ポケットモンスター 遥かなる高みへ 作:色即是空
突如として繰り出されたワタルのリザードン。草タイプのジュカインにとって、炎と飛行を併せ持つ圧倒的な翼の猛者は、まさに天敵とも言える最悪の相性だった。
「リザードン!『かえんほうしゃ』で一気に焼き払え!」
ワタルの重厚な号令と同時に、リザードンが大きく息を吸い込み、灼熱の炎の奔流を放つ。まるで地獄の業火の如き熱量がフィールドを焼き尽くそうと迫り、観客席の熱気までもが一気に跳ね上がる。
「引くな、ジュカイン! スピードで躱しながら、あの懐に飛び込め!」
カグヤの鋭い指示に呼応し、ジュカインの瞳が鋭く光る。地面を蹴った瞬間、爆発的な加速が巻き起こり、ジュカインの姿がかき消えた。
炎の奔流がかすめるすれすれの軌道を、まるで舞い散る木の葉のように軽やかに翻弄し、リザードンの視界の死角を縫うようにして、瞬く間にその至近距離へと肉薄する。
「なに……! この速さは……っ!」
「もらったぜ! 近距離なら、こっちのもんだ!」
カグヤの合図と共に、ジュカインの両腕から眩い緑の光刃――「リーフブレード」が鋭く展開される。相性は最悪でも、カグヤとジュカインがこれまでの過酷な修行で研ぎ澄ましてきた極限のスピードと技量なら、その不利を完全に相殺できる。
一閃。凄まじい衝撃波を伴った一撃が、リザードンの脇腹へと深く叩き込まれた。
ガツン、とアリーナ全体に響くほどの鈍い衝撃音と共に、リザードンが大きく体勢を崩して宙を舞う。
しかし、さすがは絶対王者の相棒。ただの一撃では沈まない。リザードンはすぐさま狂気的な闘志を漲らせて態勢を立て直し、猛烈な勢いで尻尾を強烈に振り回してジュカインを吹き飛ばした。
「ぐっ……! まだだ、踏ん張れジュカイン!」
吹き飛ばされたジュカインが地面を滑りながらも、両手で踏み留まって鋭く歯を食いしばる。
観客席からナオが「すげえ……相性最悪なのに、互角以上に渡り合ってる……!」と息を呑み、マリアンヌも両手を握りしめて見守っている。
一進一退の激しい空中・地上のチェイスが展開される中、カグヤとジュカインは互いの呼吸を完璧に同調させていた。
「見切った……! 決めるぞ、ジュカイン、全力のエナジーボール!」
ジュカインの両手の間に、周囲の自然エネルギーが凄まじい渦を巻いて収束していく。圧縮された巨大な緑の光弾が、逃れられない軌道を描いてリザードンへと直撃した。
次の瞬間、アリーナを揺るがす大爆発が巻き起こり、もうもうと立ち込める白煙と砂塵。その中央で、リザードンはついに力尽き、重い音を立てて地面に崩れ落ちた。
「リザードン、戦闘不能!」
審判のフラッグが鋭く翻る。
ジュカインも両手を膝につき、荒い息を繰り返しているが、その瞳の炎は消えていない。見事に相性不利の難敵を撃破したのだ。
ワタルはわずかに目を見張り、だがすぐに不敵で深い笑みを浮かべると、戦闘不能となったリザードンを静かにボールへと戻した。
「ほう……見事だな。圧倒的な相性不利を、そのスピードと洗練された技で完全にひっくり返してみせたか。だが、私の布陣の厚さは、こんなものでは終わらんぞ」
ワタルがコートの端で、四つ目のボールをゆっくりと、しかし確かな重みを持って掲げた。
投擲されたボールから眩い光が弾け、現れたのは――硬質な鋼の鎧のような身体と、カミソリのように鋭い翼を持つ超高速アタッカー、プテラだった。
「行け、プテラ! 乱れ飛ぶ岩の牙で、その息の根を止めてやれ!」
満身創痍のジュカインの前に、音速を超える飛翔速度を誇る古の凶獣が立ちはだかった。
【カグヤ】 【ワタル】
ゲッコウガ ✕――◯ ギャラドス
ハッサム ◯――✕ ギャラドス
ハッサム ✕――◯ サイドン
ジュカイン ◯――✕ リザードン