灰被りの燕   作:アドバルーンタマモ

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評価ありがとうございます。
これからも頑張っていきます。




特に関係ないですが、最近、川原先生の”修羅の門“と”修羅の刻“に嵌ってます。


芦毛の友人

「はっ、はっ、はっ……!」

 

”芦毛は走らない“そんなバカげた考えを覆すと決めた日から早くも4年が経った。

既に小学校に通っているものの友人は作らず、学校が終わればさっさと家に帰り、鍛錬に勤しんでいる。

今日もいつものように川沿いに敷かれた道を往復している。

 

父さんから”まずは持久力を鍛えろ“と助言をもらったのでこうやって、フラフラになるまで走り続けている。

 

「そろそろ、終わろうかな……」

 

空はとっくにオレンジ色で太陽はもう地平線に潜ろうとしている。

暗くなる前に家に帰らないとまた母さん達を心配させてしまう。

 

「……ん?」

 

家に帰るためにさっきまで往復していた道を歩いていると橋の下の所に自分と同じぐらいの歳の子供の集団がいた。

 

走っている時は気づかなかったがこんな時間に何をしているんだろうか?

 

見たところ子供の集団は男子3人女子1人……よく見たら芦毛の目の細いウマ娘だ。

なんだか、遊んでいるような感じではなく、何やらモメているように見える。

 

「おい、芦毛。なんで今日は金持ってねーんだよ。昨日持ってこいって言っただろーが」

「ご、ごめんなさい……で、でも、もうお金が……」

「口答えすんじゃねーよ!いいから持ってこいってんだよ!山に捨てられてーか!?」

「ひっ……!」

 

少年の一人3人の中では一番背が高い少年が怒鳴りつけながら芦毛のウマ娘の少女の足元に石を投げつけた。少女はそれに怯えて、服を握りしめて体を震え上がらせ、その細い目に涙を貯めていた。他の少年2人はそれを見てニヤニヤしている。

 

「明日はちゃんと持ってくるよなぁ……!?」

「……だ、だからお金が――ひっ!」

 

また石が投げられ、少女の顔の横を通り過ぎて橋の柱に当たる。

 

「だーかーらー口答えすんなって言ってんだろ?自分の金が無いなら親の金もってこいよ。金持ちだろお前んち」

 

少年が足元から石を拾って、片手でお手玉のようにしながら少女に言った。

 

「そ、そんな……そんなことしたらお父さん達に怒られ――」

 

少年が石を持って振りかぶる。流石にもう見てられない。

 

「おい!」

 

河川敷に降り、橋の下へと近づく。少年達と少女が僕を見た。

 

「あ?なんだよお前?」

「その子を乱暴するのはやめろ。さっさと家に帰れ」

「なんだとぉ……!」

 

少年が石を握りしめながら僕を睨みつけるが、目を逸らさずにこちらも睨み返す。

 

「あっ、こいつ。いっつも変な着物みたいなの着てるやつじゃん!」

 

少女をニヤニヤと見ていた少年の一人がそんなことを言った。

 

変な着物……ああ、長半纏のことか。

父さんが昔使っていた長半纏を母さんに頼んで丈を合わせてもらいずっと普段着として使っているが、変なのか……

それを着ているのを知っているということは僕の家の近所に住んでいるのか、多分同じ学校に通っているんだろう。

 

「あー言われてみればこいつ、貧乏そうな方の芦毛じゃん。芦毛でビンボーとか救いようがないよな」

「貧乏?」

 

なんで貧乏そうだと思われているんだろうか?給食費に困っているわけでもないんだが……。

 

「だってお前、いっつもボロ着てんじゃん」

「ボロ……?……ああ、長半纏のことか」

 

確かに元々父さんの物でだいぶ草臥れているし、所々、補修した跡もあるからボロと思われて仕方がないか。

 

「貧乏人に用はねぇんだよ!とっとと消えやがれ!」

 

少年はそう言うと僕の足元に石を投げた。

 

「そうはいかない。女の子1人に3人がかりで金を巻き上げようとしているところを見過ごすわけにはいかない」

「この、芦毛が!口答えしてんじゃねぇ!」

 

少年はまた石を投げた。今度はさっきよりも上の位置体の横に投げてきた。

 

脅しのつもりなんだろうけど、引くわけにはいかないな。

 

少年の方へ歩き出す。

 

「この……!近寄ってくんじゃねぇよ!”出来そこない“の芦毛がぁ!」

「出来そこない……?」

「ああ、爺ちゃんが言ってたんだ!”芦毛はまともに走れねぇ、出来損ない“ってな!だから……っ」

 

少年は急に言葉をつまらせた。なぜだか知らないが僕の方を見て怯えている。

 

