ポケットモンスター 遥かなる高みへ 作:色即是空
決戦の幕開け、ぶつかり合う魂
シュートスタジアムを埋め尽くす大歓声が、天井のドームを揺らすように轟いていた。
ワールド・チャンピオンズ・トーナメント準決勝。世界中のポケモンファンが固唾を呑んで見守る大舞台の中心で、ついに運命の対戦カードがコールされる。
「――さあ、準決勝第1試合! 驚異の躍進を続ける新鋭・カグヤ対、カロスを制した実力派の強豪・アラン! この頂上決戦を制するのはどちらだ!」
実況の絶叫と同時に、観客席から割れんばかりの歓声が巻き起こる。
反対の山には絶対王者・ダンデが君臨しているものの、このトーナメントを勝ち上がる上で避けて通れない最大の壁にして、最大の宿敵が目の前にいた。
プレイヤーロッカールームから現れたカグヤは、黒曜石のような瞳に静かな闘志を宿し、まっすぐと対戦フィールドへ歩みを進めていた。その足取りに迷いはない。
対するフィールドの反対側では、腕を組んだアランが、相棒であるリザードンとともに微動だにせず立ち構えていた。その背中からは、かつてサトシたちの世代が幾度となく挑み、そして阻まれてきた「強敵」としての圧倒的なオーラが放たれている。
カグヤは手元に並んだ6つのモンスターボールにそっと視線を落とした。
――ハッサム、ルカリオ、ゲッコウガ。カロスリーグ準々決勝で敗れ去り、あの日の悔しさを誰よりも知る古参の相棒たち。
――カイリュー、ブラッキー、スピアー。ベンチからその背中を見つめ続け、今度こそ自分たちの牙と毒で歴史を変えると誓った仲間たち。
すべての想いを背負い、カグヤはボールを強く握り締めた。
「アランさん……あなたを超えることが、僕の、そして僕たちチーム全員の悲願だ。行くぞ!」
フィールドの中央に立ち、カグヤが力強く右手を突き出す。
対するアランも、静かにニヤリと笑みを浮かべながらポケットからモンスターボールを構えた。
「来るがいい、カグヤ。お前が積み上げてきたすべてを、この俺にぶつけてみろ!」
主審の旗が力強く振り下ろされ、世界最高峰の因縁を断ち切るための激闘が、今、音を立てて幕を開けたのだった。
その頃、大歓声に包まれるシュートスタジアムの観客席。
ナオやシオンたち人間の一団に囲まれた席で、ジュカインは口元にいつもの草の茎をくわえたまま、じっとフィールドを睨みつけていた。カロスでの敗戦をベンチから見届けた彼にも、今回こそは自分が先発に立ってあのリザードンを討ち果たしたいという強い思いもあっただけに、その胸中は複雑だった。
『ジュカ……(直談判してでも俺が出張るべきだったか、いや……。ハッサムやルカリオ、そしてゲッコウガたちの背負ってきた因縁の重さは、誰よりも俺たちが知っている。あいつらにすべてを託したんだ、信じるさ)』
静かに息を吐き出すジュカインの横で、世界大会で共に歩んできたカメックスが、丁寧に頭を下げながら落ち着いた声色で語りかけた。
『カメッ……(ジュカイン。そんなに思い詰めないで。先輩が背負ってきたものの大きさを思えば、その悔しさは痛いほど分かるよ。けど、今あの場に立っているのは、俺たちがずっと尊敬してきた先輩方だ。ここで俺たちが暗い顔をしては、カグヤも安心して戦えないよ)』
『ヒノッ……!(その通りだ。カグヤの背中には、先輩方がカロスで積み上げてきた誇りと、俺たちがマホロバで磨いてきた炎の双方が乗っかっているんだ!)』
ヒノヤコマが敬意を込めた眼差しで頷くと、その足元でゾロアも真面目な顔つきでそれに続いた。
『ゾロ……!(うん、僕たちは予選でも本戦でもまだ出番はないけれど、先輩たちの戦いを一番近くで見てたんだ。だからこそ信じてる。カグヤなら、そして先輩たちなら、絶対にアランさんに勝てるよ)』
『ウパ、ウパァ……!(ボクも、スタンドから精一杯応援するよ……! カグヤも、戦っている先輩たちも、みんな頑張ってくれよーッ!)』
臆病な自分を奮い立たせるように、ウパーが小さな体でピョンピョンと飛び跳ねる。その純粋で温かなエールに、ジュカインの険しかった表情もふっと和らぎ、鋭い瞳に仲間の絆を信じる確かな光が宿った。
観客席から送られる仲間たちの熱い声援を背に受けて、カグヤとポケモンたちの最初の一歩が、今、最高峰の舞台へと踏み出されていく。
●カグヤ
ハッサム
ルカリオ
ゲッコウガ
カイリュー
ブラッキー
スピアー
●アラン
リザードン
バンギラス
メタグロス
マニューラ
キリキザン
ファイアロー