ポケットモンスター 遥かなる高みへ 作:色即是空
シュートスタジアムの広いフィールドの中央で、真紅の巨鋏を持つハッサムと、鋭利な刃を携えたキリキザンが激しく対峙していた。
この時点でカグヤの手持ちは、ハッサム、ルカリオ、ゲッコウガ、そして先ほどの激闘でダメージを負った手負いのカイリューの4体。対するアランの手持ちは、リザードン、キリキザン、ファイアローの3体。戦局はいよいよお互いの命運を握る終盤戦へと突入していた。
金属同士がぶつかり合う高音が幾度となく響き渡り、火花が散るたびに観客席からは大きな歓声が沸き起こる。鋼の耐性を誇る両者による肉弾戦は、一瞬の油断も命取りになる極限のスピードとパワーの応酬となっていた。
「キリキザンの重い一撃を、ハッサムの巧みな技量でいなし続けている……! だが、このまま持久戦に持ち込まれるとハッサムの装甲に負担がかかる。一気に勝負を仕掛けるぞ!」
カグヤは心の中で戦況を冷静に分析し、次の一手を脳裏で組み立てる。
アランのキリキザンは隙が少なく、正面からの力押しだけでは容易に崩せない。しかし、ハッサムには長年培ってきた抜群の機動力と、先手を取るための『バレットパンチ』がある。
「ハッサム、距離を取って体勢を立て直せ! そのまま『バレットパンチ』だ!」
カグヤの指示を受けたハッサムは、キリキザンの懐から素早くバックステップで身をかわし、鋭い巨鋏に鮮烈な鋼鉄のエネルギーを纏わせた。
一気に間合いを詰めて放たれる渾身の『バレットパンチ』が、キリキザンの胸元めがけて鋭い軌道を描いて襲い掛かる。
「そうはさせん。キリキザン、『ハサミギロチン』で迎え撃て!」
アランの冷徹な号令に合わせ、キリキザンは不敵な笑みを浮かべながら巨大な刀剣のような両腕をクロスさせ、ハッサムの猛攻を正面から真正面へと受け止めようと構えた。
一歩間違えば一撃で勝負が決まる危険な技のぶつかり合いに、スタジアムの空気が一瞬にして凍りついたように静まり返る。
ガキィィンッ!! と、耳をつくような激しい衝撃波がフィールドを円形に吹き飛ばし、砂塵と火花が視界を白く染め上げる。
互いの技が拮抗し、押し合いへし合いの末に、両者は凄まじい反動でそれぞれ後方へと大きく弾き飛ばされた。
「ぐっ……さすがアランさんのキリキザン、一筋縄ではいかないか!」
「ふっ、いい動きだカグヤ。だが、その技の隙を見逃すほど俺は甘くはないぞ。キリキザン、『アイアンヘッド』の連撃だ!」
アランの容赦ない追撃の号令に呼応し、キリキザンは体勢を立て直すやいなや、全身の鋼鉄のエネルギーを頭部に集中させて猛烈な勢いで突進してきた。
避ける暇もないほどの神速の突進が、バランスを崩したハッサムの装甲を直撃する。
ドゴォォンッ!! と、激しい音とともにハッサムの体が大きく宙へと吹き飛ばされ、競技場の硬い床に激しく叩きつけられた。
「ハッサム……!」
カグヤが息を呑んで見守る中、ハッサムは床に伏せたままピクリとも動かない。
主審がすかさず駆け寄り、両手を交差させて力強く宣言した。
「ハッサム、戦闘不能! キリキザンの勝ち!」
その瞬間、カグヤの頭の中から音が消え去ったような錯覚に陥った。
アサメタウンの庭で共に育ち、マホロバの地でもずっと共に歩み、数々の修羅場を乗り越えてチームを支え続けてきた絶対的なエース――そのハッサムが、いま目の前で倒れている。
信じられないというように目を見開き、カグヤの手がわずかに震える。自分が下した指示に誤りはなかったのか、もっと違う選択肢があったのではないかという自問自答と、アランという壁の途方もなさが津波のように押し寄せる。舐めていた訳ではない。しかし、メガリザードンX以外なら負けない。うちのハッサムは最強だ。その僅かな過信と心の油断が招いた失策であった。
「ハッサム……よくやってくれた。お前は最高の相棒だ……!」
唇を強く噛み締め、こみ上げる悔しさと動揺を必死に押し殺しながら、カグヤは静かにモンスターボールを掲げた。赤い光がハッサムを包み込み、そっとボールへと戻っていく。その重みは、想像以上に手元に重く響いた。
観客席からは、互いのエース級が繰り広げた凄まじい死闘に対する割れんばかりの拍手と歓声が沸き起こっている。
これでカグヤの手持ちは、手負いのカイリュー、ルカリオ、ゲッコウガの3体。
一方のアランはリザードン、キリキザン、ファイアローの3体が残り、お互いに後がない極限の局面へと突入していくのだった。
【カグヤ】 【アラン】
ブラッキー ✕――◯ バンギラス
スピアー ◯――✕ バンギラス
スピアー ✕――◯ メタグロス
カイリュー ◯――✕ メタグロス
カイリュー ◯――✕ マニューラ
ハッサム ✕――◯ キリキザン