「はぁ〜〜〜〜…」
甘草君に一緒に帰ろうって言えなかったどころか甘草君の方から誘ってくれたのに、あたま真っ白になって断っちゃった…。
1人昇降口で自己嫌悪に浸る。
「はぁ、私ってなんでいつもこうなんだろう…」
明日から3連休でしばらく甘草君に会えないからせめて今日くらい一緒に帰ろうと決意したばかりだというのに…。
ただでさえ奏でと一緒に住んでるショコラに危機感を抱いているというのに自分は素直になれない上しばらく会えないとなれば自分は置いてけぼりをくらうのではと思っており、せめて今日くらいは一緒に帰りたかったらしい。
「いつまでも悲観しててもしょうがないか…帰ろう…」
(あ、そういえばお母さんが帰りに牛乳買ってきてって言ってたっけ。暇になっちゃったし買いに行こうかな)
・・・・・・・・・・
「そこの方!私のお兄ちゃんになってくれませんか?」
じいさん「…?」
あいつ結局色んな人に声かけてるし…
「ほらほら、お兄ちゃんっての呼ばれると興奮しませんか?若い頃の情熱を思い出したりしませんか?」
お年寄りになんつーこといってんだ!
「そうか…。ようやくわしもばあさんの元に向かう時が来たようじゃな…」
「お迎え的な何かだと思われてるじゃねぇか!ほらゆらぎ行くぞ!」
ゆらぎの手を引いて連れて行く。おじいさんには一応謝っておいた。
「あー、せっかくのレアなおじいちゃんお兄ちゃんがー!」
「ややこしいな!ていうか知らない人に声かけるなって言っただろ!」
「知らない人じゃないよ。みんなお兄ちゃんお姉ちゃんだよ」
もう色々とダメだこいつ…。
「はっ!あっちからお兄ちゃんの集団の気配
が!」ダダダダッ
もうあいつ置いて帰ろうかな…。
ブーブー(電話音)
「ん、もしもし」
『奏さん!大変です!』
「ショコラ、もう帰ってたのか。どうした?」
『牛乳がありません!』
「え?もうないのか?まだ結構あったと思うんだけどな…」
今日オムライスにしようと思ってたのに…
『いえ、あります!』
「え?どういうことだ?」
『私の胃にあります!』
「お前が飲んだだけじゃねぇか!」
『正確には半分くらいココアです!』
「後半飽きてるじゃねぇか!はぁ、まったく…、じゃあ牛乳買って帰るから少し遅くなるぞ」
『はい!』
「まったくあいつは…。ゆらぎ?あれ?」
ゆらぎいなくなってるし!…もういいや、1人で牛乳買って帰ろう。あいつから一緒に帰ろうって言ったくせに…。
選べ
①いつも行っているスーパーに行く
②少し遠いスーパーに行く(特売中)
あれ?また普通だ。いや、もしかしたら近所のスーパーに行くと大子さんとエンカウントするとか遠いスーパーに行ったら突然空から大子さんが降ってくるとかそういうオチか…?まあこの手の選択肢は悩んでもしょうがないし②にしておくか。安いに越したことはないしな。
・・・・・・・・・・
スーパー
(本当に特売やってるな。ついでだし他にも色々買っておくか。まずは牛乳探すか。しかし、大子さんが降ってきたりしないかが気がかりだな…)
・・・・・・・・・・
ふらの(ウチが普段置いてる牛乳どれだろう)
・・・・・・・・・・
奏(牛乳牛乳…あっ、これか)
・・・・・・・・・・
(あ、あった!)
