ポケットモンスター 遥かなる高みへ   作:色即是空

159 / 160
絶対零度の牙を砕く、蒼き波動の閃光

 

 シュートスタジアムの空間を切り裂くように放たれたキュレムの『れいとうビーム』が、まばゆい閃光となってゲッコウガを直撃した。

 ズガァァァンッ!!

 巻き起こった猛烈な冷気の爆風と白煙がフィールドを深く覆い尽くす。

 視界が晴れたとき、そこに立っていたのは全身を分厚い氷の結晶に覆われ、完全に動きを封じられたゲッコウガの姿だった。ゲッコウガは必死に立ち上がろうと体幹を奮い立たせたが、限界を迎えたその体はパキリと音を立てて崩れ落ち、そのまま地面に伏して意識を失った。

「ゲッコウガ、戦闘不能! 勝者、アイリスのキュレム!」

 審判のフラッグがキュレム側へと高く掲げられる。

 伝説の巨獣キュレムが放つ絶対零度の冷気と圧倒的な圧力は、カグヤの誇るスピードスターをも沈黙させたのだった。観客席からは、あまりの強大さに息を呑むような静けさと、それに続く大きなどよめきが広がる。

「よくやってくれた、ゲッコウガ……。ゆっくり休んで」

 カグヤは悔しさをぐっと飲み込みながらゲッコウガをボールに戻すと、静かに、しかし燃え盛るような強い決意を込めて次のモンスターボールを手に取った。

 互いに残る手持ちは、あと2体ずつ。いよいよ決着の時は間近に迫っている。

 

「いってくれ、ルカリオ!」

 カグヤが力強く投げ放ったボールから、眩い波動の光とともに現れたのは、誇り高い気性を秘めた鋼と格闘の勇者、ルカリオだった。

 フィールドに降り立ったルカリオは、キュレムが放つ尋常ならざる冷気にわずかに眉をひそめつつも、鋭い眼光を正面の伝説の龍へと据え、全身から青白い気迫のオーラを燃え上がらせる。

「ほう……! カグヤの次のポケモンはルカリオかぁ! いいね、その燃えるような目、すごく強そう!」

 アイリスが純粋な闘争心をたぎらせながら、楽しそうに笑みを浮かべて指示を飛ばす。

 キュレムの圧倒的な強さを前にしてもなお、ルカリオの瞳に怯えの色は一切ない。

「キュレム、『りゅうのはどう』で一気に片を付けるよ!」

 アイリスの号令に呼応し、キュレムが巨大な口元から荒々しく渦巻く竜の波動を解き放つ。

 放たれた蒼きエネルギーの奔流が、空間を歪ませながらルカリオへと猛スピードで迫り来る。

「させない……! ルカリオ、『はどうだん』で相殺しろ!」

 カグヤの鋭い号令に合わせ、ルカリオは両手を素早く胸元で合わせ、凝縮された青い波動の弾丸を正面へと撃ち出した。

 ドゴォォォンッ!!

 激しい爆発と衝撃波がフィールドの中央でぶつかり合う。だが、伝説の巨獣キュレムから放たれる純粋なエネルギーの密度は、ルカリオの想像を遥かに超えていた。爆風を突き破るように残余の衝撃がルカリオを直撃し、ルカリオの体がたまらず大きく後方へと押し戻される。

「くっ……! 流石はキュレム、一筋縄ではいかないか……!」

 カグヤが歯をくいしばる。まともにぶつかり合っては、特殊耐久も攻撃力も格上のキュレム相手に押し切られてしまう。

 だが、カグヤの胸元で、そしてルカリオの腕に嵌められたキーストーンとメガリングが、熱を帯びたように眩い光を放ち始めた。

「応えてくれ……俺たちの絆の力で、全ての限界を突破するぞ……! メガシンカ!!」

 カグヤの叫びと同時に、キーストーンから放たれた虹色の光のエネルギーが、ルカリオの纏う青い波動と完全に共鳴した。

 

 「ルカァァァ――ッ!!」

 眩い光の繭を纏いながら、ルカリオの姿が急速に形態変化していく。

 全身の体毛がよりシャープに逆立ち、背中と両腕の黒い紋様が鮮やかな真紅のエネルギーを帯びて輝く。圧倒的なまでの闘気と鋼の肉体を纏った究極の姿、メガルカリオへと覚醒したのだ。

 観客席の最前線で、シオンが息を呑みながら声を上げる。

 「メガシンカによる爆発的な攻撃力と素早さの上昇……これならキュレムの冷気を突破できるわ!」

 隣のナオも「すごい気迫……! がんばってカグヤ、ルカリオ!」と両手を握り締めて絶叫する。

「へぇ、メガシンカかぁ! それならこっちも全力で迎え撃つよ、キュレム、『ふぶき』!」

 アイリスの合図に合わせ、覚醒したキュレムが再び周囲の空間を一瞬で凍結させるような猛烈な吹雪の嵐を巻き起こした。あらゆる生命の動きを縛り付けるような絶対零度の冷気が、メガルカリオの巨体を呑み込もうと襲いかかる。

「飲まれるな! ルカリオ、『インファイト』で冷気の嵐を切り裂け!」

 カグヤの魂の号令に、メガルカリオの目が鋭く光り輝いた。

 纏う絶対零度の吹雪のなかへ、メガルカリオは一歩も引かずに突入する。極限まで研ぎ澄まされた格闘の連撃が、凍てつく冷気を文字通り物理的に粉々に打ち砕いていく。

「なっ……! あの吹雪を拳で叩き割ってる……!?」

 アイリスが驚愕の声を漏らす中、メガルカリオは驚異的な踏み込みでキュレムの懐へと完全に潜り込んだ。

「決めるぞ……! 全身全霊の、『コメットパンチ』!!」

 カグヤの最終号令と同時に、メガルカリオの拳が小惑星の如き凄まじい輝きと鋼の質量を纏い、キュレムの胸元へと叩きつけられた。

 ズガァァァァンッ!!!

 シュートスタジアム全体が大きく揺れ動き、耳をつんざくような激しい衝撃音と閃光がフィールドを完全に包み込む。メガルカリオの渾身の拳と、キュレムが放った最後の冷気の牙が正面から激突し、互いのエネルギーが臨界点を超えて大爆発を起こした。

 あまりの眩しさに観客の誰もが目を覆う。

 やがて、轟音が収まり、もうもうと立ち込めていた白煙と土煙がゆっくりと晴れていくと、そこには――。

 力尽きて同時にガクリと膝をつき、そのまま地面へと崩れ伏すメガルカリオとキュレムの姿があった。メガルカリオの姿が元の姿へと戻り、両者ともに完全に光を失っている。

 

「ルカリオ、キュレム……両者、戦闘不能!!」

 審判のフラッグが高々と掲げられた瞬間、スタジアムを揺るがすような大歓声が響き渡った。

 アイリスの手持ちはあと1体。ついに最後のカードを残すのみとなった。

 




【カグヤ】      【アイリス】
ジュカイン ◯――✕ クリムガン
ジュカイン ✕――◯ ガブリアス
ブラッキー ✕――✕ ガブリアス
カイリュー ◯――✕ カイリュー
ゲッコウガ ◯――✕ ヌメルゴン
ゲッコウガ ✕――◯ キュレム
メガルカリオ✕――✕ キュレム
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。