ポケットモンスター 遥かなる高みへ 作:色即是空
「終わりだ。僕の盾に触れた瞬間、君のルカリオの牙(攻撃力)は捥がれる」
ディランの冷徹な宣告。
展開される絶対防御の障壁『キングシールド』。そこへ向かって、光速の弾丸と化したルカリオが突っ込んでいく。誰の目にも、カグヤの特攻がディランの完璧な罠に嵌まった瞬間に見えた。
だが――カグヤの口角が、獰猛に釣り上がる。
「捥がれる? 触らなきゃいいんだろ!! ルカリオ、跳べっ!!」
「ルカァッ!!」
激突のわずか数ミリ手前。ルカリオは『しんそく』の凄まじい推進力をそのまま上方向への跳躍へと変換した。ギルガルドの盾の表面を掠めるような超低空から、爆発的な脚力で真上へと垂直に跳ね上がる。
王の盾は空を切り、不発に終わる。ルカリオの攻撃力は1ミリも下がっていない。
「何……!? 完全にトップスピードに入っていたはず。あの制動はデータの想定を超えている……!」
ディランの漆黒の瞳が初めて微かに揺らいだ。
「俺とルカリオをそこらのデータと一緒にすんな! 実家の庭で、父さんの無茶苦茶なバトルをずっと特等席で見てきたんだよ! この程度のアドリブ、朝飯前だ!!」
上空、スタジアムの照明を背に背負ったルカリオの手のひらに、激しい蒼い光が収束していく。カグヤの「オン」の波導と完全に同調し、限界を超えて膨れ上がる光の球。
「上空から叩き込め! 『はどうだん』!!」
「ルカァァァーーーッ!!」
放たれた蒼い大砲が、キングシールドが解け、攻撃態勢(ブレードフォルム)へと移行せざるを得なくなったギルガルドの無防備な背中へと直撃した。
ドゴォォォォォン!!!
効果は抜群。鋼の身体が激しく火花を散らし、ギルガルドが床へと叩きつけられる。しかし、ディランは即座に表情を押し殺し、冷酷に指を弾いた。
「……無駄な足掻きだ。落ちてくる位置は計算できる。『アイアンヘッド』で迎撃しろ」
ボロボロになりながらも、ギルガルドが鋭い剣先を上空のルカリオへと向けて急上昇する。必殺のタイミング。
だが、カグヤは不敵に笑う。
「だから、計算できると思うなよ。ルカリオ、空中で『ボーンラッシュ』!!」
ルカリオは落下しながら、波導のエネルギーで一本の光る骨の棍棒を作り出した。それをギルガルドの剣先に向けて、容赦なく叩きつける!
ガキィィィィィン!!!
空中での激しい激突。金属音の風圧がスタジアムを吹き抜ける。ルカリオは骨の棍棒をしならせ、ギルガルドの刃の軌道を力任せに横へと受け流した。さらに、その反動を利用して空中で身を翻すと、着地と同時に『ステルスロック』の激痛が走る身体で根性で踏み留まり、ギルガルドの懐へと滑り込む。
「これで終わりだぁ!! 『インファイト』!!」
至近距離からの、目にも留まらぬ怒濤の連撃。実家の庭で何万回と拳を突き出してきたルカリオの、野生の格闘センスが爆発する。鉄をも砕く拳と蹴りが、ギルガルドの装甲を容赦なく乱打した。
「ギルガルド、戦闘不能!」
審判の声が響き渡る。
「よっしゃあ!! 兄貴、これで3対3の同数だ!!」
客席でナオが叫ぶ。ディランの仕掛けた完璧なハメ盤面の一角が、ルカリオの常識外れのアドリブによって力任せに撃ち破られた。
しかし、ディランは冷徹にギルガルドを戻すと、カグヤの足元を冷たく見下ろした。
「見事な野生だ。だが、その対価として君のルカリオは『インファイト』による防御低下、そして『ステルスロック』のダメージをさらに浴びた。――盤面は未だ、僕の檻の中だ」
ディランの残る手札は3体。ルカリオの体力が削られていく中、ディランは4体目のボールへと手を伸ばした。