ポケットモンスター 遥かなる高みへ 作:色即是空
シュートスタジアムの上空へと放たれた一筋の光弾が、ドームの天井付近で眩い閃光を放って弾けた。
直後、無数の赤熱したエネルギーの塊が、まるで降り注ぐ流星群の如き凄まじい勢いでフィールドへと降り始める。アイリスのカイリューが放った『ドラゴンダイブ』の重圧と、カグヤのカイリューが放った『りゅうのせいぐん』の弾幕が交錯し、スタジアム全体が激しい爆風と熱量に包まれた。
「うわぁ、初手から空を覆い尽くすような大技の応酬だよ……! どっちも一歩も譲らないすごい迫力だね!」
観客席の最前線で、ナオが両手で目を押さえながらも、興奮のあまり前のめりになって叫ぶ。
その隣で、シオンは冷静にタブレットの画面に視線を走らせながら、淡々と分析を口にした。
「互いに同族だからこそ、相手の出方が手に取るように分かるはずよ。……だけど、カグヤのカイリューはワタル戦を経験してからの伸びが著しいわ。単なるのんびり屋じゃなく、肝心な場面で的確に重心を落とした堅実な強さが身についているもの」
「シオンちゃんの言う通りやねぇ。あのマイペースやったカイリューが、今や立派な大黒柱として戦うてますわ。……見ているこちらまで胸が熱うなる名勝負どすえ」
マリアンヌも今回は余計な茶々を入れることなく、真剣なまなざしでフィールドを見つめながら静かに頷いている。その言葉通り、フィールド上の緊張感は一瞬たりとも緩むことはなかった。
降り注ぐ流星の弾幕のなか、アイリスのカイリューは荒々しい咆哮をあげながら、その巨大な翼で強引に爆風を切り裂いていく。
「そんな流星の雨なんかに負けないよ! カイリュー、全身全霊の『ドラゴンクロー』で一気に距離を詰めて、そのままブッ飛ばしちゃえ!」
アイリスの弾けるような号令を受け、アイリスのカイリューの両腕に青白い竜の闘気が纏わりつく。猛烈なスピードで流星群をかいくぐり、カグヤのカイリューへと肉薄した。
「させない! カイリュー、『アイアンヘッド』で迎え撃て!」
カグヤの力強い指示に合わせ、カグヤのカイリューの頭部が眩い金属質の光を纏う。
のんびりとした雰囲気を完全に消し去ったその目は鋭く研ぎ澄まされ、突進してくる相手の巨体に対し、臆することなく正面から頭突きを合わせにいった。
ガキィィィンッ!!
金属と竜の硬質な鱗が激突し、スタジアムの観客席まで伝わるほどの凄まじい衝撃波が吹き荒れる。ぶつかり合う凄まじい圧力のあまり、両者の足元の地面が蜘蛛の巣状に粉々に砕け散った。
「ぐっ……! すごいパワーだ……!」
正面からの衝突に、カグヤが思わず歯をくいしばる。アイリスのカイリューの体当たりは、野生の荒々しさとドラゴンマスターに鍛え上げられた圧倒的な筋力が乗っており、一筋縄ではいかない重さがあった。
「ふふっ、どうしたの、その程度じゃないでしょ! もっともっと熱いバトルを見せてよ!」
アイリスの瞳が、純粋な闘争心と喜びに満ちて輝いている。
その熱量に応えるように、カグヤのカイリューの胸の内でも、ワタル戦を乗り越えて培った確かな誇りが熱い炎となって燃え上がった。
「……応えてやれ、カイリュー! 僕たちの全力を見せつけるぞ、『げきりん』!」
カグヤの号令とともに、カグヤのカイリューの全身から凄まじい竜のオーラが噴き出した。
理性を超越した連続の猛撃――しかし、カグヤのカイリューのそれは暴走ではなく、自らの意志で制御された完璧なまでの破壊の構えだった。
「おっ、いいじゃん! こっちも負けないよ、『げきりん』で押し返して!」
アイリスのカイリューも負けじと再び猛烈なオーラを纏い、一歩も引かずに突撃する。
スタジアムの中心で、2体の巨大なドラゴンによる狂瀾怒濤のラッシュが激突した。
ズガガガガガッ!! と轟音が鳴り響き、互いの竜の爪が凄まじいスピードで打ち付け合う。どちらが一歩優ることも許されない、意地と意地が真正面から削り合う極限の同族対決。
激しい打ち合いの果て、互いに全身全霊の力を使い果たし、両者の息が荒く乱れ始める。蓄積されたダメージは限界に達していた。
「決めるぞ……! カイリュー、渾身の『ドラゴンダイブ』!」
「負けないよ! 最後まで押し切る、『ドラゴンダイブ』!」
両トレーナーの絶叫が重なり、最後の激突が放たれる。
互いの巨体が青紫色のオーラを纏い、正面から真っ向交錯した。
ズガァァァァンッ!!!
スタジアムの天井を揺るがすほどの巨大な爆発と衝撃波がフィールドを包み込む。眩い光が収まったあと、そこには――。
数秒の静寂ののち、アイリスのカイリューがガクリと膝をつき、そのまま大きく倒れ伏した。わずかに遅れて、カグヤのカイリューも力尽きるように地面へと伏せる。
「カイリュー、両者戦闘不能……」
審判が両者の状態を確認しようとした瞬間、カグヤのカイリューがゆっくりと、ふらつきながらも前足を踏ん張ってその巨体を持ち上げた。
「……っ! 立った……!」
ナオが歓声をあげて飛び跳ねる。
直後、アイリスのカイリューが完全に意識を失い、戦闘不能が確定した。
「アイリスのカイリュー、戦闘不能! 勝者、カグヤのカイリュー!」
割れんばかりの大歓声がスタジアムを揺らす。ワタル戦の雪辱と成長を証明するかのように、カグヤのカイリューが同族の激闘を制し、大きな勝ち星をもぎ取ったのだった。
【カグヤ】 【アイリス】
ジュカイン ◯――✕ クリムガン
ジュカイン ✕――◯ ガブリアス
ブラッキー ✕――✕ ガブリアス
カイリュー ◯――✕ カイリュー