女性しか召喚されないカルデアで貞操を保てるのか 作:雑食で節操なし
ここはカルデア内にある食堂、そこにはカルデアに所属するAチームからDチームまでのマスターたちは勿論、技士や医療スタッフの姿も見える。
逆にいない人物を探した方が早いのではないかという程だ、厨房のスタッフが全員分の飲み物の配膳を終えホッと一息する事も無く他の者同様に席に着く。
まるで食堂の空気は通夜の様だったと後に参加していた者が語る程重苦しい雰囲気だ。
何時までもこうしてはいられない、最初に口を開いたのはカルデアの前所長であるマリスビリー・アニムスフィアの一番弟子であり、ヴォーダイム家の若き当主キリシュタリア・ヴォーダイムだ。
「さて皆、彼がここカルデアに来て早5日目だ何か気づいた事はあるかな?」
純粋な疑問でもある、男性が女性ばかりのこんな閉塞感しかない場所にいれば何かしらのストレスを溜め込むのは想像に難くない。
ともすれば攻撃的に成っているかも知れない、流石にこの一大プロジェクトのリーダーである自分や、所長のオルガマリーに対しては横柄な態度はしていない様だが目の届かない場所では男性特有の傲慢さを出しているかも知れない、そう思った上での質問だったのたが。
返ってきた返事はというと。
「なかなかの好青年ですよ、彼。ただちょっと距離感が」
「こちらを気遣ってくれて良く話かけて来てくれるので正直日々の癒しになってます、まああれですけど」
何故か言葉を濁し問題点を話そうとしない者たち、問題点が理解できず疑問が膨らんでいく。
するとキリシュタリアと同じAチームのスカンジナビア・ペペロンチーノが大きく笑いながら核心を突く。
「正直エロいわよねぇー、彼」
まるで悪役令嬢の様にオーホッホホと笑うペペロンチーノ。
顔を赤らめ一斉にあらぬ方向に目をやり始める、その中にはAチームのカドック・ゼムルプスと戦乙女と評されるオフェリア・ファムルソローネ、それを見てからかうのは彼女たちと同じチームのベリル・ガットである。
「おいおい、カルデアが誇る人理修復の精鋭Aチームが軒並みアイツに首ったけか?まあ、気持ちは良く分かるけどな」
男性付き合いなんて時計塔で少し話すくらいでそんなに関わりがないのが現状であり、魔術師の男連中はどんな功績を残そうとも(極端な話、根源に達しないかぎり)女を家を存続させる為の道具だと思っているふしがある。
恋や愛といったものもなく義務感のみで結婚するのが大半なのだ。
だからこそ彼、藤丸立香は好奇な目に写った。女性を下に見るでもなく、その人はそういう人なのだとそのまま受け入れる、忌避感も無く当たり前の様に目を見て話をする、それだけで心が浮わつくというものだ。
ただ生活態度がいただけない、シャワーを浴びてしっかりと髪を拭かずに出てきたのか水も滴るいい男状態。
夜部屋に訪ねると寝る直前だったのか目元はトロンとしていてラフな格好で出てこられた時には襲ってやろうかと思ってしまった。
その他にも出てくる出てくる無自覚のやらかし、たちが悪いのはとうの本人はやらかしと思っていないという点であろう。
様々な意見を聞いたキリシュタリアは今度会いに行く事を決めた。
さてそんな話がされている彼、藤丸立香は現在。
「迷った」
迷子になっていた、ここカルデアは意外でも何でもなく広いうえに似たような部屋が多数存在する為慣れない者には難解な造りとなっている。
「やっぱりマシュに案内してもらったら良かったかな?でも仕事があったみたいだし」
マシュは案内しようと声をかけたのだが仕事があった様なので流石に悪いと思い断ったのだが、まさか迷う事になるとは思っても見なかった。
これからどうするかなと思いながらもドンドン前に進んでいく、すると一つの扉が現れた。
扉の前には守衛なのか女性が二人いる、声をかけて部屋への道順を聞こうと思った藤丸は近づく事にした。
「こんにちは」
「ん?ええこんにちは、ここは関係者意外立ち入り禁止よ」
「実は迷子になってしまって、部屋への道のりをお聞きしようと思いまして」
「そう言えばアナタはここに来たばかりだったわね、ここ道が複雑で困るわよね」
「お姉さんたちに会えて良かったです、ところでこの部屋は何ですか?」
「ここ?…別に喋っても問題は無いわよね。ここは召喚室よ」
今後何度も訪れる事になる部屋であった。