ポケットモンスター 遥かなる高みへ 作:色即是空
シュートスタジアムの冷気が、次なる激闘の熱気によってみるみるうちに掻き消されていく。
アランの手持ちは残り3体――リザードン、キリキザン、ファイアロー。対するカグヤは、ブラッキーとスピアーを失ったものの、先ほどの猛攻を耐え抜いたカイリューが健在であり、手元にはゲッコウガ、ルカリオ、ハッサムが控えている。互いの主力と切り札が残されたこの局面、どちらが先に主導権を握るかが勝敗の分かれ目となる。
「よし、よくやってくれたカイリュー。少し休んでいてくれ」
カグヤは優しくモンスターボールを向け、激闘を制したカイリューを回収した。その表面はうっすらと氷の結晶に覆われており、先ほどの『冷凍パンチ』がどれほど過酷で致命的な一撃だったかを物語っている。カイリューの頑張りのおかげでアランの主力を削り落とすことができたが、まだ油断は微塵もできない。
フィールドの中央に残されたカグヤの次の手番。アランが次に繰り出してくるであろうポケモンの特性と攻撃性能を冷静に見極め、カグヤは手元のボールを力強く握り締めた。
「次に行くぞ……! 出てくれ、ハッサム!」
赤く弾けた閃光の中から現れたのは、全身を鮮やかな真紅の装甲と鋭い巨鋏に包まれた鋼の闘士――ハッサムだった。
マホロバの地で幾度となくチームを支え、カグヤの戦術の要として研ぎ澄まされてきたベテランの相棒が、重厚な足音を立ててフィールドに降り立つ。その姿は、歴戦の猛者としての気高さと、確かな自信に満ち溢れていた。
「ほう……ハッサムか。ならば、こちらも手加減なしで行かせてもらう!」
アランの鋭い号令とともに掲げられたモンスターボールから飛び出したのは、鋭い刀剣を思わせる鋼の肢体と不敵な三日月の頭部を持つ悪・鋼タイプの猛者、キリキザンだった。
鋭利な刃を交差させるように構えたキリキザンの周囲に、冷徹な殺気が立ち込める。鋼と悪という厄介な耐性を持ち、高い攻撃力から繰り出される一撃は、どんなに頑丈なポケモンであっても軽視できない破壊力を秘めている。
アランにとって、ハッサムが出てきた時点でメガリザードンXを対抗に出すという選択肢もあった。しかし、カグヤは明らかにアランを意識しており、特にメガリザードンXを警戒しているのは明らかである。カロスリーグ以降のカグヤの手持ちの成長度を考えれば、タイプ相性が良くてもそのまま勝てるとは限らない。むしろ、メガリザードンXだと逆に危ないとも考えられた。
アランにとってメガリザードンXは一番の相棒であり切り札。それを考えると、今ここで万が一切り札を無くせば、負けは必定である。逆に、カグヤにとってデータが無いキリキザンの方が有利かもしれないと考えた。
「キリキザンか……! ハッサム、相手の攻撃力は脅威だ。だが、スピードとテクニックで主導権は渡さない!」
「容赦はしない。キリキザン、『アイアンヘッド』で一気に踏み潰せ!」
アランの号令に合わせ、キリキザンが凄まじい推進力で地面を蹴り飛ばした。
鋼のエネルギーを全身に纏った頭部が、まるで砲弾のごとき勢いでハッサムの懐めがけて突き進む。その速度と威圧感は、まさに刃の化身そのものだった。
「ハッサム、『バレットパンチ』で迎え撃て!」
カグヤの指示を受けたハッサムの体が、目にも留まらぬ神速の光を放った。
巨鋏を巧みに操り、キリキザンの突進の軌道上へ正確に狙いを定めて拳を叩きつける。
ガキィィンッ!! と、シュートスタジアム全体に金属が激しくぶつかり合う凄まじい衝撃波が響き渡り、火花が激しく飛び散った。
互いの鋼の装甲と技が真っ向からぶつかり合う、一歩も引かない極限の攻防。
キリキザンの重い衝撃をハッサムの技巧的な巨鋏が受け止め、押し合いへし合いの力比べが展開される。観客席で見守るナオやシオンも、その一瞬の隙を見逃すまいと固唾を呑んでフィールドを見つめていた。
「押し切るぞ、ハッサム! そのまま『つるぎのまい』の隙は与えない、連撃だ!」
「甘いな! キリキザン、『ストーンエッジ』だ!」
アランの機転の利いた指示により、キリキザンは絡め手から一転して強烈な岩の刃を足元から突き上げる。
ハッサムはその予測外の角度からの攻撃に対し、華麗な身のこなしで宙へと飛び上がり、間一髪で回避に成功する。しかし、キリキザンもすぐに体勢を立て直し、次なる一手を構えていた。
世界最高峰の頂点を目指す戦いは、鋼同士の激しい火花を散らしながら、さらに熱を帯びて次の局面へと突入していくのだった。
【カグヤ】 【アラン】
ブラッキー ✕――◯ バンギラス
スピアー ◯――✕ バンギラス
スピアー ✕――◯ メタグロス
カイリュー ◯――✕ メタグロス
カイリュー ◯――✕ マニューラ
ハッサム ―― キリキザン