ポケットモンスター 遥かなる高みへ   作:色即是空

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熱狂の渦と、宿命の牙城

 

 シュートスタジアムを揺るがした激闘の余韻は、観客席の興奮が冷めやらぬ今もなお、うねるような熱気となってドーム内を満たし続けていた。

 電光掲示板に大きく映し出された【勝者:カグヤ】の文字。その輝きを確認した瞬間、観客席は本日一番の歓声と割れんばかりの拍手に包まれた。

「あ、兄貴……勝った……勝ったよ……!」

 最前線の座席で、ナオは両手で目頭を押さえながら、安堵と嬉しさでいっぱいになった顔をほころばせる。ハラハラする展開の連続に思わず手に汗を握っていたが、無事に勝利を掴み取ったカグヤの姿を見届け、込み上げてくる感動を噛み締めていた。隣に座るシオンの肩を嬉しそうに軽くポンポンと叩きながら、ピョンピョンと飛び跳ねて喜びを表現する。

 突然肩を叩かれたシオンは軽く微笑み、どこか温かい笑みを浮かべながらナオの様子を見守った。

「ふふ、本当に見事な勝利だったわね。アイリスの圧倒的な手持ちを相手に、総力戦で競り勝つなんて……。カグヤの戦術眼も、ポケモンたちの絆も、完全に一段上のステージに到達したわ」

「そうやねぇ。あの気迫あふれる戦いぶり……見れば見るほど、うちの生涯の伴侶にふさわしいお方やわぁ。婚姻届の準備ももう進めてるし、帰ったらすぐに両親に挨拶に行ってもらわんとね」

「冗談抜きで真剣な目でそういうこと言うのやめてくれるかな……!」

 マリアンヌの温度の低い、しかし一途な本気度を湛えた婚活宣言に、カグヤの盛大なツッコミが響く。満身創痍のハッサムをボールに戻し、頭を抱えながらもどこか苦笑いを浮かべるカグヤの姿に、スタジアム中の観客から温かい拍手が送られた。イッシュのドラゴンマスター・アイリスもまた、悔しさを滲ませながらも清々しい笑顔を浮かべて、カグヤへと力強く手を振って健闘を称えたのだった。

 激闘の熱気がゆっくりと収まりつつある中、スタジアム中央の大型モニターが突如として鮮やかな電子音を響かせた。

 

 ――【準決勝 対戦カード発表】――

 

 観客席の視線が一斉に巨大スクリーンへと集中する。

 トーナメント表の仕組み上、勝ち上がればこの準決勝でアランと当たることは最初から分かっていた。カグヤもまた、モニターに表示されたその名前を見据え、小さく息を吐き出す。

「……ついに来たか」

 カグヤの口から、決意を帯びた呟きが漏れる。

 昨年、カロスリーグの準々決勝で激突し、敗れ去った最大の壁――アラン。あの日の悔しさを胸に、ここまで這い上がってきた因縁の相手だった。

 観客席でモニターを見上げていたシオンも、引き締まった表情で腕を組む。

「トーナメント表を見たときから分かっていたこととはいえ、いざその時が来ると緊張感が違うわね。アランのエースであるメガリザードンXの圧倒的な破壊力は、カロスで苦杯をなめさせられた当時よりもさらに磨かれているはずよ。カグヤにとって、リベンジを果たすためのこれ以上ないほどの舞台ね」

「アランはんかぁ……。強い男やけど、うちの未来の旦那様にならはるカグヤはんの敵やないわ。アランはんには悪いけど、今度こそ盛大にリベンジを果たしてもらうで」

「だからまだ結婚前提に話を進めるなって……!」

 ふたたび飛んできたカグヤのツッコミに、周囲の観客からクスリと笑いが漏れる。

 しかし、カグヤ自身の瞳には、過去の敗北に対する恐れなど微塵もなかった。むしろ、かつて越えられなかった最強の男を打ち破り、今度こそ勝利を掴み取るという熱い闘志が、その黒髪の奥でメラメラと激しく燃え盛っている。

 

 ワールド・チャンピオンズ・トーナメント準決勝。

 かつての雪辱を果たすため、カグヤは宿敵アランとの運命の決戦へと挑む。

 

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