「まさかこの様な事が起こっていたとはな...ジェイク君、君にはそれ相応の報酬を渡そう。」
「ありがとうございます。流石の俺もあんな中で無駄死には御免ですからね...」
帰投した私を待っていた大領主様に連れられた私は、そのままの足であの男と会う事になった。
オークニー帝国とゼルドア聖帝国の戦争、通称[帝国戦争]で組んでいた頃と比べ、随分と落ち着いた雰囲気を持つあの男にまず驚かされたが、それ以上に帝国戦争の最前線で起きた事態の方が問題だった。
第22世代ストライカーの実戦投入だ。
高出力のエネルギー兵器を搭載し、機動力もそれまでの全ての機体を過去の物にする性能を持ったそれを宇宙のあらゆる場所で暴れさせ、データを取っていると言うのだ。
お陰で攻撃を受けた事で軍事力のバランスが崩れた地域での戦闘の激化。
第22世代ストライカーを狙う活動家達による多くの工作など、宇宙全体の治安が劇的に悪くなっているのだ。
特にVIV2-1にほど近い、資源惑星連合体アイアンギャラクシーが重大な被害を受け、資源を狙った周辺惑星の活動が活発化して来ているのだ。
荒野が殆どで資源に乏しいこの星にも資源衛星が存在する。VIV2-3ニュージウムだ。
あの衛星がある限り、この惑星も前線拠点にする価値がある。速急な対応が必要であった。
「しかし、何ともタイミングの悪い時に起こってくれたものですねぇ。ある意味ではちょうど良かったのかも知れませんが。」
「全くだ...この転換期に。だが、それでも我々は戦わねばならない。この惑星で生きる我々が、存続する為に必要な事だからな。」
「そうですか...まあ頑張ってください。」
大領主様との会話を終え、あの男は与えられた部屋へと戻る。昔の事はもうさっぱり消え去っている様だった。
「すまないなシオン君。彼から直接でしかこの事は聴くことが出来なかったんだ。知っているだろう?グローバルメッセージの校閲で一部の情報は真実で無くなるんだ。」
私も実際に体感した事がある。この宇宙の通信の全てを牛耳ると言われる暗黒超巨大企業[グローバルメッセージ]
それによってVIV2-1で親身になってくれていた整備士のお爺ちゃんの葬式に行けなかったのだ。
それだけでは無いが、グローバルメッセージは大嫌いであった。
「今、VIV2-1は設備や稼働機械を転換する予定であったのだが、この様な事態になってしまった。VIV2-1は大変な苦境に見舞われるだろう。どうか、君の力を借りたい。」
私はこの件について協力する事に異論は無かった。
スペースエースオンラインで初めて訪れた星であると同時にたくさんの優しい出会い、そして帝国戦争から帰って来た私を優しく迎えてくれたこの星の人々を守りたい気持ちは、人一倍あると言えた。
だが問題がある。
「もちろん協力させていただきます。ですがVIV2-1で主力のビゲンでは、この規模の戦争に適しているとは言えません。より高性能な機体が必要です。」
戦力の問題だ。この惑星VIV2-1のストライカー乗りの愛機は、安価で最低限のマルチロール戦闘能力を持つ、空戦可変ストライカー[ビゲン]であった。
長期間の戦闘に向かないこの機体では、大規模な武力的衝突が予想される今回の動乱に耐えられるわけがなかった。
「無論その事は分かっている。そこでサヴェージ社のSV-27[フランカー]空戦可変ストライカーのライセンス生産に切り替える。
すでに実証用の先行試作量産機が存在する。シオン君にはそのうちの一機を与えよう。」
SV-27フランカー、それは第18世代に属す空戦可変ストライカーで、長距離ミサイル4発、大型爆弾or大型増槽一つ、
短距離ミサイル8発、30mmガンポッドシステム一つ、近接戦闘用ナイフ二振り、ハイマニューバミサイル二発を標準装備し、
航続距離はアフターバーナーを吹かしてもビゲンの四倍に達する今回の動乱に通用するスペックを持つ機体である。
「ありがとうございます。次の戦闘までに習熟して見せます!」
こうして私のVIV2-1における新たな仕事が始まったのであった。