寄席に上がる資格は無いって、良く言われたもんだよ。

 

「仲森様。これからもどうか、お嬢様をよろしくお願いします」

「こちらこそ、よろしくお願いされます」

 

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 挨拶を済ませると、ブランケットさんはもう一人のメイドさんと一緒にオルコットさんの荷物を部屋に持って行った。

 かなり大きな荷物だったけど…鍛えてるんだなぁ…。

 やっぱり、メイドさんもちゃんと体を鍛えてないとやってられないんだろう。

 どんな仕事も体が資本なのは変わらないんだなぁ。

 

 てなわけで、私とオルコットさんは今、食堂にて余った時間を潰してます。

 メロンソーダが体に染みるわぁ…。

 

「そう言えば、一夏さんは何をしてますの?」

「彼なら、今も部屋に掃除をしてると思う。私もついさっきまでしてたんだけど」

「部屋の掃除?」

「うん。完全フル装備だったから、きっと始業ギリギリまで粘って掃除してると思う」

「実に、あの人らしいですわね…」

「全くだね」

 

 今思ったけど、こうしてオルコットさんと二人きりになったのって久し振りかも。

 一番最初は、デュノアさん達が転校してきた日の夜だった筈。

 そのまま部屋で一緒にコーヒーを飲んだっけ。

 

「佳織さんは確か、一夏さん達の家にお世話になっているんでしたわよね?」

「そうだよ。殆ど居候に近いからね。ちゃんと家事とかも手伝ってるよ」

 

 じゃないと罪悪感で私の胃が死ぬ。

 

「ご立派ですわね…佳織さんは…」

「オルコットさん?」

 

 さっきまでは明るかったけど、今度は少しだけ暗くなった?

 イギリスで何かあったのかな?

 

「あの…佳織さん」

「なに?」

「もしよろしかったら今度…私と一緒に…」

 

 オルコットさんが何かを言いかけた…その時。

 

「やーっと見つけた! ここにいたのね佳織!」

「かおり~ん! 久し振り~!」

「凰さんに本音ちゃん?」

 

 二人が食堂の入り口から手を振っていた。

 今さっき到着したのかな?

 それとも、私よりも先に来てたとか?

 

「チッ…なんて間の悪い…!」

「え?」

 

 今…オルコットさん…凄い顔をしてなかった?

 

「まさか、セシリアと一緒に食堂にいたとはね。一夏はどうしたの?」

「寮の部屋で掃除してる。終わる頃には彼の部屋は新品同然になってると思う」

「あいつの掃除好きは相変わらずね…」

 

 ニコニコ笑顔でこっちにやって来ながら、二人はオルコットさんを挟むようにして座った。

 心なしか、二人の目が笑って無いような気がする。

 

「…あたし達がいないからって、抜け駆けは許さないわよ?」

「せっしー? 勝負の機会はみんな平等にだよ~?」

「わ…分かっておりますわ…」

 

 なんだろう…三人の間に火花が散ってるような気が…。

 

「本音ちゃんがいるって事は更識先輩も来てるの?」

「いるよ~。かいちょーなら生徒会室でお仕事中だよ~」

「あぁ…そゆことね」

 

 きっと、休みの間に溜まっていた仕事を少しでも処理しようと奮闘中なんだろう。

 一応、放課後になったら生徒会室とか、整備室に行ってお爺ちゃん達に挨拶とかしようと思ってたから、行った時にでも仕事を手伝おうかな?

 

「そーだ! かんちゃんから聞いたよー! 夏休み中に会って、友達になってくれたって! ありがとー!」

「え? あー…そう言えば、本音ちゃんと幼馴染だって言ってたような気が…」

 

 やっぱり、ちゃんと報告はしてたんだ…。

 私は別に気にしないけどさ。

 

「ちょっと本音さんッ!? 今の話は聞き捨て成りませんわよッ!?」

「誰よ、その『かんちゃん』って! ここに来て新たなライバルとか聞いてないわよッ!?」

 

 どうして簪さんの事で二人が過剰に反応するの?

 さっきまでのシリアスそうな雰囲気はもう完全に何処かに行ってるし…。

 元気が出たのなら…それでいいか。

 

 

 

 

 

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