ピトッ
「あっ、すいませ…」
「ひゃあ!ご、ごめんなさ…」
「…ふらの?」
「あ、甘草君?」
なんか今ふらのとは思えないくらい甲高くて可愛らしい声が聞こえたんだが…。
「こんなところでそんな顔をして何してるのかしら」
「普通の顔だよ!」
「こんなところでそんな格好をして何をしてるのかしら」
「普通の制服だろうが!」
「こんなところでそんなモノをぶら下げてナニをしてるのかしら」
「卑猥な言い方すんな!」
はぁ…様子がおかしいかもと思ったけど完全にいつものふらのだ…。
「で、本当は何しに来たのかしら?」
「ショコラが牛乳を飲み干したから買いに来たんだよ」
「…甘草君、いくら白濁液にまみれた女の子に性的興奮を覚えるからってあまり牛乳を粗末にするのはどうかと思うわよ」
「そんなことしねぇよ!ふらのは何しに来たんだ?」
「ちょっとこの牛乳をけしからんパイオツをしてるメスどもの顔面にぶっかけてやろうと思って」
「いやお前がやろうとしてるのかよ!」
「ところで箱庭さんは?」
「はぁ…気付いたらいなくなってたよ。まったくあいつは…」
「そう、じゃあ今度こそ…」ボソッ
「どうした?」
「甘草君、今日の夜自家発電以外に予定はあるかしら?」
「なんでお前の中でそれは確実なんだよ!」
まぁ、やらないとは断言しないけど…。
「実は今日卵が安いのよ」
「え?あ、ああ、そうなのか」
急になんだ…?
「甘草君さえよければ私の得意料理の親子丼を振る舞ってもいいわよ」
「え?」
ふらのが自分からこんなこと言うなんて…
「鼻から」
「嫌だわ!」
「それと言っておくけど親子丼って私と母のことではないから」
「わかってるよ!」
「私と父のことでもないから」
「どんな状況だよ!」
やっぱりふらのはふらのだった。
「で、親子丼を振る舞ってくれるってことでいいのか?」
「私別に親子丼得意じゃないけど」
「何なんだよ!」
「嘘は親子丼の部分だけよ」
「じゃあ本当に何か振る舞ってくれるのか?」
「宇治金時丼」
「そんな糖の塊みたいなの食えるか!」
「ゴードン」
「誰だよそいつ!」
「ドンちゃん」
「もう関係なくなってるじゃねぇか!」
「ドンちゃんは食べ物よ」
「カレーは飲み物みたいに言うな!子ども泣くぞ!」
「カッちゃんは揚げ物よ」
「やめろぉ‼︎」
「まぁ、作るものはまだ考えてないのだけど」
「この会話丸々意味なかったじゃねぇか!ていうか俺ショコラに夕飯作ってやらないとだから早く家に帰らないとなんだけど」
「」ピクッ
「よかったらウチ来るか?ショコラ大食いだから色々大変なこともあるかもしれないけど…」
「結構よ。◯△□☆(とんでもない罵倒)」
「急にひでえ!?」
「さっさと帰ってゴードンさんと揚げ牛乳をぶっかけ合えばいいわ」
「なんか色々混ざってるし!」
「」スタスタ
俺に背を向けてどこかに行こうとするふらの。な、なんだ?機嫌良さそうに見えたのに…。
・・・・・・・・・・
「はぁ〜〜〜〜〜〜……」
本日2度目の大きなため息をつく。いや、1度目より大きいかもしれない。奏から急いで離れたとはいえまだそう離れてはいない。ここからでは聞こえていたかもしれない。しかしその程度のことを気にしている場合ではなかった。今は少しでも気持ちを落ち着かないと泣き出してしまいそうだった。本来なら今すぐにでも声を上げて泣き出したいくらいだ。
(いいな…ショコラちゃん…)
一緒に住んでて、思ったことを何でも素直に言えて。そこではっとする。
(私、すごくイヤな子だ…)
友達に対してとても醜い嫉妬をしている。そんな自分がつくづく嫌になる。
(甘草君に家に来て欲しかったんだけどなぁ…)
先ほどの丼物の話は彼女なりに家に誘っていたのである。
(まだちょっと辛いけど、甘草君に心配かけちゃ悪いし合流しよう。それで一緒に買い物して一緒に帰ろう。それだけでも私にしては進歩だよね)
奏の元に足早に向かった。
続く