ポケットモンスター 遥かなる高みへ 作:色即是空
シュートシティの大型ポケモンセンターの地下、特別集中治療室で古参の仲間たちが牙を研ぎ澄ませていた頃――地上にある広々としたプレイルームでは、カグヤと一緒に残りの日々を過ごす3匹の姿があった。
ヒノヤコマ、ゾロア、そして相棒のウパー。彼らは全員、カグヤが修行の地としたマホロバ地方で仲間になり、マホロバリーグの激戦を共に駆け抜け、優勝という栄冠を勝ち取った頼もしいメンバーだ。
窓際の特等席で、ヒノヤコマはピンと尖ったクチバシの先から小さな熱を帯びた息を漏らしながら、外の空を鋭い眼光で見つめていた。
世界大会の予選トーナメントでは実際にフィールドに立ち、その炎の翼で局面を突破してきた実戦経験があるからこそ、その瞳に宿る気概は一際強い。
『ヒノッ……!(俺は予選でカグヤの背中を支えて戦ってきた。だが、この大舞台、準決勝の圧倒的な熱量を前にして、俺の炎ももっと燃え上がらなきゃな)』
そう言って翼をパッと広げ、微かに火花を散らすヒノヤコマの横で、ゾロアが真面目な顔つきで深く頷いた。幻影を生み出す漆黒の毛並みが、室内の明かりを受けて艶やかに揺れる。
『ゾロ……!(うん、ヒノヤコマの言う通りだね。僕は予選でも本戦でもまだ出番がなくて悔しいけれど、いつだってカグヤの力になりたいって本気で思っているんだ。だから、僕にできることがあるなら、いつでも全力で手伝うよ)』
素直で真っ直ぐな瞳を輝かせながら力強く語るゾロアの姿に、マホロバで培ったそのひたむきな忠誠心と確かな信頼が現れている。いつ出番が回ってきても、この素直な気概で完璧に仕事をこなしてくれるはずだ。
そして――その二人の足元で、ぴょこぴょこと控えめな足取りで移動していたのが、カグヤが心から溺愛するウパーだった。
『ウパ、ウパァ……!(僕、本当はちょっと怖がりだし、大きなスタジアムの音とか聞くだけで足が震えてしまうんだ……。だけど、マホロバリーグの決勝で最後の勝負を決めたのは、この僕だから……今回の本戦はお留守番だけど、カグヤがアランさんと戦うときは、精一杯の勇気を出して応援するよっ!)』
普段はちょっぴり臆病な性格でありながらも、あのマホロバリーグの頂点を自らの手で掴み取った誇りと強い意志を胸に、ウパーはピンク色のエラを健気にピクピクと揺らした。そのいじらしくも頼もしい姿に、ヒノヤコマもゾロアも思わず温かい笑みを浮かべ、プレイルームの空気が優しく満たされていく。
「どうした、お前たち。そんなに楽しそうにして」
ポケモンの健康チェックを終えたカグヤが、優しい笑みを浮かべながらプレイルームに足を踏み入れる。
その姿を見つけるやいなや、ウパーは少し緊張しながらも「ウパァッ!」と勢いよく駆け寄り、カグヤの靴の上にちょこんと飛び乗った。カグヤは慣れた手つきでウパーを優しく抱き上げ、その丸っこい体を胸元でギュッと包み込む。
「ハッサムやルカリオたちの治療も順調みたいだし、いよいよ3日後はアランさんとの準決勝だ。……予選で頑張ってくれたヒノヤコマも、出番を待ちながら支えてくれる素直なゾロアも、そしてマホロバで最高の勝利を掴ませてくれたウパーも、みんな僕にとってはかけがえのない最高の相棒だよ」
カグヤの真っ直ぐな言葉と、温かな手のひらの温もり。
予選で戦った者、出番がなくとも素直に支える者、そして臆病ながらも伝説の勝利を知る小さな相棒――戦い方は違えど、カグヤに向ける信頼と絆の深さは全員が同じだった。
最強のライバル・アランが待つ準決勝の舞台へ向け、人間とポケモンたちの心が一つに重なり合い、決戦の時は一刻一刻と近づいていくのだった。