「あがったぞ」
「おかえり」
ふらのがキッチンで料理している。夕飯作ってるのかな?
「料理なら俺も何か手伝おうか?」
「いえ、その前にショコラさんに電話してあげたら?今夜は嵐になるみたいだから帰れそうにないわよ」
「え、そうなのか…。じゃあちょっとショコラと電話してくるな」
「くれぐれも私の家にいることは言わないでよ」
「え?なんでだ?」
「だってショコラちゃんきっとみんなに喋っちゃうだろうし、ショコラちゃんだけでも恥ずかしいのにクラスのみんなに知られちゃったら…うぅ…///」ゴニョゴニョ
「?」
「もしも甘草君と夜を過ごしたなんて知られたら末代までの恥だもの」
「そこまで言う!?」
「冗談よ。ただ、停学は免れないかもしれないわね…」
「なんでだよ!」
「甘草君が」
「しかも俺かよ!俺って一体何なんだよ!」
「犯罪者予備軍」
「うっ、くっ…」
たしかにこのまま絶対選択肢が無くならなければそうなりかねない…。
「と、とにかく電話するからな!」
「ええ、どうぞ」
「もしもし」
『ほぇ?どなたですか?』
「ショコラ、俺だ」
『オレオレ詐欺ですか!』
「違ぇよ!奏だよ」
『奏さんでしたか。どうしました?』
「どうにも雨が止みそうになくてな、ふr…佐藤の家に泊めてもらうことになったからよろしくな。冷蔵庫に作り置きはしてあるし、もしものときは出前でもしてくれ」
『わかりました!ところで佐藤さんと奏さんはどっちが受けでどっちが責めですか!?どっちも受けっぽい気g…』ピッ
「話は終わったみたいね」
「ああ、もしもの時のために作り置きしておいてよかったよ」
さっきのショコラの発言は忘れよう。
「じゃあせっかくだしなにか手伝おうか?」
「いえ、大丈夫だからその辺の道端で休んでて」
「外大雨ですけど!?」
「こういう時は大雨より公共の迷惑の方をツッコむべきじゃないかしら?」
「そういうの思ってるなら言うなよ!」
「女の性ってやつよ…」
「お前以外の女の子は多分言わねぇよ!?」
「とにかく私1人で大丈夫よ」
「ま、まぁふらのがそういうなら俺はなにもしないけどさ…」
俺より全然料理上手いしな。
・・・・・・・・・・
(ど、どうしよう…)
雪平ふらのは困っていた。料理、というか家事全般は得意であり、体も全体的に小さく、素直になることすらできない自分にとって家事スキルは数少ない武器であることを彼女は自覚している。なので少しでも奏に意識してもらうためにも全力で料理した。しかし…
本日の献立
野菜の天ぷら
ブリの照り焼き
茶碗蒸し
チキン南蛮
肉じゃが
レンコンのきんぴら
小松菜のみそ汁
(つ、作りすぎちゃった…)
食べきれない量ではないが、2人で食べる夕食に作る量ではない。
(旅館じゃないんだから…)ハァ
無論捨てるわけにはいかない、しかし目の前で完成した料理を冷蔵庫に入れたりしたらさすがに不自然だろう。
「…よしっ」
諦めよう!
