ポケットモンスター 遥かなる高みへ 作:色即是空
カロス地方・アサメタウン。
緑豊かな風が吹き抜ける穏やかな一軒家のリビングルームでは、大きなテレビ画面の前にサトシとセレナが並んで座り、世界大会・準決勝直前の特番をじっと見つめていた。
――そして、その足元で同じように画面を見上げていたのは、すべての始まりを知る最強の相棒、ピカチュウだった。
ピカチュウの頭の中には、カグヤがマホロバ地方へ旅立つ時の情景や、そして世界大会へ挑む直前に行われた過酷な特訓の日々が鮮やかに蘇っていた。
あのとき、カグヤのチームを支える古参のメンバー――ゲッコウガ、カイリュー、ジュカイン、スピアー、ブラッキーの5体に対し、ピカチュウは自らスパルタとも言える徹底的な指導をつけていたのだ。
(『お前たちのその力、本当に世界を獲るためのものか? カロスでアランに敗れたあの悔しさを、まさか忘れたわけじゃないだろうな!』)
当時、ピカチュウがピリピリとした鋭い電気を纏いながら叩き込んだのは、単なる技の威力ではない。世界最高峰の舞台で生き残るための「覚悟」と「一歩も引かない執念」だった。
忍びとしてのトリッキーさを深く追及していたゲッコウガも、大柄な体躯を揺らして豪快に技を磨いていたカイリューも、冷静沈着に戦術を突き詰めていたジュカインも、俊敏な針さばきをさらに研ぎ澄ませていたスピアーも、そして漆黒の闇の中で牙を鋭くしていたブラッキーも、すべてはこのピカチュウの背中を見て、幾度も泥まみれになりながら限界を超えてきたのだ。
ピカチュウは、テレビ画面に映し出されるシュートスタジアムの光景に小さく「ピカッ……」と唸り声を漏らす。その瞳には、かつて自分が鍛え上げた誇り高き弟子たちが、今や満身創痍になりながらも世界の頂点を目指して戦っていることへの確かな手応えと、深い信頼の色が宿っていた。
「ピカチュウ、なんだか感慨深そうね。カグヤたち、いよいよ次が準決勝よ。相手はあのときカロスで立ち塞がったアランさんだわ」
セレナが優しく微笑みながらピカチュウの頭をなでると、隣に座っていたサトシが豪快に笑い声をあげた。
「ははっ! 大丈夫だ、セレナ! あいつらがどれだけ必死に修業して、ピカチュウの厳しい特訓に食らいついてきたか、俺が一番よく知ってるぜ! カロスで流した涙を力に変えて、今度こそあの壁をぶち破ってくれるさ!」
サトシの揺るぎない言葉に、ピカチュウも「ピカチュウ!」と力強く気合の入った鳴き声を返し、尻尾をピンと立てた。
かつて父親であるサトシが世界を駆け抜け、そして今、その息子であるカグヤが新たな仲間たちと共に挑む頂上決戦。
遠くカロスのアサメタウンから送る熱い視線と、ピカチュウが叩き込んだ魂の教えを胸に、伝説の世代を超えるための戦いが、いよいよ始まろうとしていた。