「なるほど、()()()。どうして、そんな理由でこんな事が出来るんだろうな……教えてくれないか?」

 

さらに近づく。

 

「く、来るなよ……!こっち来るなぁ!」

「なんでそんなに怯えてる?さっきまでの威勢はどうした?」

 

少年から2メートルぐらいの所まで踏み込んだ。

 

「うわぁあぁっ!!」

「……っ」

「キャア……!」

 

少年は石を僕に向かって投げた。

投げられた石は僕の額の左側に当たり、僕は顔を歪ませ、少女は悲鳴を上げた。

 

「あっ!やべ……!逃げんぞ!」

 

当てるつもりはなかったようで、少年は顔を青くしながら一目散にこの場から逃げ出した。それを追うように他の二人も走り出す。

離れていく背中を見て、追いかけようかと思ったが少女の方が先だと思い止める。

 

()って……まさか、当たるとは思わなんだ」

 

当てるつもりがないと高を括って近づいて、頭に当たる……なんとも、かっこ悪い。

 

「君、大丈夫?怪我とかしてない?」

「ひぃ!だ、大丈夫ですぅ……!!」

 

少女に声をかけるとひどく怯えていて、上ずった声でそう言った。

 

相当怖かっただろう。3人に囲まれて石を投げられる。怯えて当然……いや、これは僕を見て怯えていないか?

 

 

 

あっ、もしかして……

 

「ねぇ?今、僕、怖い顔してる?」

「は、はぃ……し、してますぅ……」

 

やっぱりか……。

 

思い当たる節はあった。以前、父さんに言われたがどうも僕は腹が立ったり、興奮すると怖い顔になるらしい。

眉間にシワが寄って、口角が上がる。怒っているのか笑っているのかあるいは両方か、そう思わせる顔をしているらしい。

なんとかしないように努力はしているが僕自身、無意識でやってしまっている為、全く改善できてない。

 

できることと言えば、眉間を揉んでとりあえず笑顔をするぐらいだ。

 

「ん?あ……血が出てる」

 

眉間を揉もうと顔に手をやると手に血がついた。さっきの石で少し切れたようだ。

 

まいったな。母さん達にどう言い訳しようか……。

 

今日のことは出来れば母さん達に知られたくない。知ったら、これからの鍛錬に支障が出そうだからだ。

 

「あ、あの……!わ、私の家、ここ、ここから近いので!き、キューキュー箱とかあるので……!あ、あと、お礼とかしたいので……!そ、そのぉ……」

「……家に来ないかって言いたいの?」

「は、はぃ……そうです……。ダメですか……?」

 

俯きながら上目でこちらを見て、聞いてくる少女。

 

「いいよ。僕も、コレどうにかしたいし」

 

額の怪我を指差して言った。

 

「じゃ、じゃあ、行きましょう……!」

「あっ、ちょっとまって」

「な、なんですか……?」

「君、名前は?」

 

「す、ステイシスハスキーって、いいます……!」

 

少女……ステイシスハスキーは振り向きざまにそう名乗った。

 

「ステイシスハスキー……うん、憶えた。僕はトキノツバメ、よろしく」

「は、はい……よろしく、です」

 

 

 

 

その後、僕はステイシスハスキーもといハッちゃん(名前が長いのでそう呼ぶことにした)の案内のもと、ハッちゃんの家に行き、ケガの治療をしてから少しゆっくりさせてもらった。

その時に知ったのだが、どうやら同じ学校で同じクラスだったらしい。全然気づかなかった。

他にも色々と話したかったが帰るのが遅くなりそうだったので続きは明日学校ですることにした。

 

 

 

この体になってから10年経って、初めて友人ができた。




トキノツバメと今回登場したヒロイン枠兼相棒 ステイシスハスキーの大雑把な容姿

トキノツバメ

クラスで一番背が低い。
左耳に母手作りの燕の刺繍が入った耳飾りをしている。
髪型はシンプルにゴム紐でローポニーテール。
服装のバリエーションは多くなく、大体Tシャツと半ズボン姿に草臥れた紺色の長半纏を羽織っている。
名前の由来は義理の親である時乃夫婦の名字と名付けの時に迷い込んだ燕。

ステイシスハスキー

ビワハヤヒデ程ではないがややボリュームがあるくせっ毛の長い髪。
右耳に青いリボンしている。
目は細いが、視力は良い。
背の高さはトキノツバメに比べ、頭一つ分高い。
服装のバリエーションは女の子なので多いが、ワンピースタイプを好む。
名前の由来はどこぞのランク1の機体名と水嫌いハスキー君。

いつか「あ゛~出来ないですぅ~!」と言わせたい。
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