普通に出すことにした。
「どうぞ」
「おお!」
ふらの本当に料理うまいな。どれも本当に美味そうだ。みそ汁に天ぷらに照り焼きに茶碗蒸しにチキン南蛮かな?それにレンコンのきんぴらに肉じゃが…、多いな…。
「なぁ、ふらの。これちょっと多くないか?」
「そう?子宮が胃袋になっている甘草君ならこれくらい軽くて平らげそうだけど」
「なってねぇよ!…ていうか俺に子宮ねぇよ!」
「甘草君…、あなたって女の子の前で平然と子宮なんて言う人だったのね…!」
「お前が先に言ったんだろ!」
「甘草君みたいな早漏より先に逝くわけないでしょう」
「ああああああぁぁぁぁ!!」
こいつとまともに話してられるわけなかった…。
「もう食べよう…」
「そうね」
・・・・・・・・・・
「「いただきます」」
やっぱりふらのの料理美味いな…。
「どうかしら?」
「ああ、すごく美味いよ」
「そう。よかった」ボソッ
「え?」
「甘草君が普段食べてるものよりは美味しいと思うわ」
「俺普段なに食べてると思ってるんだよ!」
「あら、言い方が悪かったかしら。普段食べている"者"よりは美味しいと思うわ」
「食べてないからな!?」
「大体冗談よ」
「ちょっと本気なのかよ!」
普通男女2人が一つ屋根の下だったらもう少し色っぽいイベントが…
選べ
①自分で自分にあーんする
②ヤンキーとあぁん!?する
③大子さんがあぁん///になる
ただの寂しい人じゃねぇか!てかあぁん!?とかあぁん///って動詞なのか!?
「あ、あーん」パクッ
「…………」
「あ、あーん」パクッ
「…………」
「あ、あーん」パクッ
「…………」
「せめて何か言ってくれよ!」
「ごめんなさい、すごく楽しそうだったから」
「どこがだよ!」
「じゃあなんでやってたの?」
「そ、それは…」
ごもっともな疑問だけど…。
「どうしてなのかしら?」ズイッ
ふらのが体を寄せてくる。
「そ、それはもういいだろ」スポッ
「んっ…?」
「あっ」
偶然にも俺の箸がふらのの口にすっぽりと入ってしまった。肉じゃがを掴んだまま。
「わ、悪いふらの。わざとじゃなくて…」
「別にいいわよ。これからは甘草君のことはアン◯ンマンと呼ぶわね」
「あーんからアンパ◯マンは遠いだろ!」
「よく言うじゃない、アンパン◯ンは君さって」
「アレはそういう意味じゃねぇよ!」
多分…。
「とにかく気にしてないわ」
「ま、まあそう言ってくれると…」
「歯の間に詰まったとうもろこしくらい気にしてないわ」
「めっちゃ気になるやつ!」
「甘草君の唾液はそういう扱い、よ…」
「俺の唾液は歯に詰まったとうもこしか、よ」
「………///」カァァァァ
ふらのの顔は真っ赤だった。
なんとなく、その後はまともに会話できなかった。
・・・・・・・・・・
「ご、ごちそうさま…」ケフッ
「お粗末さま」
結構あったけどなんとか食べきった…。
「全部食べたのね」
「ま、まぁな」
俺はどちらかというと小食だし全部食べきれそうになかったが、箸を置こうとするとふらのがあまりにも悲しそうな顔をするものだからもう少しもう少しと頑張って食べて結局全部食べてしまった。かなり苦しい…。
「別に無理に全部食べることなかったのに」
いつも通り無表情で答えてるけどかなり喜んでるな、これ。初めて成功した料理を父さんと母さんに褒めてもらった時の俺と同じものを感じる。
「い、いや美味しかったからさ」
これは本心からの言葉だ。本当に美味しかった。まあそうじゃなくてもあんな捨てられた子猫みたいな顔されたら残せないけどさ。料理に関係する時だけは無表情のままでもふらのの気持ちがわかる気がする。
「じゃあ洗い物してくるわね」
「いや、夕飯作ってもらったんだから洗い物くらい俺がやるよ」
「いえ大丈夫よ。甘草君はお客様なんだから」
「ふらの…」
「招かれざる」
「悪かったな!」
「冗談よ。とにかく一応お客様なんだからくつろいでて構わないわよ」
「そ、そうか?」
といってもやっぱり手持ち無沙汰なんだよなぁ…。普段は何かしら家事してるか選択肢のことについて考えてるしな…。
「何して待つか…」
とりあえず伸びでもして…、
コツン
ん?あ、これって…
続く